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さようなら。
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泣き疲れて眠ってしまった。目が覚めるともう日が暮れて暗くなっていた。
どれくらい眠ってしまったのだろう。誰も起こしに来なかったのかな?
ベッドから起きてベッドサイドに置かれたボールに入った水で顔を洗った。
さっぱりしたので、目も覚めてとりあえず部屋を見渡した。
わたしの服はソファの上に綺麗に畳まれて置かれていた。
あまり綺麗な服でもないのに申し訳なくなった。
『姫様』なんて呼ばれるには恥ずかしいくらいの身なり。もちろんもう平民だと思って生きてきてはいるけど、この屋敷の人たちはわたしを『姫様』として扱う。
それがどうも気恥ずかしい。こんな見窄らしいわたしを見てどう思っているのかしら?
哀れだと同情しているのかしら?それとも……ううん。
ルドーが立派な当主だからそんなことはないだろう。でも今領地に住んでいる家族だってわたしを見れば唖然とするだろう。
これ以上追われる身であるわたしがここに居ては迷惑をかける。
誰にも気づかれずにこの屋敷を去ろう。
やはりルドーは、わたしが残して行った荷物を取って置いてくれていたようだ。
服の隣に持っていた鞄とは別に、わたしの以前の荷物をそのまま置いてくれていた。
その中には、大切な宝石がそのまま袋に入っていた。
内心ホッとして鞄に荷物を無理やり押し込んだ。
城でもらった食糧は鞄から出して袋に入れ直した。
空っぽだった水筒にも水が入っていた。
ルドーはわたしがこの屋敷にいることを良しとしないことをわかっているようだ。
これからの旅にはお金が必要だ。宝石を換金しなければいけない。そう考えていてふと思い出した。
城でもらった皮の袋に入ったお金を確認するとそこには金貨が入っていた。
「ソラさん?ううん、違う……こんな大金を使用人の仕事では用意するなんて無理だわ」
ふと思い浮かんだのはあの冷たい王妃様の顔。
まさか……城から追い出したのは王妃様……わたしのことを娘だとすら思っていない。
袋の中に手紙が入っているのに気がついた。
『ソフィア様、ご無事にこの国を出られることを祈っております。このお金は王妃様からです。王妃様は、本当はソフィア様のことを大切に思っております。立場上、ソフィア様に愛情を向けることはできずにおりますが、ずっとこの城で陰ながらソフィア様の暮らしを支えてきたのは王妃様でございます。この城から追い出されたと思われるでしょうが、王妃様はソフィア様のことを想い、逃したのでございます』
なんて感動的な手紙!普通ならここで泣いて感動するのだろう。
だけどわたしは不思議なくらい何も心に響かなかった。
おじちゃんがくれた干し肉とパンの方が嬉しかった。
ルドー達の優しさの方がずっとずっと心が温まった。
あの人はわたしを捨てた。
わたしの母ではなく王妃を選んだ。
だからわたしも母を捨てた。今更知っても感動のお涙頂戴とはいかない。
捻くれていると言われてもいい。
だって三度目の人生でもう心は擦り減って疲れているんだもの。
愛とか恋とかそんなものはいらない。
あ、でも、沙耶香のときの両親にはもう一度会いたい。大好きだった家族だもの。
わたしはソラさんからの手紙をゴミ箱に捨てた。
そして、黙って出ていくことをルドーに詫びる手紙を書いて、ルドルフのところへ行った。
「ルドルフ?一緒に行こう」
ルドルフはもういつでも旅立てるように鞍が装着されていた。
「姫様……」
ルドーの声が。
「ルドーお世話になったわ、ありがとう。何のお返しも出来ないけど、落ち着いたら手紙を書くわ。おじちゃんにもわたしは元気で生きていると伝えて欲しい……本当は会いたいけど、迷惑をかけてしまうから」
「ここまで、無事に来れたのは王妃様の助けがあったからです。王妃様は……」
「ルドー、言わないで。あの人はわたしを娘とは思っていない。わたしは邪魔だから城から追い出されたの」
「………わかりました」
「じゃあ行くわ」
ルドルフは静かにわたしのそばで待っていた。ルドルフに乗って優しく撫でた。
「ありがとう」
ふと夜空を見上げてそう言った。
誰にそう言ったのか自分でもわからない。
「お元気で」
「うん」
どれくらい眠ってしまったのだろう。誰も起こしに来なかったのかな?
