「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

文字の大きさ
6 / 93

6話 初日から馬車馬のように働かせ、奴隷の管理を手伝わせた

しおりを挟む
 初出勤日、セレヴィは緊張しながら執務室へ向かっていた。
 魔王の秘書となると、一体どれだけの激務になるのか、想像もつかない。
 特に相手はガレオンだ、何と言うか、意識高い系のガンガン行こうぜタイプな経営者の付き人って、相当ハードになりそうな予感がする。

 いやいや、余計な事を考えるな。

 私は人間界へ戻るんだ、そのためにはまず、目先の試練を乗り越えないといけない。
 考えようによっては、魔王の秘書とは都合のいいポストだ。魔王の信頼を得られれば、脱出への道筋が見えてくるかもしれない。

 大丈夫、昨日の研修で仕事は把握した。私ならできる、絶対にだ。
 掌に人の字を書いて、まるのみにする。さぁこいガレオン!

「おはようございます、魔王様」
「へぇ、早いもんだな。まだ八時だぞ」
「業務前に資料等を整理しておきたかったので」

 深々と頭を下げた。いかに憎い相手でも、今の自分は秘書。立場を弁えた態度を取らねば。
 セレヴィは早速仕事に取り掛かった。早朝の内に、ガレオン宛の大量の手紙が来ている。素早く取捨選択した後は、会議の資料を用意、整理していく。

 スケジュールも昨日の内にやっておいた、多分ガレオンもスムーズに仕事が出来る……はずだ。
 貴族の娘として、幼き頃から英才教育を受けてきた。領地運営を学ぶため、方々の貴族の下へ奉公に向かった事もある。秘書の仕事程度、完璧にやり遂げてやる。

 脱出云々は別として、ガレオンに自分の力を示してやりたい気持ちもあった。ずっと負けっぱなしなのは、自分のプライドが許さない。
 初日から全力で仕事して、ガレオンにあっと言わせてやるんだ。

「おい、紅茶を淹れてこい。二人分な」
「かしこまりました」

 ぶっきらぼうな言い方にムッとしつつ、最高の紅茶を用意してやる。
 過去、嫌味な貴族にも言われて、完璧な紅茶を出した事がある。嫌な奴ほど完璧な仕事をしてやるのが、最大の反撃になるのだ。

 さぁガレオン、敗北の味を精々堪能するがいい。

「お前も飲め、それで落ち着くだろう」
「はい?」
「始業前から飛ばしすぎだ。初日から気を張っていたらお前が潰れるだろう、何のためにお前を秘書にしたと思っている、肩の力を抜け馬鹿が」
「は、はぁ……」
「あと十分ある、少し休め。その間に頭を整えろ」

 ガレオンから椅子を出され、つい座ってしまった。
 確かに浮足立っていたかもしれない、魔王と一緒に居る緊張感のせいだろう。
 ガレオンは窓を見つつ、悠然と紅茶を飲んでいる。どうだ、私の紅茶は。問い詰めたいが、我慢しなければ。
 一言でも美味いと言ってくれればいいのに、ガレオンは無言だ。やり甲斐のない魔王だ、セレヴィは小さく肩を落とした。

「おい」
「なんでしょう」
「始業前に動くなら、まず紅茶を淹れろ。資料や手紙の整理は後でも出来るだろう」
「……それは、私の紅茶がお気に召したからですか?」
「好きにとらえろ」

 優しさのない返事だが、悪い気はしない。何しろガレオンはしっかり飲み干してくれたから。
 美味いなら素直に言え、バーカ。
 心の中で毒吐きつつ、セレヴィは頬を叩いた。

  ◇◇◇

 こうして始まったガレオンとの仕事だが、驚きの連続だった。
 セレヴィが用意した、人の背丈ほどもある書類の束をものの数分で片付けてしまった。それでいて何千件とある案件を瞬時に記憶しているのだから、処理能力が桁違いすぎる。
 何百通と来た手紙も一字一句目を通し、全部に返信してしまうのも驚きだ。中にはただのファンレターや、領外から嫌がらせの手紙もあるというのに。

「おい、魔王ダンタリオン領に兵を送る。至急手配しておけ」
「かしこまりました」
「俺に喧嘩を売った意味、しっかりと教えてやらねばなぁ」

 ……嫌がらせに返すのは手紙ではなく武力だが、ともあれ丁寧な対応である。
 煩雑な朝のデスクワークを終えると、今度は城内を駆け回り、全部署の会議に参加する。部下を無視してずけずけ発言するかと思いきや、しっかり耳を傾けて、全員の意思をくみ取った上で意見を出している。おかげで会議の要点が整理され、有意義な時間が過ぎていった。

 これ、私必要かな?

 そう思うくらいの仕事ぶりだ。んでもって隙間時間には部下の立ち話に付き合ったり、時には叱りつけたりと、ここでも八面六臂の活躍だ。

「おい貴様ぁ! 来週から異動だ、西地区の牧場へ行け! 早急に荷物を纏めろ! 貴様のような不届き者は城から出て行け!」
「わ、わかりましたぁ!」

 ラミアの兵が泣きながら去っていく。ここだけ抜き取れば、ワンマン社長のパワハラにしか見えないが……。

「父親が病床にふけっているのになぜ地元へ帰らない! 親不孝者は俺の前から消えろ!」

 要するに、彼女の地元にもガレオン運営の職場があるから、そこに異動して両親と一緒に暮らせというわけである。勿論給料据え置きだ。

「牧場への配置でよろしいのですか?」
「最近、馬や牛の世話に移り気していた奴だ。兵士としては使えん」

 だから農婦に配置換えすると。言葉がいちいち足りない魔王だ。
 こんな感じに、部下全員の近況を全部把握した上で迅速な対応を取っている。しかも全員の家族の名前まで把握しているとか、どんだけ器が深いんだこいつは。
 ともあれ、午前中の業務は順調に進んでいった。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...