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第5話 貴族とは
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「今日行ったの伯爵家なのでしょう? 伯爵家の方がそのような仕事をしているの?」
「わからないわ……伯爵家に間借りをしている職人かもしれない。離れを使ってるみたいだったから」
ミレーヌが困惑しているのも無理はない。
私だって今日会ったセユンやクロエは貴族ぽい風貌はしているけれど、彼らは貴族ではなさそうだと結論づけたのは結局のところ『働いていた』からだ。
上位貴族は領地からあがってくる税収だけで暮らすことができる。働くことは庶民のすることだとして嫌がる傾向にあるし、裏で経済的に苦しいとしてもそれを表沙汰にすることはない。
貴族は芸術だけでなくとも、新しい事業のスポンサーになったりすることもあるから、今日会った二人は貴族の支援を受け、貴族の邸宅の敷地内に仕事場を構えることを許されたブティックで働く平民なのではないだろうか。
いいものを着ていたのは、仕事柄だと思えばうなずける。
特に男のセユンは貴族だとしたらブティックのような女がメインとなる職場にいるのはおかしいだろう。ビジネスオーナーや用心棒ならともかく、デザイナーやお針子は女性相手の仕事が多いということで女性がするのが筋な職業だから。
もし男が……しかも貴族の男がそこを職場として足を踏み入れたりしたら、浮気の温床、スキャンダルの嵐になりかねない。客という名の貴族女性といくらでも会う理由付けができるからだ。そんな外聞の悪いことをする貴族などどこにいるだろう。
「なんでレティエをスカウトするの?」
「わからないわ……本当にわからない」
「でも確かにレティエはモデルにはうってつけかもしれないわね。そこは否定しない……貴族の娘だってことを知らなければ。……ばれてないのでしょう?」
「うん、そのはず」
1つ大きく頷いて、ミレーヌに強く返事をする。
私ことレティエ・クローデットはこう見えても男爵家の娘だ。クローデット家は貴族としての身分は低いが事業にかなり成功している家で、身分が高くても苦しい領地経営で青色吐息な貴族より、よほど経済的に恵まれていると思う。
そんな家の娘がよその家の下働きをするメイドに応募したなんて親に知られたら大目玉を食らうだろう。
しかもまだ未婚の、人前に出ないよう風にも当てぬように育てられている娘が外で人に見られる仕事を始めるなんて発覚したら……考えるだけでも恐ろしい。家に軟禁される未来しか見えない。
「なんか人手が足りてなさそうな感じだったかな……それでじゃないかしら」
布で足の踏み場もないくらいになっていた部屋の中を思い出す。片付ける暇すらなかったのだろうか。
「それなら私が代わりにお手伝いしてもいいのに……モデルとかやってみたいし」
羨ましそうに言うミレーヌに、ほんとよね、と大きく私は頷いた。
確かに人懐っこく華やかで美しいミレーヌはモデルのような仕事に向いているだろう。モデルだったら今後、上流貴族のサロンにも足を踏み入れることが予想される。自分ならただ黙って立っているだけしかできそうにないけれど、ミレーヌだったら如才なく立ち回って奥様方にも可愛がられそうだ。もちろん彼女の可憐さもドレスの売り込みにも貢献できるだろうし。
上の身分の貴族に見初められて、いいところに玉の輿なんてことになるかもしれないのだから、ミレーヌを推薦するのは悪くないかもしれない。
「セユンさんたちに言ってみるだけ言ってみるわね。私の代わりに貴方をどうかって。私はあまり気乗りしてないのよね」
「でしょうね……貴方の性格的に……。でも、セユンさんって言うの? 貴方の雇い主。平民の名前ぽいわね」
「うん、今日会ったのはセユンさんにクロエさんて方。他にもお針子の人たちとか、色々いるみたいだけれどブティックの代表はこのお二人みたいね」
「なるほど……それで、探していたあれはどうするの? 元々の目的は、メイドになってたくさんの貴族の家を足で探す予定だったでしょ?」
思いがけない事柄の連続に、肝心なことを忘れていた。
