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23話 島根県のある場所にて
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カムスサは、島根県の山奥にある祠へと赴いていた。
この祠には、ある悪霊が奈良時代より封印されている。人を喰らい、未曾有の災害を興したとされるあやかしだ。
苔が生えている祠からは、うっすらと禍々しい妖気が溢れている。悪意が詰まった妖気を前に、カムスサはにやりとした。
禁じられし魔物を用いれば、仁王から人間を追い払える。
奈良時代に現れたこのあやかしは、人とあやかしの混血児によって打ち払われ、封印された。封印を解くには、多量の妖気を捧げる必要がある。
「人間どもめ、必ずや我が地を取り戻してくれる」
仁王市はカムスサが生まれ育った地だ。かつては美しい木々が広がり、あやかし達がのびのびと暮らす場所だった。
平安時代から、人間達が森を切り開き始めた。
その頃は特に何も思わなかった。自分達を祀る神社を作り、年に何度かあやかしを尊ぶ祭りや舞いを開いたり、それなりに楽しい時間を過ごせていたから。
だが時が経つにつれ、人間はあやかしへの敬意を失っていった。
気づけば木々は無くなり、奇怪な建造物が立ち並び、誉れ高かった自然も失われた。カムスサの愛した世界が、瞬く間に壊れてしまったのだ。
人間達が一方的に押し付けてきた狼藉の数々、断じて許せるものではない。カムスサは1人抗い、山々から人間を追い返した。
だと言うのに、他のあやかし達からは幾度も非難を浴びた。
「何が人間は自然の一部だ、今の街も自然の延長だ。我らあやかしの誇りを忘れたか」
人間達の造ったものなど自然ではない、奴らに迎合して生きる同胞達は、あやかしの誇りを失ってしまった。
あやかしとは人間の上位種だ、奴らから恐れ、敬われる存在でなければならない。
人間達を追い払い、今一度あやかし達の尊厳を取り戻すのだ。
「誰かが血に染まらねば、誰かがやらねばならぬのだ」
カムスサはあやかし達から集めた妖気を捧げた。同胞を襲い集めた、汚れた妖気だが……本懐を成すための、必要な犠牲だ。
大丈夫、殺してはいない。少し妖気を貰っただけ、数ヶ月は昏睡するだろうが、死にはしない。
「我が理想を成した暁には、必ずや理解してくれるだろう。さぁ甦れ、ヤマタノオロチよ!」
祠が砕かれ、古の時代より眠っていた悪意が、再び世に解き放たれた。
この祠には、ある悪霊が奈良時代より封印されている。人を喰らい、未曾有の災害を興したとされるあやかしだ。
苔が生えている祠からは、うっすらと禍々しい妖気が溢れている。悪意が詰まった妖気を前に、カムスサはにやりとした。
禁じられし魔物を用いれば、仁王から人間を追い払える。
奈良時代に現れたこのあやかしは、人とあやかしの混血児によって打ち払われ、封印された。封印を解くには、多量の妖気を捧げる必要がある。
「人間どもめ、必ずや我が地を取り戻してくれる」
仁王市はカムスサが生まれ育った地だ。かつては美しい木々が広がり、あやかし達がのびのびと暮らす場所だった。
平安時代から、人間達が森を切り開き始めた。
その頃は特に何も思わなかった。自分達を祀る神社を作り、年に何度かあやかしを尊ぶ祭りや舞いを開いたり、それなりに楽しい時間を過ごせていたから。
だが時が経つにつれ、人間はあやかしへの敬意を失っていった。
気づけば木々は無くなり、奇怪な建造物が立ち並び、誉れ高かった自然も失われた。カムスサの愛した世界が、瞬く間に壊れてしまったのだ。
人間達が一方的に押し付けてきた狼藉の数々、断じて許せるものではない。カムスサは1人抗い、山々から人間を追い返した。
だと言うのに、他のあやかし達からは幾度も非難を浴びた。
「何が人間は自然の一部だ、今の街も自然の延長だ。我らあやかしの誇りを忘れたか」
人間達の造ったものなど自然ではない、奴らに迎合して生きる同胞達は、あやかしの誇りを失ってしまった。
あやかしとは人間の上位種だ、奴らから恐れ、敬われる存在でなければならない。
人間達を追い払い、今一度あやかし達の尊厳を取り戻すのだ。
「誰かが血に染まらねば、誰かがやらねばならぬのだ」
カムスサはあやかし達から集めた妖気を捧げた。同胞を襲い集めた、汚れた妖気だが……本懐を成すための、必要な犠牲だ。
大丈夫、殺してはいない。少し妖気を貰っただけ、数ヶ月は昏睡するだろうが、死にはしない。
「我が理想を成した暁には、必ずや理解してくれるだろう。さぁ甦れ、ヤマタノオロチよ!」
祠が砕かれ、古の時代より眠っていた悪意が、再び世に解き放たれた。
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