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皇帝陛下とお食事です

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コールシヤ帝国皇帝陛下がこの国を訪問してから、5日が経った。
私は今、王城内の王都を見渡せる場所で、皇帝陛下と食事をしている。
誘うとは言われていたが、正直受けたくはなかった。
元一般人だった私には、隣国の頂点たる皇帝陛下と食事など胃が痛くなる…。
国王陛下でさえ、食事を共にすることは無いというのに。


「こうして君と食事が出来て嬉しいよ。」

「私も光栄にございます。」

「『賢華』という二つ名の由来を、先日ガデリジア殿より聞いたぞ。正しく、君に相応しい名だと感じた。」

「ありがとうございます。」

「今度我が国最強の騎士と、手合わせしてやってはくれないか?」

「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。情報は武器ですから。」

「つまりは、情報強さを隠すために……か。流石だな。」

「皇帝陛下ほどではありませんよ。情報管理は徹底されておられるではありませんか。」

「君や『情報屋』の彼には、簡単に調べられてしまっているようだけどな。しかし、本当に戦ってはくれないのだな…?」

「はい。申し訳ございません。」

「いや、無理を言っているのはこちらだ。気にするな。情報は武器……そうだな…。その通りだろう。」


帝国一の実力者と戦ってみたい気持ちはあったのだが、頭の切れる皇帝陛下に少しでも実力を見せてしまえば、私達の対抗策を考えられるだろう。
直接は特に危険だ。
それに……


「断る理由はもう1つあります。」

「条約…だな。」

「はい。今回の食事に関しては、私が同意の上で行っております。エフェン様にも承知していただいています。ですが、条約の内容は『皇帝陛下や陛下の臣下の者が、私とエフェン様に接触しないこと』です。模擬戦を行いたいのであれば、他の方にお願い致します。」

「そうか……。」

「今でもぎりぎりですから。……」

「どうした?」

「お食事のところ、失礼致します。」

「エフェン様。」

「ヴァリフィアは本当に流石だな。転移してくる前に気付くとは。」

「空間が歪みますからね。」

「……。」

「そう警戒なさらないで下さい、皇帝陛下。改めて、邪魔してをしまったことはお詫び致します。ですがヴァリフィアに急用がありましたので、致し方なく直接参ったのです。」

「急用だと?」

「はい。内容はお伝え出来ませんが、私とヴァリフィアのみの用ですので、帝国がどうというようなことはありません。ご安心を。」

「そうか。ならば行くと良い。本来ならば、この食事も条約に違反していると言っても過言ではないのだろう?」

「ええ。その通りです。」

「躊躇いもなく言うとは…。」

「エフェン様。急用との事ですが……。」

「ああ。行こうか。」

「では失礼致します、皇帝陛下。」


エフェンと共に瞬間移動で転移し、その場をあとにしたのだった。
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