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- 陰の王国と廻りだす歯車 -
一一ジークside 【謎多き従者ジークと友】
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ーージークside
涙のあとを残して眠っているオーディット王子。そして、それを愛おしそうに頭を撫でるジキルドは… 今までみたことがないような優しい笑みを浮かべていた。
ジキルドは変わった。だが、それ以上に変わったのは弟君にあたるオーディット王子だ。以前までは母親にベッタリ、というわけではないが、それでも部屋から出て来ることもあまりなく、またジキルドと一言二言しか話すことがなかったことに比べると、今のオーディット王子は… 誰が見てもわかるように、明らかに変わった。
さらに言えば、
纏う雰囲気が… 変わった。
そうだな、敢えて言うなら今のオーディット王子は… 少し?いや、だいぶ天然が入っているような気がする。以前のオーディット王子は可愛らしさというのは微塵も感じなかったわけだが。
どういうわけか、
それこそ何にも染まっていない汚れを知らなさそうな純真無垢さえ感じてしまうから、その変わりように驚きだ。
現に、ジキルドも先ほどまでいたメイドや執事たちも俺と同じく驚いていたのだから、誰から見ても以前と変わったのは間違いないのだろう。
前までのオーディット王子は… 人にも物ごとにも無関心だった。確かに、母親の王妃に部屋に軟禁状態だったとはいえ、自ら外に出る機会はそれこそいくらでもあった。彼女だって、公務で外出することはあるのだからな。その隙を突いて部屋から出ることは… いくらでも出来たはずだ。部屋の外にだって、息子を信頼…というよりは、物ごとに無関心なことを知っている故に、と言ったほうが正しいか…。
見張りの兵を立たせることは一度も無かったのだからな。
まるで、人形のように… あらゆることに無関心で、言われたままに ただ頷く、自分の意思さえ感じない… それが以前のオーディット王子に対する印象だった。
全ての引き金になったあの日。
あの日だけは、何を思ったのか…。どんな心境で何がそうしたのかわからないが、あの一件以来、オーディット王子の全てが変わった一一。
まあ、確かにオーディット王子のあのときの心境は知るよしもないが、今のオーディット王子が別人なのは気付いている… と言うよりは知っている。そして、ジキルドが俺に隠していることも…。
各それぞれ二人が秘密を抱えているのは知っている。そしてその秘密も。だが、本人たちが必死に隠そうしているなら、わざわざ暴くこともない故に今は黙っている。俺なりの優しさ、というよりは寧ろ、今よりややこしくなりそうだからだ。
特に、ジキルドに関しては。
気になったことにはいくらでも追求してくるジキルドは… はっきり言って少しくどい所がある。一度懐に入れると、過剰なくらい過保護になる。これはオーディット王子が良い例だ。
兄弟仲の修復に少々… いや、かなり手を焼いているようだが。そのことにも苦には感じさせず、『お菓子は何が好みだろうか?』とか、『なに?護衛を連れて行く?いや、必要ない。弟のところには私と一緒にジークが行くから必要ない』その他にも『公務で訪問した隣国の土産物は喜んでくれるだろうか』口を開けばオーディット王子のことばかり。
ハッキリ言おう。
あれはブラコンだ。確かに変わったものの、そこまで弟の気を引こうとするジキルドに、苦笑いしか もはや出て来ない。
まあ、それでも俺は今のジキルドのほうが前よりも人間味があって好きだが。オーディット王子と同じく、以前のジキルドは周りに信頼できる者が限られてるせいか、それこそ『冷酷王』の言葉が当て嵌まる、醸し出すオーラと無表情で冷たい印象が強かった。
そんなジキルドが変わったのは…
オーディット王子の変化だ。オーディット王子の変化は良い意味でジキルドさえも変えた。
そして、その二人の関係はこの国を何れ変える。いや、この世界か…。二人がもたらすのは吉となるか凶となる災厄か。俺はジキルドにさり気なく助言で答えを導くことしかできないが、それでもジキルドはこの国の王として、良くやっていると思う。
今後、数奇な運命と苦難な試練が二人を… いや、寧ろこの場合はオーディット王子にとってかなりの荊道となるかもしれない。
