【完結】貴方が好きなのはあくまでも私のお姉様

すだもみぢ

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第二十二話 本当に好きな人

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「デュークに想いを寄せられているなんて思ってもなかったんです。だって、お姉さまが結婚して、それから急に婚約の話が出てきたから……てっきり、結婚も領地がらみの何かと」
「全然唐突なんかじゃないよ。ずっと申し入れしてたんだ」
「ずっと? でもそんな話全然……」

 来てなかったはずだ。私は実際知らなかったわけだし。

「だって、握りつぶされてたから……」

 言いにくそうなデュークに、首を傾げた。
 婚約の申し入れを握りつぶす? お父様かお兄様だろうか? 二人とも比較的安穏としている性格だったし、上昇志向が強い方でもなかったから、娘の結婚に強く口出しするようなことはないと思っていたけれど、そうでもなかったのだろうか。

「俺が君にふさわしくなるまで、そして君が自分で好きな相手を考えられる年齢になるまで話を持ってくることは許さないって言われてた。でも早くなんとかしなきゃってずっと思ってたよ。社交界デビューなんてしたら、君は絶対に他の男に狙われると思っていたから、だからとにかく早く、君を婚約者にしようと焦っていて……」
「その話が本当なら、私が貴方を選んだという確証がなければ、婚約の申し入れを受け入れることはできないのでは?」
「……恥ずかしいんだけれど、君は俺に好意を寄せてくれてるって、思ってたんだ、その、ヨーランダが」
「お姉さまが?」
「俺と君がお互いのロケットを間違って手にして奪い合いになったことあっただろ。そのロケットを、見せたくないって必死になっている君の姿を見て、ヨーランダが、君が好きなのは俺だろうって教えてくれて」

 あれで!?
 あの時のことを振り返って考えてみたが、それで気づけるってどういうこと? お姉さまの鋭さが恐ろしすぎる。

「でも、だ、誰だって、大事なロケットが他人の手にあれば同じことしますよ、何もロケット持ってたのがデュークだからじゃないですっ」

 なんで私は好きな人相手に、自分の恋心を誤魔化すようなことをしているのだろう。
 しかし、あの時点で自分の好きな人がデュークとわかるはずがない、と自分で信じていたのに、それが他からはわかっていたなんて、自分の他の秘密もバレバレになっているのでは、と怖くなってしまったのだ。

「ロケットの中身を見て、それでカリンが好きな相手が分かったとしても、それがばれたのがどうでもいい相手や秘密を共有してもいい相手なら無視するか、口止めするだけで済むはずなのに、いくら決まり悪いからってそこまで必死に隠そうとするのはおかしい。となれば、そこまでして隠したいのは、それは思う相手本人ではないかって」

 確かに――。
 もしあれがメイドのメアリーだったりしたら、誰にも言わないで、と言うだけで済んだだろうし、そもそも中身を見てもバレやしない、と高をくくっていられただろう。
 この中身はなに? と問い詰められたら隠しきれない相手だと思うからこそ死守しようとしたわけであって。
 まさか態度の方で推理されるなんて、思いもよらなかった。

 やられた、と後悔している私に、静かにデュークが言葉を続ける。

「ヨーランダもあの家から離れることになっていた。だから、自分の代わりに妹を頼むと認めてくれたんだ。約束を曲げてでもね」
「約束?」
「君と婚約するのには、本当はもう一つ条件があったんだよ。君はいつでも俺に対してもずっと敬語だったから、その敬語が自然と取れたら、婚約を認めるという話だったんだ」
「あ、でもこれは、癖みたいなもので……別にデュークを警戒しているってわけではなくて」
「君は家族やメイドたちには敬語を使ってないだろ? ヨーランダからしたら、君と結婚する相手は、君の家族と同じくらいの仲になってほしいってことだったんじゃないかな」

 私、デューク相手には一生敬語な気がするんですけど。だって、好きな人相手って、緊張するじゃないですか。

「え、じゃあ私へのデュークからの婚約の申し込みを握りつぶしていたのって……」
「ヨーランダだよ。決まっているだろ」

 お姉さま……っ!!
 
「待ってください、お姉さまとデュークって、お付き合いしていたんじゃ……」

 お姉さまがデュークを好きで、それで私と妨害していたとかでなくて? とその疑惑がどうしても取れなくて。そう訊いてしまったら、冗談じゃない、とデュークから悲鳴のような声が上がった。
 体の大きな男からそういう声が出るなんて、と違う意味でびっくりしてしまった。

「付き合ったりするわけないだろ! ヨーランダはずっとマクスルド卿のことが好きだったんだから」

 家族の意外な恋バナを、まさかこんなところできくとは思わなかった。
 デュークが言うほど、そんなに昔からあの二人、お付き合いしていたの!?
 そちらが気になって、自分達の話はそっちのけになりそうになってしまったのだけれど。

「マクスルド卿もあまり社交的じゃなくてパーティーに滅多に出なくて接点がないから、俺がヨーランダに協力して二人の仲を取り持ったんだよ。その代わりにヨーランダからしごかれていたのに、なんで俺とヨーランダが付き合っているって話になるんだよ」

 これ以上ないくらいにものすごく嫌そうな顔をしてデュークが呻く。苦虫をかみつぶしたような顔とはこういうことか。

「しごかれていた?」
「そこから話さなければいけないのか……。もしかして俺たち、ずっとそんな風に思われていたのか……? すごい嫌なんだけど」

がっくりとデュークは肩を落とした。
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