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22話。 ロード編 ①
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何度ダリアの働く屋敷に顔を出したかわからない。
『ダリアちゃんが会いたくないと言ってるの』
『仕事中だから今は会えない』
『もう来ないでやって欲しい』
全て屋敷の使用人達から言われた言葉。
俺は仕方なく諦めて帰った。
一度屋敷の前でダリアを捕まえた。やっと会えたのに……
あの日からまともに会えないでいた。
『わたし………今日は忙しいの。話はまた今度じゃだめかな?』
『さっきまで出かけていたんだろう?』
ジャックと会っていたのを知っているのにその事は言えなかった。
『あっ………うん、でもこれからやることがあって……』
『やること?』
『うん、プレゼントを……あっ、うん、ごめん、本当に時間がないの……話はまた今度にして欲しい。ロードが話したいことはなんとなくわかってるからちゃんと心構えは出来てるから心配しないで!でも今日だけは無理なの』
多分、カリナのことだとわかっていた。だから話したかった。全ては話せなくても『信じて欲しい』とだけでも伝えたかったのに。
『くそっ、なんでダリアはジャックと一緒に出かけてるんだ?俺の話をなんで聞いてくれないんだよ?』
ダリアの背中に向かって言った言葉。
俺の言葉はダリアの耳には届かなかった。
それなのに……なんであんなところで会わないといけないんだ。
やっと会えたのに……
『あっ………幼馴染なんだ』
その言葉にダリアは笑って答えた。
ずっと一緒に育ったんだ。あいつが傷ついているのに無理して笑ってることもわかってる。
「ロード、またね」と手を振って去って行った。
ちくしょう、なんでこんなタイミングで……
カリナにダリアのことを悟られたらいけない。これは仕事なんだ。
だけど、ダリアを傷つけてまでこんな仕事をしないといけないのか?
好きでもない女の送り迎えに、くだらない話に相槌をしながら愛想笑い……こんなの苦痛でしかない。
ジャックはそんな俺の心境をわかっていてダリアに接近した。それも許せない。
俺の初恋はダリアだ。ずっとダリアの隣は俺の場所なのに……
ダリアは周りから地味だとか大人しいとか言われているけど、本当は芯をしっかり持った優しい女の子。
周りに気を遣い過ぎるくらい遣う。困っている人を放っておけない。鈍臭いくせに一生懸命で笑った顔が……可愛すぎる。
ダリアのいいところは俺だけしか知らなくていい。
そう思っていたのに、子爵家で働き出して何度も告白されたと聞いた時はかなり焦った。
それに飲み会の時に偶然ダリア達に会った時、先輩達が酒の勢いでダリアに絡んだ。
ダリアが大人しいのをいいことに言いたい放題。このままでは誰かが無理やり持ち帰ってしまう。俺は焦ってダリアに……告白した。
なのにダリアは勘違いして(偽)(仮)だと思い込んだ。
俺が酔っ払ってるからだと思ってる。
ーーなんで本気で恋人として受け取ってもらえないんだ!
