【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒

文字の大きさ
34 / 51
2章

第33話

しおりを挟む
「お義姉様、以前プレゼントした耳飾りはどこにあるのです?」


寮へと着いた時、ライラが聞いてきた。
これは渡さなければいけない流れね…。どう妨害しようかしら。


「…私の部屋で、大切に置いているわよ。」
「見に行っても良いですか?」
「どうして?」
「付けているところを見たいのですっ!」


これは無理と言えそうね。
いかに家族であれど、上級生の階に下級生が行くことは許されない。これは学園の寮において絶対に守らなければならないことの1つ。
破れば私も罰則を受けることになるでしょう。


「なら持ってくるわ。あなたが私達の階に来ることは許されないから。」
「どうしても行ってはならないのですか…?」


目に涙を溜めて私を見るライラ。殴ってやろうかしら…。
……とりあえず落ち着け私。普通ならばここでこちらが折れるのでしょう。


「……ごめんなさいね。私の所為であなたが罰則を受けることになるのは嫌なの…。」
「っ…どうすれば行けるかしら。」


小声で舌打ちをしているけれど、部屋へ入らせるつもりは全くもってないわ。


「直ぐに取ってくるから、待っていて頂戴。」
「あっ、お義姉様っ!」


逃げるように取りに行く。彼女の頼みを受けて罰則を受けるなんて絶対に嫌だもの。
私は自室へと入り、耳飾りを箱ごと手に取った。
魅了魔法を解除することは出来るけれど、それをすれば怪しまれてしまう。ここは何の抵抗もせずに渡し、油断させてから回収しましょうか。


「ライラ、待たせたわね。今付けるわ。」
「…お義姉様、私にその耳飾りを渡してもらえますか?」
「…?何をするの?」
「少しの間貸してほしいのです。」
「……分かったわ。」


不思議そうな表情をしながら、ライラに耳飾りを渡す。
ライラは魅了の効果があるかを確認している様子ね。効果があると分かると、不敵な笑みを浮かべた。
どうやら私の魔力には気付いていないわね。かなり小さい魔力で、さらに魅了魔法の魔力とほぼ同じに変化させているから、気付けないのも無理ないわ。


「ありがとう、お義姉様。またいつか返しますねっ。」


そう言ってライラは走り去った。向かう方向から、自室のようね。


「いつか……ね…。」


耳飾りに付けた魔力、それは私が常に魔道具の位置を把握出来るようにするもの。一種の付与だから、術者が解かない限り消えることはない。私より強者であれば解けるでしょうけれど、それは限られた人になるわね。


「あの耳飾りは……ライラの自室に置かれたようね。後で彼に取りに行かせましょう。」


私はあの耳飾りを明日回収するつもりだったけれど、明日持ち出されてしまえばそれは難しくなるでしょう。
そう考えた私は、自室へ戻った後に影から従魔を呼び出す。


影獣レイ。」
「─何だ、主よ。」


闇魔法の高位術者のみが召喚できる上位魔獣、《影獣シャドー》。その名の通り影に住む魔獣で、常に自身の影に忍ばせることが出来る。『レイ』という名を与えると、より強くなった。
高位術者のみが召喚可能な理由は、会話が出来るというところにあるわね。
魔獣を召喚する魔法は、《魔獣召喚》というそのままの名の魔法を使用する。けれど通常は命令を聞くだけの魔獣が現れるため、会話は不可能。
しかし高位術者の場合はそれぞれの属性の上位魔獣を呼び出すことが可能となるわ。水属性の上位魔獣も呼び出せるけれど、私はあえて闇属性の魔獣を従えている。
このことは両親にすら秘密にしていた。


「私の魔力を付与した、耳飾りの魔道具を回収して欲しいの。」
「あの魅了魔法がかけられた魔道具か。」


私の行動を影から監視しているからか、直ぐに分かった様子のレイ。


「ええ。お願い出来るかしら。」
「無論だ。主の頼みとあらば聞かぬ選択肢などない。」
「ありがとう。私がライラを部屋から離した隙に回収するように。少したりとも魔力の痕跡を残さないようにして欲しいわ。」
「承知した。」


