「くっ、殺せ!」と屈服した女騎士を拾ったので虐待することにした。

歩く、歩く。

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11話 目を離した隙に、女騎士が山へ走り出した

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 がっつり選別を手伝った後は、畑の視察に出向いた。
 野菜だけでなく、麦畑も凄い規模だ。辺り一面金色の絨毯が敷かれているようである。

「収穫は来月ですが、今年の麦も出来がいいですよ。いいパンが焼けるかと」
「だそうだが、アバドン」
「うーん……そうネ、いい具合アルヨ。パスタ良し、ビール良し、皆喜ぶヨ」
「ならば収穫時期に合わせてまた視察に来るか。畑の状態はどうだ?」
「ハイヨー、ちょっと待っててネ」

 アバドンは土をつまむなり、なんと口にしたではないか。
 慌てて止めようとするも、ガレオンが「見ていろ」と制止した。

「アイヤ、いい具合に肥えているね。来年もいい麦出来るアルヨ。来年の農作どうするか、ワタシ一緒に考えるヨ」
「いいだろう、次は牧場を見るぞ、遅れるな」


「……あの、なぜ土を?」
「土の味で栄養どれくらい残ってるか分かるアル。土の状態管理する、作物にとって重要ヨ」
「食い物が絡むと、アバドンほど頼りになる奴はいない。各農地の状態がどうなっているのかは、そいつの方が判断できるからな。農耕区域の視察には、アバドンの意見が何よりも重要なんだよ」
「そうなのですね」

 ガレオンは一見すると、ワンマン経営をしているように思える。
 だけど専門外の事についてはその分野に秀でた者を頼り、意見を聞いているんだ。
 牧場には牛や豚が飼育され、のびのびと過ごしている。草を食んだり、泥浴びをしたり、自由気ままに生きていた。

「いい具合に育ってるネ、乳牛もストレスかかってないヨ、いいミルクが絞れそうアル。豚も脂が乗ってきてるヨ」
「豚……」

 何度も思うが、アバドンは二足歩行している豚である。ある意味共食いじゃなかろうか。
 いやいや、失礼な事を考えてはいけない。いけないけど……うん、やっぱり共食いだ。
 それはさておき、今日の仕事はとても楽しかった。
 搾乳の様子や精肉場を見学しては、先進的な設備ややり方に驚き、現場の人の話を聞いては、農場での生活がどのような物かを知ったり、得る物がとても多かった。

「おい、お前は休憩を取っておけ。俺も後から入る」
「かしこまりました」

 ガレオンからの休憩命令だ。大きく伸びをすると、背中がメリメリと音を立てた。
 気づかないうちに疲れが蓄積していたようだ。気分転換に散歩をしながら、農民たちの様子を眺めてみる。
 凄く楽しそうに農作業をしている。あれだけ作物が採れれば、それは楽しい事だろう。

 聞けばここ百年の間不作で苦しんだ事がないらしい、魔法で雨量や日照をコントロールしているからだそうだ。
 加えて、ガレオンとアバドンによる定期的な視察によって、問題が起こっても即座に対応してくれるから、バックアップ体制も万全なのだとか。

 ……リティシア王国はここ数年飢饉が続いて、幾人もの人々が犠牲になった。王を始め、貴族達は自分達の食料を抱え込み、助けるべき民を見捨ててきたのだ。

「……助けようとしても、助けられなかった命が、いくつあった事か」

 比較すればするほど、故郷の酷さが浮き彫りになっていく。悔しいが、ガレオンは優秀な魔王だ。それどころか賢王と言っていい。
 領民達のために方々を駆け回り、問題が起きれば即座に解決、まさにヒーローのような男である。
 そんな奴の下で働ける事に、セレヴィ自身も充実感を覚えていた。リティシア王国で出来なかった仕事を思い切りやれているから。

「何もかも、あいつの思い通りになっているような気がして、癪ではあるがな……さて、どうするか、木陰で読書でもするか」

 ガレオンから何冊か譲ってもらったのだが、これがまた面白い。多分ガレオンの事だ、セレヴィの好みを把握した上で選んだに違いない。
 ……やっぱり、なんか悔しい。こっちの事は隅から隅まで理解されているのに、私はガレオンの事を殆ど分かっていないのだから。

「おや?」

 顔を上げると、山に入っていく獣人の子供たちが目についた。
 子供だけで向かって大丈夫だろうか。心配になり、追いかけてみる。

「待て、どこへ行くんだ? 子供だけで向かうのは危ないぞ」
「大丈夫だよ、野イチゴ取りに行くだけだから」
「野イチゴでジャムを作るの、魔王様が来てるから、お土産渡したいんだ」

 子供たちからも慕われているのか。しかし、野イチゴ狩りに行くのはいいが。

「大人たちには話してあるのか?」
「うん、いつも行ってるし」
「心配しなくても平気だよー」
「しかしだな……」

 騎士団の訓練で、山中でのサバイバルを幾度か経験した事があるが、毒蛇やイノシシ、蜂といった危険な生き物に何度も死に目を味わわされた。いくら行き慣れた場所と言っても、危険な事に変わりはない。せめて保護者の一人は居た方がいいだろう。
 セレヴィは太もものサバイバルナイフに触れた。護身用に持ってきた物で、大抵の野生動物ならこれでどうにか出来る。

「私も一緒に行ってもいいか? 私も野イチゴが好きでな、どんな味がするのか興味があるんだ。ぜひ教えてもらいたい」
「いいよ! じゃあついてきて」
「遅れても助けないぞ、足引っ張らないでよね」

 子供らしく生意気だが、それくらい元気があった方が可愛げはあるか。
 さて、何事も起こらねばいいのだが。
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