ベッドから起きてベッドサイドに置かれたボールに入った水で顔を洗った。
さっぱりしたので、目も覚めてとりあえず部屋を見渡した。
わたしの服はソファの上に綺麗に畳まれて置かれていた。
あまり綺麗な服でもないのに申し訳なくなった。
『姫様』なんて呼ばれるには恥ずかしいくらいの身なり。もちろんもう平民だと思って生きてきてはいるけど、この屋敷の人たちはわたしを『姫様』として扱う。
それがどうも気恥ずかしい。こんな見窄らしいわたしを見てどう思っているのかしら?
哀れだと同情しているのかしら?それとも……ううん。
ルドーが立派な当主だからそんなことはないだろう。でも今領地に住んでいる家族だってわたしを見れば唖然とするだろう。
これ以上追われる身であるわたしがここに居ては迷惑をかける。
誰にも気づかれずにこの屋敷を去ろう。
やはりルドーは、わたしが残して行った荷物を取って置いてくれていたようだ。
服の隣に持っていた鞄とは別に、わたしの以前の荷物をそのまま置いてくれていた。
その中には、大切な宝石がそのまま袋に入っていた。
内心ホッとして鞄に荷物を無理やり押し込んだ。
城でもらった食糧は鞄から出して袋に入れ直した。
空っぽだった水筒にも水が入っていた。
ルドーはわたしがこの屋敷にいることを良しとしないことをわかっているようだ。
これからの旅にはお金が必要だ。宝石を換金しなければいけない。そう考えていてふと思い出した。
城でもらった皮の袋に入ったお金を確認するとそこには金貨が入っていた。
「ソラさん?ううん、違う……こんな大金を使用人の仕事では用意するなんて無理だわ」
ふと思い浮かんだのはあの冷たい王妃様の顔。
まさか……城から追い出したのは王妃様……わたしのことを娘だとすら思っていない。
袋の中に手紙が入っているのに気がついた。
『ソフィア様、ご無事にこの国を出られることを祈っております。このお金は王妃様からです。王妃様は、本当はソフィア様のことを大切に思っております。立場上、ソフィア様に愛情を向けることはできずにおりますが、ずっとこの城で陰ながらソフィア様の暮らしを支えてきたのは王妃様でございます。この城から追い出されたと思われるでしょうが、王妃様はソフィア様のことを想い、逃したのでございます』
なんて感動的な手紙!普通ならここで泣いて感動するのだろう。
だけどわたしは不思議なくらい何も心に響かなかった。
おじちゃんがくれた干し肉とパンの方が嬉しかった。
ルドー達の優しさの方がずっとずっと心が温まった。
あの人はわたしを捨てた。
わたしの母ではなく王妃を選んだ。
だからわたしも母を捨てた。今更知っても感動のお涙頂戴とはいかない。
捻くれていると言われてもいい。
だって三度目の人生でもう心は擦り減って疲れているんだもの。
愛とか恋とかそんなものはいらない。
あ、でも、沙耶香のときの両親にはもう一度会いたい。大好きだった家族だもの。
わたしはソラさんからの手紙をゴミ箱に捨てた。
そして、黙って出ていくことをルドーに詫びる手紙を書いて、ルドルフのところへ行った。
「ルドルフ?一緒に行こう」
ルドルフはもういつでも旅立てるように鞍が装着されていた。
「姫様……」
ルドーの声が。
「ルドーお世話になったわ、ありがとう。何のお返しも出来ないけど、落ち着いたら手紙を書くわ。おじちゃんにもわたしは元気で生きていると伝えて欲しい……本当は会いたいけど、迷惑をかけてしまうから」
「ここまで、無事に来れたのは王妃様の助けがあったからです。王妃様は……」
「ルドー、言わないで。あの人はわたしを娘とは思っていない。わたしは邪魔だから城から追い出されたの」
「………わかりました」
「じゃあ行くわ」
ルドルフは静かにわたしのそばで待っていた。ルドルフに乗って優しく撫でた。
「ありがとう」
ふと夜空を見上げてそう言った。
誰にそう言ったのか自分でもわからない。
「お元気で」
「うん」
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