【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒

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2章

第38話

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メリーア様とライラは、クレスディア殿下から少し離れた位置にて、2人の宮廷魔法師に監視をされていた。
私は殿下の様子を見つつ、ゼルヴィーサ様と共にクレスディア殿下とメリーア様を護衛していた魔法師に話を聞いていた。ライラやカイル、或いはその他不審な動きをしている学生が近付いた瞬間はなかったのか、殿下が倒れてしまう前に異変は見られなかったのか等、気になることは全て質問した。
しかしライラがクレスディア殿下に接触するどころか、近付いてすらいなかった。特に異変もなかったそうで…。


「そういえば、カイルは何をしているの?彼は学園におけるクレス様の護衛の任を受けているはず…。」


ゼルヴィーサ様のみに聞こえるよう、小声で話す。
私は昨日からカイルの姿を見ていない。
殿下が倒れたというのに、姿を現す気配もなかった。控えめに言っても騎士失格よね。ライラの影響を強く受けていたから、殿下ご自身が遠ざけたという可能性もあるけれど…。


「へレアに伝え忘れていましたね。カイルなら、現在実家のケイテース公爵家で謹慎中ですよ。」
「謹慎…?……あぁ、なるほどね…。」


私の言葉に頷くゼルヴィーサ様。

カイルは護衛対象クレスディア殿下を放置し、ライラに夢中になっていた。ライラの命令ならば何でも聞くほどに、光の魔力の影響を受けていたのは事実。とはいえ、クレスディア殿下の側を離れるのは許されない事だった。
そこで『ライラから遠ざける』という意味も込めての謹慎処分としたのでしょう。今ならば、宮廷魔法師が護衛に付いているのだから、確かに危険は少ない。ケイテース侯爵様のご判断は正しい、と私も思うわね。
次に会う時は、ライラの魔力から解放されていると良いのだけれど…。


「カイルが謹慎中となると、ライラ自身が動かなければ、王太子たるクレス様に近付く術は無きに等しい……。けれど自分が警戒されていることは理解しているはずよね。」


王太子に声をかけるには、それ相応の地位或いは理由が必要となる。
ライラであれば、殿下の学友かつ生徒会の私が義姉にいるので、『義姉から伝言がある』とでも理由をつければクレスディア殿下に近付くことは容易。
けれど今までの行動から、生徒会の私達はライラを危険視し、遠ざけている。その事に気付いていないはずはないでしょう。


「警戒されていると分かっていたからこそ、自ら動かなかったのでは?と言っても、彼女に影響されていそうな生徒すら、クレスに近付いていないとの事ですが。」
「つまり近付く必要が無かった…。……既に呪いをかける為の道具は揃っていたということ…?」
「ならば何故、昨日学園にブレスレットを持ってきたというのです?」
「そうよね…。道具が揃っていたとなると、何故持ってきたのか説明がつかないわよね。」


呪う為の道具が揃っているのならば、学園に持ってくるのではなく寮で呪いをかけることが出来たはず。その方が、誰かに見られることもないのだから。
しかしライラは持ち出した。私やゼルヴィーサ様に気付かれているとは思ってもいないでしょう。


「……普通は気付かない…?」
「…?どうかしましたか?」
「呪いは通常見えない。だから誰かが気付くことはない、そう考えていたから彼女は学園に持ってきたのでは?」
「だとしても、それでは説明出来ていませんよ。」
「…そうね。」


結局、何故持ってきたのかは分からない。
けれど私はある事に気が付いた。それは呪いが効いてくる『時間』。
クレスディア殿下が倒れた『学園終わり』という時間に、上手く合わせる必要がライラにはあった。大勢の前で、犯人はメリーア様だと印象付けるのが狙いなのだから。
私は初め、朝に呪いをかけ、午後効いてくるようにしたのだと思っていた。けれど……


「ゼル様、少し確認したいことができたから、この場を任せてもいいかしら。」
「構いませんが…。」


私はすぐさま、とある教師を探しに向かう。
そして目当ての教師を見つけ、声をかけた。


「フレイ先生。」
「あら、へレアさん。どうしたのかしら?」


フレイ・アスレント先生。3人兄妹である現アスレント侯爵の末の妹で、ライラの担任を務めている方だった。
この方に聞きたいことはただ1つ。


「フレイ先生にお尋ねしたいことがありまして…。昨日の授業で、ライラが欠席した時間などはありませんでしたか?」


ファレア学園では教科ごとに担当教師がいる為、基本的には1日6限ある授業の全てが違う教師から学ぶ。
しかし授業を欠席した者がいた場合は、教師がその者の担任に伝える決まりとなっている。1年間の総評価に関わるからという理由ね。
故に、私はライラの担任たるフレイ先生に、彼女が欠席した授業がないかを尋ねることにしたわ。6人の教師に聞くよりは圧倒的に早く分かるもの。


「そうねぇ。確か昨日の3限目、魔法基礎の授業だったかしら。授業の途中、体調不良で保健室に行ったと聞いているわ。次の授業が私の担当だったのだけれど、その時には出席していたから、一時的なものだったみたいね。」
「そうですか…。」


やはりそうね……。
保健室ならば、室内に居るのは教師1人と体調不良者のみ。仕切りもある為、寝ているのか起きているのかも分からないでしょう。
つまり音さえ出さなければ、何をしていても気付かれないということ…。


「教えて頂き、ありがとうございます。」
「どういたしまして。また何かあったら、何時でも来て頂戴。」
「はい。では失礼致します。」


私は急いでゼルヴィーサ様達がいる部屋へと向かう。
一刻も早く、この事実を伝えるべきでしょう。
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