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難しいけど楽しみ……複雑だ(王子視点)

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ヴァリフィアに頼み事をされた後、王城への帰路についていたディルジアは、馬車の中で悩んでいた。


(ヴァリフィアに協力してほしいと頼まれて、首を縦に振ったのはいいけど……難しそうだなぁ。)


これがディルジアの本音だった。
彼女からの頼み事があれば、出来るだけ協力したいとは思っていたので、申し出を受けた事自体は後悔していない。
しかし、内容が内容だ。


「どうしようかな…。」


思わず、言葉を発していたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



王城に着き、夕食を済ませる。
自室へと戻り、就寝の準備を始めた。


「ディルジア殿下、明日もラーノンス侯爵家へと向かわれるのですか?」

「明日は行かないよ。」

「ではヴァリフィア様が来られるのでしょうか?」

「それも違う。いくら婚約者といえど、会わない日もあるさ。明日は王城を散策するつもりだ。」

「左様ですか。ではお付きの者を……」

「それには及ばない。」

「ですがっ…。」

「問題ないさ。勉強の一環で、少し城内の見学をしようと思っているだけだから。」

「……承知致しました。」


ディルジア付きの侍女、スィーハは就寝前に必ず明日の予定を聞く。
『予定』といっても、ヴァリフィアに会うか問うだけなのだが。


(明日は貴族から提出される、王国への金銭関係の報告書を、ヴァリフィアから渡された魔道具に保存しないと。)


誰かに付いてこられては、当然まずい。
ちなみにヴァリフィアが渡した魔道具とは、カメラのことだ。


『ディルジア殿下、これを渡しておきます。』

『……これは?魔道具みたいだけど。』

『はい。名付けて《撮影魔道具マジックカメラ》。この魔道具を、残しておきたいものに向けて、ここを押すと--』

『これは凄い!』

『その四角い枠内に収めれる範囲で、実物を色付けで保存出来ます。別の紙に、手作業で複写せずに資料などを残せるので、手間が省けますよ。』

『これを魔道具研究所に……』

『勿論、この魔道具は他言無用ですよ?誰かに見せたり言ったりしてしまえば、大変なことになりますから。』

『あ、あぁ……。』


にっこりと笑顔で圧をかけられた。
確かに、画期的すぎて大変な事になるのは確実だった。
《撮影魔道具》とやらの使い方の説明を受け、『貸す』という形で渡された。


(こんな魔道具をいつ作ったのやら。でも本当に便利だな。)


難しい頼み事をされたと思いつつも、魔道具を使うのが楽しみなのだった。
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