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第一章 ロードライトの令嬢
40 一人の夜は密談と共に
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熱が下がった後の夜は、なんだか酷く味気ない。
セラも、他の侍女も自分の部屋へと戻ってしまって、広く寒々しい部屋の中、たった一人で取り残されてしまうから。
充分過ぎるほど眠ったから、目も思考も冴え冴えとしていた。
寝込んでいる間に届いていた兄からの手紙を、わたしはただ、ぱらりぱらりと捲っていく。
「全く、お兄様ったら……」
わたしを呪った犯人――ヨハン・ワイルダー。そして、彼の兄であり、またトリテミウス魔法学院の教師をしているというアシュレイ・ワイルダー。
どうやら兄は、学校へ戻るなり早々、アシュレイ・ワイルダーの元へと押しかけたらしい。『押しかけた』というより『殴り込みに行った』って方が正しいのだろうなとは、同封されていたシリウス様の手紙の文面から察せられた。兄はわたしのことになると暴走しがちだ。シリウス様の苦労が偲ばれる。
「とは言え……」
兄がアシュレイから聞き出したヨハンの情報は、中々に興味深いものだった。
今回の兄の暴挙のせいで、兄とシリウス様は一週間ほど罰則を言い渡されたらしいが――いやまぁ、正直、今回の情報はありがたい。お兄様、グッジョブだ。
巻き込まれたシリウス様は、なんだかちょっと可哀想だけど。今度会ったときは労ってあげよう。
でも、わたしのこんな身体では、思うように動けやしない。
兄からの手紙で、やりたいことはいくつか出てきた。でもそのどれもが、わたしじゃ到底クリアできそうにないものだ。
「……シギル」
ふと、シギルの顔が脳裏に浮かんだ。
父の従者で、そしてわたしの呪いを解くために力を貸してくれているシギル。わたしの出生の秘密についても知っているシギルであれば、協力してもらえるんじゃないだろうか。
「おーい、シギルー。話があるからちょっと来てよー。……なーんてね」
なんとなく声に出して呼んでみた。
もちろん、返事なんて来るわけがない。今は深夜で、ここはわたしの部屋の中で、そして部屋の中にはわたし一人しかいないんだから。
それに、わたしの声はちょっと弱々しい。腹筋がないから、大きな声を出そうと思っても思うように出ないのだ。芯がないから、わたしの声は扉越しにだって届かない。
……やっぱり、明日にしよう。
シギルと話せるよう、セラに取り計らってもらって……あぁでも、シギルにだってわたしの父の従者というお仕事があるから、シギルの時間が空いたときになるのかな……って、取り次ぎほんっとめんどくさいな!
と、その時、聴覚が微かな音を捉えた。ん? と思わず顔を上げる。
なんだろう、この音……なんだか足音のような……しかも段々近付いてきているような……?
「……っ、お呼びですか、リッカ様!?」
「ひぃっ!?」
勢いよく部屋の扉が開かれて、息を切らしたシギルが駆け込んできた。思わず、わたしは大きく肩を震わせる。
えっ、何何何何なんでなんで怖っ!! 超っ怖いんですけどぉ!?
「あっ、り、リッカ様。どうか悲鳴を上げられないようお願いいたします、怪しい者ではございませんのでっ」
「ノー・タッチ・幼女ですのでっ」なんて、シギルが慌てて弁明してくる。そんなこと言ってもねぇ!? 知り合いだとしても怖いよっ! 怪しすぎるよ!!
