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そして、やっぱりスティーブ様はスティーブ様だった。②
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なかなか治療は前に進まない。
まとめてパァッと出来たらいいのだけど……
そんな簡単ではなかった。
なんとか終わったと思ったら……
今度はイザベラ様とお義母様とスティーブ様が運ばれてきた。
イザベラ様は軽症だったので取り寄せた薬で治療をしようとしたら
「なんで貴女が治してくれないの?貴女癒しの魔法を使えるんじゃない!今まで隠していたのね」
「確かに使えます。でも軽症の方は薬をできるだけ使ってもらっています」
「はあ?こんなにお腹が痛くて苦しんでいるのよ?わたしを先に助けなさい」
スティーブ様とお義母様は徐々に悪化していっているのがわかる。
先に二人を治療したいし……
「はあ?イザベラ様はまだ軽い症状ですよね?薬で治るんだからそれでいいでしょう?わたしはこちとらもう20人以上治療してるんですよ?終わってもまだ続くんです!一人でも薬で治療できる人は薬で、このまま放っておけば死ぬか治るのに時間がかかる人しかわたしは治療しません!わたしのこの力だって限界はあるんです!」
「な、なんて生意気なの!だからスティーブは貴女のこと相手にもしないのよ!」
「誰か、この人の口に薬を突っ込んでください!そしてわたしの目の前から見えないところに連れて行ってください、邪魔です、迷惑です」
「はあ?邪魔!ふざけないで!わたしを誰だと思っているの?レテーシア様に似ているからとおじ様が選んで結婚させてもらって、次期公爵夫人なんて言われてるけどスティーブ様に愛されることもなくもうすぐ離縁されるって噂でみんなあんたのことなんか見下しているのよ!」
この言葉に体調の多少でもいい者、看護をしている者は固まった。
この屋敷で言ってはいけない言葉。
“レテーシア様”
体調が悪くぐったりしているお義母様が突然暴れ始めた。
「い、いやあ!わたしは、わたしは………、どうして我慢しないといけないの?あんたなんか死んだらいいのよ!」
お腹の痛みでぐったりしていたはずのお義母様が立ってわたしのところに歩み寄ってきた。
思わず一歩後ろに下がった。
ジリジリとわたしに近づいてくる顔は泣き叫んでいた。
「あんたがわたしを苦しめるの。あんたなんか死ねばいい!!!」
手がわたしの首に近づいてきた。
わたしはお義母様を抱きしめた。
「辛かったのですよね?ずっと我慢して……もう大丈夫です」
ーーお義母様はわたしをレテーシア様だと勘違いしているみたい。
「何が大丈夫だと言うの?ずっと夫の浮気に気づいているのに気づかないふりをして生きることがどれだけ辛いと思うの?死んでしまいたいのに……息子達がいなければいつでも死ねたのに……離縁も死ぬことも出来ない………」
お義母様は最初暴れていた。だけどわたしの魔力の所為なのか子供のようにわたしの腕の中で泣き続けた。
そして蹲るように倒れた。
それを見た騎士団の人達がどうすればいいのか迷っていた。
「セレン様、奥様は?」
「うん今、心の癒しの魔法をかけたの。現状はどうも出来ない。だけど心だけでも癒してあげたくて。今からお義母様の治療を始めるわ。イザベラ様にはこの場所から退いて貰います。煩くて仕方がないの」
わたしは今までイザベラ様に対して嫌うことはなかった。だけど人の心を傷つける言動に流石に頭にきた。
お義母様を治療している間、スティーブ様をチラッと見た。
苦しみ(症状)には耐えているみたいだけど、お義母様のことは何も言わない。
今の彼の実力ならはっきりとお父様と向き合って話せるだろうに。
だけど彼も苦しんでいる。あ、お義母様のこと。
なのにやはりスティーブ様はスティーブ様だった。
「セレン、イザベラを治療してやってくれ」
「はっ?なぜですか?」
「俺は薬で治す。だから頼む」
「…………」
わたしは呆れて返事をしなかった。
ーーなんだこいつ。やっぱりイザベラ様を愛しているのね。空気見ろよ!ここでイザベラ様を治療すれば他の軽症の人まで診ることになるのに!
