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3.囚われの華
洗礼
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そういえば、首輪以外にも、おかしな点はいくつかあった。
俺のバディであるクロがいなかったり、
身体強化の能力を何故か使えなかったり。
よくよく考えると、俺の身に何か起こっていても不思議ではない。
しかし、どうやってこの状況を脱するかを、まずは考えなければならない。
クロヒョウは俺の上に跨ったままで、
グルグルと音を出しながら、顔や頭を舐めようとしてくる。
ここに、クロヒョウが自然に生きているとは考えにくいので、きっと誰かのバディなのだろう。
持ち主はおそらく近くにいるはずーー。
どうやら、このクロヒョウは噛み付いてはこないようなので、出来るだけ機嫌を損ねないようにそっと、その頭を押し除ける。
しかし、撫でられていると勘違いしたのか、
俺の膝上にその大きな腰を下ろし、
自分の頭を奈緒の掌へと押し付けてくる。
「くっ……!?」
まるで、人懐こい大きな猫だ。
光沢がある黒色でよく手入れされた艶のある毛並みは、触れていても一切不快な気がしない。
俺の諦めないその気持ちが功を成したのか、
視界がクロヒョウで埋まる事はなく、他の部分を映す余裕が出てきた。
すると、いつの間にか、祭壇の上に人が片膝を抱えて居座り、俺を傍観している。
「っ……」
この部屋の唯一の出入り口は頑丈な鉄格子で閉鎖され、俺はそれにもたれていたのだから、人が入り込める筈がなかった。
物を透過できる能力かなんかだろうか。
俺は警戒しながらも、膝の上に重りとなっているクロヒョウのせいで、そこから一切動けない。
向こうも俺の様子に気付いたようで、その口を開いた。
「……随分、気に入られたね。
ナディム、ハウス。」
きっと、ナディムというのがこのクロヒョウの名前で、あそこにいる人のバディなのだろう。
ナディムはサッと起き上がり、猫がよくやる伸びをその大きな身体でも実践した後、ご主人様の元へと向かった。
「あの……、あなたは?」
俺は、さっきまでの恐怖の名残で少し震えながら起き上がると、誰かと似た雰囲気を感じるその男へと話しかけた。
「ははっ、よく来たねー。
君のこと、待ってたんだよー。
会えて嬉しい。
ほら、こっちに来て。
もっと近くで話そう?」
俺は彼に招かれて、困惑しながらも
一歩ずつ足を進め、祭壇の近くへと寄る。
彼の手の届く範囲でその歩みを止めた。
「ふふっ、可愛い。
私はね……、久世ミツヒコ。
あの久世家の長男だよ。
弟がお世話になってるみたいで。」
「久世って、ミナトのお兄さんっ!?」
あの時、感じた既視感はこれだったのか……。
もう嫌な予感しかしないー。
「思った通り。
ひと目見た時から君のことを気に入ったんだ。
手始めに、ちょっといじらせてね。
大丈夫、痛くないよ。」
そう言いながら、俺のおでこへと掌を向ける。
俺は咄嗟に回避しようとしたけれど間に合わず、何かの能力が発動してしまった。
「ああっ」
頭に電流が一瞬走ったような痺れる感覚がして、俺の頭の中は白いモヤへと包まれていく。
そして、またふわふわとした感覚で意識を手放してしまったのだーーー。
ーーー兄がいるとは聞いていないーーー
俺のバディであるクロがいなかったり、
身体強化の能力を何故か使えなかったり。
よくよく考えると、俺の身に何か起こっていても不思議ではない。
しかし、どうやってこの状況を脱するかを、まずは考えなければならない。
クロヒョウは俺の上に跨ったままで、
グルグルと音を出しながら、顔や頭を舐めようとしてくる。
ここに、クロヒョウが自然に生きているとは考えにくいので、きっと誰かのバディなのだろう。
持ち主はおそらく近くにいるはずーー。
どうやら、このクロヒョウは噛み付いてはこないようなので、出来るだけ機嫌を損ねないようにそっと、その頭を押し除ける。
しかし、撫でられていると勘違いしたのか、
俺の膝上にその大きな腰を下ろし、
自分の頭を奈緒の掌へと押し付けてくる。
「くっ……!?」
まるで、人懐こい大きな猫だ。
光沢がある黒色でよく手入れされた艶のある毛並みは、触れていても一切不快な気がしない。
俺の諦めないその気持ちが功を成したのか、
視界がクロヒョウで埋まる事はなく、他の部分を映す余裕が出てきた。
すると、いつの間にか、祭壇の上に人が片膝を抱えて居座り、俺を傍観している。
「っ……」
この部屋の唯一の出入り口は頑丈な鉄格子で閉鎖され、俺はそれにもたれていたのだから、人が入り込める筈がなかった。
物を透過できる能力かなんかだろうか。
俺は警戒しながらも、膝の上に重りとなっているクロヒョウのせいで、そこから一切動けない。
向こうも俺の様子に気付いたようで、その口を開いた。
「……随分、気に入られたね。
ナディム、ハウス。」
きっと、ナディムというのがこのクロヒョウの名前で、あそこにいる人のバディなのだろう。
ナディムはサッと起き上がり、猫がよくやる伸びをその大きな身体でも実践した後、ご主人様の元へと向かった。
「あの……、あなたは?」
俺は、さっきまでの恐怖の名残で少し震えながら起き上がると、誰かと似た雰囲気を感じるその男へと話しかけた。
「ははっ、よく来たねー。
君のこと、待ってたんだよー。
会えて嬉しい。
ほら、こっちに来て。
もっと近くで話そう?」
俺は彼に招かれて、困惑しながらも
一歩ずつ足を進め、祭壇の近くへと寄る。
彼の手の届く範囲でその歩みを止めた。
「ふふっ、可愛い。
私はね……、久世ミツヒコ。
あの久世家の長男だよ。
弟がお世話になってるみたいで。」
「久世って、ミナトのお兄さんっ!?」
あの時、感じた既視感はこれだったのか……。
もう嫌な予感しかしないー。
「思った通り。
ひと目見た時から君のことを気に入ったんだ。
手始めに、ちょっといじらせてね。
大丈夫、痛くないよ。」
そう言いながら、俺のおでこへと掌を向ける。
俺は咄嗟に回避しようとしたけれど間に合わず、何かの能力が発動してしまった。
「ああっ」
頭に電流が一瞬走ったような痺れる感覚がして、俺の頭の中は白いモヤへと包まれていく。
そして、またふわふわとした感覚で意識を手放してしまったのだーーー。
ーーー兄がいるとは聞いていないーーー
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