「……っぅ、ごめ、ちょっと、あ痛たた……」
驚いた弾みで、胸の中心に刺すような痛みが走った。
よくある、いつもの痛みだ。身体を折り曲げ、シーツを強く握って耐える。
一瞬ふっと意識が遠のきかけたが、シギルがおろおろした顔でベッドのそばをうろちょろしているのがなんだか笑えて、そのお陰で気が保てた。
「ぅ……ごめん、シギル……ちょっと、ベッドの下にある魔法陣を……起動してもらえる……?」
わたしのベッドが据えてある床には、癒しの魔法陣が刻まれている。あ、と小さな声を上げたシギルは、少しの間魔法陣をしげしげと見つめると、数度頷き右手をかざした。
途端、魔法陣が光を放つ。緑色の光に包まれて、少し息が出来るようになった。
魔法陣に手をかざしたまま、シギルは逆の手で、おずおずとわたしの背中に触れてきた。背中の真ん中を、軽い力でそうっと撫でる。一定の間隔でさすられて、段々と痛みが引いていくのが分かった。数度、慎重に息を吸って、吐く。
「……もう大丈夫。ありがと、シギル」
笑みを浮かべてシギルを見上げた。シギルはしかし、まだ心配そうな顔つきでわたしを見つめている。わたしの背中から手は引いたものの、まだ魔法陣は起動させたままだ。
「……本当に、申し訳ありません」
「大丈夫、ちょっとびっくりしただけだから。……そんな顔で謝らないで? ちょっと、調子狂っちゃうよ」
シギルは、ちょっと胡散臭くて底知れなくて、それでも頼り甲斐のあるところがいいのだ。そう健気に謝られると、ちょっと変な気分になる。
「ですが……セラ様をお呼びいたしましょうか?」
「ううん、もう大丈夫になったんだし。セラはちょっと前まで、ほとんど寝ずにわたしに付きっきりになってくれてたから、寝かせてあげたいんだ。……シギルがすぐに対処してくれて、とっても助かっちゃった」
にっこり笑うと、シギルも安堵したようにそっと微笑みを返してきた。その顔がふと曇る。
「……『ノー・タッチ・幼女』を掲げておりましたのに……。リッカ様に触れてしまいました……ここはどうお詫びするべきでしょうか……やっぱりここは」
「あーもうっ、緊急事態だからオッケー! さすってくれて楽になったよ! ありがとね!!」
話が一向に先に進まないだろ!
未だに魔法陣は光り輝いている。もう大丈夫だと言ったのに、まだ起動させておくつもりなのだろうか。
いつもわたしの面倒を見てくれているセラたち侍女も、交代しながらこの魔法陣を発動させていた。彫り込んである図形や文字は、これ以上を見たことがないほど複雑なものだ。きっと、ずっと発動し続けていたら、結構な分の魔力を消費する類のものなんだろうことは予想がつく。
シギルの魔力を無駄遣いさせているんじゃないかと危惧したものの、まぁ彼はきっと手頃なところで切り上げるだろうし、わたしもわたしで、この癒しの陣が起動していると身体がとっても楽になるので、これ以上は言及せずにそのまま放置することにした。
「そ、そうですね」とシギルは頷く。
「えっと……コホン。……少々お待ちください、気持ちを戻しますので」
そうわたしに断りを入れたシギルは、そのままそっと目を瞑った。胸に手を当て、数度大きく深呼吸をする。
次にシギルが目を開けたときには、その口元には見慣れた胡散臭い笑みが浮かんでいた。
「……さすがだね……」
「はて。何のことでしょう?」
背後に効果音が見えそうな程のにっこりを返され、思わず目がちかちかした。その変わり身、見習いたいと思うよ……。
「わたしを呪った犯人――ヨハン・ワイルダーについて、お兄様も調べてくれたんだ。その中で、ちょっと興味深いなぁって思ったことがあるの。だから、シギルの意見も聞きたくって」
前置きも無しに口を開いた。
「ヨハンの兄、アシュレイの話に依ると、ワイルダー家は絳雪戦争時『反』ロードライト側だったそうね。何でも家業の農家の元締めが、ロードライトと敵対していたテレジアだったため、彼らも自然とそちらに着いたのだとか」
おや、とシギルが軽く目を瞠る。
「左様でございます、リッカ様」
「……ロードライト第二分家も、同じくテレジアに着いたせいで本家から潰されたのだと聞いたの。同じようにテレジアに味方した、ヨハンとアシュレイのご両親も亡くなってる。……これは、ロードライトがやったの?」
ロードライト第六分家――守護と粛清を司る、秘匿された分家。ここの分家当主であるシギルであれば、きっと答えを知っている。
