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33話 罰
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ジルファーが気を失わないよう、魔力で圧はかけず、私自身が纏っている魔力の制限を解放した。可視化された魔力がオーラとなって見えている状態だ。
以前ヴィーレに、私自身の全魔力を解放した姿を見せたことがある。私は客観的に自身の姿を見ることができないので、ヴィーレに見せて感想を聞いたのだ。
ヴィーレ曰く、可視化された多過ぎる紫と黒の魔力が、私の姿を影のように真っ黒に見えさせるのだとか。
『その状態で歩いていたら、魔物か悪魔族と勘違いされそうだね。』
とは、ヴィーレの言葉である。確かにそう見えてもおかしくはないだろう、と私も思った。
馬鹿王子は魔力を解放した私を見て、数日前のように震えていた。
さすがの馬鹿王子でも、地雷を踏んだのだと察した様子。
「生まれながらにして適正属性が決まっていて、その属性を変えることすらできない世界で、『もしも自分が闇魔法使いだったら』……なんて考えたことはあるかしら。」
「っ……!」
「何もしていないにも拘わらず悪人扱いされ蔑まれ、魔物でも見ているかのような視線を向けられる。そんな状況を、想像したことがあるかしら。」
「……。」
馬鹿王子は牢の壁まで下がり、足の力が抜けたようにその場に座り込んだ。
事実、私の魔法適性が闇だと分かった途端に、ゼンキースア公爵家での待遇が変わった。たったそれだけの事で、使用人から虐めを受けることになったのだ。
ディールト兄様や陛下、一部の貴族などの良き理解者は、不遇な扱いを受ける私を擁護してくれた。しかし大抵の者は、私がどのような扱いを受けようと見て見ぬ振りをしているか、加害者側に加担していた。
この世界ではただ闇魔法が使えるというだけで、分かり易く対応が変わるのだ。
「『闇魔法使いでさえなければ』、ですって?お前のような愚人、たとえ闇魔法使いでなくとも御免だわ。未来を見据えることができない次期国王など、この国には不要よ。」
「なっ!?…そ……それは王族批判だぞ…!不敬罪に当たるぞ!!」
ようやく反論できる隙が見つかったとばかりに、馬鹿王子は前のめりで私にそう言ってきた。かなりおめでたい頭だ。罪人であることの『意味』を、まるで理解していない。
そして魔力解放状態の私が怖いらしく、すぐに視線を逸らした。やはり弱い男だ。
「王族批判?…全く、笑わせてくれるわね。王族であろうと罪人は罪人よ。罪を犯した者の地位を、知らない訳ではないでしょう?」
「っ…!」
罪人は平民以下の扱いを受ける、それがこの国だ。たとえ王族であろうとも、例外ではない。
そして罪人となった王族は、権力や財産など全てを剥奪された後、王家を追放されるのだ。
馬鹿王子にとって最も避けたかったことは、王位継承権を失うこと。つまり玉座が欲しかっただけということに他ならない。
その望みが潰れてしまうと察したが故に、現在必死の形相で逃れる道筋を考えているのだろう。
「はぁ……。そもそも誰が私と敵対する道を選ぶかしら。己に利益など無いと分かり切っているのよ?」
「……だが…、き、貴様がラリエットだと貴族達が知りさえすれば……!」
「知ればどうなるのかしら?……確かに勘の良い者は、リエラの正体について薄々気が付いているでしょう。でも実際、殆どの貴族は私と友好的な関係を築いているわ。」
「っ…!」
「そうねぇ、私と敵対するのは、余程の馬鹿か愚か者でしょう。どこかの王子様のような…ね。」
そう言って、私は馬鹿王子を睨んだ。
さらに追い打ちをかけるべく、影を応用した闇魔法で牢の中へと入った。間近で見るとより無様に見える。
少し、ほんの少しだけ可哀想に思えたので、解放していた魔力を抑えることにした。すると余裕が生まれたのか、馬鹿王子は視線を逸らしつつも、質問をしてきた。
「……何故そこまで私を目の敵にする…?」
「…そういう所も含めて、嫌いだからよ。」
