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2章
第33話
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「お義姉様、以前プレゼントした耳飾りはどこにあるのです?」
寮へと着いた時、ライラが聞いてきた。
これは渡さなければいけない流れね…。どう妨害しようかしら。
「…私の部屋で、大切に置いているわよ。」
「見に行っても良いですか?」
「どうして?」
「付けているところを見たいのですっ!」
これは無理と言えそうね。
いかに家族であれど、上級生の階に下級生が行くことは許されない。これは学園の寮において絶対に守らなければならないことの1つ。
破れば私も罰則を受けることになるでしょう。
「なら持ってくるわ。あなたが私達の階に来ることは許されないから。」
「どうしても行ってはならないのですか…?」
目に涙を溜めて私を見るライラ。殴ってやろうかしら…。
……とりあえず落ち着け私。普通ならばここでこちらが折れるのでしょう。
「……ごめんなさいね。私の所為であなたが罰則を受けることになるのは嫌なの…。」
「っ…どうすれば行けるかしら。」
小声で舌打ちをしているけれど、部屋へ入らせるつもりは全くもってないわ。
「直ぐに取ってくるから、待っていて頂戴。」
「あっ、お義姉様っ!」
逃げるように取りに行く。彼女の頼みを受けて罰則を受けるなんて絶対に嫌だもの。
私は自室へと入り、耳飾りを箱ごと手に取った。
魅了魔法を解除することは出来るけれど、それをすれば怪しまれてしまう。ここは何の抵抗もせずに渡し、油断させてから回収しましょうか。
「ライラ、待たせたわね。今付けるわ。」
「…お義姉様、私にその耳飾りを渡してもらえますか?」
「…?何をするの?」
「少しの間貸してほしいのです。」
「……分かったわ。」
不思議そうな表情をしながら、ライラに耳飾りを渡す。
ライラは魅了の効果があるかを確認している様子ね。効果があると分かると、不敵な笑みを浮かべた。
どうやら私の魔力には気付いていないわね。かなり小さい魔力で、さらに魅了魔法の魔力とほぼ同じに変化させているから、気付けないのも無理ないわ。
「ありがとう、お義姉様。またいつか返しますねっ。」
そう言ってライラは走り去った。向かう方向から、自室のようね。
「いつか……ね…。」
耳飾りに付けた魔力、それは私が常に魔道具の位置を把握出来るようにするもの。一種の付与だから、術者が解かない限り消えることはない。私より強者であれば解けるでしょうけれど、それは限られた人になるわね。
「あの耳飾りは……ライラの自室に置かれたようね。後で彼に取りに行かせましょう。」
私はあの耳飾りを明日回収するつもりだったけれど、明日持ち出されてしまえばそれは難しくなるでしょう。
そう考えた私は、自室へ戻った後に影から従魔を呼び出す。
「影獣。」
「─何だ、主よ。」
闇魔法の高位術者のみが召喚できる上位魔獣、《影獣》。その名の通り影に住む魔獣で、常に自身の影に忍ばせることが出来る。『レイ』という名を与えると、より強くなった。
高位術者のみが召喚可能な理由は、会話が出来るというところにあるわね。
魔獣を召喚する魔法は、《魔獣召喚》というそのままの名の魔法を使用する。けれど通常は命令を聞くだけの魔獣が現れるため、会話は不可能。
しかし高位術者の場合はそれぞれの属性の上位魔獣を呼び出すことが可能となるわ。水属性の上位魔獣も呼び出せるけれど、私はあえて闇属性の魔獣を従えている。
このことは両親にすら秘密にしていた。
「私の魔力を付与した、耳飾りの魔道具を回収して欲しいの。」
「あの魅了魔法がかけられた魔道具か。」
私の行動を影から監視しているからか、直ぐに分かった様子のレイ。
「ええ。お願い出来るかしら。」
「無論だ。主の頼みとあらば聞かぬ選択肢などない。」
「ありがとう。私がライラを部屋から離した隙に回収するように。少したりとも魔力の痕跡を残さないようにして欲しいわ。」
「承知した。」
狼のような形をし、真っ黒だけれど目の部分は何となくわかる影獣。実際には形は変幻自在で、私の前では格好良いからとこの姿にさせていた。
私の魔力から生まれているが故に、とても忠順。
「さて、私は私の仕事をしなきゃならないわね。」
私は迷いなくライラの部屋へと向かった。
扉を叩くと、中から開いた。
「誰…って、お義姉様っ!?」
「突然ごめんなさいね。見せたい場所があるの。」
「もう夕暮れですよ?」
「校舎内だから大丈夫よ。それにあまり知られていないけれど、少しだけ人がいるわ。」
寮から少し歩いた所にある、穴場の場所。
幸運なことに今日は晴天なので、その場所を教えるという目的で部屋から連れ出せるわね。
ライラが攻略対象と呼んでいる4人が来ないことを言っておかなければ…。耳飾りを持ち出す恐れがあるもの。そう思っていると、向こうから聞いてきた。
「クレスディア様やゼルヴィーサ様は来られないのですか?」
「今日はドーフェンを含め3人集まって、寮で何か話し合うと聞いているわ。カイルは……分からないわね。」
「そう……ですか。ではお義姉様、私に見せたい場所を案内してくださいっ!」