……アシュレイは、ロードライトが自分の両親を殺したのではないかという疑いを持っていたらしい。だから、兄の質問に中々答えてくれなかったのだと、手紙には兄の苦労が綴られていた。
もっとも、手紙の八割は「リッカの呪いが一刻も早く解けるように、今朝も精霊様に三時間ほど祈りを捧げていたら、授業に遅刻する気かとシリウスに首根っこ掴まれて連れてかれた」みたいな内容ばかりだったけど……。
「いいえ」
シギルは、変わらぬ微笑みを浮かべたまま否定した。
「……今、なんて?」
「いいえ、と申しましたよ、リッカ様。我々ロードライトが手を下したのはテレジアと第二分家、そして彼らに加わり、自ら明確にロードライトに反旗を翻した数家のみ。ワイルダー家は本業は農家ですし、テレジア派とは言えど口だけのものでした。我々が手を下すには値しません」
「……そう、なん、だ?」
「左様で」
……なんだか、ちょっとだけ、肩透かしというか。
「その評価は心外ですね。別にロードライトも、逆らう者を皆殺しにはしませんよ。見せしめに足る者らが済めば終いです」
「そっかぁ……」
……なんだかちょっと怖い言葉が聞こえたような気がしたんだけど、きっと気のせいってことだよね。うん。
「ワイルダー夫妻の死については、こちらも一通り調べさせていただきました。結果、事件性はないと判断した次第です」
「……どうして亡くなってしまったの? 病気? 事故?」
「自殺ですよ。夫婦揃ってですので、心中と言った方が近いですかね? 西の森の奥にある湖にて、遺体は発見されたらしいです。遺書も見つかりましたよ。『過去の後悔』『未来に対する不安』という、なんともふわっとしたことが書かれていましたね。後は、残していく二人の息子への気遣いという、ありきたりな遺書でした」
サクッと怖い話をぶち込むよね、この家は……。
怖さのあまり、わたしが眠れなくなったらどうしてくれんだ。忘れてるかもしれないけど、わたし七歳児だぞ?
年齢制限、仕事しろっ?
セラも、他の侍女も自分の部屋へと戻ってしまって、広く寒々しい部屋の中、たった一人で取り残されてしまうから。
充分過ぎるほど眠ったから、目も思考も冴え冴えとしていた。
寝込んでいる間に届いていた兄からの手紙を、わたしはただ、ぱらりぱらりと捲っていく。
「全く、お兄様ったら……」
わたしを呪った犯人――ヨハン・ワイルダー。そして、彼の兄であり、またトリテミウス魔法学院の教師をしているというアシュレイ・ワイルダー。
どうやら兄は、学校へ戻るなり早々、アシュレイ・ワイルダーの元へと押しかけたらしい。『押しかけた』というより『殴り込みに行った』って方が正しいのだろうなとは、同封されていたシリウス様の手紙の文面から察せられた。兄はわたしのことになると暴走しがちだ。シリウス様の苦労が偲ばれる。
「とは言え……」
兄がアシュレイから聞き出したヨハンの情報は、中々に興味深いものだった。
今回の兄の暴挙のせいで、兄とシリウス様は一週間ほど罰則を言い渡されたらしいが――いやまぁ、正直、今回の情報はありがたい。お兄様、グッジョブだ。
巻き込まれたシリウス様は、なんだかちょっと可哀想だけど。今度会ったときは労ってあげよう。
でも、わたしのこんな身体では、思うように動けやしない。
兄からの手紙で、やりたいことはいくつか出てきた。でもそのどれもが、わたしじゃ到底クリアできそうにないものだ。
「……シギル」
ふと、シギルの顔が脳裏に浮かんだ。
父の従者で、そしてわたしの呪いを解くために力を貸してくれているシギル。わたしの出生の秘密についても知っているシギルであれば、協力してもらえるんじゃないだろうか。
「おーい、シギルー。話があるからちょっと来てよー。……なーんてね」
なんとなく声に出して呼んでみた。
もちろん、返事なんて来るわけがない。今は深夜で、ここはわたしの部屋の中で、そして部屋の中にはわたし一人しかいないんだから。
それに、わたしの声はちょっと弱々しい。腹筋がないから、大きな声を出そうと思っても思うように出ないのだ。芯がないから、わたしの声は扉越しにだって届かない。
……やっぱり、明日にしよう。
シギルと話せるよう、セラに取り計らってもらって……あぁでも、シギルにだってわたしの父の従者というお仕事があるから、シギルの時間が空いたときになるのかな……って、取り次ぎほんっとめんどくさいな!
