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30話。
乗り合い馬車を乗り継ぎ村に帰ってきた。
畑で仕事をしていた大好きなおばあちゃんの姿を見つけると、鞄を放り投げておばあちゃんの元へ走り出した。
「おばあちゃん、ただいま!」
おばあちゃんは突然の帰宅に驚いた。
「ダリア!どうしたの?仕事をクビになったのかい?」
「ひどい!違うわ。少し長いお休みをいただいたの!それとおばあちゃんに報告があって帰ってきたの!」
「報告?結婚するのかい?ロードと?」
「………それは……ないけど」
思わず顔を顰めてしまった。だけどすぐに笑顔で「嬉しい知らせがあるの!わたしも畑仕事手伝う!さっさと終わらせようよ」
そう言って着ていた上着を脱いで鞄の上に放り投げた。腕まくりして「さあ、しよう」とおばあちゃんに笑って見せた。
「そんな可愛いワンピースを着ているのに汚れたらどうするの?そこにある野菜だけカゴに入れてちょうだい。残りの仕事は明日するから早く家に帰りましょう」
呆れたおばあちゃんがそう言って、水桶で手を綺麗に洗い出した。
わたしは急いで野菜をカゴに入れた。
今夜の料理をするための野菜を採りにきていたみたい。
持っていた鍬を肩に、カゴを背中に担いでおばあちゃんはスタスタと歩き出した。
まだまだ元気なおばあちゃんの姿にホッとした。
わたしも急いで鞄と上着を取ると、おばあちゃんの後を追いかけた。
「ダリア、なんだか今日はいつもより元気だね。いいことがあったのかい?」
「うん、とっても」
ーー本当はいいことより悪いことの方が多かったけど、おばあちゃんの顔見たらいい事しか思い出せない。
ニコニコしながら二人で歩く。久しぶりのこの時間。村を出るまでは毎日のようにおばあちゃんと二人でこの道を歩いた。
家から畑までのほんの少しの道だけど二人で話しながら歩くのが大好きだった。
家に着くとすぐに荷物を部屋に置いておばあちゃんと夕食の準備を始めた。
「おばあちゃんお土産に街で流行りのお菓子を買ってきたから後で食べようね。あ、ロードのところのおばちゃんにも渡しておいて」
たくさんお世話になったおばちゃんにいつもお土産を買って持って行くのが恒例だけど……今回は自分で持って行きにくい。
だからおばあちゃんに頼もうとしたら「自分で持って行きなさい。元気な顔を見せてやりなさい。いつもダリアのことを心配してるんだから」と言われてしまった。
おばちゃんの家はお金持ち。我が家の家とは大きさも違うし使用人もいる。
街のお菓子を持って行かなくても簡単に手に入る。だけど今までは元気な姿を見せに行くからと持って行っていた。だけどロードと付き合い出して一度もこの村に帰ってきていなかった。今では音信不通。
そんな状態でおばちゃんにどんな顔をしたらいいのか……たぶんおばちゃんはロードと付き合っていると思っていると思う。
(偽)なんて思っていないだろう。それすらうまくいっていなくて、話すことも会うこともないのに……
ーー気が重い……おばちゃんに何か言われた時どう返事をすればいいんだろう。
その日の夜はおばあちゃんと二人でたくさん話をしたら、絵本のことは忘れていた。だって絵本のことなんかよりおばあちゃんの元気な姿を見れたことの方が嬉しかったんだもの。
それにわたしのことよりおばあちゃんが話してくれる毎日の出来事を聞いてあげる方が大事だもの。
次の日の朝、おばあちゃんに「さっさとお土産を持って行きなさい」と言われて追い出された。
お菓子なので日持ちしない。わかってる。わかってる。
近所なので少し歩けば着いてしまう。
門をくぐり、顔見知りの使用人さん達に挨拶をして「おばちゃんはいますか?」と聞いた。
「ダリアちゃん、久しぶりだね。奥様ならいらっしゃるよ」
すぐに家の中に案内された。
するとおばちゃんではなく……
「ダリア、久しぶり!」
「あっ……お久しぶりです、ディーン様」
「ディーン様はよしてくれ。以前のようにディーンとはもう呼んでくれないのか?」
「あの頃は何も考えずに呼んでいましたが、貴方は貴族です。そんな失礼なことはできません」
「ハアー、大人になるって寂しいね」
ロードによく似たディーン様は男爵家の次男でおばちゃんのお姉さんの息子。
ロードの従兄弟で、子供の頃は年に数回この村に遊びにきていた。その度にロードとわたしとディーン様は一緒に遊んでいた。でもディーン様が貴族の息子だと知ってからは、わたしは遊ばなくなった。
貧しい親のいない村娘が貴族令息と仲良くするなんて烏滸がましい。
だからディーン様が村に遊びにきている時は避けるようになった。ロードもそれに気がついても何も言わなかった。
ロードは従兄弟だからいいけど、わたしはただの村娘。心ない人はそのことでおばあちゃんに酷いことを言った。
『あんたの孫は金持ちの坊っちゃまにあんな態度をとって!まともな教育もできていないのか』
『あんな見すぼらしい娘を貴族様の息子さんに近づけるなんて恥ずかしいことはやめろ』
たまたまおばあちゃんが注意されているところを見てしまったわたしはおばあちゃんに泣きながら言った。
『ごめんなさい、もうディーン…様とは遊ばないから。酷いこと言われてごめんね』
おばあちゃんは『お前が気にすることじゃない』そう言ってくれたけど、わたしは会うことを避け続けた。
なのに目の前にディーン様が現れた。
ーーなんでわたしに話しかけるの?