狼のような形をし、真っ黒だけれど目の部分は何となくわかる影獣。実際には形は変幻自在で、私の前では格好良いからとこの姿にさせていた。
私の魔力から生まれているが故に、とても忠順。


「さて、私は私の仕事をしなきゃならないわね。」


私は迷いなくライラの部屋へと向かった。
扉を叩くと、中から開いた。


「誰…って、お義姉様っ!?」
「突然ごめんなさいね。見せたい場所があるの。」
「もう夕暮れですよ?」
「校舎内だから大丈夫よ。それにあまり知られていないけれど、少しだけ人がいるわ。」


寮から少し歩いた所にある、穴場の場所。
幸運なことに今日は晴天なので、その場所を教えるという目的で部屋から連れ出せるわね。
ライラが攻略対象と呼んでいる4人が来ないことを言っておかなければ…。耳飾りを持ち出す恐れがあるもの。そう思っていると、向こうから聞いてきた。


「クレスディア様やゼルヴィーサ様は来られないのですか?」
「今日はドーフェンを含め3人集まって、寮で何か話し合うと聞いているわ。カイルは……分からないわね。」
「そう……ですか。ではお義姉様、私に見せたい場所を案内してくださいっ!」


耳飾りが部屋に置かれていることを確認し、私はライラを連れて寮を出たのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ

Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます! ステラの恋と成長の物語です。 *女性蔑視の台詞や場面があります。

アクアリネアへようこそ

みるくてぃー
恋愛
突如両親を亡くしたショックで前世の記憶を取り戻した私、リネア・アージェント。 家では叔母からの嫌味に耐え、学園では悪役令嬢の妹して蔑まれ、おまけに齢(よわい)70歳のお爺ちゃんと婚約ですって!? 可愛い妹を残してお嫁になんて行けないわけないでしょ! やがて流れ着いた先で小さな定食屋をはじめるも、いつしか村全体を巻き込む一大観光事業に駆り出される。 私はただ可愛い妹と暖かな暮らしがしたいだけなのよ! 働く女の子が頑張る物語。お仕事シリーズの第三弾、食と観光の町アクアリネアへようこそ。

【完結】 婚約破棄された弱小令嬢の仕返し

碧井 汐桜香
恋愛
弱小男爵家のサントス男爵家のルリアーナは、権力も財力も大きいダンテ伯爵家の嫡男シジャールから突然の婚約打診を受けた。 こんな弱小男爵家に!? 平凡なルリアーナに!? なにかの間違いでは? と騒ぐ男爵とルリアーナに、ルリアーナが可愛いからよ、とのんびり捉えていた男爵夫人。 顔合わせに呼び出されてみれば、実際は義妹フィラルディーアを溺愛し、シジャールに恋する女性たちからフィラルディーアに対する嫉妬の身代わりになってほしいということだった。当然断ろうとするサントス男爵家を家格の違いで押し込め、ルリアーナは嫁入り修行の一環でダンテ伯爵家で暮らすことになったのだが……?

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

【完結】婚約破棄された令嬢リリアナのお菓子革命

猫燕
恋愛
アルテア王国の貴族令嬢リリアナ・フォン・エルザートは、第二王子カルディスとの婚約を舞踏会で一方的に破棄され、「魔力がない無能」と嘲笑される屈辱を味わう。絶望の中、彼女は幼い頃の思い出を頼りにスイーツ作りに逃避し、「癒しのレモンタルト」を完成させる。不思議なことに、そのタルトは食べた者を癒し、心を軽くする力を持っていた。リリアナは小さな領地で「菓子工房リリー」を開き、「勇気のチョコレートケーキ」や「希望のストロベリームース」を通じて領民を笑顔にしていく。

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?

鏑木 うりこ
恋愛
 父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。 「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」  庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。  少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *) HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい! 色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー! ★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!  これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい! 【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

処理中です...