「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

文字の大きさ
5 / 93

5話 無理矢理に奴隷契約を結ばせ、虐待を本格化していく

しおりを挟む
 城下町をくまなく散策したが、結論は「ガレオンは非常に安定した政治を行っている」で終わってしまった。
 インフラ関係もリティシア王国以上に整っており、上下水道の完備を始め、公共施設の無料化等、圧倒的に生活しやすい環境だ。
 というかなんで奴隷にこんな優しくしてるんだ、というか奴隷って言えるんだろうか。

「引き回しは終わりだ、どうだ、俺の領土は最高だろう」
「肯定せざるを得ないが、これが引き回しと呼べるのか」
「俺が引き回しだと言ったら引き回しだ、ではそろそろ、お前の処遇を決めないとな」

 セレヴィははっとした。そうだ、魔界には自分の居場所がない。
 まさか、人間界から来た私は、過酷な労働を課せられるのではないか。
 きっとそうだ。クリーンな奴なんてありえない、こいつは魔王だぞ。絶対私を地下の奥底へ閉じ込めて、強制労働を強いるに違いない。

 そんな場所へ落とされれば、人間界への帰還は夢のまた夢。なんとしても早急に脱出経路を探り、元の世界へ戻らなければ。
 通されたのは、ガレオンの執務室だ。そこでセレヴィは、紙切れを渡される。

「こいつにサインしろ、お前に拒否権はない」
「くっ……!」

 奴隷契約書だ。これにサインしたら最後、永遠の苦痛に堕とされてしまう。
 覚悟し、セレヴィは内容を確認した。

「勤務時間8:45~17:00(休憩1h)
 超過勤務の際は時間に応じて規定額支払い
 年間休日125日 希望休月3日まで可
 試用期間3ヵ月経過後有休15日付与

 ……なんだこれは」

「奴隷契約書だ」
「労働契約書だろどう見ても!」
「引き回しで職場の雰囲気はつかめただろう」
「あれ引き回しじゃなくて職場見学だったんかい!」

 しかも基本給が騎士時代より高い上、交通費全額支給、ボーナス夏冬合計8ヶ月の大盤振る舞いだ。

「何これ!? 相当破格な条件なんだが、私は何をすればいいんだ!?」
「俺の秘書だ。先月前任が寿退職してな、後任を募集していたから丁度良いと思った」
「元敵を秘書に抜擢!?」
「別に能力があるから構わないだろう、ラーゼフォン家令嬢、いいや、当主と呼ぶべきか」

 思わず息が詰まった。

「僅か十七歳でラーゼフォン家の当主となり、二年間領地を運営していたそうじゃないか。実務能力は充分、俺の秘書程度こなせるだろう」

 ガレオンがキスした時、セレヴィの記憶や知識を覗いたのだろう。つまりガレオンは、セレヴィの全てを知っている。

「どこまでだ、どこまで私の事を知った」
「さぁな、言う義理はないし、お前の事情もどうでもいい。俺は秘書が必要だからお前を連れてきただけだ、俺に歯向かう胆力、潔い心根、部下への思いやり。剣を交える中で伝わったぞ。十分な能力があると判断した」
「お前私との戦闘を採用面接扱いしてただろ、というかそれなら魔族にする必要ないじゃないか!」
「人間界と魔界の境界を越えるのに、人間のままじゃ負荷に耐えられないんだよ」
「だからと言って、本人の同意を得ないでこんな」
「殺せと言ったのはお前だ、望み通り「人間として」のお前を殺してやったぞ。そしてお前は自ら命を捨て去った、拾った命をどう扱おうが俺の勝手、違うか?」
「ぐ……屁理屈ばかり」
「言っただろう、お前の命は俺の物、俺の物は俺の物だ。わかったらとっととサインしろ」

 選択肢はない。サインするなり契約書は消え、奴隷のマークが光った。

「契約成立だ、もう客扱いはしない。明後日から業務についてもらうぞ、今日は帰れ、お前の部屋はあそこでいいだろう。好きに使え」
「寮付きなのかこの職場」

 まさかの通勤時間ゼロ分である。おまけに家賃も魔王側が負担してくれるとの事、どんだけ至れり尽くせりだ。

  ◇◇◇

 部屋に戻るなり、セレヴィはため息をついた。
 魔界へ連れてこられて丸一日。怒涛の展開の連続で疲れ切り、頭が痛くなってきた。
 魔王の秘書にされるとは。ラーゼフォン家を束ねる私が、魔王の手伝いをするのか。
 ガレオンのめちゃくちゃ具合を考えると、大変な仕事になりそうだ。というかそんなのやってて人間界に戻れるのか。というかやっていいのか秘書なんて。何をすりゃいいのか全く分からない、研修とかあるのか。

「はぁ……」
「ため息吐くと幸せ逃げるっすよー」
「マステマ、せめてノックしてくれ」
「あーすいやせーん、でもいいでしょ細かい事だしー」
「メイド長なのに作法がなってないな、そもそも私の付き人なんかしていていいのか? メイド長なら仕事も立て込んで」
「あー、とりあえずそこはあーしてこーしてそーしてくれっす」
『かしこまりましたメイド長』

 メイド長は通信魔法でリモートワークを実施していた。

「とまぁこんな感じで仕事してるんで問題ねーっす」
「ファンタジックに最新鋭だな」
「ま、あーしみたいなのでも知り合いが居れば心強くねーっすか。同僚になった事だし仲良くやりやしょーや。明日は研修あるから遅れないように気を付けるっすよ」
「わかったわかった……今は少し休ませてくれ」
「うーっす、なんか用があったらいつでも呼んでくれっす」

「じゃあレモン水を貰っても「あすいやせーん、今休憩時間なんで後でいっすか?」帰れ貴様!」

 マステマを蹴り飛ばし、肩を落とす。こんなんでやっていけるのだろうか、ガレオンはどんな仕事を回すのだろうか。
 唇に触れ、セレヴィは目を閉じる。あの感触が、生々しく蘇った。

「……初めて、だったんだがな」

  ◇◇◇

 ノックもなしに、マステマが執務室に入ってくる。主であるガレオンに無礼なのはいつもの事で、もう慣れてしまった。

「うーっす、戻ったっす」
「あいつはどんな感じだ?」
「からかいがいがあるっすねー、いじりがいがあるっす、あれ結構ドエムっすよ? なんなら主様好みにあーしが調教しても「黙れド阿呆」

 睨まれたマステマが青ざめる、ガレオンからの壮絶な威圧感に耐えられなかったのだ。
 セクハラ御法度の職場なのである。一応今は業務中、立場上厳重注意しなければ。

「ぱ、パワハラっすよ主様……」
「教育的指導だ。どうやら、多少は調子を戻したようだな」

 ガレオンは髪を撫でつけ、襟を正した。
 セレヴィの抱いている闇は深い。人間界で拾わずとも、いずれ自ら命を絶っていたはずだ。
 どうせ死にゆく命ならば、拾い上げてもいいだろう。命は最大の資源だ。特にセレヴィは正義感に溢れ、人種に関わらず手を差し伸べる胆力もある。秘書として相応しい人材だ。

 命を大切にしない奴は、このガレオンが断じて許さない。罰としてセレヴィには魔王の奴隷として、死ぬまで働き続けてもらうとしよう。
 これから彼女に行うのは、そう。








 虐待だ。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...