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2章

第28話

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「生徒会室…?何故……それに皆も…。」


痛そうに頭を片手で押さえられるクレスディア殿下。やはり記憶消失が起こっているようね。


「クレス様。最後に覚えていることを話して欲しいの。」
「私は確か…、午後の授業が一つ終わって、次の授業に向かっている途中だったはず…。そこから先は覚えていない。」


午前は4回、午後2回の計6回に分かれている学園の授業。午前の授業が終わって、昼食の時間となった際はいつものクレスディア殿下だったわ。つまりその後である午後1回目の授業終わりにあのペンダントをかけられたのだとすれば、魅了にかかっていたのは1時間程度でしょう。
たったそれだけの時間で記憶消失を起こすとなると、私が思っていたよりもさらに強い魅了魔法があのペンダントに付与されていたことになるわね。付与を行った術者は相当な手練のはず。恐らく私よりも強いでしょうね。


「教えてくれてありがとう。」
「一先ずクレスが元に戻って良かったな。」
「ええ……っ…本当に……。」


涙を零すメリーア様。その様子を見たクレスディア殿下は、メリーア様を抱きしめた。
殿下は何があったのかを把握出来ていない様子だけれど、心配をかけたということだけは理解されたようね。
咄嗟にこのような対応が出来る殿下は、本当に流石ね…。

その後、私達はクレスディア殿下に何があったのかを説明し、今後の対策として決めた事柄も話した。殿下が賛同してくれたので、話はスムーズにまとまった。これからはクラスを移動する際などに、特にライラに注意しなければならない。2人以上で動くとはいえ、1人になった一瞬を狙ってくる可能性も十分にあるのだから。


「改めて、心配と迷惑をかけて悪かった…。」
「仕方がないことよ。クレス様ではなく、全てはライラが悪いのだから。」
「…ありがとう。」


優しい笑顔でそう仰ったクレスディア殿下。
ライラには虫唾が走るわね…。出来ることならば、伯爵家に閉じ込めておきたい。


「さて、学園内で起こっている問題は彼女のことのみでしたね。」
「ああ。俺達の学年は優秀揃いだからな。今回も2年が問題を起こしたという報告はない。」
「では、彼女についても話は終わりましたし、今日の定例会はここまでにしましょう。」


ゼルヴィーサ様の言葉に全員が頷き、生徒会室を出た。
私はメリーア様と寮に向かい、クレスディア殿下とゼルヴィーサ様、そしてドーフェンの3人は外で待たせていたカイルとの4人で寮に向かった。
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