耳飾りが部屋に置かれていることを確認し、私はライラを連れて寮を出たのだった。
寮へと着いた時、ライラが聞いてきた。
これは渡さなければいけない流れね…。どう妨害しようかしら。
「…私の部屋で、大切に置いているわよ。」
「見に行っても良いですか?」
「どうして?」
「付けているところを見たいのですっ!」
これは無理と言えそうね。
いかに家族であれど、上級生の階に下級生が行くことは許されない。これは学園の寮において絶対に守らなければならないことの1つ。
破れば私も罰則を受けることになるでしょう。
「なら持ってくるわ。あなたが私達の階に来ることは許されないから。」
「どうしても行ってはならないのですか…?」
目に涙を溜めて私を見るライラ。殴ってやろうかしら…。
……とりあえず落ち着け私。普通ならばここでこちらが折れるのでしょう。
「……ごめんなさいね。私の所為であなたが罰則を受けることになるのは嫌なの…。」
「っ…どうすれば行けるかしら。」
小声で舌打ちをしているけれど、部屋へ入らせるつもりは全くもってないわ。
「直ぐに取ってくるから、待っていて頂戴。」
「あっ、お義姉様っ!」
逃げるように取りに行く。彼女の頼みを受けて罰則を受けるなんて絶対に嫌だもの。
私は自室へと入り、耳飾りを箱ごと手に取った。
魅了魔法を解除することは出来るけれど、それをすれば怪しまれてしまう。ここは何の抵抗もせずに渡し、油断させてから回収しましょうか。
「ライラ、待たせたわね。今付けるわ。」
「…お義姉様、私にその耳飾りを渡してもらえますか?」
「…?何をするの?」
「少しの間貸してほしいのです。」
「……分かったわ。」
不思議そうな表情をしながら、ライラに耳飾りを渡す。
ライラは魅了の効果があるかを確認している様子ね。効果があると分かると、不敵な笑みを浮かべた。
どうやら私の魔力には気付いていないわね。かなり小さい魔力で、さらに魅了魔法の魔力とほぼ同じに変化させているから、気付けないのも無理ないわ。
「ありがとう、お義姉様。またいつか返しますねっ。」
そう言ってライラは走り去った。向かう方向から、自室のようね。
「いつか……ね…。」
耳飾りに付けた魔力、それは私が常に魔道具の位置を把握出来るようにするもの。一種の付与だから、術者が解かない限り消えることはない。私より強者であれば解けるでしょうけれど、それは限られた人になるわね。
「あの耳飾りは……ライラの自室に置かれたようね。後で彼に取りに行かせましょう。」
私はあの耳飾りを明日回収するつもりだったけれど、明日持ち出されてしまえばそれは難しくなるでしょう。
そう考えた私は、自室へ戻った後に影から従魔を呼び出す。
「影獣。」
「─何だ、主よ。」
闇魔法の高位術者のみが召喚できる上位魔獣、《影獣》。その名の通り影に住む魔獣で、常に自身の影に忍ばせることが出来る。『レイ』という名を与えると、より強くなった。
高位術者のみが召喚可能な理由は、会話が出来るというところにあるわね。
魔獣を召喚する魔法は、《魔獣召喚》というそのままの名の魔法を使用する。けれど通常は命令を聞くだけの魔獣が現れるため、会話は不可能。
しかし高位術者の場合はそれぞれの属性の上位魔獣を呼び出すことが可能となるわ。水属性の上位魔獣も呼び出せるけれど、私はあえて闇属性の魔獣を従えている。
このことは両親にすら秘密にしていた。
「私の魔力を付与した、耳飾りの魔道具を回収して欲しいの。」
「あの魅了魔法がかけられた魔道具か。」
私の行動を影から監視しているからか、直ぐに分かった様子のレイ。
「ええ。お願い出来るかしら。」
「無論だ。主の頼みとあらば聞かぬ選択肢などない。」
「ありがとう。私がライラを部屋から離した隙に回収するように。少したりとも魔力の痕跡を残さないようにして欲しいわ。」
「承知した。」
狼のような形をし、真っ黒だけれど目の部分は何となくわかる影獣。実際には形は変幻自在で、私の前では格好良いからとこの姿にさせていた。
私の魔力から生まれているが故に、とても忠順。
「さて、私は私の仕事をしなきゃならないわね。」
私は迷いなくライラの部屋へと向かった。
扉を叩くと、中から開いた。
「誰…って、お義姉様っ!?」
「突然ごめんなさいね。見せたい場所があるの。」
「もう夕暮れですよ?」
「校舎内だから大丈夫よ。それにあまり知られていないけれど、少しだけ人がいるわ。」
寮から少し歩いた所にある、穴場の場所。
幸運なことに今日は晴天なので、その場所を教えるという目的で部屋から連れ出せるわね。
ライラが攻略対象と呼んでいる4人が来ないことを言っておかなければ…。耳飾りを持ち出す恐れがあるもの。そう思っていると、向こうから聞いてきた。
「クレスディア様やゼルヴィーサ様は来られないのですか?」
「今日はドーフェンを含め3人集まって、寮で何か話し合うと聞いているわ。カイルは……分からないわね。」
「そう……ですか。ではお義姉様、私に見せたい場所を案内してくださいっ!」
耳飾りが部屋に置かれていることを確認し、私はライラを連れて寮を出たのだった。
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