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11.絶望

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「イライザ様……そんな!? 私はあなたのために……」

「黙りなさい! そんなことを頼んだ覚えは全くありません! アラン、何をしているのです、さっさと片付けてしまいなさい」

「畏まりました!」
「待て!」

 ヘンリーは立ち上がり、アランを制しました。

「イライザ……お前、汗が凄いぞ。どうしたと言うのだ? ここは上よりひんやりとしているはずだがなぁ~くっくっくっ……」

「こ、これは……緊張しているだけですわ!」
「ほう? 何に緊張しているのか言ってみろ、さあ、早く」

 ヘンリーは私の顔をまじまじ見て、頬をくっつけ、首筋を舐めてきます。まるで蛇のように……

「ドミニクが拷問される姿にございます」
「何か喋られて困ることでもあるのかなぁ……イライザぁぁ?」

「はい、根も葉もないことを言って、ヘンリー様の耳に入れば、心象を悪くしてしまいかねませんので……」

「お~! そんなことを考えていたのか! だが、心配の必要はない」
「えっ!? では、私は……」

「もちろん、逃げた罪を償ってもらうからなぁ、くっくっくっ……」
「じゃ、じゃあ、今までのことは……」

「ああ、見事に引っ掛かってくれた。一縷の望みを得たと思った者が一気に転落し、絶望の淵にある姿は最高の見世物……さあ、イライザ……第二幕と行こうじゃないか、ハーハッハッハッ!!!」

「アラン、イライザを拘束し、その男と一緒に可愛がってやれ!」
「いや、そんな……いやぁぁーーー!!!」
「イエス、マイロード!」

 全て分かっていた癖に臭い演技をして、この屑王子は私を騙していたのです。私の絶望した表情を見るためだけに……

「許さない……許さない……許さない……殺してやる! この粗チン野郎がぁぁーーー!!!」

 隠し持っていた剃刀でヘンリーに一矢報いてやろうと首筋に向かって切りつけたのですが……

 えっ!?

 私の剃刀を持つ腕の中から、刃物が飛び出してきたのです。

「うぎゃあああああーーー!!! 痛い、痛い、痛いぃぃ……」

 後ろを振り返ると槍を持ったアランが私の肩を貫いていました。

「アラン、そのまま壁に張り付けにして、生皮を剥いでやるというのはどうかな?」
「名案にございます」

「私を裏切った女狐……果たしてどの様な中身が詰まっているのか興味がある」

 もう片方の肩も穿たれ、壁に押し付けられた私は……

「痛いぃぃぃぃ!!!」

 アラン達に立ったまま抑え付けられ、背中に鋭い痛みが走って、叫んでた……

「泣けぇぇ~、叫べぇぇ~! 俺を裏切った女には相応しい罰だ!」

 私が叫び声を上げる度に屑王子を喜ばす……

 背中だけでなく、顔も、頭皮も……剥がされ……

「して……殺して……」

 絶え間なく続く痛みで私はもう、おかしくなっていました……

「あ……意識を失ったら、ダメですよ」

 全身の生皮を剥いだあとにアラン達は塩水を私に掛けた……もう、叫ぶ声も枯れて……


          ☆


「ヴェル! 大変だ! 川に水死体が上がってっぞ!」
「娼婦が食い潰して、落ちてしまったとかじゃないのか?」

 残念なことだが立ちん坊の娼婦が打ち上がるのは日常茶飯事……

「いや……見るに堪えねえ姿だったんだよ。それも二人も……」

 ソフィーが血相を変えて、駆け込んできて、不可解なことを伝えてきた。どうも第三騎士団が発見し、各騎士団へ振れ回っている。

 俺は早速、彼女らの案内で水死体の検分に伺うことにした。
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