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第1章 月森ヶ丘自由学園
腹黒執事はトラウマを植え付ける…
しおりを挟む-中華街 南京町に入ったところで岬はふと、足を止めた。気になった原先輩は岬に脇に抱えられたまま顔を上げると、そこには円い黒サングラスをかけた怪しいチャイナ服の男…
「崙、気付いていたなら手伝え」
岬は苛立った様子で舌打ちするが、崙はそんな岬にニッコリ笑う
「嫌アル。部下の後始末は関係あっても、その子を直接助ける義理はないネ。…それに、夜は苦手ヨ。なにより面倒くさいネ!」
……この男、いけしゃあしゃあとっ!!!
平然と面倒くさいからと言い張る男、崙に軽く殺意が芽生える岬だった‥。
「………よし、その口…ふさぐか」
すらっ…
岬は脇に抱えていた原先輩を地面に下ろすや腰に提げていた真剣を抜く
「じょ、ジョークネ!だから、ボス!その物騒なモノ早くしまってヨ」
ただならぬ殺気に気付いた崙は、岬に言うが
「………お前、一度地獄に行かせてやろうか?」
やめようとしない岬、
「ちょーっと!!なに、考えてるんですかっ!!!だめですって!あ~もうっ ほらっ 彼、びっくりして硬直してるじゃないですか」
そして、ヤバイと感じたシフォンはいつもの如く上司である岬のストッパーとして止めに入ったのだった。
…結局、崙のテリトリーである中華街の今岬達のいる宿で匿うことで落ち着いた--
ふと、時計を見ると深夜3時
岬はふぅ…と溜息つくと再度フードを被り、また外へと向かう
「原先輩、事が全て片付きましたら学園へ帰れますから、それまでは此処にいて下さい」
岬は振り返ることなく、そう告げると、そのまま外へ出て行く。
そしてその後をシフォンが追った。
月の光りに照らされた二つの影は欠伸を噛み殺す
「………三日間の徹夜は本気でキツい…」
背の低い少年、もとい岬は気怠そうに溜息を漏らす
「そんなあからさまな溜息をつかないでくださいよ。俺だって眠いんですから…」
片眉を下げ、シフォンは岬を見つめる
「…そういえば、隊長?電話で寝不足だと言ってましたが……… まさか、本当に睡眠を取れてないんですか!?」
「………もうすぐ、一週間になる‥」
その岬の言葉にシフォンは一瞬、目を丸くした。
「は!?一週間!!? なんで、またそんな…」
信じられないと自分よりも幾分背の小さい上司をまじまじと見るシフォンに岬は質問に答えた
「…僕は元々、睡眠にはデリケートなんだ。低血圧でもあるが、中々寝付けない体質でな。たださえ慣れない環境だというのに、学園ではクラス委員を始め、風紀委員長まで押し付けられ……
問題を片付けても、喧嘩も強姦も絶えない‥寝る暇も惜しんで、夜間をパトロール。あげく、学園長に監視役を付けられ、寮に帰宅すれば部屋の中は盗聴器だらけ。四六時中監視、壊しはしたが、
たださえ、僕は睡眠にデリケートな体質なんだ。結局は寝られなくて、寝ようとしても眠れない‥
だから、ここ最近は寝不足の状態で少しキツイ。………イライラして堪らないんだ」
最初こそは岬の身を按じていたシフォンだったが、最後の言葉に絶句した
(もしかして、昼間に女性に当たったのって…… 糖分じゃなくて、本当は寝不足で苛立っていたんじゃ…)
昼間の事件に妙に納得したシフォンは、それと同時に自分の身の危険を感じたのだった…。
「………」
岬をジ…と見つめたシフォンは思う。
「………」
(っていうか、室長って‥もしかして、不眠症…?まさかっ!さっき、崙さんに真剣を抜こうとしたのも……もしかして……Σまずいですね、本格的にまずいかもしれない。もし、俺の考えが正しければ…
室長は…キレやすくなってる!!? しかも、その原因が寝不足だとすると、糖分をいくら摂取したところで睡眠がとれるわけじゃないっ!!根本的に寝不足を解決しないと、糖分をいくら摂取しても、全くの無意味じゃないですかっ!)
「……あの、隊長。祖国では眠れていたんですか?」
ふと思い浮かんだ疑問をそのまま岬に聞く。
「あぁ…、祖国、家では普通に寝れていた。昔はそうでもなかったが。いつからか、僕の専属執事が寝る前によく紅茶を煎れてくれるようになったんだ。
そういえば……」
「…そういえば?」
シフォンはその先を促す
「そういえば…、その紅茶を飲むようになってからかな…? 寝れるようになったのは‥。
いや、ちがうな。正しく言えば猛烈に眠気がして、気がついたときには自分はベッドに、
外は朝を迎えているというのが、いつの間にか、それが日課となっていたな… 」
いや、紅茶とはすごいな。と岬は言うも、シフォンは賛同できなかった…
(…いや、それ、ちがいますよ!!! 明らか、その専属執事に故意に眠らされてるじゃないですかっ!
その眠気を誘う紅茶をなぜ疑問に思わないんですか!! そこは普通、煎れられる紅茶に睡眠薬でも盛られてるかもって疑うところでしょう!!?)
眠気を誘う紅茶は凄いと言う岬に、ここまで疎いド天然野郎も凄いですよ。と内心呆れるシフォンだった。
「…シフォン、お前…今、馬鹿にしただろ」
隣にいるシフォンに冷ややかな目で見据える岬は静かに問う
「さっきまで話していたことは全て昔の話し。いくら僕でも、さすがに気付く」
そう答える岬に些か、安堵の溜息を漏らすシフォン。自分の上司がそこまで鈍くないようで幾度か安心したのだった‥。
「…僕はこれでも、毒味には慣れているからな…、気付かない方がおかしい。だが、僕の専属執事は特殊でな。薬師の免許も持っているらしい。まだ、二十前後だというのに…
その腕は凄いらしく、薬を盛られても違和感を感じなくてな、気付くのに時間がかかった」
「へぇ… 凄い方なんですね」
(…そんな執事、俺は嫌ですけど)
「日本人だが、……あの性格は世界一タチが悪い」
(日本人ですか、また珍しいですね…)
「へ、へぇ…タチが悪いんですか」
(いや、俺はあんたもタチが悪いと思います…)
「…常にニコニコ顔で尚且つ、腹黒い。おまけに人の嫌がる顔を好むドS…。おかげで今では、トラウマになりつつある」
過去を振り返ってか、苦々しげに漏らす岬に、
そんな顔をさせる専属執事という人物に会ってみたいと思う半面、何故か、恐怖を感じるシフォンだった‥。
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