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6話 初日から馬車馬のように働かせ、奴隷の管理を手伝わせた
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初出勤日、セレヴィは緊張しながら執務室へ向かっていた。
魔王の秘書となると、一体どれだけの激務になるのか、想像もつかない。
特に相手はガレオンだ、何と言うか、意識高い系のガンガン行こうぜタイプな経営者の付き人って、相当ハードになりそうな予感がする。
いやいや、余計な事を考えるな。
私は人間界へ戻るんだ、そのためにはまず、目先の試練を乗り越えないといけない。
考えようによっては、魔王の秘書とは都合のいいポストだ。魔王の信頼を得られれば、脱出への道筋が見えてくるかもしれない。
大丈夫、昨日の研修で仕事は把握した。私ならできる、絶対にだ。
掌に人の字を書いて、まるのみにする。さぁこいガレオン!
「おはようございます、魔王様」
「へぇ、早いもんだな。まだ八時だぞ」
「業務前に資料等を整理しておきたかったので」
深々と頭を下げた。いかに憎い相手でも、今の自分は秘書。立場を弁えた態度を取らねば。
セレヴィは早速仕事に取り掛かった。早朝の内に、ガレオン宛の大量の手紙が来ている。素早く取捨選択した後は、会議の資料を用意、整理していく。
スケジュールも昨日の内にやっておいた、多分ガレオンもスムーズに仕事が出来る……はずだ。
貴族の娘として、幼き頃から英才教育を受けてきた。領地運営を学ぶため、方々の貴族の下へ奉公に向かった事もある。秘書の仕事程度、完璧にやり遂げてやる。
脱出云々は別として、ガレオンに自分の力を示してやりたい気持ちもあった。ずっと負けっぱなしなのは、自分のプライドが許さない。
初日から全力で仕事して、ガレオンにあっと言わせてやるんだ。
「おい、紅茶を淹れてこい。二人分な」
「かしこまりました」
ぶっきらぼうな言い方にムッとしつつ、最高の紅茶を用意してやる。
過去、嫌味な貴族にも言われて、完璧な紅茶を出した事がある。嫌な奴ほど完璧な仕事をしてやるのが、最大の反撃になるのだ。
さぁガレオン、敗北の味を精々堪能するがいい。
「お前も飲め、それで落ち着くだろう」
「はい?」
「始業前から飛ばしすぎだ。初日から気を張っていたらお前が潰れるだろう、何のためにお前を秘書にしたと思っている、肩の力を抜け馬鹿が」
「は、はぁ……」
「あと十分ある、少し休め。その間に頭を整えろ」
ガレオンから椅子を出され、つい座ってしまった。
確かに浮足立っていたかもしれない、魔王と一緒に居る緊張感のせいだろう。
ガレオンは窓を見つつ、悠然と紅茶を飲んでいる。どうだ、私の紅茶は。問い詰めたいが、我慢しなければ。
一言でも美味いと言ってくれればいいのに、ガレオンは無言だ。やり甲斐のない魔王だ、セレヴィは小さく肩を落とした。
「おい」
「なんでしょう」
「始業前に動くなら、まず紅茶を淹れろ。資料や手紙の整理は後でも出来るだろう」
「……それは、私の紅茶がお気に召したからですか?」
「好きにとらえろ」
優しさのない返事だが、悪い気はしない。何しろガレオンはしっかり飲み干してくれたから。
美味いなら素直に言え、バーカ。
心の中で毒吐きつつ、セレヴィは頬を叩いた。
◇◇◇
こうして始まったガレオンとの仕事だが、驚きの連続だった。
セレヴィが用意した、人の背丈ほどもある書類の束をものの数分で片付けてしまった。それでいて何千件とある案件を瞬時に記憶しているのだから、処理能力が桁違いすぎる。
何百通と来た手紙も一字一句目を通し、全部に返信してしまうのも驚きだ。中にはただのファンレターや、領外から嫌がらせの手紙もあるというのに。
「おい、魔王ダンタリオン領に兵を送る。至急手配しておけ」
「かしこまりました」
「俺に喧嘩を売った意味、しっかりと教えてやらねばなぁ」
……嫌がらせに返すのは手紙ではなく武力だが、ともあれ丁寧な対応である。
煩雑な朝のデスクワークを終えると、今度は城内を駆け回り、全部署の会議に参加する。部下を無視してずけずけ発言するかと思いきや、しっかり耳を傾けて、全員の意思をくみ取った上で意見を出している。おかげで会議の要点が整理され、有意義な時間が過ぎていった。
これ、私必要かな?
そう思うくらいの仕事ぶりだ。んでもって隙間時間には部下の立ち話に付き合ったり、時には叱りつけたりと、ここでも八面六臂の活躍だ。
「おい貴様ぁ! 来週から異動だ、西地区の牧場へ行け! 早急に荷物を纏めろ! 貴様のような不届き者は城から出て行け!」
「わ、わかりましたぁ!」
ラミアの兵が泣きながら去っていく。ここだけ抜き取れば、ワンマン社長のパワハラにしか見えないが……。
「父親が病床にふけっているのになぜ地元へ帰らない! 親不孝者は俺の前から消えろ!」
要するに、彼女の地元にもガレオン運営の職場があるから、そこに異動して両親と一緒に暮らせというわけである。勿論給料据え置きだ。
「牧場への配置でよろしいのですか?」
「最近、馬や牛の世話に移り気していた奴だ。兵士としては使えん」
だから農婦に配置換えすると。言葉がいちいち足りない魔王だ。
こんな感じに、部下全員の近況を全部把握した上で迅速な対応を取っている。しかも全員の家族の名前まで把握しているとか、どんだけ器が深いんだこいつは。
ともあれ、午前中の業務は順調に進んでいった。
魔王の秘書となると、一体どれだけの激務になるのか、想像もつかない。
特に相手はガレオンだ、何と言うか、意識高い系のガンガン行こうぜタイプな経営者の付き人って、相当ハードになりそうな予感がする。
いやいや、余計な事を考えるな。
私は人間界へ戻るんだ、そのためにはまず、目先の試練を乗り越えないといけない。
考えようによっては、魔王の秘書とは都合のいいポストだ。魔王の信頼を得られれば、脱出への道筋が見えてくるかもしれない。
大丈夫、昨日の研修で仕事は把握した。私ならできる、絶対にだ。
掌に人の字を書いて、まるのみにする。さぁこいガレオン!
