【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

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番外編   ラフェ⑥

 ◇ ◇ ◇  ラフェ

「ひどいことばかり言ってごめんなさい」

 エドワードにまず謝罪した。
 言いたいだけ言って謝罪するなんて狡いのはわかってた。だけど、どうしても彼の顔を見たら言わずにいられなかった。
 わたし自身が辛かったことなんてどうでもよかった。だけど、自分の息子のアルバードに対して自分は関係ないと切り捨てたことがどうしても許せなかった。

 だけどもう14年以上も経ってしまえば、わたしが吐き出した言葉は後悔でしかなかった。

 言わなければよかった。言ってよかった。

 ーーーどちらも自分の中にある気持ち。

「エドワード……お願いがあります。もし、アルバードが貴方に会いたいと思ったら会って貰えないでしょうか?
 ずっと悩んでいました。わたしが貴方に会おうとしなかった。会おうと思えば会うことはできたはずなのに……アルバードの大切な世界をひとつ奪ったのはわたしです。アルバードの父親という大切な人をわたしの意地で会わせてあげることが出来なかった……」

「息子に会ってもいいのか?」

「はい、アルバードが貴方に会いたいと言ったら会って欲しい。わたしの我儘で息子を振り回しました。あの子はとても優しい子です。周りの人のことばかり気にして自分のことは我慢してしまいます。
 今回王都の学校に行きたいと言った時、やっとあの子が自分の意思で行動したのだと思いました。わたしは……あの子の可能性を潰してしまう悪い母です。あの子は貴方に似てとても優秀です。あの子は貴方に似てとても優しい子なんです。
 わたしなんかに似なくてよかった……貴方に似たからいい子に育ったんです……ごめんなさい……貴方を責めて……わかってるんです……仕方がなかったって……なのに……あの頃のことを思い出すと意地悪になってしまいました。
 どうか父親としてあの子に会ってあげてください。お願いします」

 ーーーやっと素直に言えた。ずっとずっと気になっていたのに、出来なかったこと。

 エドワードに会って父親としてアルバードに会って欲しいと頼む。ずっと頭の中では考えていたのに。

 エドワードから会いに来れるわけがないのをわかっていて無視し続けた。

「ラフェ………俺こそごめん。記憶をなくしても必死で自分の過去を探せばよかった。なのに諦めて新しい人生を選んだ。苦労をかけてごめん」

「お互い謝ってばかりね」

「そうだな、ラフェ、幸せになってくれ」

「ありがとう……貴方も大変だけど、息子さん……オズワルド君はとても良い子だと聞いているわ。幸せになってください」

 ーーー噂で聞いていた。アルバードに少し似ているオズワルド君。アルバードならエドワードのこともオズワルド君のことも受け入れて仲良くなれると思う。

 わたしがいろんなことに意地を張って生きてきたから、周りにいっぱい迷惑をかけてしまった。

 やっと前をしっかり向いて生きていけそう。

「お話は終わったみたいね?」

「公爵夫人、ありがとうございました」

「エドワードの過去のことは噂では聞いていたけどお相手がまさかのグレン様の奥様なんて……流石に驚いたわ」

「奥様、お時間をいただきありがとうございました」

「エドワード、ラフェさんは貴方にかなりキツイことを言ったけど、それだけ辛い思いをしてきたからだと思うわ」

「わかっております」

「でも思うの。過去は変えられないけど未来は変えられるわ。これからそれぞれが幸せになれば良いと思うの、エドワードもまだ若いのだから再婚を考えてみてもいいかもね」

 公爵夫人が微笑んだ。「いつでもいい人を紹介するわよ」

「あっ……今のところ結構です。まだまだそれどころではないので」
 エドワードは苦笑していた。




「ラフェ……」

 グレン様が声をかけてきた。

 この絶妙なタイミングは多分もっと前からここに居たのだろう。

「グレン様……心配かけてすみません。少し話していたものですから」

「うん、ラフェの意地っ張りが少しは解消されてよかった」

「グレン様もそんなこと言うんですか?」

「俺はそんなラフェを何年も待ったから」
 そう言ってわたしの頬にキスをした。

「公爵夫人お久しぶりです。ラフェのためにお時間を割いていただいてありがとうございました」

 グレン様が頭を下げた。

「あら?グレン様にお礼を言われる筋合いはないわ。わたくしが好きで立ち会ったのよ?」

「はい、存知ております」

「グレン様もよく我慢していたわ。本当は出てきたかったでしょうにね?」
 そう言って公爵夫人が笑った。

 ーーーまさか最初からグレン様は居たの?

 流石に途中からだと思っていたのに……

 うわぁ、わたしの酷いところをたくさん見られてしまったわ。
 顔を強張らせているわたしにグレン様は優しく微笑んだ。

「ラフェ、君の憂いが少しでもなくなったことが嬉しいよ。エドワード、久しぶりだな……アルはいい子に育った。俺はアルの良き友人としてずっと共に居た。アルが君にお礼を言いたいと言っていた、もしよければ会ってやって欲しい」

「……ご存知なんですね?」

 エドワードが驚いていた。

 わたしは何の話かわからなくてグレン様を見た。

「実は、アルに相談されていたんだ」
 そう言って、エドワードがアルバードを助けてくれていた話を聞いた。

 偶然二人に出会っていたらしい。

「知らなかったわ……アルはわたしに言えなかったのね……」
 ーーー頑ななわたしの顔色を窺わないといけなかったアルバード。

「わたし……アルと話さなきゃ」

「うん、そうだな。アルはお前に心配かけたくないといつも気を遣ってる。お前はアルが我慢してるからといつも気を遣ってる。親子なんだからもう少し胸の内を見せてもいいんじゃないかと思う」

「うん、わたし……明日アルに会いに行きます」




 次の日アルに会いに行く予定だったのに……夜会で無理したせいか妊娠中だからか体調を崩して会いにいけなかった。

 落ち込んだまま寝ていると、
「ラフェ様……お見舞いにアル様がおみえになっています」と使用人が声をかけてきた。

「アルが?」
 心配そうに顔を出したアル。

「お母さん!体調は大丈夫?顔色が良くないけど、何か食べた?僕、お母さんの好きなクッキーを焼いてきたんだ」

「アルが作ったの?」

「そうだよ、寮のキッチンでよく作るんだ。お腹が空いた時に、たくさん作ってみんなにあげるんだけどなかなか好評なんだ」

「あ…りが…とう」

 ただ嬉しくて涙が溢れた。
 この子の優しさに甘えて生きてきた。母親なのに守ってきたつもりなのに、本当はアルバードの存在に守られていたのはわたしだった。

「アルバード……我慢ばかりさせてごめんね……本当はお父さんに会いたかったのでしょう?わたしのことを考えて何も言えなかったよね?
 お母さん……もう意地っ張りは卒業するから……アルがお父さんや弟のオズワルド君に会うことを止めたりしないわ。
 グレン様とお腹の赤ちゃんが貴方にとって新しい家族になるように、お父さんとオズワルド君も貴方にとって大切な家族として過ごして欲しいの。わたしとお父さんは別々の道を歩むことになったけど、アルはどちらの道も好きな方を歩いて欲しい」

「………いいの?お母さんは辛くないの?」

「大丈夫よ、貴方が我慢している姿を見る方が辛いわ」






 ーーーーー

 最後にエドワードとオズワルドとアルバードが会うところを書いて終わりたいと思います。

 いつも読んでいただきありがとうございます。
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