【完結】氷の騎士は忘れられた愛を取り戻したい〜愛しています〜令嬢はそれぞれの愛に気づかない

たろ

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6話

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久しぶりに学園の友人に会えた。

「ジェシカ心配したのよ、まさか……迷子になるなんて!
マリーナの言葉に他のみんなは笑った。

「マリーナ…言わないで……恥ずかしいわ」

わたしはこちらに来てからは、たくさんの友人が出来て少しずつだけど自分の感情を素直に出せるようになった。とくにマリーナと一緒にいる時は肩の力が抜けて安心して話すことが出来た。

庭の四阿に用意したお茶会。
座ってもらってみんなでお茶をしながらたくさんのお菓子を並べて食べあった。

「俺、ここのクッキーもマフィンも好きだな」
「あ、俺はシュークリームが好き」

「ねえ、あなた達お見舞いに来て何食べてばっかりいるの?」
マリーナが腰に手を当ててプンプン怒っていた。その姿は見ていてとても可愛くてわたしはクスクスと笑った。

「ジェシカ、二週間も学園休んだけど、勉強大丈夫?」

学園で成績優秀な男子が心配そうに聞いてきた。

「うん、今から頑張って追いつくわ」

「いつでも言って。教えるから」

「ありがとう、その時はお願いするわ」

わたし達が会話していると

「ジェシカのお友達ね?娘がお世話になっています」

お母様がわたし達のころへときて挨拶をすると、みんなを見てにこにこと微笑んだ。

「ジェシカのお友達に会えるなんて嬉しいわ、いつでも遊びに来てくださいね」

「ジェシカのお母さんって綺麗だな」

男子達が何故か母を見て照れていた。
いくつになっても儚げで美しいお母様。

「そうよ、わたしの自慢のお母様だもの」

「噂通りのマザコンね」
マリーナがわざと驚いてみせた。

「だってずっと一緒に暮らしたかったのよ?」

「……覚えてないのよね」
マリーナはわたしに聞こえない声で小さく呟いていた。

「ジェシカのマザコンはかなり拗らせいるんだな」
男子が呆れていた。

お母様はみんなの輪に入って楽しそうに話していた。

王都では考えられない賑やかで楽しい生活。
向こうではいつも時間に追われて、勉強ばかりしていた。友人と呼べる人はほとんどいなかった。

どんなに努力してもお父様に認めてもらえず、さらに殿下との婚約のため自由にできる時間など全くなかった。

思い出すのは暗いことばかり。

今のわたしを殿下が知ったらどう思うかしら?
笑うことも感情を出すことも忘れたわたしがこうして友人と笑っている。

ふと他の人の視線を感じたわたしが振り向くとそこにティムと兄様がいた。

「やあ、みんな来てたんだ。俺も仲間に入っていいかな?」
ティムはすぐにみんなと話し出した。
兄様はわたしのそばに来ると

「元気になったんだな、よかった」
と言ってまたわたしの頭をくしゃっと撫でた。

「兄様、髪が崩れます!」
せっかく今日のためにジェル達が綺麗に整えてくれた髪の毛が崩れそうになって、思わず声を出すと

「そんな大きな声出せてジェシカが元気になってよかった」
と、くっくっと笑った。

それを見た女の子達が、「うわぁ」とか「ええ?」などと言い出した。

わたしが「??」
不思議そうな顔をしていたら、マリーナが耳元でそっと教えてくれた。

「セルジオ様があんな風に笑うところを見たことがないからみんな驚いているのよ」

「笑うところを見たことがない?あ、確かに……でもそこまで驚くことなの?」

「ジェシカは知らないのよね?セルジオ様は氷の騎士と言われているのよ。無表情で無愛想なんだけどあの綺麗な顔立ちだから許されるのよね。
みんな憧れているのに話しかけにくくて遠巻きで彼を見つめているの。
その彼がジェシカに笑いかけてるなんて、信じられない!」

「そ、そうなの⁉︎」
兄様はこの屋敷にわたしが来てからいつも頭を撫でてくれる。その度に髪型が崩れるのでわたし的には嬉しくはない。

でも今回風邪を引いて迷惑をかけたので、わたしは笑顔で兄様に接することにした。

兄様はわたしの隣に椅子を持ってきて座った。

「このケーキ食べてごらん」
兄様はわたしが食べたことのないイチゴがたくさん入った生クリーム少なめのケーキをお皿に入れてわたしに渡してくれた。

「わたしが生クリームが苦手なこと知っていました?」
わたしが驚きながらケーキをもらい、一口食べると

「美味しい」と言いつつまたもう一口食べた。

「兄様はイチゴよりブルーベリーがお好きでしたよね?はいどうぞ」
自然にわたしも兄様にブルーベリーのケーキをとって手渡した。

「え?……ジェシカ?」
兄様はかなり驚いていた。

「どうしました?兄様?」
兄様の驚いた顔が不思議でどうしてそんなに驚くの?と言う顔をした。

「君は俺の好きなものを何故知っているんだ?」

「……どうしてかしら?でも兄様だって知っているんだもの、昔そんな話をしたのかもしれないわ」

「…………そうか」
兄様は曖昧に笑った。


ーーー

領地で暮らし出してお母様の体も落ち着いてきたので一度二人で王都に帰ることになった。

わたしの社交界デビューの日が決まったのだ。
せっかくだからマリーナも一緒にデビューをしようということになった。

急いでドレスを作ってもらう。
マリーナとお揃いで白を基調としたシルクを使ったドレス。
少し大人っぽくしてもらい、Aラインで胸元はオフショルダーにしてもらった。
あまりリボンなどの装飾はつけずにシンプルにしてもらい、総刺繍の布を重ねることで豪華さを出してもらった。

「ジェシカ……こんな素敵なドレスをわたしまでいいのかしら?」
マリーナは少し戸惑っていたけど、プレゼントしたのはわたしではなくてお母様だった。

「マリーナちゃん、貴女はジェシカの初めてのお友達なの。二人がお揃いでわたしが考えたドレスを着てくれるなんてとっても光栄なのはわたしなのよ」

乙女のように目をキラキラさせて喜ぶ母をみて、マリーナも遠慮するのは諦めたようだ。

「ありがとうございます」
マリーナの笑顔に何故か試着した姿を見にきていたティムが照れていた。

わたしはそれに気がついてクスッと笑った。

社交界デビューのエスコートはティムがマリーナを。
そしてわたしのエスコートはお兄様のはずだったのだけどお兄様は婚約者と参加するとのことで、わたしは兄様にお願いすることになった。

兄様は「ジェシカはダンスは踊れるの?」と聞いてきたので、
「わたしは元ギルス殿下の婚約者だったのよ?ダンスはしっかり覚えているわ」
と、澄まして言い返した。

「そうだったね、今回会うことになるかもしれない……大丈夫かい?」
心配そうにわたしに聞いてきた。

「わたしは公爵令嬢よ?堂々として過ごすわ」
わたしは本当は怖かったけど強がりを言って自分に暗示をかける。

ーーみんなの視線なんか気にしない。
ーーわたしは何も悪いことはしていない。
ーー堂々としていればいいのよ。

本当は怖くてたまらない。

















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