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2章
第36話
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学園へと着いた私とライラは、それぞれ教室へ向かう。
教室に着いた私は真っ先にメリーア様の元へ行き、絶対に1人で行動しないようにと釘を刺した。
何故?という表情をされたが、ライラが何かを企んでいると伝えると理解してくださったわ。
けれど面倒だったのは、ゼルヴィーサ様ね。昼休み中、急に人気の無い場所へ連れ出されたかと思うと、こちらが引くような形相で前のめりに聞いてきたのよ…。
ゼルヴィーサ様曰く、今朝私とライラが共に歩いている所を見たそう。
それだけならば気にしなかったとの事だが……
「心配は無用かと思いますが、一応確認を。魅了されていませんよね?」
「魅了魔法どころか、私にその属性の魔法が効かないことは、ゼル様が一番知っていると思うけれど。」
「その通りですね。やはり愚問でしたか。」
髪飾りに魅了魔法の効果があることを見抜いている様子。さすがはゼルヴィーサ様と言ったところね。
けれど次の質問に、私は顔色を変えた。
「ではもう1つ聞きます。義妹さんのアレは、レアの魔法ではない、合っていますか?」
『アレ』とは、ライラが持っていたブレスレットのことね。正直、私も詳しく知りたいわ。
このような聞き方をしてくるということは、黒魔法について知っているということ。ゼルヴィーサ様が黒魔法について知っているのは、魔法の研究者でもあるからでしょう。どこまで知っているのかは分からないけれど、ある程度のことは分かるようね。
黒魔法を扱う者を野放しにするのは危険すぎる。ライラを尋問してでも情報を聞き出すべきことであり、例え彼女が術者ではなくとも、繋がっているというだけで罪となる。
「無論、私の魔法ではないわ。何故彼女が持っているのか、どこで手に入れたのか気になるけれど、危険すぎる代物であることに変わりはない。あの『黒いモノ』について、ゼル様は知っているかしら。」
あえて私が黒魔法を知っていると思うように、強めの口調でそう言った。
狙い通り、ゼルヴィーサ様は私の意図を汲み取ってくれた様子。
「……どうやら禁じられた魔法の存在を知っているようですね。どうして知っているのかは、今はまだ聞かないでおきましょう…。それはそうと、黒魔法を知っているのならば話は早い。術者に心当たりは?」
「全く無いのよね…。彼女自身が術者だなんて、考えたくもないのだけれど…。」
あのブレスレットに呪いが付与されているということは、私とゼルヴィーサ様以外気付いていないと思われる。どれほど強力でも、相応の実力が無ければ見抜けないのが黒魔法の厄介な性質。
クレスディア殿下も見ればお分かりになるかもしれないわね。それに黒魔法の使い手について何か知っていることがある可能性も…。
一先ずゼルヴィーサ様には、メリーア様が狙われているかもしれないと告げた。
転生前の話やヒロインと悪役令嬢の関係などは秘密なので、『ライラがクレスディア殿下を好いているなら、 婚約者であるメリーア様は邪魔者となる』ということにした。実際間違っていないでしょう。
「今朝リーア様には、ライラへ近付かないようにと伝えたわ。勿論、1人で行動しないようにともね。呪いの効果も強さも分からないけれど、黒魔法が闇魔法よりも危険なのは事実。それに本人が術者の可能性もあるときたわ…。」
「警戒をより一層強める必要がありますね。」
「ええ。」
私はゼルヴィーサ様と、今後の動き並びにもしもの場合の対策などを手短に話し合った。
面倒事は御免だけれど仕方ないわね…。ライラが義妹である以上、彼女に関することは他人事では済まされない。義理とはいえ身内の行いには目を光らせなければ、セルティラス伯爵家の威信にも関わるでしょう。全く、厄介極まりない相手よね。