と、その時、聴覚が微かな音を捉えた。ん? と思わず顔を上げる。
なんだろう、この音……なんだか足音のような……しかも段々近付いてきているような……?
「……っ、お呼びですか、リッカ様!?」
「ひぃっ!?」
勢いよく部屋の扉が開かれて、息を切らしたシギルが駆け込んできた。思わず、わたしは大きく肩を震わせる。
えっ、何何何何なんでなんで怖っ!! 超っ怖いんですけどぉ!?
「あっ、り、リッカ様。どうか悲鳴を上げられないようお願いいたします、怪しい者ではございませんのでっ」
「ノー・タッチ・幼女ですのでっ」なんて、シギルが慌てて弁明してくる。そんなこと言ってもねぇ!? 知り合いだとしても怖いよっ! 怪しすぎるよ!!
「……っぅ、ごめ、ちょっと、あ痛たた……」
驚いた弾みで、胸の中心に刺すような痛みが走った。
よくある、いつもの痛みだ。身体を折り曲げ、シーツを強く握って耐える。
一瞬ふっと意識が遠のきかけたが、シギルがおろおろした顔でベッドのそばをうろちょろしているのがなんだか笑えて、そのお陰で気が保てた。
「ぅ……ごめん、シギル……ちょっと、ベッドの下にある魔法陣を……起動してもらえる……?」
わたしのベッドが据えてある床には、癒しの魔法陣が刻まれている。あ、と小さな声を上げたシギルは、少しの間魔法陣をしげしげと見つめると、数度頷き右手をかざした。
途端、魔法陣が光を放つ。緑色の光に包まれて、少し息が出来るようになった。
魔法陣に手をかざしたまま、シギルは逆の手で、おずおずとわたしの背中に触れてきた。背中の真ん中を、軽い力でそうっと撫でる。一定の間隔でさすられて、段々と痛みが引いていくのが分かった。数度、慎重に息を吸って、吐く。
「……もう大丈夫。ありがと、シギル」
笑みを浮かべてシギルを見上げた。シギルはしかし、まだ心配そうな顔つきでわたしを見つめている。わたしの背中から手は引いたものの、まだ魔法陣は起動させたままだ。
「……本当に、申し訳ありません」
「大丈夫、ちょっとびっくりしただけだから。……そんな顔で謝らないで? ちょっと、調子狂っちゃうよ」
シギルは、ちょっと胡散臭くて底知れなくて、それでも頼り甲斐のあるところがいいのだ。そう健気に謝られると、ちょっと変な気分になる。
「ですが……セラ様をお呼びいたしましょうか?」
「ううん、もう大丈夫になったんだし。セラはちょっと前まで、ほとんど寝ずにわたしに付きっきりになってくれてたから、寝かせてあげたいんだ。……シギルがすぐに対処してくれて、とっても助かっちゃった」
にっこり笑うと、シギルも安堵したようにそっと微笑みを返してきた。その顔がふと曇る。
「……『ノー・タッチ・幼女』を掲げておりましたのに……。リッカ様に触れてしまいました……ここはどうお詫びするべきでしょうか……やっぱりここは」
「あーもうっ、緊急事態だからオッケー! さすってくれて楽になったよ! ありがとね!!」
話が一向に先に進まないだろ!