この男は自分が何をしたのか、何をしてきたのか、本当に理解していない。『自分は悪くない』と言い続け、何故恨まれ憎まれているのかを知らないまま、命を落とすタイプだろう。私以外にも、馬鹿王子の失墜を望む者は当然のごとく居たのだから。
さらに、未だに自分に責があるとは微塵も思っていない様子。早死する未来が透けて見える。
「まさか……、ただの好き嫌いで私をこのような目に合わせたのか?!」
「……馬鹿もここまで来ると一種の才能のように思えてくるわ…。そういえば、『馬鹿と天才は紙一重』と聞いたことがあるわね。どのような状況であろうと自己を全肯定する天才……、…やはりただの馬鹿ね。」
「何をブツブツと言っている!?」
「あなたが馬鹿だと思っただけよ。素晴らしいほどにね。」
「はっ!何を今更。私が天才であることくらい、初めから分かっていた事だろう。」
本当に馬鹿だ。これを相手に怒る方が馬鹿馬鹿しくなってきた。
ここまでおめでたい頭の者は、前世を含め生きてきた中で初めてだ。
「そんなあなたに、私から素敵なプレゼントを送るわ。」
「プレゼントだと…!?わ、私は要らない!貴様のプレゼントなど受け取るものか!!」
「そう遠慮しなくてもいいのよ。この魔法は地獄を見せたり、死の疑似体験をさせたりするものじゃないわ。」
「ななな、何を言っている?!」
私は徐に馬鹿王子に近付くと、手をかざして魔法をかけた。
昔ヴィーレにも協力してもらい、完成させた魔法だ。一日に一度、全身に激痛を味わわせるという、嫌がらせに特化したような闇魔法である。
効果は一年間、毎夜に現れるよう、肩の辺りに魔法印を書いておいた。魔法印とは、魔法を発動させる為の魔法陣を物体に刻む際などに使用する、刻印のようなものだ。
そして激痛の正体は、一日一回の定期的な闇魔法攻撃だ。血管と同じように全身を巡る魔力回路を傷付ける為、耐え難い苦痛を味わうことになるという仕組みだった。
「──?何も起きない……?」
「ええ、『今』は何も起きないわ。」
現在の時刻は昼過ぎだ。まだ数時間は何も起こらない。
元々、魔力回路を傷付けたり、乱れさせたりする闇魔法は存在した。その闇魔法に時間制約の魔法陣を加えることによって、それ以外の時間では魔法が発動しないように術式を改変したのだ。
そして魔力回路を一日程度経てば治る程度に傷付けるのみで、痛みでショック死でもしない限り、馬鹿王子が死に至ることはない。
「何をしたのか知らないが、勝手にこのような事をして許されると思っているのか!?」
「勝手……?今まで好き勝手していたのはどちらかしら。それに、これはもう追求されることのない、あなたが犯してきた罪に対する罰よ。陛下からのお願いだから、快く引き受けたまで。」
暗殺未遂や冤罪、その他馬鹿王子が犯してきた罪は、数多く存在する。しかし今回捕まった理由は、《悪魔族》を召喚した事並びにその重罪をゼーファ様と私に着せた事。
陛下は公の場で今回の件以前の罪を問わない代わりに、こうして誰にも気付かれないように私に裁いて欲しいと頼んできたのだ。断る理由も無いので、引き受けたという訳だ。
《悪魔族》召喚と冤罪だけならば、重罪と言えどまだ馬鹿王子を生かす判決が下せる。だがその他の罪を加算して裁くともなれば、どう考えても死罪となるのだ。
陛下はそれだけは避けようと、馬鹿王子を最も恨んでいるであろう私に、裁きを下してくれないかと頼んできた。おそらくだが、陛下が個別で罰を与えるとなると、親であるが故に甘さが出てしまうと考えてのことだろう。
しかし私であれば、命を奪うまでのことはせず罰を与えることができると確信した様子だった。
以前かけた悪夢を見せる魔法を知り、そのような魔法であれば馬鹿王子が死ぬ事はなく、かつ苦痛という名の罰を受けさせることも可能だと判断したらしい。
「だから勝手だなんて思わないで欲しいわね。私は許可を得て魔法をかけただけよ。」
「い、一体何の魔法なんだ……?!」
「それは夜になれば分かるわよ。これから一年間、その魔法と仲良く過ごしてもらうのだから。」
「一年だとッ…!?」
