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第19話

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実家に戻るとすぐにライアンから手紙が来た。

一度会って話しをしたい……と。

わたしはもうあの屋敷に足を踏み入れる気にはなれなかった。

またルシア様がいるかも知れない。

そう思うと体が震えた。

そして、手紙が届いてから数日後、ライアン様がわたしに会いに来た。

こうして二人だけで顔をきちんと合わせて話すのは何年振りなのだろうか。

ルシア様とライアンが親しくなってからは、ほとんどなかった気がする。

彼の顔はこんなふうだったかしら?

少し疲れているような気がする。

わたしとの離縁の話が進まないからルシア様が苛立っているのかしら?

「ライアン、単刀直入に言うわ。離縁状にサインをお願い」

わたしは話し合いをするつもり。

でも離縁前提で。

「ミシェル、待ってくれ。先に話し合おう」

「もちろんよ、ライアン。貴方の言い訳を聞きたいのではなく離縁をするための話し合いをきちんとしたいの」

「離縁のための話し合い?」

「そうよ、わたしはウランの親権が欲しいの。貴方が浮気をしたからと言って慰謝料も養育費も要らないわ。わたしが欲しいのはウランだけなの」

「僕の話を聞いて欲しい。ルシアとは何もないんだ、学生の時から彼女を愛していたわけではない。

ルシアの父親の男爵は、プラード公爵に言われて侯爵領の鉱山に男爵の息のかかった者達が数十人紛れ込ませて横流しをされていたんだ。
普通ならそれを取り締まれば終わるんだが、我が侯爵家から送り出される鉱石は、品質の悪いものばかりになっていて、横流しした品質の良いものを男爵が闇のルートで売り捌いていたんだ。

そしてプラード公爵は、僕を男爵の娘の傀儡にしてルシアと結婚させて我が侯爵家を乗っ取るつもりだったらしい」

ライアンは思い出しながら語った。

「父上から言われたんだ」

「『裏で色々調べているんだが、そのルシアという子はとても可愛くて男の子達に人気があるらしい。転入して来たのもお前に色仕掛けで迫るつもりなんだ。だから色仕掛けにのって欲しいんだ』

『ミシェルを裏切るなんてできません』

『はっきり言う。別に体の関係にまで、なれとは言わない。だが惚れた振りをして欲しい。ミシェルの家にはこのことは話すつもりはない』

『話してはいけないのですか?』

僕はミシェルに誤解をされるのだけはどうしても嫌だった

『プラード公爵家が裏で操っているんだ。ミシェルの所のジョーカー侯爵家にまで害が及ぶかもしれない。関わらせるわけにはいかない。何も知らせなければ関わる事もない。最悪被害はうちだけで済む』」

ライアンの話はわたしが全く思ってもみない、知らないはなしだった。

「卒業パーティーも本当はミシェルをエスコートしたかった。
なのに父上から
『エスコートはルシアにしてくれないか』
と言われた。

『嫌です。もう大体証拠も集まったでしょう。僕はミシェルのそばにいたい。最後の学園の日に好きでもないルシアといたくはないです』

『あと少しなんだ。卒業パーティーに一緒に出るとなれば男爵だけではなく公爵も油断する、頼む』

僕はミシェルへドレスを贈る事も出来なかった。  
ミシェルに言い訳もできずに僕はルシアと過ごした。

『ねえ、ライアン。卒業パーティー楽しみだわ。ドレスは貴方の瞳の色に合わせて青色を選んだのよ』
僕はここらにもないことを言ってルシアと過ごしたんだ」

「そしてやっと彼女の家を断罪して公爵家の陰謀を阻止することが出来て君と結婚することが出来たんだ」

「どうして結婚後話してはくれなかったのですか?」

「話そうと何度も思った。でも……ルシアに一度も惹かれなかったなかともし君に問われれば、ないと言えなかった。
ルシアの可愛らしさに惹かれた時もあった。
お互い相手をたらし込もうとしていたのに、嘘のはずなのに惹かれたこともあった。
特にミシェルが僕にヤキモチを妬いてくれていると思うと、その優越感から彼女のそばにいることが増えた。彼女の明るさに惹かれていた。
でも君が生徒会メンバーといるのを見るたびに僕はルシアと仲良くしなければいけないのに、君の後を追いかけて君を行かせないように止めようと何度も追ってしまった。その度に君が殿下に慰められていて僕は嫉妬でさらにルシアと仲良くしてしまった」

「なんてひどいの……ライアン、貴方は残酷な人ね」

「僕はずるいんだ。学生の時ずっと君の気持ちを知っていて君の気持ちを確かめていた。
でも結婚式の時に君は僕に昔の笑顔を見せてくれることは無くなっていた。いや、結婚式すらしなくていいと拒まれたんだよね、形だけでもしたけど、君は幸せそうではなかった」

「だってルシア様と結婚したいのに、政略で無理矢理わたしと結婚させられたのだからライアンはわたしを愛していないと思っていたの、わたしを憎んで嫌っていると」

「違う、でも君に今更本当のことも言えず本当の気持ちも話せなかった。僕はずるいし臆病過ぎた」








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