「…呪いの発動条件は何なのでしょう?ブレスレットということは、呪いたい相手の腕に付ければ良い…ということになりますが、相手がそう簡単に付けるなんて有り得ません。」
「私の知っている情報では、呪いは相手の身体の一部があれば簡単にかけられると聞いたわ。」
「そういえば私も聞いたことがありますね。ならば直接相手に付けなくとも良い…。」
四肢の一部だろうと、爪や髪の毛の1本だろうと、対象の身体の一部があれば呪いを容易にかけられるそう。勿論相手に持たせるという手段もあるけれどね。
つまり呪うための道具はある。あとは対象の一部さえあれば、呪いをかけられる状態ということに他ならない。
もしライラが術者ならば、ブレスレット自体が偽りの形という場合もある。呪物を極小サイズに縮小させ、ポケットや持ち物に忍び込ませることも可能……。
「…ゼル様。彼女を絶対にメリーア様やクレスディア殿下に近づけてはならないわ。」
「分かっていますよ。既に2人をライラから守るようにと、手練の者にお願いしています。レアより魔法については詳しいのですから。」
「その通りね…。なら安心よ。私達も警戒は緩めないでいましょう。」
「当然です。」
教室に戻ると、特に変わった様子はなかった。ライラと接触があったということはなさそうね。
メリーア様とクレスディア殿下は警戒をされている様子だけれど、私とゼルヴィーサ様を見て安心したように近寄って来た。
「へレア!ゼルヴィーサ!」
「メリーアに殿下。変わりはありませんか?」
「ああ。問題ない。それにしても、へレアの義妹が何かを企んでいるとリアから聞いたんだが…。」
黒魔法については伏せ、ある程度のことを話した。
メリーア様とクレスディア殿下であれば魔法について知っているでしょうけれど、学園の人気のある場で話すわけにはいかない。話をしただけで察していた様子だったので、説明が要らないのは確かなようね。
次の授業の準備をし、各自選択している授業の部屋へと向かう。
移動中も警戒していたが、ライラも授業がある為か何事もなかった。
カイルにも注意を払わなければならない。彼はライラの魔力の影響を受けている。
護衛という立場を利用し、ライラの頼み事を引き受けていると考えてもおかしくはないのだから──
教室に着いた私は真っ先にメリーア様の元へ行き、絶対に1人で行動しないようにと釘を刺した。
何故?という表情をされたが、ライラが何かを企んでいると伝えると理解してくださったわ。
けれど面倒だったのは、ゼルヴィーサ様ね。昼休み中、急に人気の無い場所へ連れ出されたかと思うと、こちらが引くような形相で前のめりに聞いてきたのよ…。
ゼルヴィーサ様曰く、今朝私とライラが共に歩いている所を見たそう。
それだけならば気にしなかったとの事だが……
「心配は無用かと思いますが、一応確認を。魅了されていませんよね?」
「魅了魔法どころか、私にその属性の魔法が効かないことは、ゼル様が一番知っていると思うけれど。」
「その通りですね。やはり愚問でしたか。」
髪飾りに魅了魔法の効果があることを見抜いている様子。さすがはゼルヴィーサ様と言ったところね。
けれど次の質問に、私は顔色を変えた。
「ではもう1つ聞きます。義妹さんのアレは、レアの魔法ではない、合っていますか?」
『アレ』とは、ライラが持っていたブレスレットのことね。正直、私も詳しく知りたいわ。
このような聞き方をしてくるということは、黒魔法について知っているということ。ゼルヴィーサ様が黒魔法について知っているのは、魔法の研究者でもあるからでしょう。どこまで知っているのかは分からないけれど、ある程度のことは分かるようね。
黒魔法を扱う者を野放しにするのは危険すぎる。ライラを尋問してでも情報を聞き出すべきことであり、例え彼女が術者ではなくとも、繋がっているというだけで罪となる。
「無論、私の魔法ではないわ。何故彼女が持っているのか、どこで手に入れたのか気になるけれど、危険すぎる代物であることに変わりはない。あの『黒いモノ』について、ゼル様は知っているかしら。」
