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第一章 ロードライトの令嬢
57 人生ゲーム
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一時の興奮で上がった熱だったからか、兄との対決で上がった熱は、数時間もすれば引いてきた。あぁよかったと、わたしはホッと胸を撫で下ろす。
「ねぇセラ、シリウス様は、今日来ているのよね? まだ帰ってないよね? 熱もちゃんと下がったし、わたし、会いに行ってもいい?」
わたしのおでこに触れて熱を確かめているセラにねだる。「うーん」と考え込んだセラだったが、わたしの「お願い! もう元気だもの! 朝も熱無かったでしょ! さっきはちょっと上がっちゃっただけだもの!」という勢いに、根負けしたように苦笑した。
「仕方ないですね。……ですが、会いに行くのはダメです。この部屋で、わたしの監視の元であれば構いませんよ」
「うん、それで大丈夫!」
別に外遊びをしたいわけじゃないのだ。いつも通りこの部屋の中でおしゃべりするだけなら、何の問題もない。
やがてセラに呼ばれて来たシリウス様は、わたしの姿を見た途端に目を潤ませていた。
「リッカ! 熱が下がってホントよかったぁ……でも絶対に、無理しちゃダメだからな? ちょっとでも体調悪いなって感じたら、すぐに言うんだぞ」
「心配かけてごめんなさい。具合が悪くなったら、ちゃんと言いますから」
「本当に? 絶対の絶対の絶対だぞ?」
「ふふっ、絶対の絶対の絶対です」
なんだか、シリウス様にも兄の過保護が伝染してる気がする。それだけ、わたしが危なっかしく見えるってことだろうか。
「シリウス様、午前中は何をしてたんですか?」
兄もいないロードライトのお城で、一人退屈してはいなかっただろうか。そう思って尋ねると「リッカの侍女たち? が気を遣って、俺をゲームに誘ってくれたんだよ」と教えてくれた。
「ゲーム! いいですねぇっ!」
「おっ、リッカはゲームが好きなのか? じゃあ今日は、俺とゲームでもする?」
「はい! 楽しみです!」
元気よく返事をした。
わたしは基本的に部屋から出ることができないから、侍女と遊ぶのはもっぱら、室内で出来るゲームが主流になる。ボードゲームもカードゲームも、なんだってばっちこいだ。
そこで、セラが小さくため息をついた。
「……シリウス様。お嬢様と遊んでいただけるのは、いいんですが……ゲームに関しては、お嬢様、とってもお強いですよ」
「相手が強い方が楽しいじゃないか?」
きょとんとした顔でシリウス様が首を傾げる。何が問題なのか、分かってないって顔だ。だからわたしは胸を張ってみせた。
「ふふーん、何を言わんや、わたし、この城では負け知らずですので!」
と言っても、父とは対戦したことなんてないし、ナナリーやシギルともこの前が初対面だったしで、わたしの知っている範囲はとってもとっても狭いのだけど。
それでも負け知らずは事実だ。侍女たちとやるゲームしか娯楽がなかったわたしにとっては、どんなゲームだろうと、物心ついてから誰かに負けた記憶は一度もない。
最初は、幼女のわたしと遊んであげようかな~とニコニコほんわかしていた対戦相手が、終盤となり自分が劣勢であると気がつくと、途端に真剣な面持ちになり、姿勢を正して手元を睨み据えるのだ。
それが愉快で面白くて、嬉々として潰し回ってしまった。……そのせいで、セラはもうわたしとゲームで遊んでくれなくなっちゃったので、反省はしている。
へぇ、とシリウス様は目を瞠った。
「じゃあ、黒曜よりも強いのか? あいつと昔チェスしたけど、全然勝てなかった」
「お兄様とは最近あんまり遊んでないので、どうですかね? 昔は、わたしの方が強かったんですけど」
兄も負けず嫌いなものだから、わたしに負けると滅茶苦茶悔しそうな顔をして、隠れて猛勉強をしてるようだった。それでも、兄には他の勉強もあるし、次期当主としての色々もあるしで、結局暇を持て余しているわたしの方が強かったものだ。
セラは苦々しい顔で首を振った。
「シリウス様。少なくとも『楽しく歓談しながらゲームをする』という目的において、お嬢様という対戦相手は、極めて不適当であると助言いたします」
