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16.悪行
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――――王宮王子の部屋。
街で凶行に及ぶ前のこと……
くそっ、イライラする! 何が『アーシャより満足させて差し上げます』だ! 早々に逃げ出しおって……
まあ、いい……イライザにはそれ相応の罰を与えて、殺してやった。俺を裏切った女にはちょうど良い死に様よ!
それにしても、あの断末魔……あれを思い出すだけで射精してしまいそうだ、ははは!
俺の前に役人が歩み出てきたので、訊ねてやったが……
「まだ、新しい女は見つからぬか?」
「申し訳ございません……皆、アーシャ様との婚約破棄、イライザ様が病に伏せっていると知り、二の足を踏んでおります」
なんと使えぬ役人だ……騙してでも連れてくれば良いものを……
「もう良い……貴様はクビだ!」
「そんな!」
「アラン、こいつを放り出せ!」
「は!」
アランの部下が使えぬ者の両脇を抱え、ドアの向こうに連れ出して行ってくれた。
「嫌だぁぁぁ~! か、家族が居るんです、どうかご再考を……」
「煩いぞ、口を塞げ」
「申し訳ありません、只今」
解雇されるのが嫌ならば、仕事をしろ! 何故、働きがないのに文句を言うのだ? 本当に屑め! しかし、側仕えが男だけというのもイラ立ちが募る……
手当たり次第にメイドどもを慰み者にしてやろうと思っているのに父上から何か言われたのか、執事しか寄り着かぬ……
「アラン、早く女を抱かねば、俺の男根は腐ってしまう」
「なんと!? それは一大事にございます」
「くそっ、くそっ、イライザの奴……死に際に粗チンなどと罵りおった! アラン! 俺の逸物はそんなにも無様か!」
「いえいえ、あれはただ、イライザ様が殿下を見る目がなかったとしか……それに女は星の数ほどおります。どうかお気になさらずに」
「そうだな、イライザ如きに俺の偉大さが分かる訳がなかったのだ。そうだ、良いことを思いついたぞ! 俺の偉大さを下々の者どもへ分からせるために街へ出る、そして女どもに見せつけてやるのだ! 貴様も手伝え」
「素晴らしいお考えにございます。御心のままに……」
やはり女も部下も素直な奴に限る、ふはははは!
☆
――――朝。
「アーシャ、それじゃ行ってくる」
「はい……どうぞご無事で」
少し寂しそうな表情に変わる婚約者の頬に手を当て……
ちゅ……
口付けをする。閉じた目を開けたアーシャが少し蕩けたようになるのが堪らなく可愛い……そんな目をされると仕事に行くのが億劫になり、このまま、彼女をベッドに……
「ヴェル……また、戻ってきたら、今晩も……」
「ああ……約束する」
頬を赤らめ、おねだりするアーシャ……いかん、いかん。楽しみは夜に取っておかねば!
俺達は分かれ際には必ず、キスを交わすようになっていた。家に戻ったときも……
――――近衛騎士団長室。
後ろ髪を引かれる思いで仕事についたときだった。
「ヴェル兄! 大変だ!」
「どうした、ゴズ! また、ソフィーがお前のアップルパイを勝手に摘まみ食いでもしたか?」
正に重装騎士と呼ぶに相応しい第一騎士団長がどすどすと床を踏み鳴らし、駆け込んでくる。
「そんなことだったらいいんだけど、違うんだよ」
いつもニコニコしてる男の顔が曇り、語り始めた。
「俺の管轄区で若い娘が暴行されて、殺される事件が相次いでるんだ。それでヴェル兄の力を借りたくて……」
「何だと!? 分かった、ヘルマン卿の裁可を一緒に取りに行くぞ!」
「ありがとう、ヴェル兄! 恩に着る」
ヘルマン卿に上申するとガタッと椅子を跳ね飛ばし、『全騎士団で警戒に当たるのだ!』との御命が下ったのだった。
街で凶行に及ぶ前のこと……
くそっ、イライラする! 何が『アーシャより満足させて差し上げます』だ! 早々に逃げ出しおって……
まあ、いい……イライザにはそれ相応の罰を与えて、殺してやった。俺を裏切った女にはちょうど良い死に様よ!