「死なない程度に苦しみなさい。それが、今まで犯してきた罪の償いになるのだから。」
「私が王になれば、罪など帳消しにできる!」
「もはや自分の罪を認めているじゃない……。」
そもそもだが、魔法をかけた時点で馬鹿王子への罰は始まっている。罪を認めようが認めまいが関係なく、強制的な罰なのだ。
それに陛下は明日、馬鹿王子を廃嫡の上で、国外追放か強制労働に処すつもりだろう。だからこそ、私に罰を与える時間を作ったのだ。
馬鹿王子にとっては、平民に成り下がること自体が耐え難い屈辱となる。どちらになろうとも、私としては構わない。
「王にさえなってしまえば……、王位さえ手に入れば…!」
「はぁ……。王位に拘る元婚約者様へ、私から有意義なアドバイスをしてあげましょう。無駄なあがきはやめておきなさい。あなたはもう王位に就くことなど不可能なのよ。もし不審な動きをしていれば、今度こそ私があなたの人生に終わりを告げに行くと、覚えておくことね。」
「わた……私は…、王に………。」
未だ王位を諦めていなかったとは驚きだ。
私は馬鹿王子を置き去りに、地下牢を後にした。
「ルーヴィル、さっきは助かったわ。ありがとう。消音の結界に、幻術の結界、さらには魔力隠蔽の結界とは…。」
「余計なお世話だったか?」
「いいえ、本当に助かったわ。魔力隠蔽の結界がなければ、兵や騎士達が様子を見に来たでしょう。」
「あれほど膨大な魔力を見せられて強気でいられる王子は、もはや賞賛に値するぜ。」
ルーヴィルは馬鹿王子との会話中、こっそりと魔力隠蔽の結界を張ってくれていた。ある一定の距離以上へ、魔力が漏出するのを防ぐ結界だ。それがあったからこそ、私は魔力を解放しても問題ないと判断していた。
流石はルーヴィルだ。ヴィーレと変わらぬほどに、私の意図を汲み取って動いてくれる。
その後、陛下に馬鹿王子が逃亡する恐れは無く、様子も異常は無かったと報告した。さらに罰として与えた魔法効果の詳細も話し、了承を得たのでかけた魔法は継続する事となった。これから一年は、あの地獄のような苦痛を与えてくる魔法とお友達だ。
魔法の効果によって馬鹿王子が苦しんでいる様を見られないのは残念だが、この魔法をかけることができただけでも、私はかなり満足していた。
以前ヴィーレに、私自身の全魔力を解放した姿を見せたことがある。私は客観的に自身の姿を見ることができないので、ヴィーレに見せて感想を聞いたのだ。
ヴィーレ曰く、可視化された多過ぎる紫と黒の魔力が、私の姿を影のように真っ黒に見えさせるのだとか。
『その状態で歩いていたら、魔物か悪魔族と勘違いされそうだね。』
とは、ヴィーレの言葉である。確かにそう見えてもおかしくはないだろう、と私も思った。
馬鹿王子は魔力を解放した私を見て、数日前のように震えていた。
さすがの馬鹿王子でも、地雷を踏んだのだと察した様子。
「生まれながらにして適正属性が決まっていて、その属性を変えることすらできない世界で、『もしも自分が闇魔法使いだったら』……なんて考えたことはあるかしら。」
「っ……!」
「何もしていないにも拘わらず悪人扱いされ蔑まれ、魔物でも見ているかのような視線を向けられる。そんな状況を、想像したことがあるかしら。」
「……。」
馬鹿王子は牢の壁まで下がり、足の力が抜けたようにその場に座り込んだ。
事実、私の魔法適性が闇だと分かった途端に、ゼンキースア公爵家での待遇が変わった。たったそれだけの事で、使用人から虐めを受けることになったのだ。
ディールト兄様や陛下、一部の貴族などの良き理解者は、不遇な扱いを受ける私を擁護してくれた。しかし大抵の者は、私がどのような扱いを受けようと見て見ぬ振りをしているか、加害者側に加担していた。
この世界ではただ闇魔法が使えるというだけで、分かり易く対応が変わるのだ。
「『闇魔法使いでさえなければ』、ですって?お前のような愚人、たとえ闇魔法使いでなくとも御免だわ。未来を見据えることができない次期国王など、この国には不要よ。」
「なっ!?…そ……それは王族批判だぞ…!不敬罪に当たるぞ!!」
