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夏休み
ある日の花火大会下山風景
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真っ暗な夏の空に大きな大きな火の花が咲く。
仁は遥と2人きりかつ完全ゼロ距離でご飯を食べ、なおかつ花火を見るという初めてだらけの時間を過ごした。遥はというと妙に緊張している仁にあてられて緊張してしまい、何も考えず下駄で山登りを敢行してしまい怪我をしてしまって少し悪いなと感じていたが、友達に背を預けてみる花火というのも乙なもので満足感を得ていた。
最後の花火あがり、遠くの方で花火大会が終わった放送が聞こえてくる。それは仁にとってはデートの終わりを告げる言葉だった。
「なぁ、遥、どうして順をさそわなかったんだ?」
「あー……それは、その……なんとなくだよ」
遥は理由を正直に話しても信じてもらえないだろうと思っていた。だから、はぐらかすしかなかった。しかし、それでは仁は納得しない。何か理由が欲しかった。何か理由があってほしかった。
「そ、そうか……それで、今日はどうだった。僕と……あー、いや、順抜きででかけた感想かな」
「やっぱ、仁は色々考えてくれてたみたいで屋台回ったりする時も楽しかったな。手をつないだのはちょっと恥ずかしかったけど……でもやっぱり3人で遊んだ方が楽しかったかもなぁ。来年は3人できたいところだけど」
遥が下駄を痛くないように履こうと四苦八苦しながら、仁の質問に答える。その答えは仁の求めていた答えではなかったが、『2人きりで出かけた方が楽しいと思わせる』という目標は達成できていなかったことだけは解る。
「な、なぁ、遥。僕はまた2人きりがいいんだ……順を仲間外れにするわけではないが、花火大会とか何か大きなイベントは2人きり、普段遊ぶときは3人でとかにしないか?」
「う、お、うーん。あいたたたっ……やっぱ下駄履けないぐらいいたいや。その話はまた今度でもいいか?」
遥は、順に告白されたときのこと思い出していた。今の場の空気感、雰囲気があの時と似通っていた。このままいくとまた告白されてしまうかもしれないと思った遥は露骨に話題を変えたのだ。仁はまだ話したそうだったが、遥が怪我をしているのは事実なので話を続けることはできなかった。
実際の所、遥の足の怪我はそれなりに酷いもので絆創膏を貼り付けていたとしても少し歩いただけで強い痛みが走り、絆創膏に血がにじんでしまうほどだった。
「うーん。幸い、ここ電波入るし、順に連絡して……いや、うーん。どうするかな」
効率的なのは順に迎えに来てもらって肩を貸してもらうなり、おんぶをしてもうなりして下山なのだが、遥の心の準備ができていなかった。あって何を言ってやったらいいのか、告白のようなものをされたが返事をしなければいけないのか、何をしても面倒なるのは明白だった。
遥は色々考えたが、安全かつ確実な方法が順を呼び出すぐらいしか思いつかなかったので覚悟を決めてスマホのアプリを立ち上げたが、仁が逸れに待ったをかける。
「僕が肩ぐらいかす。遠慮しないでくれ」
「いや、気持ちはありがたいんだけどさ。仁、俺より背は高いけど体力はないからさ」
「そ、そのぐらいならなんとかなる」
「ほ、本当に大丈夫か? むりだけはしないでくれよ」
仁の真剣な表情に気おされて遥はうなずかずにいられなかった。なるべく体重をかけないように調整しながら体勢を整える。少し体重を預けただけで仁はよろめきそうになる。仁は何とかそれで耐えているが、歩くとなると足場の悪いところも歩かねばならず、体力も大きく消耗するだろう。
「はぁ、はぁ……」
「お、おい、仁、本当に無理するなよ?」
遥の重さを確かに感じながら仁は一歩一歩丁寧に山を下りていく。ここで順を読んでしまったら負けた気分になってしまう。遥の安全を考えるなら順を呼ぶべきだとわかっているのに順に対抗してしまう。順がいなくても楽しく不自由なく遊べたという事実が欲しかった。仁も遥を担げるぐらいには力があるのだと証明もしたかった。
