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神獣の来訪
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今回マルコスが用意してくれた馬車はボス用ではないだろうか、いつものとは違う、車輪の軸には板バネが付いておりフワフワと道の凸凹を吸収して突然舌を噛むような揺れに襲われることがない。
なにしろ薄い尻が痛くないのはいい。
窓に嵌ったガラスも歪んでない、流れていく景色が良く見える。
「悪いわね、この馬車ボス専用じゃないの?」
「気にするな、どうせ使わない」
モンテ・ファミリーの二代目は世襲のボンボンだ、身分を隠して娼館に入り浸っていると有名だ、実質の舵取りはマルコス・レインに集約されている。
「先代のオヤジが固い木材で造った特注品だ、マスケット銃では通らない」
それぞれに甲冑まで装備して荷台を牽いている馬も四頭立て、まるで軍用だが乗り心地はいい。
「先代は名将と名高いお人だった、私も随分と世話になりました」
ローペンも懐かしそうに目を細めた。
「チェバンとの抗争で亡くなってから何年になるかしら」
「もう五年、早いものだ」
腕を組んだマルコスが向かい側に座る、天井に頭が触りそうで窮屈そうにしているのがどこかカワイイ。
反対側に私とローペンの二人が座っているが隙間は多く快適だ。
この馬車で飛ばしてもノーベルまでは日中一杯かかる、歩けば三日は必要だろう、それでも庶民は奇跡の粉が貰えるとなれば向かう、命には代えられない。
その街道にも今は奇跡の粉を求める人影はない、ノーベルの街自体が瘧(マラリア)の発生で廃村状態になっているという。
「こんな寒い季節に瘧なんてありえない、そして偽物の薬、一体なんなのかしら」
「ノーベルの怪異現象、世間ではそう呼んでいます」
「瘧だけならラインハウゼン全体の話になりつつある、飛び火したように感染地が広がっている様だ」
「キリア様が言うように蚊が瘧の原因なら今は季節では無いはず、ではその原因は何なのでしょうか、瘧自体が変異した、もしくは蚊が寒さに強く進化した、謎ですね」
ローペンはいつも冷静で思慮深い、冷たい印象を受けるが優先順位が明確で迷う事が少ないからだ、その順位の上位に私を置いてくれている。
それは兄妹の愛情、男女の恋愛には発展しなくとも私にとって大切な存在、瘟鬼の次に私を理解している人だ。
「本当は瘧なんて発生していないんじゃないの、別な理由で人払いをしたかったとか」
窓の外を見ながら何気なく呟いた言葉は確信を突いたかもしれない。
「!!」
「なるほど、瘧に似た症状がでる毒をばら撒いてノーベルから住民を消した、その毒のお零れが偶発的に散らばった、その毒とは奇跡の粉、肝心なのはノーベルという土地の方か、何かを企む奴がいる!」
「なら魔女は本命どころか偶発的なお零れのその場しのぎに利用されたってことになるわね、益々頭にきちゃう!」
「キリア譲を前にしてなんだが、神だの悪魔だのよりは信じられる話だ」
「神と悪魔を除けば残るのは人間、人間がやることは決まっている、金か権力以外に理由はないな」
ガタンッ 屋根の上に何かが舞い降りた、コツッコツッ と屋根を叩く音がする。
「何?」
「兄貴!屋根の上に鳥が!」
「鳥?鳥がどうした」
馬車が止まる。
バササッ 羽搏音と共に気配が地面へと降りたのが青い影の動きで分った。
「あっ!!」
驚き誰もが目を見開いた、見たことはなくともその鳥が如何に超常の存在か、その美しさを直視すれば誰でも理解出来るだろう。
窓から見下ろすと、其処に居たのは宝石のように澄んだ青い羽根、嘴は白く、その眼は千里と未来をも見通すことが出来る。
現世と異世界を行き来できる存在。
神獣ムトゥスが地に翼を畳み降り立っていた。
なにしろ薄い尻が痛くないのはいい。
窓に嵌ったガラスも歪んでない、流れていく景色が良く見える。
「悪いわね、この馬車ボス専用じゃないの?」
「気にするな、どうせ使わない」
モンテ・ファミリーの二代目は世襲のボンボンだ、身分を隠して娼館に入り浸っていると有名だ、実質の舵取りはマルコス・レインに集約されている。
「先代のオヤジが固い木材で造った特注品だ、マスケット銃では通らない」
それぞれに甲冑まで装備して荷台を牽いている馬も四頭立て、まるで軍用だが乗り心地はいい。
「先代は名将と名高いお人だった、私も随分と世話になりました」
ローペンも懐かしそうに目を細めた。
「チェバンとの抗争で亡くなってから何年になるかしら」
「もう五年、早いものだ」
腕を組んだマルコスが向かい側に座る、天井に頭が触りそうで窮屈そうにしているのがどこかカワイイ。
反対側に私とローペンの二人が座っているが隙間は多く快適だ。
この馬車で飛ばしてもノーベルまでは日中一杯かかる、歩けば三日は必要だろう、それでも庶民は奇跡の粉が貰えるとなれば向かう、命には代えられない。
その街道にも今は奇跡の粉を求める人影はない、ノーベルの街自体が瘧(マラリア)の発生で廃村状態になっているという。
「こんな寒い季節に瘧なんてありえない、そして偽物の薬、一体なんなのかしら」
「ノーベルの怪異現象、世間ではそう呼んでいます」
「瘧だけならラインハウゼン全体の話になりつつある、飛び火したように感染地が広がっている様だ」
「キリア様が言うように蚊が瘧の原因なら今は季節では無いはず、ではその原因は何なのでしょうか、瘧自体が変異した、もしくは蚊が寒さに強く進化した、謎ですね」
ローペンはいつも冷静で思慮深い、冷たい印象を受けるが優先順位が明確で迷う事が少ないからだ、その順位の上位に私を置いてくれている。
それは兄妹の愛情、男女の恋愛には発展しなくとも私にとって大切な存在、瘟鬼の次に私を理解している人だ。
「本当は瘧なんて発生していないんじゃないの、別な理由で人払いをしたかったとか」
窓の外を見ながら何気なく呟いた言葉は確信を突いたかもしれない。
「!!」
「なるほど、瘧に似た症状がでる毒をばら撒いてノーベルから住民を消した、その毒のお零れが偶発的に散らばった、その毒とは奇跡の粉、肝心なのはノーベルという土地の方か、何かを企む奴がいる!」
「なら魔女は本命どころか偶発的なお零れのその場しのぎに利用されたってことになるわね、益々頭にきちゃう!」
「キリア譲を前にしてなんだが、神だの悪魔だのよりは信じられる話だ」
「神と悪魔を除けば残るのは人間、人間がやることは決まっている、金か権力以外に理由はないな」
ガタンッ 屋根の上に何かが舞い降りた、コツッコツッ と屋根を叩く音がする。
「何?」
「兄貴!屋根の上に鳥が!」
「鳥?鳥がどうした」
馬車が止まる。
バササッ 羽搏音と共に気配が地面へと降りたのが青い影の動きで分った。
「あっ!!」
驚き誰もが目を見開いた、見たことはなくともその鳥が如何に超常の存在か、その美しさを直視すれば誰でも理解出来るだろう。
窓から見下ろすと、其処に居たのは宝石のように澄んだ青い羽根、嘴は白く、その眼は千里と未来をも見通すことが出来る。
現世と異世界を行き来できる存在。
神獣ムトゥスが地に翼を畳み降り立っていた。
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