『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道

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第20話「炎の剣」

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視界が白一色に染まった。  イフリートが放った『地獄の業火(インフェルノ)』は、単なる炎ではない。空間そのものを焼き尽くすような熱量の暴風だ。  溶岩の湖全体が沸騰し、岩場さえもが赤熱して溶解を始める。

「ぐ、うううぅぅぅぅぅッ!!」

 サラの絶叫が轟音にかき消されそうになる。  彼女は『絶対防御の大盾』を両手で支え、膝を地面にめり込ませながら耐えていた。  盾の表面に展開された光の結界が、押し寄せる炎の奔流と激しく衝突し、バチバチと火花を散らしている。  防御力1500のSSR盾と、サラ自身の異常なHPがなければ、一瞬で蒸発していただろう。

「熱い、熱い熱い! ちょっと、まだなのカズヤ!?」 
「まだだ! 耐えろ!」

 俺はサラの背中に片手を当て、その熱を感じていた。  『火竜の革鎧』を着ている俺でさえ、肌がじりじり焼けるのを感じる。後ろにいるリーナとミオは、俺が渡した『火竜の赤鱗』を必死に握りしめ、ガタガタと震えている。

「盾が……溶けそう……!」 
「溶けない! その盾は最強だ! お前も最強だ! 信じろ!」

 俺が叫ぶと、サラは「わかったわよ!」と吐き捨てるように叫び返し、さらに踏ん張った。  数秒が、永遠のように感じられた。  やがて、炎の勢いが急速に衰え始めた。

 今だ。

 俺の【鑑定】が、敵の状態変化を告げる。  全魔力を放出したイフリートは、魔力再充填のために一時的に実体化する。  炎の嵐が晴れたその瞬間、俺の目の前には、炎の鎧を失い、黒ずんだマグマのような肉体を晒したイフリートが立ち尽くしていた。  そして、その胸の中央。  脈打つように強く輝く、赤紫色の結晶体が見えた。

 急所だ。  あそこだけが、物理干渉を受け付ける『核(コア)』。

「サラ、どけ!」 
「へ!?」

 俺はサラの肩を掴んで横に押しやると、地面を蹴った。  【神速の脚】全開。  足元の岩場は溶解してドロドロだが、構うものか。  一歩、二歩。  俺は溶岩の上を滑るように駆け抜ける。

 イフリートが遅れて俺に気づき、虚ろな目を向けた。  だが、もう遅い。魔力が空っぽのあいつに、迎撃する術はない。

「終わりだ、燃えカス!」

 俺は跳躍した。  イフリートの胸元へと肉薄する。  結晶体の中心に灯る、小さな『赤い点』。  俺の剣は、そこへ吸い込まれるように突き出された。

 ガキンッ!

 硬質な手応え。  だが、俺の力と剣の鋭さは、その硬度を上回る。  ピシリと亀裂が入る音がした直後、剣先は核を貫通し、その奥へと深く突き刺さった。

「グ、オォォォ……」

 イフリートが、まるで水をかけられた炭火のように、ジュウジュウと音を立てて萎んでいく。  巨大な体躯が崩れ落ち、光の粒子となって霧散していく。

 カラン、コロン。  熱気が引いた広間に、乾いた音が響いた。

 俺は着地し、残心もそこそこにドロップ品へと歩み寄る。  そこには、三つのアイテムが落ちていた。  燃え盛るような赤い宝石『炎精の核』。  瓶に入った灰『獄炎の灰』。  そして――

 俺の視線は、地面に突き刺さっている一本の剣に釘付けになった。  刀身は黒曜石のように黒く、しかしその中心にはマグマのような赤いラインが走っている。  柄の部分は竜の爪を模したような禍々しいデザインだ。  近づくだけで、肌がピリピリするほどの魔力を感じる。

