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59話。 最終話 ②
ロードにも旦那様にも返事が出来ず、時間は過ぎていく。
ロードは騎士団の仕事はもう辞めたらしい。太陽の家の引き継ぎを終えたらもうすぐこの街から出ていく。
ロードとは村に帰ればいつでも会える。
ただこの街で、どんなに彼の姿を探してももう見つけることはできなくなる。
ロードと村に帰れば、大好きな坊っちゃまと会えなくなる。絵本作家としての仕事も打ち合わせなど考えれば難しい。
旦那様のことは……あれからきちんとプロポーズをされた。
『ダリア、僕は君を愛している。結婚して欲しい』
坊っちゃまの母親になるためではなく、旦那様の妻としてプロポーズされていた。
驚いた顔をしていると『もしかしたら伝わっていないと思ったけど、やっぱり僕の気持ちは全く伝わっていなかったんだね』と言われた。
まだ、二人と共に太陽の家の仕事をしている。
ロードは引き継ぎのため、旦那様は打ち合わせ、わたしは子供達に勉強を教えていた。
二人がある貴族の家から寄付として小麦をもらうことになり馬車に乗り取りに行くことになった。
わたしはチラッと目をやり、二人の後ろ姿を見送った。そしてそのまま、また子供達に視線を戻して勉強を教えた。
勉強を教えていると、外が騒がしくなった。
「事故の知らせが入った!荷物を取りに行った馬車が事故を起こしたらしい!」
教室の中がざわついた。
子供達に「大丈夫だから」と、落ち着くように諭した。
心の中はドキドキが止まらない。二人は大丈夫なの?事故はどうなっているのかしら?
本当はすぐにでも駆け出したかった。
子供達がいなければ、走って会いに行っていたかもしれない。
なんとか子供達にいつも通り勉強を教え終わると、教室を出て急いで事務室へと向かった。
「あ、あの……馬車の事故はどうなりました?二人は…?」
「今二人とも病院へ運ばれたそうです。幸い命には別状はなかったようですが……どんな状況かはまだ報告がないので……」
「わたし……病院へ行ってきます」
走った。
ただ走った。
死んではいない。よかった……
二人とも無事だった。
「お帰りなさい」
夫が帰宅すると急いで彼のもとへ。
「ダリア!慌ててどうした?」
「ユリアが本を読んで欲しいと言って起きて待ってるの。お父様がいいって聞かないの」
「わかったよ、すぐに着替えて部屋へ行くよ」
彼はそう言うとわたしの頬に優しいキスを落とした。
「おとうちゃま!おかえりぃ」
夫が部屋に入っていくと、目をキラキラさせて両手を差し出すユリア。
ギュッと抱っこされると夫に頬擦りをする。
「うちのお姫様は、まだ起きていたのかい?お母様に我儘を言ったら駄目だろう?」
「だって……おとうちゃまに……あいたかったんだもん」
「お父様もユリアに会いたかった。だから急いで仕事を終わらせて帰ってきたんだ」
あの事故の時、わたしは病室へ駆け込むとすぐに彼の病室へ向かっていた。
「よかった………」
旦那様とロード。二人は別々の部屋で怪我の処置をしてもらっていた。
わたしが先に会いに行ったのは……
旦那様だった。
ずっと坊っちゃまと共にそばに居て寄り添ってくれた旦那様。わたしはずっと気がつかなかった。旦那様の存在がいつの間にかこんなに大きくなっていたことに……
彼の『愛している』の言葉がどれだけ嬉しかったか……坊っちゃまの母親ではなく妻として求められていたことに……
ロードとは幼馴染の関係に戻った。
『なんとなくわかってたんだ……ダリアは気がつけばバルス子爵を見ていたもんな……』
ーーそれは無意識だと思う。
『ごめんなさい。ロードのことをずっと好きだった……だけど……カリナさんと二人でいる姿がどうしても忘れられないの。どんなに信じようと思っても、あの時の気持ちを思い出すと駄目なの』
『一度失った信用は簡単には消せないよな……』
『ごめん……』
『幸せになって……』
『うん……ありがとう……』
「母様!僕がユリアに絵本を読んであげるよ」
「リオン、ありがとう。リオンが久しぶりに屋敷に帰ってきてくれて嬉しいわ」
リオンは10歳から寄宿舎に入って騎士学校に通っている。たまに屋敷に帰って来るお兄ちゃんを心待ちにしているユリア。
お兄ちゃんが大好きなユリアは「おにいちゃまはいつかえってくるの?」と言って楽しみに待っている。
坊っちゃまからリオンと呼び方が変わって、わたしは坊っちゃまの母になった。
下ばかり向いて自信がなかったわたし。だけど、坊っちゃまのおかげで少し強くなれた。
旦那様がたくさんの愛を注いでくれたおかげで、下を向かず前を向いて歩くことができた。
わたしは今、子爵夫人として、二人の母として、絵本作家として、太陽の家の代表として忙しい日々を送っている。
愛する家族と共に。
終。
読んでいただきありがとうございました。
そっと元鞘タグ外しました。
いろんなご意見があると思います。書いていて作者的にダリアの気持ちがロードへ向かわなくなっていきました。
無理やりロードとくっつけることが出来ませんでした。