「その言い草ひどくないかなっ! 最近のわたしは『接待プレイ』ってやつを覚えたから、もういつものように他の人を半泣きにするまで追い詰めたりしないもの!」
ちゃんと良い勝負をしてみせるよ! と意気込むも、シリウス様は「うわぁ」と呟き額を抑えた。ちょっと。
「リッカと対戦するのはやめとくよ……なんかもうちょい、平穏なやつないの? 運が結構絡むやつとかならいいんじゃない?」
うーん? とセラは少しの間考え込むと「だったら、人生ゲームなんていかがでしょうか?」と提案する。
「シリウス様と同じく、国外からいらっしゃった方が持ち込まれたゲームらしいので、シリウス様も馴染みがあるのではないかと思いますよ」
「あ、知ってる知ってる」
確かに、人生ゲームなら和気藹々と楽しめそう。人数が多い方が楽しいので、セラもやろうと誘うと、満更でもない顔で「お嬢様のお願いであれば仕方ありませんね」と言っていた。
「国外の人が持ち込んだものって、他にもあるの?」
「結構ありますよ。ファッションなんかは特に、国外からの影響を強く受けますからね。雑貨だとか、お料理だとか、いろいろと。どうやら国外とこの国ではだいぶ違いがあるらしく、不便を感じる方も多いみたいで。在学中や卒業後に一念発起される方がたびたびいらっしゃいます」
「あぁ、分かるな、それ……」
シリウス様が遠い目をして頷いている。やっぱり、いろいろと思うところがあるのだろう。
「もしシリウス様が何か事業を興されたいとお望みでしたら、ロードライトが後見となって資金援助も致しますので、お気軽にどうぞ」
「はは……ありがとうございます」
「パトロン、つっえぇ」とシリウス様は呟いた。確かに、とわたしも頷く。
家がなく、金銭的にも余裕のない国外の子のために、ロードライトが後ろ盾となることで、国外の子も十分国内で戦えるようになる。しかも、もしその事業が成功したときは「先にツバを付けてたのはウチ」として振る舞える。
……お金持ってるのって、強いなぁ。
ちなみに、もしわたしが出来るのであれば、携帯ゲーム機くらいはこの国にも欲しいと思う。簡単な落ち物パズルとか、ちょっと暇だなって時の手遊び用として。
ゲームって、地域に応じてローカライズされるものだけど、ラグナルの人生ゲームにも、やっぱり≪魔法使いだけの国»ならでは、な味付けがされていた。
たとえば、人生ゲームは他のプレイヤーよりもお金を多く集めた者の勝ちだけど、ラグナルのゲームはお金に加え『魔力』が多い方も勝ちとなっていて、魔力を増やすためのマスがたびたび登場したりする。魔力が多いといろんな場面で有利に運ぶし、お金があると魔力を増やす機会も多かったりと、なんだかこの国における魔力の重要さをしみじみと感じてしまった。魔力が少ないと詰んじゃうこともあるのが、なんだか世知辛いぜ……。
……そしたら、お金持ってるのに加えて、『建国の英雄』を先祖に持つ分魔力が他よりも多いロードライトって、人生ゲーム的には有利というか、スタート地点からそもそも違うというか、全く別次元として戦ってほしいレベルの存在じゃない? 超チートじゃない?
カラカラとルーレットを回しながら、ゲームは和やかに進んで行く。この人生ゲームを作ったのが国外の人ということで、この国の風習に馴染みがないわたしにも、分かりやすく作られていた。時折セラに見慣れない行事について尋ねながら、それぞれ同程度のペースでちまちまとゴールを目指す。
「何か事業を興したい、程じゃないんだけど、確かに『なんか足りないな?』って思うときはあるんだよなぁ」
コマを進めつつ、シリウス様は呟いた。
「何か、ですか」
「そりゃ文化も風習も違うし、俺のいたところは魔法なんて無かったから、色々違うってのは分かるよ? でも、なーんか引っかかるんだよなぁ……何か、大事なもの忘れてるっていうか……『何でこれがないんだ』ってものがあるっていうか……」
「あ、でもそれ、ちょっと分かる気がします」
似たような感覚を抱いた経験があるわたしは、そこでちょっと手を止めた。
前世と比べて無いものは、数え切れないほど沢山ある。電化製品も、娯楽も、何もかも。
その代わり、この世界には『魔法』があって、わたしの知らない法則で動いている。現代日本にあったアレがないと言ったところで、現代日本には魔法なんて無かったんだから、同列で語るべきものじゃない。
……それは、分かってるんだけど。