【炎帝の剣(フランベルジュ・イグニス)】 
【レアリティ:UR(ウルトラレア)】 
【攻撃力:1800】 
【属性:火】 
【効果:攻撃時、対象に爆発的な火属性ダメージを追加する。所有者の意思に応じて刀身から炎の刃を生成し、射程を延長可能。物理無効の敵にもダメージを与える】 【装備条件:火属性耐性所持者】

 攻撃力1800。  これまで使っていた店売りの鉄の剣(攻撃力80)とは桁が違う。  まさに最強の剣だ。

「……ふふ」

 笑いが漏れるのを止められなかった。  俺は剣の柄を掴み、引き抜く。  ズォッ!  引き抜いた瞬間、刀身から紅蓮の炎が吹き上がり、俺の周りを渦巻いた。  だが、熱くない。『火竜の革鎧』と、剣の所有者権限が俺を守っている。

「か、カズヤ……なにそれ……」

 サラたちが、おっかなびっくり近づいてくる。  彼女たちの髪の毛先が少し焦げているのが見えた。

「『炎帝の剣』だ。これでお前らの火力を超えたかもしれん」 
「嘘でしょ……ただ剣を持ってるだけなのに、空気が歪んで見えるわよ」

 サラが呆れたように言う。  俺は試しに、近くにあった手頃な岩を軽く斬りつけてみた。  力を入れたつもりはない。  だが、剣が岩に触れた瞬間、ドォン! という爆発音と共に、岩が粉々に砕け散り、断面が赤熱して溶け落ちた。

「ひぇっ……」

 ミオが尻尾を逆立てて飛び退く。

「岩が……バターみたいに……」 
「物理攻撃と魔法攻撃の複合ダメージか。これなら、硬い敵だろうが霊体だろうが関係ないな」

 俺は満足して剣を鞘(これもセットでドロップしていた)に納めた。  炎が消え、周囲の熱気がスッと引く。

「帰るぞ。目的は達成した」 
「は、はい! もう帰りましょう! 喉カラカラです!」

 リーナが水筒を振るが、中身は空っぽらしい。  俺たちは火山ダンジョンを後にした。

 帰り道、俺の足取りは軽かった。  『剛力の腕輪』、『石化の魔眼』、『絶対防御の大盾』、『火竜の革鎧』、そして『炎帝の剣』。  攻撃、防御、特殊能力。  全ての面において、俺の装備は次元の違う領域に達しつつある。

(これで、この辺りのダンジョンで手に入るめぼしいものはあらかた回収したか……)

 あとは、まだ見ぬエリアへ進出するか、それとも更にレアな変異種を探すか。  そんなことを考えながら、俺たちはアルディアの街が見える丘まで戻ってきた。

 だが。  街の様子がおかしいことに、最初に気づいたのはミオだった。

「……なんか、うるさい」 
「ん? どうした」 
「街の方。悲鳴と……鐘の音?」

 俺たちが足を止め、耳を澄ませる。  

カン、カン、カン、カン!  

激しい早鐘の音が、風に乗って聞こえてきた。  それは、街に最大の危機が迫っていることを知らせる警鐘だ。

「あれは……緊急事態宣言の鐘です!」

 リーナが顔色を変える。  俺は目を細め、街の向こう側の平原を見た。  そこには、土煙が壁のように立ち上り、黒い染みのような大群が、ゆっくりと、しかし確実に街へ向かって押し寄せているのが見えた。

「スタンピード(魔物の大暴走)か」

 俺は冷静に呟く。  普通の人間なら絶望する光景だ。  だが、俺の目には違って見えた。  あの黒い大群の一つ一つが、すべて『宝箱』に見える。

「ちょうどいい」

 俺は『炎帝の剣』の柄に手を置いた。

「新しい剣の試し斬りには、最高の舞台だ」 
「カズヤ、あんたねぇ……笑ってる場合?」 
「笑うさ。あの中に、どれだけのレアアイテムが眠っていると思う?」

 俺は街へ向かって歩き出す。  恐怖はない。あるのは、さらなる力を求める渇望だけだ。  
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