未だに魔法陣は光り輝いている。もう大丈夫だと言ったのに、まだ起動させておくつもりなのだろうか。
いつもわたしの面倒を見てくれているセラたち侍女も、交代しながらこの魔法陣を発動させていた。彫り込んである図形や文字は、これ以上を見たことがないほど複雑なものだ。きっと、ずっと発動し続けていたら、結構な分の魔力を消費する類のものなんだろうことは予想がつく。
シギルの魔力を無駄遣いさせているんじゃないかと危惧したものの、まぁ彼はきっと手頃なところで切り上げるだろうし、わたしもわたしで、この癒しの陣が起動していると身体がとっても楽になるので、これ以上は言及せずにそのまま放置することにした。
「そ、そうですね」とシギルは頷く。
「えっと……コホン。……少々お待ちください、気持ちを戻しますので」
そうわたしに断りを入れたシギルは、そのままそっと目を瞑った。胸に手を当て、数度大きく深呼吸をする。
次にシギルが目を開けたときには、その口元には見慣れた胡散臭い笑みが浮かんでいた。
「……さすがだね……」
「はて。何のことでしょう?」
背後に効果音が見えそうな程のにっこりを返され、思わず目がちかちかした。その変わり身、見習いたいと思うよ……。
「わたしを呪った犯人――ヨハン・ワイルダーについて、お兄様も調べてくれたんだ。その中で、ちょっと興味深いなぁって思ったことがあるの。だから、シギルの意見も聞きたくって」
前置きも無しに口を開いた。
「ヨハンの兄、アシュレイの話に依ると、ワイルダー家は絳雪戦争時『反』ロードライト側だったそうね。何でも家業の農家の元締めが、ロードライトと敵対していたテレジアだったため、彼らも自然とそちらに着いたのだとか」
おや、とシギルが軽く目を瞠る。
「左様でございます、リッカ様」
「……ロードライト第二分家も、同じくテレジアに着いたせいで本家から潰されたのだと聞いたの。同じようにテレジアに味方した、ヨハンとアシュレイのご両親も亡くなってる。……これは、ロードライトがやったの?」
ロードライト第六分家――守護と粛清を司る、秘匿された分家。ここの分家当主であるシギルであれば、きっと答えを知っている。
……アシュレイは、ロードライトが自分の両親を殺したのではないかという疑いを持っていたらしい。だから、兄の質問に中々答えてくれなかったのだと、手紙には兄の苦労が綴られていた。
もっとも、手紙の八割は「リッカの呪いが一刻も早く解けるように、今朝も精霊様に三時間ほど祈りを捧げていたら、授業に遅刻する気かとシリウスに首根っこ掴まれて連れてかれた」みたいな内容ばかりだったけど……。
「いいえ」
シギルは、変わらぬ微笑みを浮かべたまま否定した。
「……今、なんて?」
「いいえ、と申しましたよ、リッカ様。我々ロードライトが手を下したのはテレジアと第二分家、そして彼らに加わり、自ら明確にロードライトに反旗を翻した数家のみ。ワイルダー家は本業は農家ですし、テレジア派とは言えど口だけのものでした。我々が手を下すには値しません」
「……そう、なん、だ?」
「左様で」
……なんだか、ちょっとだけ、肩透かしというか。
「その評価は心外ですね。別にロードライトも、逆らう者を皆殺しにはしませんよ。見せしめに足る者らが済めば終いです」
「そっかぁ……」
……なんだかちょっと怖い言葉が聞こえたような気がしたんだけど、きっと気のせいってことだよね。うん。
「ワイルダー夫妻の死については、こちらも一通り調べさせていただきました。結果、事件性はないと判断した次第です」
「……どうして亡くなってしまったの? 病気? 事故?」
「自殺ですよ。夫婦揃ってですので、心中と言った方が近いですかね? 西の森の奥にある湖にて、遺体は発見されたらしいです。遺書も見つかりましたよ。『過去の後悔』『未来に対する不安』という、なんともふわっとしたことが書かれていましたね。後は、残していく二人の息子への気遣いという、ありきたりな遺書でした」
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