「あれ、リッカも?」
「うん、ちょっと……足りないものというか……なんだろう、ちょっとした違和感というか……?」
セラは「何を言ってるのか分からない」と雄弁な顔で、きょとんと首を傾げていた。生まれたときからずっとこの国で育っているのだから、そりゃそうだろうなぁ。
……なんだか、頭の先まで出かかっている気はするんだけど、それが何なのか分からない。ぼうっとしている時とか、ふとした瞬間に「あれ?」と感じることはあるものの、未だはっきりとしたものは掴めていないのだ。
その時、部屋に掛かっている時計が鳴った。あ、とセラは時計を見ては「お薬の時間ですね」と立ち上がる。
途端顔を顰めたわたしを見て、シリウス様は苦笑いを浮かべた。
「薬はやっぱり嫌い?」
「……飲まないといけないのは、分かってるんですけど……」
頭じゃ分かっていても、口が拒否するのだ。あのにがぁい薬草の味が口いっぱいに広がるのが、本当に、うぅ……。
「まぁまぁ。そうやって嘆くのも、今日限りかもしれませんよ?」
セラはなんだか楽しそうだ。「え?」とわたしは首を傾げた。
ふふふんと機嫌良さそうに、セラが白湯と薬を持ってくる。その薬が、普段の飲み薬じゃなく、白くて丸い錠剤なことに、わたしは目を丸くさせた。
「お兄様とシリウス様が作ってくれたやつ! 完成したんですね!」
「ですよ♪ これで、お嬢様が半泣きにならずに済みますね!」
半泣きになんてなってないやい。
「良かった、やっとリッカに試してもらえる」と、シリウス様はホッとしたように胸を撫で下ろしていた。わたしは思わずふふっと笑ってしまう。
「それにしても、よく錠剤の作り方なんて知ってましたね?」
六花の頃も錠剤はあったけど、作り方なんて考えたこともなかった。
もしかしてシリウス様、天才児?
シリウス様は苦笑しながら手を振った。
「たまたまだって。医療関係の親戚が多かったから、工場見学したこともあったしで、たまたま知ってたんだよ。うち、医者の家系だからさ」
「へぇ、そうだったんですね。医者の家系だから、なるほど……」
わたしの言葉は、そこで掠れた。
……医者。
……………………医者!?
ふと、脳裏に蘇る。
雪の女王は、初めて会ったあの時、確かにそう言ったのだ。
『多分……呪いじゃないわ』
と。
微かに、覚えのある痛み。
胸の奥がぐううっと痛くなって、脈が乱れて、目の前が真っ暗になる。
胸を抑えて、小さな声で呟いた。
「……まさか、これって、心臓病……?」
ハッと顔を上げた瞬間、わたしと同じような顔をしていたシリウス様と目が合った。
数秒見つめ合った後、わたしたちは同時にセラを見る。
「ねぇ、セラ!」
「ラグナルに『病院』って無いの!?」
「『癒し手』がいるのは知ってるんだけど、それじゃあ総合病院とかは!?」
「リッカの主治医って見たことないけど、近代医学の知識がある医者って、いないのか!?」
「え、えっとぉ……?」
わたしとシリウス様の二人に詰め寄られ、セラはたじたじとなっている。
「お、お医者様のことでしょう? 知ってますよ?」
頬に指を添え、セラは小首を傾げた。あ、そう……と、わたしとシリウス様は、しゅんとなって肩を落とす。
どうしてわたしとシリウス様がしょんぼりしたのかが分からないセラは、ただただきょとんとするばかりだ。困った顔で、わたしとシリウス様を交互に見比べている。
「どうかしました……?」
「いやぁ……えへへ、ちょっと、ピンと来たことがあったんだけど……」
「はぁ……」
小さく肩を落とした。
セラは「でも、確かに病院はないですねぇ」とおっとり呟く。
「…………、セラ、今、何て!?」
セラにしがみついて、勢いよくセラを揺さぶった。わぁっとセラは驚いたように肩を跳ねさせる。
「お嬢様、あんまりはしゃぐと、お身体に……!」
「セラさん、いいから教えて! リッカは俺が抑えとくから!」
シリウス様はそう言いながらわたしを抱きすくめると、セラに真剣な目を向けた。セラは、戸惑いながらも口を開く。
「で、でも、『癒し手』とお医者様って、そんなに違いがあるものでしょうか? 治癒術に長けて魔法薬を作れるのです、国外での医学である『聖なる癒し』と、大きな違いがあるとは思えないのですが……」
