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21話
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食堂には見知らぬ人達と「お母様」が座って待っていてくれた。
わたしを優しく見つめる人達。
「皆様、初めまして。わたしは皆様のことを全く覚えておりません。ご迷惑をおかけすると思いますがこれからよろしくお願い致します」
緊張の中とりあえず挨拶をした。
座っていたのは「お父様の従兄弟でブルック・フォーダン伯爵」とその家族だった。
「ジェシカ、そこに座りなさい」
「フォーダン伯爵」がわたしに優しく声をかけてくれた。
「「フォーダン伯爵様」本日はご招待いただきありがとうございました」
わたしは一応挨拶をして席についた。
静かな夕食会だった。みんな話さず黙々と食べ続けた。
居た堪れなくてわたしは「申し訳ございません、体調がすぐれないので失礼いたしますね」と途中で席を立つことにした。
わたしがいるからみんな楽しく話すこともできないのだろう、途中で席を立つ失礼な行動も今の記憶のないわたしなら仕方がないと諦めてくれるだろう。
「待って、ジェシカ」
わたしが席を立つと「セルジオ様?」らしき人がわたしに話しかけてきた。
「はいなんでしょうか?」
名前を間違えてはいけないのでとりあえず名前は言わずに返事だけをした。
その時のこの人の顔はとても苦しそうにしていた。
わたしがいることがそんなに嫌なら声をかけなければいいのにと、思いながらも黙ってその先の言葉を待った。
「君は僕たちのことを覚えていないのか?」
「申し訳ございません、あなた達のことはもちろん、わたし自身が誰なのかどうしてここに住んでいるのかもよくわかっておりません、皆様がわたしを「ジェシカ」だと仰るのでここにいさせていただいております。
でも皆様がとてもわたしに気を遣っていらっしゃるみたいなのでわたしも早々にこの屋敷を出て仕事を探そうと思っております、ですので後少しだけこの屋敷に居させてください」
わたしはみんなに頭を下げてお願いした。
「………やめて」
「お母様」が悲しげな顔でわたしをみた。
部屋の中の空気は一気に重苦しい空気が流れる。
わたしは振り返らずにそのまま部屋を後にした。何故か苛立ちを抑えられない。
みんながわたしを気の毒そうに見る、壊れものでも扱うように。
その空気だけは感じる。
わたしは記憶をなくす前に何かがあったのだろうか?
わたしは誰?
いくら考えても頭の中に何も浮かばない。
ただこの屋敷にはもう居られないと言う焦燥感だけ。
早くここから去らないと、わたしは駄目になる。
何故かそれだけはわかる。
あの「セルジオ様」のわたしを見る目は優しそうにしているのに、わたしへの視線は何か怖いものでも見るように感じた。
わたしが離れの屋敷へと向かい中庭を歩いていた。
「ジェシカ!」
わたしの腕を掴んできたのは「セルジオ様」だった。
「あ、あの、手を離していただけませんか?」
あまりにも力の入った手がとても痛く感じた。
「すまない」慌てて手を離してくれた。
「何かご用がありますか?「セルジオ様」でよろしかったですよね?」
「セルジオ様」はわたしの言葉に眉を顰めた。
「本当に記憶がないのですね?」
「申し訳ございません、でも……そこまで皆様はわたしの顔色を見ないといけないほどのことなのでしょうか?ここに居るとわたしは本当は居てはいけないのではと感じてしまいます」
「違う、ただ君が記憶をなくしているからみんな心配でたまらないんだ。俺だってずっと心配だった」
「セルジオ様」はそう言うと突然わたしを抱きしめた。驚いたわたしは彼を突き飛ばした。
「何をするのですか?」
「すまない、でもお願いだ、出て行くなんて言わないでくれ。もう俺の前から姿を消さないで。俺のことなんて忘れてもいい、嫌われてもいい、でも近くで見守らせて欲しい」
「忘れてもいいのに姿は消さないで?よくわからないわ」
この人の切なそうな顔にズキッと胸が痛んだ。
何故かずっと「セルジオ様」を見るたびにわたしの方が切なくなるのはどうしてなのかしら?