家の侍女やメイドなどの使用人たちやミレーヌを巻き込んで、外に働きに出る必要のない娘が平民のふりをして出歩いているのには訳がある。
「わからないわ……伯爵家に間借りをしている職人かもしれない。離れを使ってるみたいだったから」
ミレーヌが困惑しているのも無理はない。
私だって今日会ったセユンやクロエは貴族ぽい風貌はしているけれど、彼らは貴族ではなさそうだと結論づけたのは結局のところ『働いていた』からだ。
上位貴族は領地からあがってくる税収だけで暮らすことができる。働くことは庶民のすることだとして嫌がる傾向にあるし、裏で経済的に苦しいとしてもそれを表沙汰にすることはない。
貴族は芸術だけでなくとも、新しい事業のスポンサーになったりすることもあるから、今日会った二人は貴族の支援を受け、貴族の邸宅の敷地内に仕事場を構えることを許されたブティックで働く平民なのではないだろうか。
いいものを着ていたのは、仕事柄だと思えばうなずける。
特に男のセユンは貴族だとしたらブティックのような女がメインとなる職場にいるのはおかしいだろう。ビジネスオーナーや用心棒ならともかく、デザイナーやお針子は女性相手の仕事が多いということで女性がするのが筋な職業だから。
もし男が……しかも貴族の男がそこを職場として足を踏み入れたりしたら、浮気の温床、スキャンダルの嵐になりかねない。客という名の貴族女性といくらでも会う理由付けができるからだ。そんな外聞の悪いことをする貴族などどこにいるだろう。
「なんでレティエをスカウトするの?」
「わからないわ……本当にわからない」
「でも確かにレティエはモデルにはうってつけかもしれないわね。そこは否定しない……貴族の娘だってことを知らなければ。……ばれてないのでしょう?」
「うん、そのはず」
1つ大きく頷いて、ミレーヌに強く返事をする。
私ことレティエ・クローデットはこう見えても男爵家の娘だ。クローデット家は貴族としての身分は低いが事業にかなり成功している家で、身分が高くても苦しい領地経営で青色吐息な貴族より、よほど経済的に恵まれていると思う。
そんな家の娘がよその家の下働きをするメイドに応募したなんて親に知られたら大目玉を食らうだろう。
しかもまだ未婚の、人前に出ないよう風にも当てぬように育てられている娘が外で人に見られる仕事を始めるなんて発覚したら……考えるだけでも恐ろしい。家に軟禁される未来しか見えない。
「なんか人手が足りてなさそうな感じだったかな……それでじゃないかしら」
布で足の踏み場もないくらいになっていた部屋の中を思い出す。片付ける暇すらなかったのだろうか。
「それなら私が代わりにお手伝いしてもいいのに……モデルとかやってみたいし」
羨ましそうに言うミレーヌに、ほんとよね、と大きく私は頷いた。
確かに人懐っこく華やかで美しいミレーヌはモデルのような仕事に向いているだろう。モデルだったら今後、上流貴族のサロンにも足を踏み入れることが予想される。自分ならただ黙って立っているだけしかできそうにないけれど、ミレーヌだったら如才なく立ち回って奥様方にも可愛がられそうだ。もちろん彼女の可憐さもドレスの売り込みにも貢献できるだろうし。
上の身分の貴族に見初められて、いいところに玉の輿なんてことになるかもしれないのだから、ミレーヌを推薦するのは悪くないかもしれない。
「セユンさんたちに言ってみるだけ言ってみるわね。私の代わりに貴方をどうかって。私はあまり気乗りしてないのよね」
「でしょうね……貴方の性格的に……。でも、セユンさんって言うの? 貴方の雇い主。平民の名前ぽいわね」
「うん、今日会ったのはセユンさんにクロエさんて方。他にもお針子の人たちとか、色々いるみたいだけれどブティックの代表はこのお二人みたいね」
「なるほど……それで、探していたあれはどうするの? 元々の目的は、メイドになってたくさんの貴族の家を足で探す予定だったでしょ?」
思いがけない事柄の連続に、肝心なことを忘れていた。
家の侍女やメイドなどの使用人たちやミレーヌを巻き込んで、外に働きに出る必要のない娘が平民のふりをして出歩いているのには訳がある。
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