「違うに決まってるだろ!? 内科だけじゃないっ、外科手術の知見は、この国にはあるのか!? 心電計は! 酸素濃度計はっ、レントゲンも、内視鏡も、ああっ、もう! 何でもっと早く気付かなかったんだろ!?」
シリウス様が爆発寸前だった。普段あれだけ温厚なシリウス様が。わたしはシリウス様ほど医学に詳しいわけでもないけれど、気持ちは、非常によく分かる。
「あの、すみません。一体、何のお話でしょう……?」
セラの問いかけに、シリウス様は一度ぐしゃぐしゃと頭を掻いた後、長い長いため息を吐いた。
「……これは、俺の勘なんだけど。リッカは心臓か、もしくは循環器系のどっかの病気だと思う」
ドクンと、強く心臓が跳ねた。わたしは思わず胸を抑える。
セラは、信じられないと言わんばかりの口調で呟いた。
「ご病気……ですか?」
「詳しいことは、ちゃんと診てみないと分かんないけど……多分、そうとしか……」
「でも、ヨハン・ワイルダーが『お嬢様を呪った』と、ちゃんと証言されたのですよ? お嬢様の症状が病気故なのだとしたら、一体どうしてヨハンは、お嬢様を呪ったなどと言ったのでしょう?」
あ、と、シリウス様は言葉にならない声を漏らした。やがて力なく肩を落とすと「そっかぁー……」と項垂れてしまう。
「あー……そうだったな、呪い……確かにリッカを呪ったって、そう証言したんだっけ……」
わたしもヨハンの言葉は聞いていた。確かに、実際呪ってもいないのに、わざわざ『私が呪いました』なんて言う奴はいないだろう。意味が分かんないし。
「国外での医学のお話については、後ほど詳しくお話お聞かせいただきたいですね。でも、まずはお嬢様にお薬を飲んでいただくことが先です」
あぁ、そう言えばそうだったっけ。
もう白湯は冷めてしまっていた。「温め直してきますね」とセラは立ち上がる。
「……つい、これでリッカを助けられると思ったんだがなぁ……」
シリウス様は残念そうに言いながら、わたしを抱きしめていた腕を離した。しょんぼりと俯いているので、わたしも苦笑いを浮かべてみせる。
「やっぱり『呪い』らしいですからね」
「だな……あーっ、もう、なんでリッカのこと呪ったりしたんだよ! 俺も黒曜と一緒に行けば良かった、そしたらあいつと一緒に、リッカを呪ったクソ野郎をぶっ飛ばしてやれたのに!」
「ぶ、ぶっ飛ばすのは無理かと……」
鉄格子があるのだし。わたしのこととなると暴走しがちな兄だって、さすがに鉄格子越しにヨハンをぶっ飛ばすのは無理だろう。
……無理だよね?
その時、廊下を走る足音が聞こえた。おや? と顔を上げた瞬間、勢いよく部屋の扉が開かれ、兄が姿を見せる。
まだ外套を羽織ったままの兄は、そのままわたしの元へ駆け寄ってくると、問答無用でわたしのことをぎゅうっと強く抱きしめた。
「わっ、お兄様?」
「坊っちゃま、お帰りになったのですね」
「黒曜、ちょっと、リッカが苦しそうだぞ。手加減手加減」
しかし兄は、わたしたちの声かけにも耳を貸さず、ただずっとわたしを抱きしめていた。その身体が小刻みに震えていることに、わたしは気がつく。
ヴァルヌス監獄島で、もう一度ヨハンの話を聞きに行っていたと思うのだが、何かあったのだろうか?
「……お兄様? 何か、ありましたか?」
兄をぎゅうっと抱きしめ返し、そっとわたしは問いかけた。やがて、押し殺すような兄の言葉が返ってくる。
「……嘘だった」
「え?」
「ヨハンが語ったこと、全部……自白剤より強い魔法が、あいつに掛けられていて……それを解いた後問い詰めたら『リッカは呪われてない』って、言うんだ、あいつ……」
「……呪われて、ない?」
首を回して、シリウス様と目を合わせた。
これまで感じたことのないほど、強い緊張を感じる。
兄はへこたれた声で「あぁ」と呟いた。
「もう僕には、どうしていいか分からない……ただ、リッカの呪いを解いてほしいだけなのに。呪いじゃないって、だったら一体何なんだよ……」
……兄の嘆く声を聞いていると、じわじわと、実感が伝わってくる。
シリウス様はにんまり笑うと、兄の背中を勢いよく叩いた。兄に抱き締められているわたしにも伝わる衝撃だ。
「リッカ、黒曜! やったな!」
「……えっ?」
「ありがとうございます、お兄様! これで言質が取れました!」
「えっ、えっ?」
いきなり大はしゃぎし始めたわたしとシリウス様に、兄は戸惑った顔をしていた。お顔に「意味がわかりません」とはっきり書いてある。
