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第20話

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「でも貴方はルシア様と結婚してからも会っていたのでしょう?
何度か噂で聞いたわ、それに抱き合ってキスしていた、わたしの目の前で」

「違う!ルシアが勝手に僕に会いに来ていた。君が出て行ったことを聞いて自分とまた元の関係に戻りたいと言ってきたんだ。もちろん断った、その時、きみの父上も同席してもらったんだ。二人っきりで会って根も葉もないことを言われたくなかったからね、ルシアは義父上が使用人に変装していたんだけど暴言を吐いて暴力を振るおうとしたんだ、そして捕まってもう二度と関わることはないと思っていた。

なのにまたこの前屋敷に現れて今度は僕の子供がお腹にいるから三人で暮らそうと言い出したんだ。
もちろん彼女が捕まった日から会ってなどいないし僕の子どもでは断じてない。でも玄関先で追い返そうとしたら、ルシアがフラフラとして倒れそうになったんだ。妊婦の彼女を放って置けなくて客間に通した。

そしたら、ルシアは僕に抱きついてきた。
振り払おうにも彼女は身籠っている。
無理矢理振り払い乱暴にするわけにはいかない。
ルシアは僕に顔を近づけてキスをしようとした。

その時、扉のコトッという音が聞こえてきた。ルシアは扉の方を見ながらニヤッと笑いながら僕に口付けた。

『あら!嫌だわ、奥様が見ているわよライアン』
ニヤッと笑ってミシェルを嘲笑うかのように見た。
『離れてくれ!違うんだ、ミシェル!』
君が去っていくと、そのあとルシアは頭がおかしくなったように笑い続けた。
僕はルシアを通報して騎士団に引き渡した」

わたしはライアンの話しをずっと聞いて、彼に聞き返した。

「で、貴方の言い訳は終わったのね?満足したかしら?こちらにサインしてちょうだい」

「言い訳ではない、真実だ。君を今もずっと愛しているんだ、浮気なんてしていない」

「ふふふふふ、目の前でキスをしていたわ」

「あれは無理やりされただけで僕がしたわけではない」

「でもキスをしたのは真実よ、貴方がルシア様とずっと仲良くしていたのも真実。

それでも貴方を愛して結婚したのもわたしの気持ちだった。
でもね、もう疲れたの。貴方はわたしを抱く時以外わたしを見ることはなかった。会いにも来てくれなかった。ウランが生まれる前も生まれても会いに来ようとしなかった。
もう終わったの貴方への愛は」

「君に会いに行こうとした、義父上に止められたんだ。会いに行った時には君はもう王都に戻ってきていてすれ違っていたんだ」

「お父様に止められていた?」

「手紙も何度も送ったけど全て義父上に捨てられていた。ウランへのプレゼントは全て送り返されてしまった」

え?ライアンはわたしを見捨てていたのではないの?
ずっともうわたしのことなどなんとも思っていないと思っていた。
子どものことも興味がないのだと感じていた。
今はただ離縁したくないから言い訳しているんだと思っていた。

「お父様はほんとに不器用な愛情しか私にくださらないのね」
わたしは苦笑いをするしかなかった。

お父様の愛情は分かりにくくてさらにそれはわたしを逆に傷つけている。

わたしがライアンを好きだから、政略結婚だと思わせて結婚させた。
ライアンからの手紙もプレゼントも無視。
それは傷付いたわたしにライアンを近づけさせないためらしい。
ルシア様との対面も態々使用人の格好をして会うなんて……

「ライアン、ごめんなさい。お父様ってどうしてこんなに不器用で分かりにくいのかしら?
お父様なりにわたしを愛してくれたのね」

「いやあの人は僕の邪魔ばかりして君と引き離そうとしていたんだ」


すると……


「当たり前ではないか、ミシェルが幸せでないならライアン君は要らない」

突然部屋に入ってきてお父様はわたしの肩を抱き、ライアンを睨んだ。

「君は間違いだらけだ。ルシア嬢のことは多少は仕方がないかも知れないが、ミシェルに謝罪しきちんと説明をするべきだった。その後も関係を改善することなく拗らせてミシェルは一人でウランを産んだんだ」

「ミシェルを追いかけたのに邪魔したのは貴方でしょう?」

「前も言っただろう。それでも気持ちがあれば必死でなんとかしようとするはずだと、なんとかしようとしなかったのはライアン君だ。諦めてさっさとサインして出て行け。
慰謝料も養育費も要らないよ、うちには二人を養うだけの余裕はいくらでもあるからね。
君はあの牢に入った誰の子かわからない子どもと女と幸せに暮らせばいい」

「嫌です!サインはしません、僕はずっとずっとミシェルを愛しています。
間違いだらけの僕だけどミシェルを愛していることだけは間違っていません。
愛しているんです」





◆ ◆ ◆


【お父様、愛よりお金です  ~わたしは噂の男爵令嬢です~】19日より始まります。

もしよければ読んでみてくださいね、宜しくお願いします



          たろ




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