「俺は君が好きなんだ、君が記憶を取り戻す前はずっと君に片思いをしていたんだ」
「わたしを好きだった?覚えていないわ、ごめんなさい」
「いいんだ、無理に思い出さなくても……君に受け入れてほしいと思っていない。ただお願いだ、この屋敷から出て一人で暮らそうなんて考えないで欲しい。この屋敷が嫌なら王都の公爵家の屋敷に戻ることだって出来る、だから一人で勝手にいなくならないで」
「ごめんなさい、わたしの発言が「セルジオ様」達に嫌な思いをさせましたね。今すぐにと考えているわけではありません。何も思い出せない、「お母様」にお話は聞いていますがその話を自身のことだと受け入れたくても他人事でしかないのです。「ジェシカ」と言う人とわたしは別の人だと感じているのにみなさん「ジェシカ」としてしかみてくださらない。
わたしにとっては「お母様」も「セルジオ様」も、他人で知らない人なのです」
「そうか、君は「ジェシカ」なのではなくただのジェシカなんだね?」
ーー頑なにこの人達を受け入れたくない、イライラする感情。そうか無理矢理記憶がある頃の「ジェシカ」を今のわたしに求めてこられることが嫌だったのだ。
だってその頃の「ジェシカ」はとても良い子だったみたいだ。
今のわたしは何もない空っぽなのだ。良い子でもなければ何も覚えていない、わからないのに「ジェシカ」を押し付けてくる。
「今のわたしは何もないジェシカなんです。誰もそれをわかってはくれません」
わたしは思わず涙が溢れてきた。怖かったのだ、記憶のないわたしを誰も受け入れてくれない。
「ジェシカ」として振る舞わなければこの屋敷では生きていけない。でも出来ない、ならばこの屋敷から出て行くしかないと思った。
「ジェシカ、ゆっくりと新しい生活に慣れていこう。君は君の思うように過ごしていけばいい。そこに俺やそして……後ろに隠れているティムとまた新しい思い出を作っていこう」
「ティム?」
わたしが後ろを振り向くと
「ジェシカ、よろしく」
頭を掻きながら隠れているのがバレて照れているティム。
わたしに笑顔で話しかけてきた。
「ふふ、こちらこそティム、よろしく」
ここで意地を張らずに生きていけるかもしれない。まずは心配そうにしていた「お母様」に謝らなければ。
ずっと意地を張っていた、体が弱そうな人なのに心労をかけるなんて……
その後、離れのお母様の部屋へ行きわたしの失礼な態度を謝った。
「ジェシカごめんなさい、あなたは記憶がないのに無理矢理以前のジェシカに戻ってほしいと求めすぎたわ。あなたはジェシカだけど新しいジェシカなのよね?これからはあなたと良い関係を築いて行きたいわ。よろしくね?」
「ありがとうございます、我儘を言ってすみませんでした」
こうしてわたしは「ジェシカ」ではなくてわたしとして過ごすことになった。
わたしを優しく見つめる人達。
「皆様、初めまして。わたしは皆様のことを全く覚えておりません。ご迷惑をおかけすると思いますがこれからよろしくお願い致します」
緊張の中とりあえず挨拶をした。
座っていたのは「お父様の従兄弟でブルック・フォーダン伯爵」とその家族だった。
「ジェシカ、そこに座りなさい」
「フォーダン伯爵」がわたしに優しく声をかけてくれた。
「「フォーダン伯爵様」本日はご招待いただきありがとうございました」
わたしは一応挨拶をして席についた。
静かな夕食会だった。みんな話さず黙々と食べ続けた。
居た堪れなくてわたしは「申し訳ございません、体調がすぐれないので失礼いたしますね」と途中で席を立つことにした。
わたしがいるからみんな楽しく話すこともできないのだろう、途中で席を立つ失礼な行動も今の記憶のないわたしなら仕方がないと諦めてくれるだろう。
「待って、ジェシカ」
わたしが席を立つと「セルジオ様?」らしき人がわたしに話しかけてきた。
「はいなんでしょうか?」
名前を間違えてはいけないのでとりあえず名前は言わずに返事だけをした。
その時のこの人の顔はとても苦しそうにしていた。
わたしがいることがそんなに嫌なら声をかけなければいいのにと、思いながらも黙ってその先の言葉を待った。
「君は僕たちのことを覚えていないのか?」
「申し訳ございません、あなた達のことはもちろん、わたし自身が誰なのかどうしてここに住んでいるのかもよくわかっておりません、皆様がわたしを「ジェシカ」だと仰るのでここにいさせていただいております。
でも皆様がとてもわたしに気を遣っていらっしゃるみたいなのでわたしも早々にこの屋敷を出て仕事を探そうと思っております、ですので後少しだけこの屋敷に居させてください」
わたしはみんなに頭を下げてお願いした。
「………やめて」
「お母様」が悲しげな顔でわたしをみた。
部屋の中の空気は一気に重苦しい空気が流れる。
わたしは振り返らずにそのまま部屋を後にした。何故か苛立ちを抑えられない。
みんながわたしを気の毒そうに見る、壊れものでも扱うように。
その空気だけは感じる。
わたしは記憶をなくす前に何かがあったのだろうか?
わたしは誰?
