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第9話「最強のタンク」
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ミスリルゴーレムが消滅した広間に、再び重い地響きが近づいてくる。 どうやら戦闘の騒ぎを聞きつけた他の魔物たちが集まってきたらしい。通路の奥から、三体のストーンゴーレムが姿を現した。 さっきサラをボロボロにした奴らと同種だ。
「ちょうどいい実験台だ」
俺は剣を抜こうとはせず、顎で敵を示した。
「サラ、行けるか?」
「ええ……試させてもらうわ」
サラは新しい相棒――『絶対防御の大盾』を構えて前に出る。 漆黒の塔盾は彼女の全身をすっぽりと隠してしまうほどの大きさだが、彼女はそれを羽毛のように軽く扱っている。
ゴオオオオッ!
先頭のストーンゴーレムが、邪魔な鉄板を排除しようと両手を組んで振り下ろした。 体重数トンの一撃。 先ほどまでのサラなら、防いでも吹き飛ばされ、骨にヒビが入っていた威力だ。
「来なさいッ!」
サラは退かない。 盾を斜めに構え、衝撃を受け流す姿勢すら取らず、真正面から受け止める構えを取った。
ドォォォォン!!
爆音と共に、洞窟が揺れる。 だが。
「……え?」
サラの声が漏れた。 彼女は一歩も下がっていなかった。 それどころか、足元の地面すらひび割れていない。 盾の表面に薄い光の膜が展開され、ゴーレムの攻撃エネルギーを完全に相殺していたのだ。 腕を振り下ろしたゴーレムの方が、反動でよろめいている。
「嘘……全然、重くない。衝撃も来ない……」
サラが盾の陰から顔を覗かせる。 その表情は、呆然としたものから、次第に歓喜へと変わっていく。
「私、守れてる……! 完璧に!」
残りの二体のゴーレムも加勢し、左右からサラを殴りつける。 ガン! ガン! ドガン! 岩の拳が何度叩きつけられても、サラの体は揺らぎもしない。盾が自動的に最適角で攻撃を受け止め、ダメージを無効化しているのだ。 これこそが、防御力1500の暴力的なまでの性能だ。
「すげえ……」
「カズヤさん、これなら魔法の援護もいらないですね」
後ろで見ていたリーナも舌を巻いている。 サラは攻撃の雨の中、高笑いを上げ始めた。
「あはははは! 何よあんたたち! 蚊が止まったかと思ったわよ! もっと本気で殴りなさいよ!」
これまで「柔らかい」「脆い」と罵られ、回復魔法の無駄遣いだと蔑まれてきた彼女が、今は無敵の要塞として君臨している。 ゴーレムたちが疲れを見せ始めた頃、俺は静かに前に出た。 動きの止まったゴーレムの急所を、事務的に三回突く。
パパン、パン。 三体のゴーレムはあっけなく光となって消えた。
静寂が戻る。 サラはゆっくりと大盾を下ろし、地面に突き立てた。 そして、自分の両手を見つめ、それから俺の方へと向き直る。 その目からは、大粒の涙が溢れていた。
「……ずっと、言われてきたの」
サラが震える声で語り出す。
「デカいだけで役に立たないって。攻撃を受けるしか能がないのに、その攻撃ですぐ死にかけるお荷物だって。どのパーティに行っても、最後は捨てられた。私は冒険者に向いてないんだって、ずっと思ってた」
彼女は涙を拭おうともせず、俺を見つめ続ける。
「でも、あんたは私を見つけてくれた。『攻撃を受けること』が必要だって言ってくれた。そして、本当に私を……誰にも負けない盾にしてくれた」
ドサッ。 サラはその場に膝をついた。 巨大な盾に寄り添うようにして、俺に頭を下げる。
「ありがとう、カズヤ。あんたは私の居場所をくれた。私の価値を証明してくれた」
騎士としての誇りを取り戻した女の顔だった。
「誓うわ。この『絶対防御の大盾』がある限り、あんたには指一本触れさせない。あんたが背中を預けてくれるなら、私はどんな敵の攻撃だって笑って受け止めてみせる。私は、あんただけの最強の盾になる」
俺は短く答えた。
「期待している」
感情的な言葉はいらない。結果で示してくれればそれでいい。 だが、サラのその誓いが決して軽いものではないことは理解できた。 彼女はこれから先、たとえドラゴンブレスの前だろうと、俺のために一歩も退かずに立ち続けるだろう。 そういう「手駒」が欲しかったのだ。
「立つぞ。街へ戻る」
「うん……! あ、ちょっと待って、足が震えて……嬉しすぎて力が入らないかも」
「情けないこと言うな」
「うるさいわね! 乙女の感動的なシーンでしょ!」
サラが泣き笑いのような顔で立ち上がる。 俺たちは迷宮を後にした。
帰り道、サラはずっと上機嫌で、重いはずの盾を鼻歌交じりに担いでいた。 時折、リーナと楽しそうに話している。 俺は先頭を歩きながら、ステータス画面を確認する。
攻撃(俺・リーナ)。 防御(サラ)。 戦力のバランスは整った。 だが、冒険には戦闘以外の要素も重要だ。 罠の解除、鍵開け、敵の索敵、隠密行動。 それらを専門とする『盗賊(シーフ)』の枠が空いている。
俺は次の獲物を探すように、思考を巡らせる。 確かこの近くの森には、盗賊団や奴隷商人がよく出没するという噂があったはずだ。 そこには、俺の役に立つ人材――あるいはスキルが転がっているかもしれない。
俺たちのパーティ『ドロップアウト(仮)』は、着実に最強への階段を上っていた。
「ちょうどいい実験台だ」
俺は剣を抜こうとはせず、顎で敵を示した。
「サラ、行けるか?」
「ええ……試させてもらうわ」
サラは新しい相棒――『絶対防御の大盾』を構えて前に出る。 漆黒の塔盾は彼女の全身をすっぽりと隠してしまうほどの大きさだが、彼女はそれを羽毛のように軽く扱っている。
ゴオオオオッ!
