366日の奇跡

夏目とろ

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[第1章]生徒会長始めました

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 やることがいっぱいある時って、どうしてこんなにも時間が経つのが早いんだろう。今日も俺は誰とも喋らないまま午前中の授業を終えてしまった。教科書を仕舞い、ノートパソコンとお惣菜パンとおにぎりが入った紙袋を抱えた俺は生徒会室へと急ぐ。
 どうでもいいけどさっきまで授業中だったからか、俺ってば独り言さえも口にしてないわ。生徒会室に篭って仕事してる時や俺一人の時間は、わりと独り言も口にするのに。

 生徒会の仕事がなくても基本的に一人で過ごしてはいたけど、今は一人でもやることがありすぎてゆっくりする暇もない。そんだけ余裕がないってことか。渡り廊下に差し込む陽射しは暖かく、春の息吹を感じるのに。
 取りあえず昨日までの分の情報処理は終わったから、昼休みは生徒会室から持ち出し禁止の書類に取り掛かろうかな。……っとに、書面かパソコンかどっちか一つに統一してくれたら仕事もはかどるだろうに。
 
 なら、書類じゃなくてノートパソコンでのデータ管理がいいな。なんてったって書類とパソコンでの管理とで重複するデータもあるし、とてもじゃないけど一人で熟せるもんじゃない。

 ……やっぱ謝ろうかな。

 多分俺の教え方っつーか、言い方も悪かったんだろうし。

 葉桜が眩しい中庭を抜け、生徒会室を目指す。時間がないから行儀悪いけど、おにぎりを頬張りながら廊下を行く。会長の俺のそんな姿にも反応するやつは誰もいなくて。やっぱ俺は影が薄いんだなあ、なんて痛感したりなんかして。
 去年の執行部メンバーは廊下を歩く度に黄色い声が上がったり、人だかりが出来たりしてたっけ。一緒にいることがないからわからないけど、きっと俺以外のメンバーはそんな感じなんだろうな。

 思わず大袈裟な溜息を一つ。学食の前を通ったら片隅に人だかりが出来ていた。その場所は代々、生徒会メンバーの指定席だから誰かがそこで飯を食っているんだろう。
 俺には学食でゆっくりするような時間はなく、ペットボトル入りのお茶で惣菜パンを胃の中に流し込みながら先を急ぐ。

「きゃー、鷹司様ぁー!」

 はぁ……。あそこにいるのは鷹司かよ。

 だけど多分一人じゃないはずで、いつも一緒の椿野もそこにいるはずだ。ってか、別にいいけど会長様がすぐ側を通ってるのにしかとかよ。多分、俺が会長だってことも知らないんだろうけど。
 そんなこんなでおにぎり一個と惣菜パンを一個食い切ったと同時に、俺は生徒会室に着いた。これにて昼飯チャージ完了。あとは仕事をするだけだ。

 さあ、やるか。昼休みはまだたっぷりあるし、なんとか今日の分の仕事は今日中に出来るかな。
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