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思わず使っちゃいました…

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婚約が内定した夜、様々な魔法をマスターし、新しい魔法まで開発した。
次の日の朝、私は町に買い物へ行く事にした。
付き添いは侍女のイルナだけだ。
貴族には見えないよう平民の変装をした為、護衛がいると意味がなくなる。
父達には危険だと言われたが、無理矢理押し切った。


「初めての買い物。イルナ、楽しむわよ!」

「あまりはしゃぎすぎないで下さいね。何かあってからでは、遅いのですから。」

「分かってるいるわよ。さぁ、行きましょう。」


町へ買い物に行くのは初めてだった。
高価な物も良いが、安い物でも可愛ければ買った。
他にも本や食べ物などを買ったり、屋敷では出来ない食べ歩きをしたり。
イルナにも同じようにしてもらった。
友人に見えるように。

日が傾き始めた頃、私達は屋敷へと戻る事にした。


「今日は楽しかったわねぇ。」

「はい、とっても。食べ歩き……と言うのですか?普段は出来ませんが、中々に良いものでした。」

「そうでしょう?本の中でしか見た事がなかったから、一度してみたかったのよ。」


嘘ではないが、半分嘘だ。
前世でも趣味だった食べ歩き。
それをしてみたかっただけ。
本の中でも描かれていたので、嘘ではない。


「あっ!お嬢様!」

「どうしたのかしら?」

「前をご覧下さい!」


気付きの声をあげるイルナ。
ヴァリフィアが前を見ると、貴族らしき少女とその護衛が、盗賊に襲われていた。


「やっ、やめて下さい…!お願い…します……。」

「お嬢様、お下がりください!」


護衛の数は3人。
しかし盗賊の数は10人以上。
更にはかなりの手練の様子だった。


「大人しくしてりゃあ、命までは取らねぇよ。」

「無駄な抵抗は止めておく方がいいぞ?護衛の騎士さんよぉ。」


じりじりと歩み寄っていく盗賊達。


(いかにもな台詞だなぁ。)


なんて事を考えていると、イルナが声を掛けてくる。


「お嬢様、今のうちに逃げておきましょう。あの盗賊達は手練の様子。あまり関わりたくはありません。」

「だからって、あの方達を放っておく気なの?」

「い、いえ……ですが護衛もいないこの状況で、助けに入ったとしても無駄です。お嬢様の安全が第一なのですから。」

「それは問題ないわ。イルナは待っていて。少し行ってくるわね。」

「え、あの……お嬢様!?」


私は身体強化魔法を使いながら、全速力で助けに入る。
風の魔法で、空気を圧縮させた玉を盗賊達の頭に、一斉にぶつける。
不意を突いたので、あっさりと当たった。
そして盗賊達は後頭部の強打、というような形で気絶し、倒れた。


「何が……起こったの?」

「信じられない……あの少女が。」


驚きを隠せない様子の貴族令嬢とその護衛。


(魔法を使っちゃった……。さて、どうこの場を凌ごう?)


何も考えずに突っ込んでしまった。
故に、後始末をどうするか、事を起こしてから考えるのだった。
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