先頭のストーンゴーレムが、邪魔な鉄板を排除しようと両手を組んで振り下ろした。 体重数トンの一撃。 先ほどまでのサラなら、防いでも吹き飛ばされ、骨にヒビが入っていた威力だ。
「来なさいッ!」
サラは退かない。 盾を斜めに構え、衝撃を受け流す姿勢すら取らず、真正面から受け止める構えを取った。
ドォォォォン!!
爆音と共に、洞窟が揺れる。 だが。
「……え?」
サラの声が漏れた。 彼女は一歩も下がっていなかった。 それどころか、足元の地面すらひび割れていない。 盾の表面に薄い光の膜が展開され、ゴーレムの攻撃エネルギーを完全に相殺していたのだ。 腕を振り下ろしたゴーレムの方が、反動でよろめいている。
「嘘……全然、重くない。衝撃も来ない……」
サラが盾の陰から顔を覗かせる。 その表情は、呆然としたものから、次第に歓喜へと変わっていく。
「私、守れてる……! 完璧に!」
残りの二体のゴーレムも加勢し、左右からサラを殴りつける。 ガン! ガン! ドガン! 岩の拳が何度叩きつけられても、サラの体は揺らぎもしない。盾が自動的に最適角で攻撃を受け止め、ダメージを無効化しているのだ。 これこそが、防御力1500の暴力的なまでの性能だ。
「すげえ……」
「カズヤさん、これなら魔法の援護もいらないですね」
後ろで見ていたリーナも舌を巻いている。 サラは攻撃の雨の中、高笑いを上げ始めた。
「あはははは! 何よあんたたち! 蚊が止まったかと思ったわよ! もっと本気で殴りなさいよ!」
これまで「柔らかい」「脆い」と罵られ、回復魔法の無駄遣いだと蔑まれてきた彼女が、今は無敵の要塞として君臨している。 ゴーレムたちが疲れを見せ始めた頃、俺は静かに前に出た。 動きの止まったゴーレムの急所を、事務的に三回突く。
パパン、パン。 三体のゴーレムはあっけなく光となって消えた。
静寂が戻る。 サラはゆっくりと大盾を下ろし、地面に突き立てた。 そして、自分の両手を見つめ、それから俺の方へと向き直る。 その目からは、大粒の涙が溢れていた。
「……ずっと、言われてきたの」
サラが震える声で語り出す。
「デカいだけで役に立たないって。攻撃を受けるしか能がないのに、その攻撃ですぐ死にかけるお荷物だって。どのパーティに行っても、最後は捨てられた。私は冒険者に向いてないんだって、ずっと思ってた」
彼女は涙を拭おうともせず、俺を見つめ続ける。
「でも、あんたは私を見つけてくれた。『攻撃を受けること』が必要だって言ってくれた。そして、本当に私を……誰にも負けない盾にしてくれた」
ドサッ。 サラはその場に膝をついた。 巨大な盾に寄り添うようにして、俺に頭を下げる。
「ありがとう、カズヤ。あんたは私の居場所をくれた。私の価値を証明してくれた」
騎士としての誇りを取り戻した女の顔だった。
「誓うわ。この『絶対防御の大盾』がある限り、あんたには指一本触れさせない。あんたが背中を預けてくれるなら、私はどんな敵の攻撃だって笑って受け止めてみせる。私は、あんただけの最強の盾になる」
俺は短く答えた。
「期待している」
感情的な言葉はいらない。結果で示してくれればそれでいい。 だが、サラのその誓いが決して軽いものではないことは理解できた。 彼女はこれから先、たとえドラゴンブレスの前だろうと、俺のために一歩も退かずに立ち続けるだろう。 そういう「手駒」が欲しかったのだ。
「立つぞ。街へ戻る」
「うん……! あ、ちょっと待って、足が震えて……嬉しすぎて力が入らないかも」
「情けないこと言うな」
「うるさいわね! 乙女の感動的なシーンでしょ!」
サラが泣き笑いのような顔で立ち上がる。 俺たちは迷宮を後にした。
帰り道、サラはずっと上機嫌で、重いはずの盾を鼻歌交じりに担いでいた。 時折、リーナと楽しそうに話している。 俺は先頭を歩きながら、ステータス画面を確認する。
攻撃(俺・リーナ)。 防御(サラ)。 戦力のバランスは整った。 だが、冒険には戦闘以外の要素も重要だ。 罠の解除、鍵開け、敵の索敵、隠密行動。 それらを専門とする『盗賊(シーフ)』の枠が空いている。
俺は次の獲物を探すように、思考を巡らせる。 確かこの近くの森には、盗賊団や奴隷商人がよく出没するという噂があったはずだ。 そこには、俺の役に立つ人材――あるいはスキルが転がっているかもしれない。
俺たちのパーティ『ドロップアウト(仮)』は、着実に最強への階段を上っていた。
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