わたしは兄から身を離すと、兄の顔をじっと覗き込んだ。
「だから、お兄様。わたしの身体を蝕んでいるのは、呪いじゃなくて、病気なんです! ……せ、セラっ、お父様とシギルを呼んでっ! みんな、一緒に話しますからぁっ!!」
「ねぇセラ、シリウス様は、今日来ているのよね? まだ帰ってないよね? 熱もちゃんと下がったし、わたし、会いに行ってもいい?」
わたしのおでこに触れて熱を確かめているセラにねだる。「うーん」と考え込んだセラだったが、わたしの「お願い! もう元気だもの! 朝も熱無かったでしょ! さっきはちょっと上がっちゃっただけだもの!」という勢いに、根負けしたように苦笑した。
「仕方ないですね。……ですが、会いに行くのはダメです。この部屋で、わたしの監視の元であれば構いませんよ」
「うん、それで大丈夫!」
別に外遊びをしたいわけじゃないのだ。いつも通りこの部屋の中でおしゃべりするだけなら、何の問題もない。
やがてセラに呼ばれて来たシリウス様は、わたしの姿を見た途端に目を潤ませていた。
「リッカ! 熱が下がってホントよかったぁ……でも絶対に、無理しちゃダメだからな? ちょっとでも体調悪いなって感じたら、すぐに言うんだぞ」
「心配かけてごめんなさい。具合が悪くなったら、ちゃんと言いますから」
「本当に? 絶対の絶対の絶対だぞ?」
「ふふっ、絶対の絶対の絶対です」
なんだか、シリウス様にも兄の過保護が伝染してる気がする。それだけ、わたしが危なっかしく見えるってことだろうか。
「シリウス様、午前中は何をしてたんですか?」
兄もいないロードライトのお城で、一人退屈してはいなかっただろうか。そう思って尋ねると「リッカの侍女たち? が気を遣って、俺をゲームに誘ってくれたんだよ」と教えてくれた。
「ゲーム! いいですねぇっ!」
「おっ、リッカはゲームが好きなのか? じゃあ今日は、俺とゲームでもする?」
「はい! 楽しみです!」
元気よく返事をした。
わたしは基本的に部屋から出ることができないから、侍女と遊ぶのはもっぱら、室内で出来るゲームが主流になる。ボードゲームもカードゲームも、なんだってばっちこいだ。
そこで、セラが小さくため息をついた。
「……シリウス様。お嬢様と遊んでいただけるのは、いいんですが……ゲームに関しては、お嬢様、とってもお強いですよ」
「相手が強い方が楽しいじゃないか?」
きょとんとした顔でシリウス様が首を傾げる。何が問題なのか、分かってないって顔だ。だからわたしは胸を張ってみせた。
「ふふーん、何を言わんや、わたし、この城では負け知らずですので!」
と言っても、父とは対戦したことなんてないし、ナナリーやシギルともこの前が初対面だったしで、わたしの知っている範囲はとってもとっても狭いのだけど。
それでも負け知らずは事実だ。侍女たちとやるゲームしか娯楽がなかったわたしにとっては、どんなゲームだろうと、物心ついてから誰かに負けた記憶は一度もない。
最初は、幼女のわたしと遊んであげようかな~とニコニコほんわかしていた対戦相手が、終盤となり自分が劣勢であると気がつくと、途端に真剣な面持ちになり、姿勢を正して手元を睨み据えるのだ。
それが愉快で面白くて、嬉々として潰し回ってしまった。……そのせいで、セラはもうわたしとゲームで遊んでくれなくなっちゃったので、反省はしている。
へぇ、とシリウス様は目を瞠った。
「じゃあ、黒曜よりも強いのか? あいつと昔チェスしたけど、全然勝てなかった」
「お兄様とは最近あんまり遊んでないので、どうですかね? 昔は、わたしの方が強かったんですけど」
兄も負けず嫌いなものだから、わたしに負けると滅茶苦茶悔しそうな顔をして、隠れて猛勉強をしてるようだった。それでも、兄には他の勉強もあるし、次期当主としての色々もあるしで、結局暇を持て余しているわたしの方が強かったものだ。
セラは苦々しい顔で首を振った。
「シリウス様。少なくとも『楽しく歓談しながらゲームをする』という目的において、お嬢様という対戦相手は、極めて不適当であると助言いたします」
「その言い草ひどくないかなっ! 最近のわたしは『接待プレイ』ってやつを覚えたから、もういつものように他の人を半泣きにするまで追い詰めたりしないもの!」
ちゃんと良い勝負をしてみせるよ! と意気込むも、シリウス様は「うわぁ」と呟き額を抑えた。ちょっと。