ようやく反論できる隙が見つかったとばかりに、馬鹿王子は前のめりで私にそう言ってきた。かなりおめでたい頭だ。罪人であることの『意味』を、まるで理解していない。
そして魔力解放状態の私が怖いらしく、すぐに視線を逸らした。やはり弱い男だ。
「王族批判?…全く、笑わせてくれるわね。王族であろうと罪人は罪人よ。罪を犯した者の地位を、知らない訳ではないでしょう?」
「っ…!」
罪人は平民以下の扱いを受ける、それがこの国だ。たとえ王族であろうとも、例外ではない。
そして罪人となった王族は、権力や財産など全てを剥奪された後、王家を追放されるのだ。
馬鹿王子にとって最も避けたかったことは、王位継承権を失うこと。つまり玉座が欲しかっただけということに他ならない。
その望みが潰れてしまうと察したが故に、現在必死の形相で逃れる道筋を考えているのだろう。
「はぁ……。そもそも誰が私と敵対する道を選ぶかしら。己に利益など無いと分かり切っているのよ?」
「……だが…、き、貴様がラリエットだと貴族達が知りさえすれば……!」
「知ればどうなるのかしら?……確かに勘の良い者は、リエラの正体について薄々気が付いているでしょう。でも実際、殆どの貴族は私と友好的な関係を築いているわ。」
「っ…!」
「そうねぇ、私と敵対するのは、余程の馬鹿か愚か者でしょう。どこかの王子様のような…ね。」
そう言って、私は馬鹿王子を睨んだ。
さらに追い打ちをかけるべく、影を応用した闇魔法で牢の中へと入った。間近で見るとより無様に見える。
少し、ほんの少しだけ可哀想に思えたので、解放していた魔力を抑えることにした。すると余裕が生まれたのか、馬鹿王子は視線を逸らしつつも、質問をしてきた。
「……何故そこまで私を目の敵にする…?」
「…そういう所も含めて、嫌いだからよ。」
この男は自分が何をしたのか、何をしてきたのか、本当に理解していない。『自分は悪くない』と言い続け、何故恨まれ憎まれているのかを知らないまま、命を落とすタイプだろう。私以外にも、馬鹿王子の失墜を望む者は当然のごとく居たのだから。
さらに、未だに自分に責があるとは微塵も思っていない様子。早死する未来が透けて見える。
「まさか……、ただの好き嫌いで私をこのような目に合わせたのか?!」
「……馬鹿もここまで来ると一種の才能のように思えてくるわ…。そういえば、『馬鹿と天才は紙一重』と聞いたことがあるわね。どのような状況であろうと自己を全肯定する天才……、…やはりただの馬鹿ね。」
「何をブツブツと言っている!?」
「あなたが馬鹿だと思っただけよ。素晴らしいほどにね。」
「はっ!何を今更。私が天才であることくらい、初めから分かっていた事だろう。」
本当に馬鹿だ。これを相手に怒る方が馬鹿馬鹿しくなってきた。
ここまでおめでたい頭の者は、前世を含め生きてきた中で初めてだ。
「そんなあなたに、私から素敵なプレゼントを送るわ。」
「プレゼントだと…!?わ、私は要らない!貴様のプレゼントなど受け取るものか!!」
「そう遠慮しなくてもいいのよ。この魔法は地獄を見せたり、死の疑似体験をさせたりするものじゃないわ。」
「ななな、何を言っている?!」
私は徐に馬鹿王子に近付くと、手をかざして魔法をかけた。
昔ヴィーレにも協力してもらい、完成させた魔法だ。一日に一度、全身に激痛を味わわせるという、嫌がらせに特化したような闇魔法である。
効果は一年間、毎夜に現れるよう、肩の辺りに魔法印を書いておいた。魔法印とは、魔法を発動させる為の魔法陣を物体に刻む際などに使用する、刻印のようなものだ。
そして激痛の正体は、一日一回の定期的な闇魔法攻撃だ。血管と同じように全身を巡る魔力回路を傷付ける為、耐え難い苦痛を味わうことになるという仕組みだった。
「──?何も起きない……?」
「ええ、『今』は何も起きないわ。」
現在の時刻は昼過ぎだ。まだ数時間は何も起こらない。
元々、魔力回路を傷付けたり、乱れさせたりする闇魔法は存在した。その闇魔法に時間制約の魔法陣を加えることによって、それ以外の時間では魔法が発動しないように術式を改変したのだ。