あの二人のことは好きだ。ジキルドもオーディット王子も。そしてこの世界も…。だから、俺は一一。
涙のあとを残して眠っているオーディット王子。そして、それを愛おしそうに頭を撫でるジキルドは… 今までみたことがないような優しい笑みを浮かべていた。
ジキルドは変わった。だが、それ以上に変わったのは弟君にあたるオーディット王子だ。以前までは母親にベッタリ、というわけではないが、それでも部屋から出て来ることもあまりなく、またジキルドと一言二言しか話すことがなかったことに比べると、今のオーディット王子は… 誰が見てもわかるように、明らかに変わった。
さらに言えば、
纏う雰囲気が… 変わった。
そうだな、敢えて言うなら今のオーディット王子は… 少し?いや、だいぶ天然が入っているような気がする。以前のオーディット王子は可愛らしさというのは微塵も感じなかったわけだが。
どういうわけか、
それこそ何にも染まっていない汚れを知らなさそうな純真無垢さえ感じてしまうから、その変わりように驚きだ。
現に、ジキルドも先ほどまでいたメイドや執事たちも俺と同じく驚いていたのだから、誰から見ても以前と変わったのは間違いないのだろう。
前までのオーディット王子は… 人にも物ごとにも無関心だった。確かに、母親の王妃に部屋に軟禁状態だったとはいえ、自ら外に出る機会はそれこそいくらでもあった。彼女だって、公務で外出することはあるのだからな。その隙を突いて部屋から出ることは… いくらでも出来たはずだ。部屋の外にだって、息子を信頼…というよりは、物ごとに無関心なことを知っている故に、と言ったほうが正しいか…。
見張りの兵を立たせることは一度も無かったのだからな。
まるで、人形のように… あらゆることに無関心で、言われたままに ただ頷く、自分の意思さえ感じない… それが以前のオーディット王子に対する印象だった。
全ての引き金になったあの日。
あの日だけは、何を思ったのか…。どんな心境で何がそうしたのかわからないが、あの一件以来、オーディット王子の全てが変わった一一。
まあ、確かにオーディット王子のあのときの心境は知るよしもないが、今のオーディット王子が別人なのは気付いている… と言うよりは知っている。そして、ジキルドが俺に隠していることも…。
各それぞれ二人が秘密を抱えているのは知っている。そしてその秘密も。だが、本人たちが必死に隠そうしているなら、わざわざ暴くこともない故に今は黙っている。俺なりの優しさ、というよりは寧ろ、今よりややこしくなりそうだからだ。
特に、ジキルドに関しては。
気になったことにはいくらでも追求してくるジキルドは… はっきり言って少しくどい所がある。一度懐に入れると、過剰なくらい過保護になる。これはオーディット王子が良い例だ。
兄弟仲の修復に少々… いや、かなり手を焼いているようだが。そのことにも苦には感じさせず、『お菓子は何が好みだろうか?』とか、『なに?護衛を連れて行く?いや、必要ない。弟のところには私と一緒にジークが行くから必要ない』その他にも『公務で訪問した隣国の土産物は喜んでくれるだろうか』口を開けばオーディット王子のことばかり。
ハッキリ言おう。
あれはブラコンだ。確かに変わったものの、そこまで弟の気を引こうとするジキルドに、苦笑いしか もはや出て来ない。
まあ、それでも俺は今のジキルドのほうが前よりも人間味があって好きだが。オーディット王子と同じく、以前のジキルドは周りに信頼できる者が限られてるせいか、それこそ『冷酷王』の言葉が当て嵌まる、醸し出すオーラと無表情で冷たい印象が強かった。
そんなジキルドが変わったのは…
オーディット王子の変化だ。オーディット王子の変化は良い意味でジキルドさえも変えた。
そして、その二人の関係はこの国を何れ変える。いや、この世界か…。二人がもたらすのは吉となるか凶となる災厄か。俺はジキルドにさり気なく助言で答えを導くことしかできないが、それでもジキルドはこの国の王として、良くやっていると思う。
今後、数奇な運命と苦難な試練が二人を… いや、寧ろこの場合はオーディット王子にとってかなりの荊道となるかもしれない。
あの二人のことは好きだ。ジキルドもオーディット王子も。そしてこの世界も…。だから、俺は一一。
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