51 / 51
2章
第50話(最終話)
しおりを挟む
──数ヶ月後──
「ここはこの公式を使って……、そんな感じよ。次はこの問題ね。」
「皆、少し休憩を取ろうか。」
「了解したわ。」
私達は今、生徒会の5人で勉強を行っていた。苦手教科を教え合いながら進めている。
今日は学園が休みの日。このような日は、予定がなければ学園の図書館にて5人で勉強を行うのが、私達の日常ね。
カイルも誘ったのだけれど、鍛錬があるからと断られたわ。1番勉強をしなければならないというのに…。
「……気を張らなくていいというのは、本当に楽ね…。」
「昨日の事のように覚えているが、もう数ヶ月経っているとはな。」
ライラの様子を見に行った日から3日後、彼女は死の目前で目を覚ましたという。
1ヶ月かけて元の健康状態まで戻り、極刑に基づく肉体労働が再度課された。
しかし2週間前、鉱山での労働中に落盤事故によって、ライラは命を落とすこととなった。事故に巻き込まれた受刑者は彼女の他に幾人かいたけれど、怪我のみで済んだそう。
狙ったかのようにライラの居た場所のみが大きく崩れたと聞いている。呪いは解けても、神の裁きを受けることになったようね。仕方がないと言えばそうなのでしょう。
現在は平和に学園生活を送っている。生徒達にかけられていた光の魔力による魅了効果は、既にその全てが消失していた。
学園は元の様子を取り戻し、皆がライラのことを忘れ始めている。
あの一件により、光魔法の使い手にも、闇魔法の使い手と同じように監視を付けることが定められた。光魔法使いだからといって、善人ばかりではないということを全員が学んだ良い機会となったわね。
その後、勉強を終え寮に戻った私とメリーア様は、メリーア様の自室で話をしていた。
「彼女……、最後まで自分の非を認めなかったようね。」
「ええ…。極刑労働中も、働こうとしなかったと聞いているわ。『ヒロイン』や『神に選ばれた存在』とか言って、ずっと喚いていたそうよ。リーア様とは真逆なほどに最低で、性根が腐っているというのにね。結局は天罰が下ることになったわけだけど…。」
「相変わらず毒舌ね…。もう少しオブラートに包めるでしょう?」
「包んだところで意味は同じ…。他に誰もいないのだから、遠回しな言い方をしなくてもいいでしょう?」
私の言葉に、メリーア様は苦笑されていた。
……あの時のことを思い出すとまた腹が立ってきたわね。私の大切な友人に危害を加えるなど、絶対に許さない。
好きな人がいるのならば、そう相手に伝えれば良いでしょう。魅了で相手の意志とは関係なく自分を惚れさせる……、それは恋ではなくただの支配欲よね。私が最も嫌いなやり方よ。
「レア…、ありがとう。ずっと守っていてくれて。」
「私は自分がしたいようにしただけよ。大切な友人を守りたいと思うのは、当然の事でしょう?……私には強い権力や財力がある訳ではないけれど、見えない攻撃から守ることくらいは出来る…。流石に『アイテム』とやらの攻撃は防げなかったけれどね…。」
「でもレアが居なければ、この国はどうなっていたことか…。クレスやゼル、それにフェンの全員が、心から貴女に感謝しているわ。勿論私もね。だから、レアが困っている時、何時でも頼って頂戴。必ず助けになるから。」
「……ありがとう。」
──翌日。
学園の門の前で、クレスディア殿下とゼルヴィーサ様、ドーフェンの3人が待っていた。私はメリーア様と共に彼らの方へ歩いて行く。
今日も皆で勉強をする予定だったので、門の前で集合としていた。
とはいえ一日中勉強は疲れるので、午後からは5人で美味しいものを食べに行くつもりにしている。
「遅いですよ。」
「集合時間ギリギリだぞ。」
「まぁまぁ2人とも。時間には間に合っているんだ。そう怒らずともいいじゃないか。」
「ごめんなさいね。忘れ物を一度取りに戻ったから、少し遅くなってしまったのよ。次から気を付けるわ。」
「さて、いつも通り図書館へ行くよ。」
他愛のない会話で笑い合い、のんびりと平和な時間を過ごす…。優しく、心強い友人に恵まれ、私は今とっても幸せな気持ちでいる。
以前メリーア様は仰っていた。
『この世界の主人公たるヒロインが、不幸にもバッドエンドルートを辿ってしまうとはね…。』
──と。
……私はこの世界に、『世界が認める主人公』はいないと思っている。生きとし生けるもの全てが主人公であり、それぞれが生きてきた分だけ物語を持っているのだから。
人道に反することをすれば罰を受け、善行を行えば福が返ってくる。ライラの場合、まさしく前者が起こったということでしょう。
私はライラを死に至らしめた存在と言える。
けれど後悔はしていない。必要なことをした、それだけよ。
私は彼女が極刑になるきっかけを作ったに過ぎない。いずれ必ずこうなっていたでしょうから…。
家族や友人、使用人達の幸せな姿を見ることが、私にとっての幸せ。そんな大切な存在を害する者がいるのならば容赦はしない、それが私の中で決めている事。
義妹の邪魔をした結果、幸福になる運命のはずだった義妹が不幸になった。
今となっては元義妹であり、彼女の死後の世界は天国か地獄か…。
……私にはもう関係のないことね。
『今』が幸せなら、それだけで良いもの──
「ここはこの公式を使って……、そんな感じよ。次はこの問題ね。」
「皆、少し休憩を取ろうか。」