そう思ったくせにダリアに対してヘタレな俺は………
『違う!思ったんだ。お前にちゃんと好きな人ができるまで俺が虫除けになってやる!俺もいい加減うんざりしてたんだ。女達が仕事してても話しかけてくるし、仕事の邪魔でしかない』
『えっ?それって、恋人のフリ??』
『………うん、まぁ、そう言うことかな………………お前を放っておくと、いつ他の男に取られるか気が気じゃないしな』
俺は小さな声でボソボソと呟いた。
片思いが長過ぎた俺はダリアに『好きだ』と言えずにいた。
母さんから『あんた、素直にならなきゃダリアを他の子に取られるよ』といつも言われていたけど……やっぱり言えない俺は『ほんとヘタレ』だと思う。
ーーーーー
今日から新しい話を始めました。
【さよならのかわりに】
とても悲しい話になりますが、最後は『愛』を知ることができる令嬢の話です。
もしよろしければ読んでみてくださいね。
『ダリアちゃんが会いたくないと言ってるの』
『仕事中だから今は会えない』
『もう来ないでやって欲しい』
全て屋敷の使用人達から言われた言葉。
俺は仕方なく諦めて帰った。
一度屋敷の前でダリアを捕まえた。やっと会えたのに……
あの日からまともに会えないでいた。
『わたし………今日は忙しいの。話はまた今度じゃだめかな?』
『さっきまで出かけていたんだろう?』
ジャックと会っていたのを知っているのにその事は言えなかった。
『あっ………うん、でもこれからやることがあって……』
『やること?』
『うん、プレゼントを……あっ、うん、ごめん、本当に時間がないの……話はまた今度にして欲しい。ロードが話したいことはなんとなくわかってるからちゃんと心構えは出来てるから心配しないで!でも今日だけは無理なの』
多分、カリナのことだとわかっていた。だから話したかった。全ては話せなくても『信じて欲しい』とだけでも伝えたかったのに。
『くそっ、なんでダリアはジャックと一緒に出かけてるんだ?俺の話をなんで聞いてくれないんだよ?』
ダリアの背中に向かって言った言葉。
俺の言葉はダリアの耳には届かなかった。
それなのに……なんであんなところで会わないといけないんだ。
やっと会えたのに……
『あっ………幼馴染なんだ』
その言葉にダリアは笑って答えた。
ずっと一緒に育ったんだ。あいつが傷ついているのに無理して笑ってることもわかってる。
「ロード、またね」と手を振って去って行った。
ちくしょう、なんでこんなタイミングで……
カリナにダリアのことを悟られたらいけない。これは仕事なんだ。
だけど、ダリアを傷つけてまでこんな仕事をしないといけないのか?
好きでもない女の送り迎えに、くだらない話に相槌をしながら愛想笑い……こんなの苦痛でしかない。
ジャックはそんな俺の心境をわかっていてダリアに接近した。それも許せない。
俺の初恋はダリアだ。ずっとダリアの隣は俺の場所なのに……
ダリアは周りから地味だとか大人しいとか言われているけど、本当は芯をしっかり持った優しい女の子。
周りに気を遣い過ぎるくらい遣う。困っている人を放っておけない。鈍臭いくせに一生懸命で笑った顔が……可愛すぎる。
ダリアのいいところは俺だけしか知らなくていい。
そう思っていたのに、子爵家で働き出して何度も告白されたと聞いた時はかなり焦った。
それに飲み会の時に偶然ダリア達に会った時、先輩達が酒の勢いでダリアに絡んだ。
ダリアが大人しいのをいいことに言いたい放題。このままでは誰かが無理やり持ち帰ってしまう。俺は焦ってダリアに……告白した。
なのにダリアは勘違いして(偽)(仮)だと思い込んだ。
俺が酔っ払ってるからだと思ってる。
ーーなんで本気で恋人として受け取ってもらえないんだ!
そう思ったくせにダリアに対してヘタレな俺は………
『違う!思ったんだ。お前にちゃんと好きな人ができるまで俺が虫除けになってやる!俺もいい加減うんざりしてたんだ。女達が仕事してても話しかけてくるし、仕事の邪魔でしかない』
『えっ?それって、恋人のフリ??』
『………うん、まぁ、そう言うことかな………………お前を放っておくと、いつ他の男に取られるか気が気じゃないしな』
俺は小さな声でボソボソと呟いた。
片思いが長過ぎた俺はダリアに『好きだ』と言えずにいた。
母さんから『あんた、素直にならなきゃダリアを他の子に取られるよ』といつも言われていたけど……やっぱり言えない俺は『ほんとヘタレ』だと思う。
ーーーーー
今日から新しい話を始めました。
【さよならのかわりに】
とても悲しい話になりますが、最後は『愛』を知ることができる令嬢の話です。
もしよろしければ読んでみてくださいね。
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