kings felds漂流島

祥々奈々

文字の大きさ
6 / 7

別離

しおりを挟む
 「二人、明日、島、出ろ」
 「!」
 ついに来てしまった、マヒメからの別れの宣告。
 「まっ、待ってくれ、どうか考え直してくれ、頼む」
 「お願いです、マヒメ様、僕たちをここに置いてください、お願いします」
 二人が床に膝を着けて陳情する様を見るマヒメの顔も苦痛に歪んでいる。
 「だっ……だめ、二人、死ぬ、嫌」
 マヒメの頬に涙が伝う。
 「帰るところなんてない、陸に上がっても地獄が待っているだけです」
 ルイスがマヒメの足に縋って泣いている。
 「マヒメ、迷惑かも知れないが俺達はここを出てもろくな死に方出来そうにない、ならここで少しでもお前の役に立って死にたいんだ、許してくれないか」
 「!うっ、うっ、ああああっ」
 しゃがみ込むとルイスとダーウェンの頭を抱き抱えて泣いた、三人で泣いた。
 マヒメは立ち上がると泣き顔のまま、本宅を飛び出していく、坂を下る程に、走る程に泣き声は大きくなり海を渡っていく。
 そのまま海に飛び込み、水飛沫を上げレヴィアタンが疾走する、幾度も海面から空中に駆け上る様は別れの辛さに身を捩り悶えているかのようだった、行き場所のない悲しみを追いやる様に飛ぶ、その光景を二人は茫然と眺める事しか出来なかった。

 眠る事は出来ずに二人は本宅でマヒメの戻り待った、考え直してくれることに一縷の望みを託して待った。
 朝日と共に小さな足音が扉の外に帰った、日の光を浴びたマヒメの顔は泣きはらして真珠の肌が目の周りだけ赤く痛々しい。
 「マヒメ……考え直してくれたか」
 薄っすらと哀しく笑いながら首を横に振る。
 「!!」
 「だめなのか……」
 ルイスがまるで死刑を宣告されたように膝を床に落とした。
 マヒメは震える唇を噛み、強く瞼を閉じて耐えている。
 二人の絶望がマヒメに伝わる、それほど慕われたことに魂が震える、覚えている限り二度目の感情。
 大切に持ってきたバックを三人で囲んだテーブルに置く。
 「二人、お願い、大切」
 「!?」
 「なんだ」
 丁寧にバックの蓋を開けて中身を晒した、純白の大きな卵だ。
 「私、の、子供」
 「!!」
 「聖獣の卵!」
 「私、ベリアル、子供、守って、逃げて」
 「君がここを離れられない理由はこれか!」
 「アンデッドが狙っているのもエリクサーではなく卵の方か!」
 マヒメが頷く。
 「聖獣、海、孵らない」
 「えっ、そうなの、海の聖獣なのに!?」
 「聖獣、川、育つ、エリクサー、子供、乳」
 「そうか、淡水の川でしか孵化しないのか、そしてエリクサーは聖獣の乳!」
 「山深く、清浄、川」
 「ベリアルと過ごした君は川に戻ることが出来ずに卵を産んでしまった、卵を抱えて海を渡ることは出来ないでいたわけだ」
 「よし、それなら三人で行こう、清浄なる川へ、そして三人で育てるんだ」
 「!」
 ルイスとダーウェンに一気に希望が沸き上がった。
 沸き上がった希望を打ち消すように再び首が横に振られる。
 「なぜだ、なんでダメなんだ」
 「島、離れる、私、獣、戻る」
 「えっ、獣に戻るって?」
 「島、霊力、私、人、ベリアル、ダー、ルイ…ここ、居る」
 マヒメは自分の胸に手を置く。
 「聖獣は漂流島の霊力で人を保っている?長く海に居れば水妖に戻ってしまうのか」
 「獣、戻る、ここ、消える」
 泣きながら首を激しく振った。
 「子供、人、心、二人、育てて」
 大きな目が涙を零したまま、ダーウェンとルイスを真っすぐに見る。
 荒ぶる海の水妖魔レヴィアタンは漂流島の霊力と最初の人間、ベリアルとの愛で聖獣に進化して人の心を宿し恋をして愛を知り、別離を経て思い出を抱く。
 エリクサーを育む島の霊力の恩恵がなければ人の心を保てない。
 「獣、心、無い、思い出、消え……る」
 両手が顔を覆って、最後は声にならなかった。

 絶望と希望、恋と愛、悲しみと哀しみ、思い出が純白の卵の上に積み重なり温める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

kings field 蜂蜜とエリクサー

祥々奈々
ファンタジー
 kings field  蝶の森 漂流島に繋がる物語、主人公はフレジィ・エミー。  エリクサーの精製を軸に、二つの世界が重なり交わる。  持てない感情を知るためにエミーの旅、戦いの先に待つ別れ、神獣との出会いは運命を大きく変える、立ちはだかる敵はノスフェラトゥ教団、求めるは不死のエリクサー。  エリクサー精製の鍵は起源のミトコンドリアだ。

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

〖完結〗終着駅のパッセージ

苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。 彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。 王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。 夫と婚姻してから三年という長い時間。 その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。 ※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。

私が……王太子……のはずだったのに??

#Daki-Makura
ファンタジー
最愛と朝を迎えたら……城下が騒がしい……?? 一体……何が起きているのか……??

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました

黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」 ブラック企業で過労死した俺、相川大地。 女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!? 右も左もわからない荒野でのサバイバル。 だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに! 美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。 これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。 農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!

わたし、不正なんて一切しておりませんけど!!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
書類偽装の罪でヒーローに断罪されるはずの侍女に転生したことに就職初日に気がついた!断罪なんてされてたまるか!!!

番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...