そして魔力回路を一日程度経てば治る程度に傷付けるのみで、痛みでショック死でもしない限り、馬鹿王子が死に至ることはない。
「何をしたのか知らないが、勝手にこのような事をして許されると思っているのか!?」
「勝手……?今まで好き勝手していたのはどちらかしら。それに、これはもう追求されることのない、あなたが犯してきた罪に対する罰よ。陛下からのお願いだから、快く引き受けたまで。」
暗殺未遂や冤罪、その他馬鹿王子が犯してきた罪は、数多く存在する。しかし今回捕まった理由は、《悪魔族》を召喚した事並びにその重罪をゼーファ様と私に着せた事。
陛下は公の場で今回の件以前の罪を問わない代わりに、こうして誰にも気付かれないように私に裁いて欲しいと頼んできたのだ。断る理由も無いので、引き受けたという訳だ。
《悪魔族》召喚と冤罪だけならば、重罪と言えどまだ馬鹿王子を生かす判決が下せる。だがその他の罪を加算して裁くともなれば、どう考えても死罪となるのだ。
陛下はそれだけは避けようと、馬鹿王子を最も恨んでいるであろう私に、裁きを下してくれないかと頼んできた。おそらくだが、陛下が個別で罰を与えるとなると、親であるが故に甘さが出てしまうと考えてのことだろう。
しかし私であれば、命を奪うまでのことはせず罰を与えることができると確信した様子だった。
以前かけた悪夢を見せる魔法を知り、そのような魔法であれば馬鹿王子が死ぬ事はなく、かつ苦痛という名の罰を受けさせることも可能だと判断したらしい。
「だから勝手だなんて思わないで欲しいわね。私は許可を得て魔法をかけただけよ。」
「い、一体何の魔法なんだ……?!」
「それは夜になれば分かるわよ。これから一年間、その魔法と仲良く過ごしてもらうのだから。」
「一年だとッ…!?」
「死なない程度に苦しみなさい。それが、今まで犯してきた罪の償いになるのだから。」
「私が王になれば、罪など帳消しにできる!」
「もはや自分の罪を認めているじゃない……。」
そもそもだが、魔法をかけた時点で馬鹿王子への罰は始まっている。罪を認めようが認めまいが関係なく、強制的な罰なのだ。
それに陛下は明日、馬鹿王子を廃嫡の上で、国外追放か強制労働に処すつもりだろう。だからこそ、私に罰を与える時間を作ったのだ。
馬鹿王子にとっては、平民に成り下がること自体が耐え難い屈辱となる。どちらになろうとも、私としては構わない。
「王にさえなってしまえば……、王位さえ手に入れば…!」
「はぁ……。王位に拘る元婚約者様へ、私から有意義なアドバイスをしてあげましょう。無駄なあがきはやめておきなさい。あなたはもう王位に就くことなど不可能なのよ。もし不審な動きをしていれば、今度こそ私があなたの人生に終わりを告げに行くと、覚えておくことね。」
「わた……私は…、王に………。」
未だ王位を諦めていなかったとは驚きだ。
私は馬鹿王子を置き去りに、地下牢を後にした。
「ルーヴィル、さっきは助かったわ。ありがとう。消音の結界に、幻術の結界、さらには魔力隠蔽の結界とは…。」
「余計なお世話だったか?」
「いいえ、本当に助かったわ。魔力隠蔽の結界がなければ、兵や騎士達が様子を見に来たでしょう。」
「あれほど膨大な魔力を見せられて強気でいられる王子は、もはや賞賛に値するぜ。」
ルーヴィルは馬鹿王子との会話中、こっそりと魔力隠蔽の結界を張ってくれていた。ある一定の距離以上へ、魔力が漏出するのを防ぐ結界だ。それがあったからこそ、私は魔力を解放しても問題ないと判断していた。
流石はルーヴィルだ。ヴィーレと変わらぬほどに、私の意図を汲み取って動いてくれる。
その後、陛下に馬鹿王子が逃亡する恐れは無く、様子も異常は無かったと報告した。さらに罰として与えた魔法効果の詳細も話し、了承を得たのでかけた魔法は継続する事となった。これから一年は、あの地獄のような苦痛を与えてくる魔法とお友達だ。
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