あえて私が黒魔法を知っていると思うように、強めの口調でそう言った。
狙い通り、ゼルヴィーサ様は私の意図を汲み取ってくれた様子。
「……どうやら禁じられた魔法の存在を知っているようですね。どうして知っているのかは、今はまだ聞かないでおきましょう…。それはそうと、黒魔法を知っているのならば話は早い。術者に心当たりは?」
「全く無いのよね…。彼女自身が術者だなんて、考えたくもないのだけれど…。」
あのブレスレットに呪いが付与されているということは、私とゼルヴィーサ様以外気付いていないと思われる。どれほど強力でも、相応の実力が無ければ見抜けないのが黒魔法の厄介な性質。
クレスディア殿下も見ればお分かりになるかもしれないわね。それに黒魔法の使い手について何か知っていることがある可能性も…。
一先ずゼルヴィーサ様には、メリーア様が狙われているかもしれないと告げた。
転生前の話やヒロインと悪役令嬢の関係などは秘密なので、『ライラがクレスディア殿下を好いているなら、 婚約者であるメリーア様は邪魔者となる』ということにした。実際間違っていないでしょう。
「今朝リーア様には、ライラへ近付かないようにと伝えたわ。勿論、1人で行動しないようにともね。呪いの効果も強さも分からないけれど、黒魔法が闇魔法よりも危険なのは事実。それに本人が術者の可能性もあるときたわ…。」
「警戒をより一層強める必要がありますね。」
「ええ。」
私はゼルヴィーサ様と、今後の動き並びにもしもの場合の対策などを手短に話し合った。
面倒事は御免だけれど仕方ないわね…。ライラが義妹である以上、彼女に関することは他人事では済まされない。義理とはいえ身内の行いには目を光らせなければ、セルティラス伯爵家の威信にも関わるでしょう。全く、厄介極まりない相手よね。
「…呪いの発動条件は何なのでしょう?ブレスレットということは、呪いたい相手の腕に付ければ良い…ということになりますが、相手がそう簡単に付けるなんて有り得ません。」
「私の知っている情報では、呪いは相手の身体の一部があれば簡単にかけられると聞いたわ。」
「そういえば私も聞いたことがありますね。ならば直接相手に付けなくとも良い…。」
四肢の一部だろうと、爪や髪の毛の1本だろうと、対象の身体の一部があれば呪いを容易にかけられるそう。勿論相手に持たせるという手段もあるけれどね。
つまり呪うための道具はある。あとは対象の一部さえあれば、呪いをかけられる状態ということに他ならない。
もしライラが術者ならば、ブレスレット自体が偽りの形という場合もある。呪物を極小サイズに縮小させ、ポケットや持ち物に忍び込ませることも可能……。
「…ゼル様。彼女を絶対にメリーア様やクレスディア殿下に近づけてはならないわ。」
「分かっていますよ。既に2人をライラから守るようにと、手練の者にお願いしています。レアより魔法については詳しいのですから。」
「その通りね…。なら安心よ。私達も警戒は緩めないでいましょう。」
「当然です。」
教室に戻ると、特に変わった様子はなかった。ライラと接触があったということはなさそうね。
メリーア様とクレスディア殿下は警戒をされている様子だけれど、私とゼルヴィーサ様を見て安心したように近寄って来た。
「へレア!ゼルヴィーサ!」
「メリーアに殿下。変わりはありませんか?」
「ああ。問題ない。それにしても、へレアの義妹が何かを企んでいるとリアから聞いたんだが…。」
黒魔法については伏せ、ある程度のことを話した。
メリーア様とクレスディア殿下であれば魔法について知っているでしょうけれど、学園の人気のある場で話すわけにはいかない。話をしただけで察していた様子だったので、説明が要らないのは確かなようね。
次の授業の準備をし、各自選択している授業の部屋へと向かう。
移動中も警戒していたが、ライラも授業がある為か何事もなかった。
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