それにしても、あの断末魔……あれを思い出すだけで射精してしまいそうだ、ははは!
俺の前に役人が歩み出てきたので、訊ねてやったが……
「まだ、新しい女は見つからぬか?」
「申し訳ございません……皆、アーシャ様との婚約破棄、イライザ様が病に伏せっていると知り、二の足を踏んでおります」
なんと使えぬ役人だ……騙してでも連れてくれば良いものを……
「もう良い……貴様はクビだ!」
「そんな!」
「アラン、こいつを放り出せ!」
「は!」
アランの部下が使えぬ者の両脇を抱え、ドアの向こうに連れ出して行ってくれた。
「嫌だぁぁぁ~! か、家族が居るんです、どうかご再考を……」
「煩いぞ、口を塞げ」
「申し訳ありません、只今」
解雇されるのが嫌ならば、仕事をしろ! 何故、働きがないのに文句を言うのだ? 本当に屑め! しかし、側仕えが男だけというのもイラ立ちが募る……
手当たり次第にメイドどもを慰み者にしてやろうと思っているのに父上から何か言われたのか、執事しか寄り着かぬ……
「アラン、早く女を抱かねば、俺の男根は腐ってしまう」
「なんと!? それは一大事にございます」
「くそっ、くそっ、イライザの奴……死に際に粗チンなどと罵りおった! アラン! 俺の逸物はそんなにも無様か!」
「いえいえ、あれはただ、イライザ様が殿下を見る目がなかったとしか……それに女は星の数ほどおります。どうかお気になさらずに」
「そうだな、イライザ如きに俺の偉大さが分かる訳がなかったのだ。そうだ、良いことを思いついたぞ! 俺の偉大さを下々の者どもへ分からせるために街へ出る、そして女どもに見せつけてやるのだ! 貴様も手伝え」
「素晴らしいお考えにございます。御心のままに……」
やはり女も部下も素直な奴に限る、ふはははは!
☆
――――朝。
「アーシャ、それじゃ行ってくる」
「はい……どうぞご無事で」
少し寂しそうな表情に変わる婚約者の頬に手を当て……
ちゅ……
口付けをする。閉じた目を開けたアーシャが少し蕩けたようになるのが堪らなく可愛い……そんな目をされると仕事に行くのが億劫になり、このまま、彼女をベッドに……
「ヴェル……また、戻ってきたら、今晩も……」
「ああ……約束する」
頬を赤らめ、おねだりするアーシャ……いかん、いかん。楽しみは夜に取っておかねば!
俺達は分かれ際には必ず、キスを交わすようになっていた。家に戻ったときも……
――――近衛騎士団長室。
後ろ髪を引かれる思いで仕事についたときだった。
「ヴェル兄! 大変だ!」
「どうした、ゴズ! また、ソフィーがお前のアップルパイを勝手に摘まみ食いでもしたか?」
正に重装騎士と呼ぶに相応しい第一騎士団長がどすどすと床を踏み鳴らし、駆け込んでくる。
「そんなことだったらいいんだけど、違うんだよ」
いつもニコニコしてる男の顔が曇り、語り始めた。
「俺の管轄区で若い娘が暴行されて、殺される事件が相次いでるんだ。それでヴェル兄の力を借りたくて……」
「何だと!? 分かった、ヘルマン卿の裁可を一緒に取りに行くぞ!」
「ありがとう、ヴェル兄! 恩に着る」
ヘルマン卿に上申するとガタッと椅子を跳ね飛ばし、『全騎士団で警戒に当たるのだ!』との御命が下ったのだった。
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