いくら考えても頭の中に何も浮かばない。
ただこの屋敷にはもう居られないと言う焦燥感だけ。
早くここから去らないと、わたしは駄目になる。
何故かそれだけはわかる。
あの「セルジオ様」のわたしを見る目は優しそうにしているのに、わたしへの視線は何か怖いものでも見るように感じた。
わたしが離れの屋敷へと向かい中庭を歩いていた。
「ジェシカ!」
わたしの腕を掴んできたのは「セルジオ様」だった。
「あ、あの、手を離していただけませんか?」
あまりにも力の入った手がとても痛く感じた。
「すまない」慌てて手を離してくれた。
「何かご用がありますか?「セルジオ様」でよろしかったですよね?」
「セルジオ様」はわたしの言葉に眉を顰めた。
「本当に記憶がないのですね?」
「申し訳ございません、でも……そこまで皆様はわたしの顔色を見ないといけないほどのことなのでしょうか?ここに居るとわたしは本当は居てはいけないのではと感じてしまいます」
「違う、ただ君が記憶をなくしているからみんな心配でたまらないんだ。俺だってずっと心配だった」
「セルジオ様」はそう言うと突然わたしを抱きしめた。驚いたわたしは彼を突き飛ばした。
「何をするのですか?」
「すまない、でもお願いだ、出て行くなんて言わないでくれ。もう俺の前から姿を消さないで。俺のことなんて忘れてもいい、嫌われてもいい、でも近くで見守らせて欲しい」
「忘れてもいいのに姿は消さないで?よくわからないわ」
この人の切なそうな顔にズキッと胸が痛んだ。
何故かずっと「セルジオ様」を見るたびにわたしの方が切なくなるのはどうしてなのかしら?
「俺は君が好きなんだ、君が記憶を取り戻す前はずっと君に片思いをしていたんだ」
「わたしを好きだった?覚えていないわ、ごめんなさい」
「いいんだ、無理に思い出さなくても……君に受け入れてほしいと思っていない。ただお願いだ、この屋敷から出て一人で暮らそうなんて考えないで欲しい。この屋敷が嫌なら王都の公爵家の屋敷に戻ることだって出来る、だから一人で勝手にいなくならないで」
「ごめんなさい、わたしの発言が「セルジオ様」達に嫌な思いをさせましたね。今すぐにと考えているわけではありません。何も思い出せない、「お母様」にお話は聞いていますがその話を自身のことだと受け入れたくても他人事でしかないのです。「ジェシカ」と言う人とわたしは別の人だと感じているのにみなさん「ジェシカ」としてしかみてくださらない。
わたしにとっては「お母様」も「セルジオ様」も、他人で知らない人なのです」
「そうか、君は「ジェシカ」なのではなくただのジェシカなんだね?」
ーー頑なにこの人達を受け入れたくない、イライラする感情。そうか無理矢理記憶がある頃の「ジェシカ」を今のわたしに求めてこられることが嫌だったのだ。
だってその頃の「ジェシカ」はとても良い子だったみたいだ。
今のわたしは何もない空っぽなのだ。良い子でもなければ何も覚えていない、わからないのに「ジェシカ」を押し付けてくる。
「今のわたしは何もないジェシカなんです。誰もそれをわかってはくれません」
わたしは思わず涙が溢れてきた。怖かったのだ、記憶のないわたしを誰も受け入れてくれない。
「ジェシカ」として振る舞わなければこの屋敷では生きていけない。でも出来ない、ならばこの屋敷から出て行くしかないと思った。
「ジェシカ、ゆっくりと新しい生活に慣れていこう。君は君の思うように過ごしていけばいい。そこに俺やそして……後ろに隠れているティムとまた新しい思い出を作っていこう」
「ティム?」
わたしが後ろを振り向くと
「ジェシカ、よろしく」
頭を掻きながら隠れているのがバレて照れているティム。
わたしに笑顔で話しかけてきた。
「ふふ、こちらこそティム、よろしく」
ここで意地を張らずに生きていけるかもしれない。まずは心配そうにしていた「お母様」に謝らなければ。
ずっと意地を張っていた、体が弱そうな人なのに心労をかけるなんて……
その後、離れのお母様の部屋へ行きわたしの失礼な態度を謝った。
「ジェシカごめんなさい、あなたは記憶がないのに無理矢理以前のジェシカに戻ってほしいと求めすぎたわ。あなたはジェシカだけど新しいジェシカなのよね?これからはあなたと良い関係を築いて行きたいわ。よろしくね?」
「ありがとうございます、我儘を言ってすみませんでした」
こうしてわたしは「ジェシカ」ではなくてわたしとして過ごすことになった。
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