なので、元鞘だと思われた方達にお詫び申し上げます。すみませんでした。
ロードは騎士団の仕事はもう辞めたらしい。太陽の家の引き継ぎを終えたらもうすぐこの街から出ていく。
ロードとは村に帰ればいつでも会える。
ただこの街で、どんなに彼の姿を探してももう見つけることはできなくなる。
ロードと村に帰れば、大好きな坊っちゃまと会えなくなる。絵本作家としての仕事も打ち合わせなど考えれば難しい。
旦那様のことは……あれからきちんとプロポーズをされた。
『ダリア、僕は君を愛している。結婚して欲しい』
坊っちゃまの母親になるためではなく、旦那様の妻としてプロポーズされていた。
驚いた顔をしていると『もしかしたら伝わっていないと思ったけど、やっぱり僕の気持ちは全く伝わっていなかったんだね』と言われた。
まだ、二人と共に太陽の家の仕事をしている。
ロードは引き継ぎのため、旦那様は打ち合わせ、わたしは子供達に勉強を教えていた。
二人がある貴族の家から寄付として小麦をもらうことになり馬車に乗り取りに行くことになった。
わたしはチラッと目をやり、二人の後ろ姿を見送った。そしてそのまま、また子供達に視線を戻して勉強を教えた。
勉強を教えていると、外が騒がしくなった。
「事故の知らせが入った!荷物を取りに行った馬車が事故を起こしたらしい!」
教室の中がざわついた。
子供達に「大丈夫だから」と、落ち着くように諭した。
心の中はドキドキが止まらない。二人は大丈夫なの?事故はどうなっているのかしら?
本当はすぐにでも駆け出したかった。
子供達がいなければ、走って会いに行っていたかもしれない。
なんとか子供達にいつも通り勉強を教え終わると、教室を出て急いで事務室へと向かった。
「あ、あの……馬車の事故はどうなりました?二人は…?」
「今二人とも病院へ運ばれたそうです。幸い命には別状はなかったようですが……どんな状況かはまだ報告がないので……」
「わたし……病院へ行ってきます」
走った。
ただ走った。
死んではいない。よかった……
二人とも無事だった。
「お帰りなさい」
夫が帰宅すると急いで彼のもとへ。
「ダリア!慌ててどうした?」
「ユリアが本を読んで欲しいと言って起きて待ってるの。お父様がいいって聞かないの」
「わかったよ、すぐに着替えて部屋へ行くよ」
彼はそう言うとわたしの頬に優しいキスを落とした。
「おとうちゃま!おかえりぃ」
夫が部屋に入っていくと、目をキラキラさせて両手を差し出すユリア。
ギュッと抱っこされると夫に頬擦りをする。
「うちのお姫様は、まだ起きていたのかい?お母様に我儘を言ったら駄目だろう?」
「だって……おとうちゃまに……あいたかったんだもん」
「お父様もユリアに会いたかった。だから急いで仕事を終わらせて帰ってきたんだ」
あの事故の時、わたしは病室へ駆け込むとすぐに彼の病室へ向かっていた。
「よかった………」
旦那様とロード。二人は別々の部屋で怪我の処置をしてもらっていた。
わたしが先に会いに行ったのは……
旦那様だった。
ずっと坊っちゃまと共にそばに居て寄り添ってくれた旦那様。わたしはずっと気がつかなかった。旦那様の存在がいつの間にかこんなに大きくなっていたことに……
彼の『愛している』の言葉がどれだけ嬉しかったか……坊っちゃまの母親ではなく妻として求められていたことに……
ロードとは幼馴染の関係に戻った。
『なんとなくわかってたんだ……ダリアは気がつけばバルス子爵を見ていたもんな……』
ーーそれは無意識だと思う。
『ごめんなさい。ロードのことをずっと好きだった……だけど……カリナさんと二人でいる姿がどうしても忘れられないの。どんなに信じようと思っても、あの時の気持ちを思い出すと駄目なの』
『一度失った信用は簡単には消せないよな……』
『ごめん……』
『幸せになって……』
『うん……ありがとう……』
「母様!僕がユリアに絵本を読んであげるよ」
「リオン、ありがとう。リオンが久しぶりに屋敷に帰ってきてくれて嬉しいわ」
リオンは10歳から寄宿舎に入って騎士学校に通っている。たまに屋敷に帰って来るお兄ちゃんを心待ちにしているユリア。
お兄ちゃんが大好きなユリアは「おにいちゃまはいつかえってくるの?」と言って楽しみに待っている。
坊っちゃまからリオンと呼び方が変わって、わたしは坊っちゃまの母になった。
下ばかり向いて自信がなかったわたし。だけど、坊っちゃまのおかげで少し強くなれた。
旦那様がたくさんの愛を注いでくれたおかげで、下を向かず前を向いて歩くことができた。
わたしは今、子爵夫人として、二人の母として、絵本作家として、太陽の家の代表として忙しい日々を送っている。
愛する家族と共に。
終。
読んでいただきありがとうございました。
そっと元鞘タグ外しました。
いろんなご意見があると思います。書いていて作者的にダリアの気持ちがロードへ向かわなくなっていきました。
無理やりロードとくっつけることが出来ませんでした。
なので、元鞘だと思われた方達にお詫び申し上げます。すみませんでした。
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