「むぅ……そういうのは本当女の子にしてあげるべきだろう」
「何か言ったか?」
「なんでもねぇって」
仁の必死そうな横顔に遥は心配そうに言葉をかけながらも見惚れていた。
仁は遥と2人きりかつ完全ゼロ距離でご飯を食べ、なおかつ花火を見るという初めてだらけの時間を過ごした。遥はというと妙に緊張している仁にあてられて緊張してしまい、何も考えず下駄で山登りを敢行してしまい怪我をしてしまって少し悪いなと感じていたが、友達に背を預けてみる花火というのも乙なもので満足感を得ていた。
最後の花火あがり、遠くの方で花火大会が終わった放送が聞こえてくる。それは仁にとってはデートの終わりを告げる言葉だった。
「なぁ、遥、どうして順をさそわなかったんだ?」
「あー……それは、その……なんとなくだよ」
遥は理由を正直に話しても信じてもらえないだろうと思っていた。だから、はぐらかすしかなかった。しかし、それでは仁は納得しない。何か理由が欲しかった。何か理由があってほしかった。
「そ、そうか……それで、今日はどうだった。僕と……あー、いや、順抜きででかけた感想かな」
「やっぱ、仁は色々考えてくれてたみたいで屋台回ったりする時も楽しかったな。手をつないだのはちょっと恥ずかしかったけど……でもやっぱり3人で遊んだ方が楽しかったかもなぁ。来年は3人できたいところだけど」
遥が下駄を痛くないように履こうと四苦八苦しながら、仁の質問に答える。その答えは仁の求めていた答えではなかったが、『2人きりで出かけた方が楽しいと思わせる』という目標は達成できていなかったことだけは解る。
「な、なぁ、遥。僕はまた2人きりがいいんだ……順を仲間外れにするわけではないが、花火大会とか何か大きなイベントは2人きり、普段遊ぶときは3人でとかにしないか?」
「う、お、うーん。あいたたたっ……やっぱ下駄履けないぐらいいたいや。その話はまた今度でもいいか?」
遥は、順に告白されたときのこと思い出していた。今の場の空気感、雰囲気があの時と似通っていた。このままいくとまた告白されてしまうかもしれないと思った遥は露骨に話題を変えたのだ。仁はまだ話したそうだったが、遥が怪我をしているのは事実なので話を続けることはできなかった。
実際の所、遥の足の怪我はそれなりに酷いもので絆創膏を貼り付けていたとしても少し歩いただけで強い痛みが走り、絆創膏に血がにじんでしまうほどだった。
「うーん。幸い、ここ電波入るし、順に連絡して……いや、うーん。どうするかな」
効率的なのは順に迎えに来てもらって肩を貸してもらうなり、おんぶをしてもうなりして下山なのだが、遥の心の準備ができていなかった。あって何を言ってやったらいいのか、告白のようなものをされたが返事をしなければいけないのか、何をしても面倒なるのは明白だった。
遥は色々考えたが、安全かつ確実な方法が順を呼び出すぐらいしか思いつかなかったので覚悟を決めてスマホのアプリを立ち上げたが、仁が逸れに待ったをかける。
「僕が肩ぐらいかす。遠慮しないでくれ」
「いや、気持ちはありがたいんだけどさ。仁、俺より背は高いけど体力はないからさ」
「そ、そのぐらいならなんとかなる」
「ほ、本当に大丈夫か? むりだけはしないでくれよ」
仁の真剣な表情に気おされて遥はうなずかずにいられなかった。なるべく体重をかけないように調整しながら体勢を整える。少し体重を預けただけで仁はよろめきそうになる。仁は何とかそれで耐えているが、歩くとなると足場の悪いところも歩かねばならず、体力も大きく消耗するだろう。
「はぁ、はぁ……」
「お、おい、仁、本当に無理するなよ?」
遥の重さを確かに感じながら仁は一歩一歩丁寧に山を下りていく。ここで順を読んでしまったら負けた気分になってしまう。遥の安全を考えるなら順を呼ぶべきだとわかっているのに順に対抗してしまう。順がいなくても楽しく不自由なく遊べたという事実が欲しかった。仁も遥を担げるぐらいには力があるのだと証明もしたかった。
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