畑で仕事をしていた大好きなおばあちゃんの姿を見つけると、鞄を放り投げておばあちゃんの元へ走り出した。
「おばあちゃん、ただいま!」
おばあちゃんは突然の帰宅に驚いた。
「ダリア!どうしたの?仕事をクビになったのかい?」
「ひどい!違うわ。少し長いお休みをいただいたの!それとおばあちゃんに報告があって帰ってきたの!」
「報告?結婚するのかい?ロードと?」
「………それは……ないけど」
思わず顔を顰めてしまった。だけどすぐに笑顔で「嬉しい知らせがあるの!わたしも畑仕事手伝う!さっさと終わらせようよ」
そう言って着ていた上着を脱いで鞄の上に放り投げた。腕まくりして「さあ、しよう」とおばあちゃんに笑って見せた。
「そんな可愛いワンピースを着ているのに汚れたらどうするの?そこにある野菜だけカゴに入れてちょうだい。残りの仕事は明日するから早く家に帰りましょう」
呆れたおばあちゃんがそう言って、水桶で手を綺麗に洗い出した。
わたしは急いで野菜をカゴに入れた。
今夜の料理をするための野菜を採りにきていたみたい。
持っていた鍬を肩に、カゴを背中に担いでおばあちゃんはスタスタと歩き出した。
まだまだ元気なおばあちゃんの姿にホッとした。
わたしも急いで鞄と上着を取ると、おばあちゃんの後を追いかけた。
「ダリア、なんだか今日はいつもより元気だね。いいことがあったのかい?」
「うん、とっても」
ーー本当はいいことより悪いことの方が多かったけど、おばあちゃんの顔見たらいい事しか思い出せない。
ニコニコしながら二人で歩く。久しぶりのこの時間。村を出るまでは毎日のようにおばあちゃんと二人でこの道を歩いた。
家から畑までのほんの少しの道だけど二人で話しながら歩くのが大好きだった。
家に着くとすぐに荷物を部屋に置いておばあちゃんと夕食の準備を始めた。
「おばあちゃんお土産に街で流行りのお菓子を買ってきたから後で食べようね。あ、ロードのところのおばちゃんにも渡しておいて」
たくさんお世話になったおばちゃんにいつもお土産を買って持って行くのが恒例だけど……今回は自分で持って行きにくい。
だからおばあちゃんに頼もうとしたら「自分で持って行きなさい。元気な顔を見せてやりなさい。いつもダリアのことを心配してるんだから」と言われてしまった。
おばちゃんの家はお金持ち。我が家の家とは大きさも違うし使用人もいる。
街のお菓子を持って行かなくても簡単に手に入る。だけど今までは元気な姿を見せに行くからと持って行っていた。だけどロードと付き合い出して一度もこの村に帰ってきていなかった。今では音信不通。
そんな状態でおばちゃんにどんな顔をしたらいいのか……たぶんおばちゃんはロードと付き合っていると思っていると思う。
(偽)なんて思っていないだろう。それすらうまくいっていなくて、話すことも会うこともないのに……
ーー気が重い……おばちゃんに何か言われた時どう返事をすればいいんだろう。
その日の夜はおばあちゃんと二人でたくさん話をしたら、絵本のことは忘れていた。だって絵本のことなんかよりおばあちゃんの元気な姿を見れたことの方が嬉しかったんだもの。
それにわたしのことよりおばあちゃんが話してくれる毎日の出来事を聞いてあげる方が大事だもの。
次の日の朝、おばあちゃんに「さっさとお土産を持って行きなさい」と言われて追い出された。
お菓子なので日持ちしない。わかってる。わかってる。
近所なので少し歩けば着いてしまう。
門をくぐり、顔見知りの使用人さん達に挨拶をして「おばちゃんはいますか?」と聞いた。
「ダリアちゃん、久しぶりだね。奥様ならいらっしゃるよ」
すぐに家の中に案内された。
するとおばちゃんではなく……
「ダリア、久しぶり!」
「あっ……お久しぶりです、ディーン様」
「ディーン様はよしてくれ。以前のようにディーンとはもう呼んでくれないのか?」
「あの頃は何も考えずに呼んでいましたが、貴方は貴族です。そんな失礼なことはできません」
「ハアー、大人になるって寂しいね」
ロードによく似たディーン様は男爵家の次男でおばちゃんのお姉さんの息子。
ロードの従兄弟で、子供の頃は年に数回この村に遊びにきていた。その度にロードとわたしとディーン様は一緒に遊んでいた。でもディーン様が貴族の息子だと知ってからは、わたしは遊ばなくなった。
貧しい親のいない村娘が貴族令息と仲良くするなんて烏滸がましい。
だからディーン様が村に遊びにきている時は避けるようになった。ロードもそれに気がついても何も言わなかった。
ロードは従兄弟だからいいけど、わたしはただの村娘。心ない人はそのことでおばあちゃんに酷いことを言った。
『あんたの孫は金持ちの坊っちゃまにあんな態度をとって!まともな教育もできていないのか』
『あんな見すぼらしい娘を貴族様の息子さんに近づけるなんて恥ずかしいことはやめろ』
たまたまおばあちゃんが注意されているところを見てしまったわたしはおばあちゃんに泣きながら言った。
『ごめんなさい、もうディーン…様とは遊ばないから。酷いこと言われてごめんね』
おばあちゃんは『お前が気にすることじゃない』そう言ってくれたけど、わたしは会うことを避け続けた。
なのに目の前にディーン様が現れた。
ーーなんでわたしに話しかけるの?
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