わたしの不機嫌な顔にイザベラ様は笑顔になった。
「ほら早くしてくださいな。薬はまだ飲んでいないわ」
勝ち誇った笑顔にため息を吐いた。
「………わかりました。スティーブ様の代わりです」
「そんな、スティーブ様が治るのにどれくらい掛かることになるのですか?」
周りの団員達が慌て始めた。
「知りません。たぶん……一月もあれば完治するのでは?本人がそれでいいと言うのならそれでいいのでしょう。わたしはあと少しでここを去るので関係ありませんから。ではイザベラ様治療しますね」
「ええさっさとしてちょうだい」
わたしは彼女のお腹に手を当ててそっと魔力を流し込んだ。
「い、痛いわ、なに今までより痛いじゃない!ぎゃっ!こんなことして許されると思っているの?」
わたしはいつも通り治療しただけ。
軽症なのだからそこまで痛くないはず。
ほんっと痛みに弱いのだろう。
わたしは「スティーブ様には薬を飲ませて。わたしは他の人の治療にあたります」と言ってスティーブ様の顔を見ることもしなかった。
イザベラ様は治療の後すっかり元気になって、去り際に「こんな痛い癒しの治療なんて聞いたことがないわ。ほんっとこんなに痛いなら薬飲んでおけばよかったわ」と吐き捨てていかれた。
ーーうん、大怪我した時は絶対癒しの魔法で助けてやる。
まとめてパァッと出来たらいいのだけど……
そんな簡単ではなかった。
なんとか終わったと思ったら……
今度はイザベラ様とお義母様とスティーブ様が運ばれてきた。
イザベラ様は軽症だったので取り寄せた薬で治療をしようとしたら
「なんで貴女が治してくれないの?貴女癒しの魔法を使えるんじゃない!今まで隠していたのね」
「確かに使えます。でも軽症の方は薬をできるだけ使ってもらっています」
「はあ?こんなにお腹が痛くて苦しんでいるのよ?わたしを先に助けなさい」
スティーブ様とお義母様は徐々に悪化していっているのがわかる。
先に二人を治療したいし……
「はあ?イザベラ様はまだ軽い症状ですよね?薬で治るんだからそれでいいでしょう?わたしはこちとらもう20人以上治療してるんですよ?終わってもまだ続くんです!一人でも薬で治療できる人は薬で、このまま放っておけば死ぬか治るのに時間がかかる人しかわたしは治療しません!わたしのこの力だって限界はあるんです!」
「な、なんて生意気なの!だからスティーブは貴女のこと相手にもしないのよ!」
「誰か、この人の口に薬を突っ込んでください!そしてわたしの目の前から見えないところに連れて行ってください、邪魔です、迷惑です」
「はあ?邪魔!ふざけないで!わたしを誰だと思っているの?レテーシア様に似ているからとおじ様が選んで結婚させてもらって、次期公爵夫人なんて言われてるけどスティーブ様に愛されることもなくもうすぐ離縁されるって噂でみんなあんたのことなんか見下しているのよ!」
この言葉に体調の多少でもいい者、看護をしている者は固まった。
この屋敷で言ってはいけない言葉。
“レテーシア様”
体調が悪くぐったりしているお義母様が突然暴れ始めた。
「い、いやあ!わたしは、わたしは………、どうして我慢しないといけないの?あんたなんか死んだらいいのよ!」
お腹の痛みでぐったりしていたはずのお義母様が立ってわたしのところに歩み寄ってきた。
思わず一歩後ろに下がった。
ジリジリとわたしに近づいてくる顔は泣き叫んでいた。
「あんたがわたしを苦しめるの。あんたなんか死ねばいい!!!」
手がわたしの首に近づいてきた。
わたしはお義母様を抱きしめた。
「辛かったのですよね?ずっと我慢して……もう大丈夫です」
ーーお義母様はわたしをレテーシア様だと勘違いしているみたい。
「何が大丈夫だと言うの?ずっと夫の浮気に気づいているのに気づかないふりをして生きることがどれだけ辛いと思うの?死んでしまいたいのに……息子達がいなければいつでも死ねたのに……離縁も死ぬことも出来ない………」
お義母様は最初暴れていた。だけどわたしの魔力の所為なのか子供のようにわたしの腕の中で泣き続けた。
そして蹲るように倒れた。
それを見た騎士団の人達がどうすればいいのか迷っていた。
「セレン様、奥様は?」
「うん今、心の癒しの魔法をかけたの。現状はどうも出来ない。だけど心だけでも癒してあげたくて。今からお義母様の治療を始めるわ。イザベラ様にはこの場所から退いて貰います。煩くて仕方がないの」
わたしは今までイザベラ様に対して嫌うことはなかった。だけど人の心を傷つける言動に流石に頭にきた。
お義母様を治療している間、スティーブ様をチラッと見た。
苦しみ(症状)には耐えているみたいだけど、お義母様のことは何も言わない。
今の彼の実力ならはっきりとお父様と向き合って話せるだろうに。
だけど彼も苦しんでいる。あ、お義母様のこと。
なのにやはりスティーブ様はスティーブ様だった。
「セレン、イザベラを治療してやってくれ」
「はっ?なぜですか?」
「俺は薬で治す。だから頼む」
「…………」
わたしは呆れて返事をしなかった。
ーーなんだこいつ。やっぱりイザベラ様を愛しているのね。空気見ろよ!ここでイザベラ様を治療すれば他の軽症の人まで診ることになるのに!
わたしの不機嫌な顔にイザベラ様は笑顔になった。
「ほら早くしてくださいな。薬はまだ飲んでいないわ」
勝ち誇った笑顔にため息を吐いた。
「………わかりました。スティーブ様の代わりです」
「そんな、スティーブ様が治るのにどれくらい掛かることになるのですか?」
周りの団員達が慌て始めた。
「知りません。たぶん……一月もあれば完治するのでは?本人がそれでいいと言うのならそれでいいのでしょう。わたしはあと少しでここを去るので関係ありませんから。ではイザベラ様治療しますね」
「ええさっさとしてちょうだい」
わたしは彼女のお腹に手を当ててそっと魔力を流し込んだ。
「い、痛いわ、なに今までより痛いじゃない!ぎゃっ!こんなことして許されると思っているの?」
わたしはいつも通り治療しただけ。
軽症なのだからそこまで痛くないはず。
ほんっと痛みに弱いのだろう。
わたしは「スティーブ様には薬を飲ませて。わたしは他の人の治療にあたります」と言ってスティーブ様の顔を見ることもしなかった。
イザベラ様は治療の後すっかり元気になって、去り際に「こんな痛い癒しの治療なんて聞いたことがないわ。ほんっとこんなに痛いなら薬飲んでおけばよかったわ」と吐き捨てていかれた。
ーーうん、大怪我した時は絶対癒しの魔法で助けてやる。
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