「リッカと対戦するのはやめとくよ……なんかもうちょい、平穏なやつないの? 運が結構絡むやつとかならいいんじゃない?」
うーん? とセラは少しの間考え込むと「だったら、人生ゲームなんていかがでしょうか?」と提案する。
「シリウス様と同じく、国外からいらっしゃった方が持ち込まれたゲームらしいので、シリウス様も馴染みがあるのではないかと思いますよ」
「あ、知ってる知ってる」
確かに、人生ゲームなら和気藹々と楽しめそう。人数が多い方が楽しいので、セラもやろうと誘うと、満更でもない顔で「お嬢様のお願いであれば仕方ありませんね」と言っていた。
「国外の人が持ち込んだものって、他にもあるの?」
「結構ありますよ。ファッションなんかは特に、国外からの影響を強く受けますからね。雑貨だとか、お料理だとか、いろいろと。どうやら国外とこの国ではだいぶ違いがあるらしく、不便を感じる方も多いみたいで。在学中や卒業後に一念発起される方がたびたびいらっしゃいます」
「あぁ、分かるな、それ……」
シリウス様が遠い目をして頷いている。やっぱり、いろいろと思うところがあるのだろう。
「もしシリウス様が何か事業を興されたいとお望みでしたら、ロードライトが後見となって資金援助も致しますので、お気軽にどうぞ」
「はは……ありがとうございます」
「パトロン、つっえぇ」とシリウス様は呟いた。確かに、とわたしも頷く。
家がなく、金銭的にも余裕のない国外の子のために、ロードライトが後ろ盾となることで、国外の子も十分国内で戦えるようになる。しかも、もしその事業が成功したときは「先にツバを付けてたのはウチ」として振る舞える。
……お金持ってるのって、強いなぁ。
ちなみに、もしわたしが出来るのであれば、携帯ゲーム機くらいはこの国にも欲しいと思う。簡単な落ち物パズルとか、ちょっと暇だなって時の手遊び用として。
ゲームって、地域に応じてローカライズされるものだけど、ラグナルの人生ゲームにも、やっぱり≪魔法使いだけの国»ならでは、な味付けがされていた。
たとえば、人生ゲームは他のプレイヤーよりもお金を多く集めた者の勝ちだけど、ラグナルのゲームはお金に加え『魔力』が多い方も勝ちとなっていて、魔力を増やすためのマスがたびたび登場したりする。魔力が多いといろんな場面で有利に運ぶし、お金があると魔力を増やす機会も多かったりと、なんだかこの国における魔力の重要さをしみじみと感じてしまった。魔力が少ないと詰んじゃうこともあるのが、なんだか世知辛いぜ……。
……そしたら、お金持ってるのに加えて、『建国の英雄』を先祖に持つ分魔力が他よりも多いロードライトって、人生ゲーム的には有利というか、スタート地点からそもそも違うというか、全く別次元として戦ってほしいレベルの存在じゃない? 超チートじゃない?
カラカラとルーレットを回しながら、ゲームは和やかに進んで行く。この人生ゲームを作ったのが国外の人ということで、この国の風習に馴染みがないわたしにも、分かりやすく作られていた。時折セラに見慣れない行事について尋ねながら、それぞれ同程度のペースでちまちまとゴールを目指す。
「何か事業を興したい、程じゃないんだけど、確かに『なんか足りないな?』って思うときはあるんだよなぁ」
コマを進めつつ、シリウス様は呟いた。
「何か、ですか」
「そりゃ文化も風習も違うし、俺のいたところは魔法なんて無かったから、色々違うってのは分かるよ? でも、なーんか引っかかるんだよなぁ……何か、大事なもの忘れてるっていうか……『何でこれがないんだ』ってものがあるっていうか……」
「あ、でもそれ、ちょっと分かる気がします」
似たような感覚を抱いた経験があるわたしは、そこでちょっと手を止めた。
前世と比べて無いものは、数え切れないほど沢山ある。電化製品も、娯楽も、何もかも。
その代わり、この世界には『魔法』があって、わたしの知らない法則で動いている。現代日本にあったアレがないと言ったところで、現代日本には魔法なんて無かったんだから、同列で語るべきものじゃない。
……それは、分かってるんだけど。
「あれ、リッカも?」
「うん、ちょっと……足りないものというか……なんだろう、ちょっとした違和感というか……?」