「おはようございます、魔王様」
「へぇ、早いもんだな。まだ八時だぞ」
「業務前に資料等を整理しておきたかったので」
深々と頭を下げた。いかに憎い相手でも、今の自分は秘書。立場を弁えた態度を取らねば。
セレヴィは早速仕事に取り掛かった。早朝の内に、ガレオン宛の大量の手紙が来ている。素早く取捨選択した後は、会議の資料を用意、整理していく。
スケジュールも昨日の内にやっておいた、多分ガレオンもスムーズに仕事が出来る……はずだ。
貴族の娘として、幼き頃から英才教育を受けてきた。領地運営を学ぶため、方々の貴族の下へ奉公に向かった事もある。秘書の仕事程度、完璧にやり遂げてやる。
脱出云々は別として、ガレオンに自分の力を示してやりたい気持ちもあった。ずっと負けっぱなしなのは、自分のプライドが許さない。
初日から全力で仕事して、ガレオンにあっと言わせてやるんだ。
「おい、紅茶を淹れてこい。二人分な」
「かしこまりました」
ぶっきらぼうな言い方にムッとしつつ、最高の紅茶を用意してやる。
過去、嫌味な貴族にも言われて、完璧な紅茶を出した事がある。嫌な奴ほど完璧な仕事をしてやるのが、最大の反撃になるのだ。
さぁガレオン、敗北の味を精々堪能するがいい。
「お前も飲め、それで落ち着くだろう」
「はい?」
「始業前から飛ばしすぎだ。初日から気を張っていたらお前が潰れるだろう、何のためにお前を秘書にしたと思っている、肩の力を抜け馬鹿が」
「は、はぁ……」
「あと十分ある、少し休め。その間に頭を整えろ」
ガレオンから椅子を出され、つい座ってしまった。
確かに浮足立っていたかもしれない、魔王と一緒に居る緊張感のせいだろう。
ガレオンは窓を見つつ、悠然と紅茶を飲んでいる。どうだ、私の紅茶は。問い詰めたいが、我慢しなければ。
一言でも美味いと言ってくれればいいのに、ガレオンは無言だ。やり甲斐のない魔王だ、セレヴィは小さく肩を落とした。
「おい」
「なんでしょう」
「始業前に動くなら、まず紅茶を淹れろ。資料や手紙の整理は後でも出来るだろう」
「……それは、私の紅茶がお気に召したからですか?」
「好きにとらえろ」
優しさのない返事だが、悪い気はしない。何しろガレオンはしっかり飲み干してくれたから。
美味いなら素直に言え、バーカ。
心の中で毒吐きつつ、セレヴィは頬を叩いた。
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こうして始まったガレオンとの仕事だが、驚きの連続だった。
セレヴィが用意した、人の背丈ほどもある書類の束をものの数分で片付けてしまった。それでいて何千件とある案件を瞬時に記憶しているのだから、処理能力が桁違いすぎる。
何百通と来た手紙も一字一句目を通し、全部に返信してしまうのも驚きだ。中にはただのファンレターや、領外から嫌がらせの手紙もあるというのに。
「おい、魔王ダンタリオン領に兵を送る。至急手配しておけ」
「かしこまりました」
「俺に喧嘩を売った意味、しっかりと教えてやらねばなぁ」
……嫌がらせに返すのは手紙ではなく武力だが、ともあれ丁寧な対応である。
煩雑な朝のデスクワークを終えると、今度は城内を駆け回り、全部署の会議に参加する。部下を無視してずけずけ発言するかと思いきや、しっかり耳を傾けて、全員の意思をくみ取った上で意見を出している。おかげで会議の要点が整理され、有意義な時間が過ぎていった。
これ、私必要かな?
そう思うくらいの仕事ぶりだ。んでもって隙間時間には部下の立ち話に付き合ったり、時には叱りつけたりと、ここでも八面六臂の活躍だ。
「おい貴様ぁ! 来週から異動だ、西地区の牧場へ行け! 早急に荷物を纏めろ! 貴様のような不届き者は城から出て行け!」
「わ、わかりましたぁ!」
ラミアの兵が泣きながら去っていく。ここだけ抜き取れば、ワンマン社長のパワハラにしか見えないが……。
「父親が病床にふけっているのになぜ地元へ帰らない! 親不孝者は俺の前から消えろ!」
要するに、彼女の地元にもガレオン運営の職場があるから、そこに異動して両親と一緒に暮らせというわけである。勿論給料据え置きだ。
「牧場への配置でよろしいのですか?」
「最近、馬や牛の世話に移り気していた奴だ。兵士としては使えん」
だから農婦に配置換えすると。言葉がいちいち足りない魔王だ。
こんな感じに、部下全員の近況を全部把握した上で迅速な対応を取っている。しかも全員の家族の名前まで把握しているとか、どんだけ器が深いんだこいつは。
ともあれ、午前中の業務は順調に進んでいった。
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