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1章
第5話
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※メリーア視点
私はメリーア・シェルラート。シェルラート公爵家の長女だ。
私には誰にも言えない秘密…、前世の記憶があった。
『日本』という国で変わらない日常を送っていたはずなのだが、気付けばこの世界に転生していた。向こうでは24歳まで生きた記憶があるので、この世界の年齢と合わせれば39歳……。まぁその辺は考えないでおこう。
そんな私が転生したことよりも驚いたのが、この世界が前世でプレイしていた『乙女ゲーム』の世界だということだった。それも悪役令嬢メリーアになっていたので、思い出した時は絶望したものだ。
しかし有り難いことに、ゲーム通りに身体が動くことはなかった。自分の意思で行動出来るということは、断罪の運命を変えられるということ。これに関しては不幸中の幸いだった。
私は断罪される未来を変える為、ゲーム中のメリーアとは真逆の行いをしてきた。
平民を嘲るのではなく、一人ひとりを尊重し手を差し伸べたり、流行病の広がりを防いだり…。今でも、時間があれば街に出向いて平民達と交流している。
社交界では完璧を目指し、貴族令嬢達への対応はあまり得意ではないが私なりに努力し、今の地位を手に入れることが出来た。
だが油断してはならない。メリーアが破滅ルートを進む理由は、『ヒロイン』のライラにある。メリーアが彼女を虐めたが故に断罪されるのだ。
ならば虐めなければいい?
…そう簡単なものではない可能性がある。
唯一の懸念…、それはヒロインも転生者であるということ。
前世で読んでいた小説では、悪役令嬢に転生した女性が運命を変えようと必死に足掻くが、同じ転生者だったヒロインに陥れられ、結局破滅してしまうという物語があった。そのような物語のヒロインは、大抵が『自分は特別』という考えが強い。
それ故に悪役令嬢なのに自分を虐めてこないことに疑問を持ち始め、同じ転生者だと知った際には周囲を味方にして陥れていた。
私はそうなりたくはない。その強い思いのもと、今まで出来る限りのことをしてきた。
それらはただの偽善だったのかもしれない…。けれど感謝をされれば素直に嬉しかったし、人々と交流を続けていると人の温もりを感じることが出来た。
だからこそ、シェルラート公爵領の領民たちが大好きだ。彼らを決して不幸にはさせない、私はそう誓っている。
乙女ゲームの舞台である学園でも、頼れる友人と出会えた。10歳の時に婚約者となった王太子クレスディア殿下を含め、攻略対象である4人と同じ生徒会のメンバーとして良好な関係を築けている。
ゲームで言うところの王太子ルートに入ってしまったのは想定外だったが、最終的に破滅しないのであれば何でも良かった。
そんなこんなで順調に本編開始に向けて時が進んでいた時、恐れている事態が起きた。
ヒロインが転生者だという情報を知ったのだ。案の定、その転生者はヒロインということに執着している様子。
そしてその情報を伝えてくれたのが同い年で友人、ヒロインの義姉へレア・セルティラスだった。彼女は学業・魔法共に優秀で、学園での成績はクレスディア殿下、私と次いで3位の実力者である。
乙女ゲームでは確か攻略対象達より下位の成績だったので、ゲームとは少し違ってきている人物だ。作中でもヒロインの姉だからか、生徒会での存在感はあった。
しかし今、そんな彼女が私を慕ってくれていて、ヒロインが転生者であるということも知ることが出来た。
それだけではなく、ヒロインのライラが今後どう動くのかを知らせてくれるそうだ。
かなり心強い味方が出来て本当に良かった。
だがへレアは乙女ゲームの中で『ヒロインの義姉である』という事と、『生徒会のメンバーであり優秀』としか得られる情報が無かった。つまりはまだまだ謎があるキャラ……人物ということだ。
ライラの手帳に書かれていた言葉の意味を聞いてくるあたり、彼女が転生者であるという可能性は低いだろう。
とはいえ、信用はしているが注意しておくに越したことはない。
へレアについては、今後の行動にて信頼に値するか見極めましょう──
私はメリーア・シェルラート。シェルラート公爵家の長女だ。
私には誰にも言えない秘密…、前世の記憶があった。
『日本』という国で変わらない日常を送っていたはずなのだが、気付けばこの世界に転生していた。向こうでは24歳まで生きた記憶があるので、この世界の年齢と合わせれば39歳……。まぁその辺は考えないでおこう。
そんな私が転生したことよりも驚いたのが、この世界が前世でプレイしていた『乙女ゲーム』の世界だということだった。それも悪役令嬢メリーアになっていたので、思い出した時は絶望したものだ。
しかし有り難いことに、ゲーム通りに身体が動くことはなかった。自分の意思で行動出来るということは、断罪の運命を変えられるということ。これに関しては不幸中の幸いだった。
私は断罪される未来を変える為、ゲーム中のメリーアとは真逆の行いをしてきた。
平民を嘲るのではなく、一人ひとりを尊重し手を差し伸べたり、流行病の広がりを防いだり…。今でも、時間があれば街に出向いて平民達と交流している。
社交界では完璧を目指し、貴族令嬢達への対応はあまり得意ではないが私なりに努力し、今の地位を手に入れることが出来た。
だが油断してはならない。メリーアが破滅ルートを進む理由は、『ヒロイン』のライラにある。メリーアが彼女を虐めたが故に断罪されるのだ。
ならば虐めなければいい?
…そう簡単なものではない可能性がある。
唯一の懸念…、それはヒロインも転生者であるということ。
前世で読んでいた小説では、悪役令嬢に転生した女性が運命を変えようと必死に足掻くが、同じ転生者だったヒロインに陥れられ、結局破滅してしまうという物語があった。そのような物語のヒロインは、大抵が『自分は特別』という考えが強い。
それ故に悪役令嬢なのに自分を虐めてこないことに疑問を持ち始め、同じ転生者だと知った際には周囲を味方にして陥れていた。
私はそうなりたくはない。その強い思いのもと、今まで出来る限りのことをしてきた。
それらはただの偽善だったのかもしれない…。けれど感謝をされれば素直に嬉しかったし、人々と交流を続けていると人の温もりを感じることが出来た。
だからこそ、シェルラート公爵領の領民たちが大好きだ。彼らを決して不幸にはさせない、私はそう誓っている。
乙女ゲームの舞台である学園でも、頼れる友人と出会えた。10歳の時に婚約者となった王太子クレスディア殿下を含め、攻略対象である4人と同じ生徒会のメンバーとして良好な関係を築けている。
ゲームで言うところの王太子ルートに入ってしまったのは想定外だったが、最終的に破滅しないのであれば何でも良かった。
そんなこんなで順調に本編開始に向けて時が進んでいた時、恐れている事態が起きた。
ヒロインが転生者だという情報を知ったのだ。案の定、その転生者はヒロインということに執着している様子。
そしてその情報を伝えてくれたのが同い年で友人、ヒロインの義姉へレア・セルティラスだった。彼女は学業・魔法共に優秀で、学園での成績はクレスディア殿下、私と次いで3位の実力者である。
乙女ゲームでは確か攻略対象達より下位の成績だったので、ゲームとは少し違ってきている人物だ。作中でもヒロインの姉だからか、生徒会での存在感はあった。
しかし今、そんな彼女が私を慕ってくれていて、ヒロインが転生者であるということも知ることが出来た。
それだけではなく、ヒロインのライラが今後どう動くのかを知らせてくれるそうだ。
かなり心強い味方が出来て本当に良かった。
だがへレアは乙女ゲームの中で『ヒロインの義姉である』という事と、『生徒会のメンバーであり優秀』としか得られる情報が無かった。つまりはまだまだ謎があるキャラ……人物ということだ。
ライラの手帳に書かれていた言葉の意味を聞いてくるあたり、彼女が転生者であるという可能性は低いだろう。
とはいえ、信用はしているが注意しておくに越したことはない。
へレアについては、今後の行動にて信頼に値するか見極めましょう──
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