「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

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4話 独裁政治を見せつけ、奴隷の末路を教えてやる

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 城内引き回しはつつがなく進んでいた。
 食堂から兵士宿舎、厩舎、メイド達の紹介と、くまなく魔王城の案内を受けたセレヴィは、感心するばかりだった。
 早朝、日勤、夜勤の三交代制にして業務に余裕を持たせ、残業をゼロにする試みをしている他、人員に余裕があるため休日も確実にとれる上、夜勤や日勤のみのシフトも調整できる柔軟性もある。ライフワークバランスが整っており、奴隷にとって優しい環境が出来ていた。

 リティシア王国は常に人員不足な上に業務はいつもかつかつ、残業だってザラ、休日が潰れるのも多いと、まるで真逆の職場環境である。
 ここの奴隷が羨ましい。と言うかほんとにこれ奴隷? つーか引き回しじゃなくね? セレヴィの混乱は深まる一方だ。

「いや待てよ、魔王城がここまで潤っているんだ。どうせ民には重税を強いて苦しい生活をさせているに違いない」
「城下町に興味があるか、ならば良し! ついて来い」

 ガレオンは意気揚々と城下町へ繰り出した。護衛も付けずにだ。
 曰く、「魔王の護衛など人件費の無駄だ」との事。そういう問題だろうか。トップならば護衛の一つくらいつけないと危ないだろうに。

「まー、主様は別として。あーしがあーたの護衛って事でしくよろっす」
「私にも護衛なんて必要ない、自分の身くらい自分で守る」
「守れるんすか? あーしにも多分勝てねっすよ」
「メイド如きに遅れは取らぬ。私はリティシア王国騎士団精鋭部隊に所属していたのだぞ」
「これでもあーし、幹部なんすけど」

 セレヴィは足を止めた。

「幹部?」
「そうっす、ガレオン様が持つ最高戦力の一角、メイド長のマステマっす」
「メイド長なのか貴様!? しかもそれが最高戦力!? どんな配置してるんだこの魔王!?」
「ふん、実力があればどんな奴でも上に登用してやる。俺に必要なのは忠誠心を持った実力のある奴隷のみ! 力を持たぬ奴らなど不要だ」
「こんなぐーたらメイドに何ができるんだ?」
「眠らせる事っすよ」

 マステマが指を鳴らすなり、セレヴィは眠気に襲われた。
 湯あみをしていた時もやられた。どうやら魔法で自在に相手を眠らせられるようだ。

「相手を眠らせりゃあボコり放題っすからね、あーたも眠らせた上でタコ殴りにすればイチコロっすよ」
「なんと卑怯な……眠い……」
「寝たら叩き起こすぞ。城下町を見るがいい、そして領民どもを見て絶望しろ」

 そうだった、本題を忘れるところだった。どれだけ圧政を強いているのか、この目に焼き付けてやる。

「魔王様だ! 魔王様ー!」
「魔王ガレオン様バンザーイ! バンザーイ!」
「こっち向いてくださーい! あとサインも!」

 街に出るなり、あちこちからガレオンコールが鳴り響く。あっという間にガレオンの周りに人だかりが出来てしまい、セレヴィははらはらした。
 魔王を刺激したらどんな仕打ちが来ることか、気が気ではない。急いで止めないと誰かが傷ついてしまう!

「愚民どもが、魔王のゆく道を塞ぐんじゃない! 強請らんでも握手とサインをくれてやるから順番に並べ」
「ファンサービス完璧かっ!」
「ただしキリがないから先着百名だけだぞ、それ以外は仕事の邪魔だとっとと消えろ、後日別途でサイン会開いてやる」
「アフターフォローも完璧かっ! というよりどれだけ人気なんだこいつ!」
「驚異の支持率百パーセントっすよ、野党も元老院もないんで独裁政治強いてるっすけど」
「ああ、そうか、独裁者だから洗脳されているんだな、そうなんだな!」

 道すがらに聞いた税金額はリティシア王国よりも高かった。これでは民も苦しい生活を強いられているに違いない。

「医療費が無料のおかげで安心して母を入院させられました、おかげで助かりそうです!」
「学費が無料ですから、心おきなく息子を学校に行かせられます。なんと礼を言えば……!」
「え、無料?」
「医療費や学費どころか、鉄道も馬車も船も、果ては銭湯まで全部無料っすよ。税金は高いっすけど、その分還元率が凄まじいんで、公共施設全部無料で使えるんすよ。水とかのライフラインも使い放題で生活費を安くできるから、貯蓄もちゃんと出来るっす」
「世界一優しい独裁政治!?」

 というよりこれ独裁と呼べるのだろうか。こんだけクリーンな政治をしてりゃあ支持率百パーセントなのも頷ける。
 いや、絶対裏がある。
 仮にも相手は魔王だ、何の見返りもなく民に尽くすはずがない。
 政治の世界は謀略渦巻く暗黒世界、横領、賄賂、利権……様々な思惑が交差する泥沼だ。
 例えば裏で人体実験をしたり、気に入らない奴をでっち上げの罪で投獄したり、国の暗部があるに違いない。
 だまされるな民よ、こいつは裏で謀略を企んでいるぞ。

「しかし、よく見ると民にも奴隷のマークがあるな」
「何をいまさら、主様の領民はもれなく奴隷っすよ。全員これが付いてるっす」
「全員だと?」
「人間界に居るんじゃ、魔界の事情なんかわかんねっすよね。軽く説明したい所っすけど面倒なんで自分で調べてくれっす」
「仕事せんか!」

 しゃあないので、ガレオンについて、魔界について調べてみた。
 魔界には四十を超える魔王が居り、日夜激しく勢力を繰り広げている群雄割拠の世界だ。
 領域間の関係は非常に悪く、交流などはまずありえない。それどころかよそ者と知られるや否や、犯された上でなぶり殺しにされるというではないか。

 常にどこかで戦争が起こっている、そんな世界において、ガレオンは一強とされる最強の魔王である。
 魔界統一を目標にしている彼は、既に世界の三割を掌握しており、絶対的な力を持っている。しかもガレオンの領民……つまり奴隷を少しでも傷つければ、全戦力を持って報復に来るという徹底ぶりだ。
 そのため、「ガレオンの奴隷には絶対に手を出すな」というのが魔界のルールとなっており、他の領域へ向かったとしても安全が確保されているわけだ。

「結果的に、このマークが民を守っている、という事か」
「民ではなく奴隷だ。俺は奴隷を守った事など一度もない。俺は、俺の財産に手をかけた輩を許さないだけだ。俺の物は俺の物だ! 麦の一粒たりとて、他の奴にやる道理などないんだよ!」
「解説、どうも……」

 全部ガレオン本人から教わった内容である。つーか懇切丁寧に教えすぎだろう。

「このガレオン様以上の魔王は他に居ないぞ、お前も良かったな、この俺の奴隷になれて」
「偉そうに……」
「偉そうじゃない、偉いんだよ」

 反論の余地もない。だが、いつまでもガレオンの奴隷で居るわけにはいかない。
 必ず人間界に帰らなければならない、私にはやるべき事があるのだから。
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