【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒

文字の大きさ
28 / 51
2章

第27話

しおりを挟む
「あっ!私、用事を思い出しましたっ。」


急に立ち上がり、そう言ったライラ。定例会をしないのならば用はないといった感じね。
ならば早々に立ち去ってもらいましょう。その方が私達としてもありがたいもの。


「では失礼しますねっ。クレスディア様、行きましょう?」
「そ、そうか?」
「待て。君の用事なら、クレスは必要ないだろ。」
「えっ……。」


ドーフェンが睨み、ライラは萎縮している。怒り混じりの声で言った為か、私も少し驚いてしまったわ…。
けれどその方が良いでしょう。クレスディア殿下とライラを引き離さなければならないのだから。


「ええっと……そう!これはクレスディア様との用事なのですっ!だから……」
「そんなわけないだろ。そもそも王族のクレスが、婚約者でもない女と2人で居ること自体が問題だ。」
「ドーフェン、そのくらいに……」
「クレス、悪いが黙っててくれ。」
「っ…。」


クレスディア殿下もドーフェンに睨まれ、彼が本気で怒っていると察した様子。
商人に言葉で勝とうというのは無謀な行い。それはこの場に居る誰もが理解していた。
だからこそ私やゼルヴィーサ様、メリーア様は黙って成り行きを見守っていたわ。そしてこのままドーフェンが押し切ってくれことも分かっていたから…。


「そ、その……わ、私急ぐので、では失礼しますっ!」


逃げるように去って行ったライラ。何だが清々するわね。
クレスディア殿下は居心地が悪そうに俯かれている。殿下が悪いわけではないのだけれど、魅了されている状態では正常な思考判断など出来ない。恐らく今は、ただただライラに申し訳ないと思われているでしょう。


「…はぁ……大変だな…。」
「でもドーフェンが居なかったら、状況はさらに悪化していたわ。ありがとう。」
「いや、俺はただ思ったことを言っただけだ。」
「へレアの言う通り、ドーフェンのおかげよ。」
「そうですね。これで心置きなく、クレスに近付けるのですから。」


そう言ったゼルヴィーサ様は既に、クレスディア殿下の真後ろに立っていた。いつの間に移動したのかしら…、相変わらず恐ろしいお方ね。
ゼルヴィーサ様は殿下のペンダントを素早く取り上げると、私に投げてきた。


「わっ!?……ゼル様、何故私に投げるのよ…。」
「それは貴女がや……、以前彼女から魅了が付与された物を貰ったと聞いたので、何か分かるのではと思いまして。」


完全に『闇魔法』と言いかけたわよね…。わざとかしら?私が睨むと目を逸らしたもの。
口を滑らせてしまった場合は記憶操作をすることが出来るとはいえ、友人には使いたくないわね。

それにしてもこのペンダント、強力な魅了魔法の効果がかけられているようね。私が貰った耳飾りよりも数段強い。確実にクレスディア殿下を手中に収める為でしょう。
クレスディア殿下はペンダントが外されて魅了が解けたのか、そのまま気を失ってしまっていた。椅子に腰掛けた状態だった為、長椅子に移し、寝かせておくことになったわ。
その間に話が進められた。


「このペンダントだけれど、簡単に調べた結果とクレス様の様子を見る限り、私が貰ったものよりも強い魅了魔法が付与されているのでしょう。」
「なるほど。流石、調べるのが早いですね。」


ゼルヴィーサ様の言葉は嫌味にしか聞こえない…。魔法に関しては、私よりも彼の方が圧倒的に詳しい。だからこそ、私はゼルヴィーサ様にペンダントを押し付けて渡した。


「あとは、私よりもゼル様の方で調べて欲しいわ。誰が付与したのかが分かれば、入手経路も判明するはずよ。」
「了解です。研究所の方々と調べておきましょう。しかし、こんなものまで用意するとは思いませんでしたよ。」
「ゼル。魅了の効果は、クレスが目を覚ましたら解けているのかしら?」


メリーア様は心配そうにクレスディア殿下を見つめている。
私の考えでは、目が覚めたら元の殿下に戻っているはず。しかし魔法自体が強力な為、記憶の部分で何らかの影響が残っている可能性があるわね。どの程度魅了が侵食していたのか、というところが要になってくるでしょう。


「こればかりは目を覚まさない限り分かりませんね…。レアはどう思います?」


ゼルヴィーサ様は分かっていて私に聞いてくるのだから、性格悪いわよね…。


「ペンダントを取った瞬間に気を失ってしまったのだから、元に戻っていると思うけれど…。」
「……。」
「リーア様。きっと大丈夫だから、信じて待ちましょう。」
「…そうね。ありがとう、レア。」


悲しげな笑顔を見せるメリーア様。婚約者を取られたような気分になられているのでしょう。事実、本当にそうなりかけていたのだから。

クレスディア殿下が目を覚ますまでの間に、今後のライラへの対応を話し合った。
まずは監視。これに関しては、引き続き私が担うこととなった。
次に、生徒会の5人は、必ず信頼出来る者と2人以上で行動すること。クレスディア殿下が1人で居る時をライラに狙われてしまったので、同じ過ちを繰り返さないようにする為ね。

その他にも決めたことはあるのだけれど、私には疑問が一つ残っていた。それは、監視していたはずのライラが、何時ペンダントを入手したのか…という事ね。
学園の敷地外に出たならば誰かと会う機会はあったでしょう。けれどそのような時は目を離さないようにしている。
つまりペンダントを受け取るタイミングは、皆が寝静まっている深夜あるいは学園に居る時間。学園内に彼女の協力者がいる…とは思いたくないわね。
『乙女ゲーム』に関わることならば、メリーア様が何か知っているかもしれない。後で聞いてみるとしましょう。


「……ここは…?」
「お目覚めか?クレス。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こんな婚約者は貴女にあげる

如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。 初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。

コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。 だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。 それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。 ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。 これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。

あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。 その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界! 物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて… 全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。 展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

たいした苦悩じゃないのよね?

ぽんぽこ狸
恋愛
 シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。    潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。  それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。  けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。  彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

処理中です...