「了解したわ。」
私達は今、生徒会の5人で勉強を行っていた。苦手教科を教え合いながら進めている。
今日は学園が休みの日。このような日は、予定がなければ学園の図書館にて5人で勉強を行うのが、私達の日常ね。
カイルも誘ったのだけれど、鍛錬があるからと断られたわ。1番勉強をしなければならないというのに…。
「……気を張らなくていいというのは、本当に楽ね…。」
「昨日の事のように覚えているが、もう数ヶ月経っているとはな。」
ライラの様子を見に行った日から3日後、彼女は死の目前で目を覚ましたという。
1ヶ月かけて元の健康状態まで戻り、極刑に基づく肉体労働が再度課された。
しかし2週間前、鉱山での労働中に落盤事故によって、ライラは命を落とすこととなった。事故に巻き込まれた受刑者は彼女の他に幾人かいたけれど、怪我のみで済んだそう。
狙ったかのようにライラの居た場所のみが大きく崩れたと聞いている。呪いは解けても、神の裁きを受けることになったようね。仕方がないと言えばそうなのでしょう。
現在は平和に学園生活を送っている。生徒達にかけられていた光の魔力による魅了効果は、既にその全てが消失していた。
学園は元の様子を取り戻し、皆がライラのことを忘れ始めている。
あの一件により、光魔法の使い手にも、闇魔法の使い手と同じように監視を付けることが定められた。光魔法使いだからといって、善人ばかりではないということを全員が学んだ良い機会となったわね。
その後、勉強を終え寮に戻った私とメリーア様は、メリーア様の自室で話をしていた。
「彼女……、最後まで自分の非を認めなかったようね。」
「ええ…。極刑労働中も、働こうとしなかったと聞いているわ。『ヒロイン』や『神に選ばれた存在』とか言って、ずっと喚いていたそうよ。リーア様とは真逆なほどに最低で、性根が腐っているというのにね。結局は天罰が下ることになったわけだけど…。」
「相変わらず毒舌ね…。もう少しオブラートに包めるでしょう?」
「包んだところで意味は同じ…。他に誰もいないのだから、遠回しな言い方をしなくてもいいでしょう?」
私の言葉に、メリーア様は苦笑されていた。
……あの時のことを思い出すとまた腹が立ってきたわね。私の大切な友人に危害を加えるなど、絶対に許さない。
好きな人がいるのならば、そう相手に伝えれば良いでしょう。魅了で相手の意志とは関係なく自分を惚れさせる……、それは恋ではなくただの支配欲よね。私が最も嫌いなやり方よ。
「レア…、ありがとう。ずっと守っていてくれて。」
「私は自分がしたいようにしただけよ。大切な友人を守りたいと思うのは、当然の事でしょう?……私には強い権力や財力がある訳ではないけれど、見えない攻撃から守ることくらいは出来る…。流石に『アイテム』とやらの攻撃は防げなかったけれどね…。」
「でもレアが居なければ、この国はどうなっていたことか…。クレスやゼル、それにフェンの全員が、心から貴女に感謝しているわ。勿論私もね。だから、レアが困っている時、何時でも頼って頂戴。必ず助けになるから。」
「……ありがとう。」
──翌日。
学園の門の前で、クレスディア殿下とゼルヴィーサ様、ドーフェンの3人が待っていた。私はメリーア様と共に彼らの方へ歩いて行く。
今日も皆で勉強をする予定だったので、門の前で集合としていた。
とはいえ一日中勉強は疲れるので、午後からは5人で美味しいものを食べに行くつもりにしている。
「遅いですよ。」
「集合時間ギリギリだぞ。」
「まぁまぁ2人とも。時間には間に合っているんだ。そう怒らずともいいじゃないか。」
「ごめんなさいね。忘れ物を一度取りに戻ったから、少し遅くなってしまったのよ。次から気を付けるわ。」
「さて、いつも通り図書館へ行くよ。」
他愛のない会話で笑い合い、のんびりと平和な時間を過ごす…。優しく、心強い友人に恵まれ、私は今とっても幸せな気持ちでいる。
以前メリーア様は仰っていた。
『この世界の主人公たるヒロインが、不幸にもバッドエンドルートを辿ってしまうとはね…。』
──と。
……私はこの世界に、『世界が認める主人公』はいないと思っている。生きとし生けるもの全てが主人公であり、それぞれが生きてきた分だけ物語を持っているのだから。
人道に反することをすれば罰を受け、善行を行えば福が返ってくる。ライラの場合、まさしく前者が起こったということでしょう。
私はライラを死に至らしめた存在と言える。
けれど後悔はしていない。必要なことをした、それだけよ。
私は彼女が極刑になるきっかけを作ったに過ぎない。いずれ必ずこうなっていたでしょうから…。
家族や友人、使用人達の幸せな姿を見ることが、私にとっての幸せ。そんな大切な存在を害する者がいるのならば容赦はしない、それが私の中で決めている事。
義妹の邪魔をした結果、幸福になる運命のはずだった義妹が不幸になった。
今となっては元義妹であり、彼女の死後の世界は天国か地獄か…。
……私にはもう関係のないことね。
『今』が幸せなら、それだけで良いもの──
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
301
この作品は感想を受け付けておりません。
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる