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運命~エロなし~
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運命は時に残酷だ。
「え!木村くんが僕の相手なの?」
「あぁ、運が悪いな、木梨」
木梨に木村と呼ばれた青年は嫌そうに顔を歪める。
20xx年。木村たちの生きる日本では運命法が制定されている。運命法とは同性同士で婚姻を結ぶというものだ。その法に適応されるのは遺伝子学的に100%の相性を持った人物たちである。同性同士で子供を作れる今の時代では、そちらの方がより有能な子どもが育つらしい。そして、今日木村と木梨はお互いの運命の相手に出会った。
「でも、ホッとしたよ。知り合いで」
「俺は納得してない。どうして国に結婚相手を決められないといけないんだ。しかも男と」
木村がそういうと木梨は困ったように笑った。木村は少し反省した。どうにもならないことなのに、木梨に悪いことを言ったかもしれない。
「苗字はどちらのを使用しますか?」
役所の女性が2人に問いかける。2人は顔を見合わせると困った顔をした。
「俺は正直どっちでも良い」
「じゃあ、僕が木村にするよ。木村幸太郎、悪くないでしょ?」
「じゃあ、そうしてくれ」
「かしこまりました」
役員は必要なことを記入していく。木村はただ、その光景を冷ややかに見ていた。
「これで、お二人は夫婦です。住居はこちらで用意したので今日からそこでお過ごしください」
木村たちは役所を出て、指定された家の地図を見ながら歩き出す。その足取りは決して軽いものではない。
「木村くん。あの…僕でごめんね」
「なんで、お前が謝るんだよ。別にお前のせいじゃないだろ」
「そうなんだけど…」
「どっちかっというとお前も被害者だろ」
「僕はその…木村くんだったから気持ちが落ち着いてるんだ」
「変な奴だな」
「相性が良いからかな?」
「前向きな奴」
木村は今日初めて笑った。木梨も笑顔になる。
「幸太郎。今日からよろしくな」
「…!うん!ありがとう、聖君!」
下の名前で呼ぶと聖の心は穏やかになった。さっきまで、不満で不幸を嘆いていたとは思わないほどに。
「どうせ逃げられないなら、いっそ楽しんで見るか。お前との夫婦生活を」
「僕はきっと聖君と一緒なら楽しいと思うんだ。だって、同じクラスってだけだったのに、もうこんなに打ち解けたもん」
「だな。悔しいけど、間違えてなかったのかもしれないな」
「え?」
「運命ってやつ」
聖はそう言うと、思わず足を止めてしまった幸太郎に目もくれず清々しい顔で歩いて行った。その背中を見て、幸太郎は顔が熱くなるのを感じた。
「何してんだよ。行くぞ!」
「うん」
幸太郎は駆け足で聖の隣まで行くと、2人で夕日に染まるアスファルトの上を歩いて行った。
「え!木村くんが僕の相手なの?」
「あぁ、運が悪いな、木梨」
木梨に木村と呼ばれた青年は嫌そうに顔を歪める。
20xx年。木村たちの生きる日本では運命法が制定されている。運命法とは同性同士で婚姻を結ぶというものだ。その法に適応されるのは遺伝子学的に100%の相性を持った人物たちである。同性同士で子供を作れる今の時代では、そちらの方がより有能な子どもが育つらしい。そして、今日木村と木梨はお互いの運命の相手に出会った。
「でも、ホッとしたよ。知り合いで」
「俺は納得してない。どうして国に結婚相手を決められないといけないんだ。しかも男と」
木村がそういうと木梨は困ったように笑った。木村は少し反省した。どうにもならないことなのに、木梨に悪いことを言ったかもしれない。
「苗字はどちらのを使用しますか?」
役所の女性が2人に問いかける。2人は顔を見合わせると困った顔をした。
「俺は正直どっちでも良い」
「じゃあ、僕が木村にするよ。木村幸太郎、悪くないでしょ?」
「じゃあ、そうしてくれ」
「かしこまりました」
役員は必要なことを記入していく。木村はただ、その光景を冷ややかに見ていた。
「これで、お二人は夫婦です。住居はこちらで用意したので今日からそこでお過ごしください」
木村たちは役所を出て、指定された家の地図を見ながら歩き出す。その足取りは決して軽いものではない。
「木村くん。あの…僕でごめんね」
「なんで、お前が謝るんだよ。別にお前のせいじゃないだろ」
「そうなんだけど…」
「どっちかっというとお前も被害者だろ」
「僕はその…木村くんだったから気持ちが落ち着いてるんだ」
「変な奴だな」
「相性が良いからかな?」
「前向きな奴」
木村は今日初めて笑った。木梨も笑顔になる。
「幸太郎。今日からよろしくな」
「…!うん!ありがとう、聖君!」
下の名前で呼ぶと聖の心は穏やかになった。さっきまで、不満で不幸を嘆いていたとは思わないほどに。
「どうせ逃げられないなら、いっそ楽しんで見るか。お前との夫婦生活を」
「僕はきっと聖君と一緒なら楽しいと思うんだ。だって、同じクラスってだけだったのに、もうこんなに打ち解けたもん」
「だな。悔しいけど、間違えてなかったのかもしれないな」
「え?」
「運命ってやつ」
聖はそう言うと、思わず足を止めてしまった幸太郎に目もくれず清々しい顔で歩いて行った。その背中を見て、幸太郎は顔が熱くなるのを感じた。
「何してんだよ。行くぞ!」
「うん」
幸太郎は駆け足で聖の隣まで行くと、2人で夕日に染まるアスファルトの上を歩いて行った。
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