セラは「何を言ってるのか分からない」と雄弁な顔で、きょとんと首を傾げていた。生まれたときからずっとこの国で育っているのだから、そりゃそうだろうなぁ。
……なんだか、頭の先まで出かかっている気はするんだけど、それが何なのか分からない。ぼうっとしている時とか、ふとした瞬間に「あれ?」と感じることはあるものの、未だはっきりとしたものは掴めていないのだ。
その時、部屋に掛かっている時計が鳴った。あ、とセラは時計を見ては「お薬の時間ですね」と立ち上がる。
途端顔を顰めたわたしを見て、シリウス様は苦笑いを浮かべた。
「薬はやっぱり嫌い?」
「……飲まないといけないのは、分かってるんですけど……」
頭じゃ分かっていても、口が拒否するのだ。あのにがぁい薬草の味が口いっぱいに広がるのが、本当に、うぅ……。
「まぁまぁ。そうやって嘆くのも、今日限りかもしれませんよ?」
セラはなんだか楽しそうだ。「え?」とわたしは首を傾げた。
ふふふんと機嫌良さそうに、セラが白湯と薬を持ってくる。その薬が、普段の飲み薬じゃなく、白くて丸い錠剤なことに、わたしは目を丸くさせた。
「お兄様とシリウス様が作ってくれたやつ! 完成したんですね!」
「ですよ♪ これで、お嬢様が半泣きにならずに済みますね!」
半泣きになんてなってないやい。
「良かった、やっとリッカに試してもらえる」と、シリウス様はホッとしたように胸を撫で下ろしていた。わたしは思わずふふっと笑ってしまう。
「それにしても、よく錠剤の作り方なんて知ってましたね?」
六花の頃も錠剤はあったけど、作り方なんて考えたこともなかった。
もしかしてシリウス様、天才児?
シリウス様は苦笑しながら手を振った。
「たまたまだって。医療関係の親戚が多かったから、工場見学したこともあったしで、たまたま知ってたんだよ。うち、医者の家系だからさ」
「へぇ、そうだったんですね。医者の家系だから、なるほど……」
わたしの言葉は、そこで掠れた。
……医者。
……………………医者!?
ふと、脳裏に蘇る。
雪の女王は、初めて会ったあの時、確かにそう言ったのだ。
『多分……呪いじゃないわ』
と。
微かに、覚えのある痛み。
胸の奥がぐううっと痛くなって、脈が乱れて、目の前が真っ暗になる。
胸を抑えて、小さな声で呟いた。
「……まさか、これって、心臓病……?」
ハッと顔を上げた瞬間、わたしと同じような顔をしていたシリウス様と目が合った。
数秒見つめ合った後、わたしたちは同時にセラを見る。
「ねぇ、セラ!」
「ラグナルに『病院』って無いの!?」
「『癒し手』がいるのは知ってるんだけど、それじゃあ総合病院とかは!?」
「リッカの主治医って見たことないけど、近代医学の知識がある医者って、いないのか!?」
「え、えっとぉ……?」
わたしとシリウス様の二人に詰め寄られ、セラはたじたじとなっている。
「お、お医者様のことでしょう? 知ってますよ?」
頬に指を添え、セラは小首を傾げた。あ、そう……と、わたしとシリウス様は、しゅんとなって肩を落とす。
どうしてわたしとシリウス様がしょんぼりしたのかが分からないセラは、ただただきょとんとするばかりだ。困った顔で、わたしとシリウス様を交互に見比べている。
「どうかしました……?」
「いやぁ……えへへ、ちょっと、ピンと来たことがあったんだけど……」
「はぁ……」
小さく肩を落とした。
セラは「でも、確かに病院はないですねぇ」とおっとり呟く。
「…………、セラ、今、何て!?」
セラにしがみついて、勢いよくセラを揺さぶった。わぁっとセラは驚いたように肩を跳ねさせる。
「お嬢様、あんまりはしゃぐと、お身体に……!」
「セラさん、いいから教えて! リッカは俺が抑えとくから!」
シリウス様はそう言いながらわたしを抱きすくめると、セラに真剣な目を向けた。セラは、戸惑いながらも口を開く。
「で、でも、『癒し手』とお医者様って、そんなに違いがあるものでしょうか? 治癒術に長けて魔法薬を作れるのです、国外での医学である『聖なる癒し』と、大きな違いがあるとは思えないのですが……」
「違うに決まってるだろ!? 内科だけじゃないっ、外科手術の知見は、この国にはあるのか!? 心電計は! 酸素濃度計はっ、レントゲンも、内視鏡も、ああっ、もう! 何でもっと早く気付かなかったんだろ!?」
シリウス様が爆発寸前だった。普段あれだけ温厚なシリウス様が。わたしはシリウス様ほど医学に詳しいわけでもないけれど、気持ちは、非常によく分かる。
「あの、すみません。一体、何のお話でしょう……?」
セラの問いかけに、シリウス様は一度ぐしゃぐしゃと頭を掻いた後、長い長いため息を吐いた。
「……これは、俺の勘なんだけど。リッカは心臓か、もしくは循環器系のどっかの病気だと思う」
ドクンと、強く心臓が跳ねた。わたしは思わず胸を抑える。
セラは、信じられないと言わんばかりの口調で呟いた。
「ご病気……ですか?」
「詳しいことは、ちゃんと診てみないと分かんないけど……多分、そうとしか……」
「でも、ヨハン・ワイルダーが『お嬢様を呪った』と、ちゃんと証言されたのですよ? お嬢様の症状が病気故なのだとしたら、一体どうしてヨハンは、お嬢様を呪ったなどと言ったのでしょう?」
あ、と、シリウス様は言葉にならない声を漏らした。やがて力なく肩を落とすと「そっかぁー……」と項垂れてしまう。
「あー……そうだったな、呪い……確かにリッカを呪ったって、そう証言したんだっけ……」
わたしもヨハンの言葉は聞いていた。確かに、実際呪ってもいないのに、わざわざ『私が呪いました』なんて言う奴はいないだろう。意味が分かんないし。
「国外での医学のお話については、後ほど詳しくお話お聞かせいただきたいですね。でも、まずはお嬢様にお薬を飲んでいただくことが先です」
あぁ、そう言えばそうだったっけ。
もう白湯は冷めてしまっていた。「温め直してきますね」とセラは立ち上がる。
「……つい、これでリッカを助けられると思ったんだがなぁ……」
シリウス様は残念そうに言いながら、わたしを抱きしめていた腕を離した。しょんぼりと俯いているので、わたしも苦笑いを浮かべてみせる。
「やっぱり『呪い』らしいですからね」
「だな……あーっ、もう、なんでリッカのこと呪ったりしたんだよ! 俺も黒曜と一緒に行けば良かった、そしたらあいつと一緒に、リッカを呪ったクソ野郎をぶっ飛ばしてやれたのに!」
「ぶ、ぶっ飛ばすのは無理かと……」
鉄格子があるのだし。わたしのこととなると暴走しがちな兄だって、さすがに鉄格子越しにヨハンをぶっ飛ばすのは無理だろう。
……無理だよね?
その時、廊下を走る足音が聞こえた。おや? と顔を上げた瞬間、勢いよく部屋の扉が開かれ、兄が姿を見せる。
まだ外套を羽織ったままの兄は、そのままわたしの元へ駆け寄ってくると、問答無用でわたしのことをぎゅうっと強く抱きしめた。
「わっ、お兄様?」
「坊っちゃま、お帰りになったのですね」
「黒曜、ちょっと、リッカが苦しそうだぞ。手加減手加減」
しかし兄は、わたしたちの声かけにも耳を貸さず、ただずっとわたしを抱きしめていた。その身体が小刻みに震えていることに、わたしは気がつく。
ヴァルヌス監獄島で、もう一度ヨハンの話を聞きに行っていたと思うのだが、何かあったのだろうか?
「……お兄様? 何か、ありましたか?」
兄をぎゅうっと抱きしめ返し、そっとわたしは問いかけた。やがて、押し殺すような兄の言葉が返ってくる。
「……嘘だった」
「え?」
「ヨハンが語ったこと、全部……自白剤より強い魔法が、あいつに掛けられていて……それを解いた後問い詰めたら『リッカは呪われてない』って、言うんだ、あいつ……」
「……呪われて、ない?」
首を回して、シリウス様と目を合わせた。
これまで感じたことのないほど、強い緊張を感じる。
兄はへこたれた声で「あぁ」と呟いた。
「もう僕には、どうしていいか分からない……ただ、リッカの呪いを解いてほしいだけなのに。呪いじゃないって、だったら一体何なんだよ……」
……兄の嘆く声を聞いていると、じわじわと、実感が伝わってくる。
シリウス様はにんまり笑うと、兄の背中を勢いよく叩いた。兄に抱き締められているわたしにも伝わる衝撃だ。
「リッカ、黒曜! やったな!」
「……えっ?」
「ありがとうございます、お兄様! これで言質が取れました!」
「えっ、えっ?」
いきなり大はしゃぎし始めたわたしとシリウス様に、兄は戸惑った顔をしていた。お顔に「意味がわかりません」とはっきり書いてある。
わたしは兄から身を離すと、兄の顔をじっと覗き込んだ。
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