上 下
56 / 80
5.光と闇

処方箋

しおりを挟む
ーーーやっと、揃った。

奈緒と一つ屋根の下で過ごすなんて何年ぶりだろう。
僕と奈緒は家も近い事があってか、お互いの家でよく遊んでいた。

気軽にお泊まりをする事なんて普通だったけど、高校に入ってからは少し忙しくなって中々遊べなかった。

兄弟のように育ったけれど、僕の彼への想いは兄弟以上。
ずっと、一緒。
誰よりも近く、ずっと深く繋がっていたい。

奈緒はちゃんと大人しく寝ているかな。
第二地区のミツヒコによって、散々痛め付けられていたから、その反動が大きかったのだろう。

発熱もしていたし、貧血の症状も出ていた。
少しでも食事を摂ってゆっくり休めば次第に治っていくはずだ。

問題はその後だ。
好奇心が強い奈緒の事だし、何故僕がこの世界にいるのかとか詮索してくるだろう。

今のうちに、言い訳とか考えないとなぁ……。
ここは素直に、打ち明けるべきか?

うーん、それはおいおい考えよう。
それよりも、考えるべき事はほかにもある。

回復する事はとても良い事なんだけれど、奈緒に勝手に動き回られると困る。

部屋の中ならまだしも、外は絶対ダメだ。
僕の監視下で無いところでは、何が起こるか分からない。

折角、久世家の手の届かない所まで来たんだ。
気付かれないように奈緒を救い出す為に、奈緒自身には散々な犠牲を払わせてしまったし。

ほんとは、そういう事をしたくないし、奈緒の嫌がるような行為も強要したくはなかった。

だけど、あの時はしょうがなかった……。

ごめんね、可哀想な奈緒。
これからは僕が、うんと優しく、甘やかして慰めてあげる。

僕に縋り付いて、僕なしじゃ生きていけないようになれば良い。

色々、準備しないといけないな……。
とりあえずは、時間稼ぎにもアレを、使うかー。

こういう時は、仮とはいえど、両親には感謝する。
特に母は、精神科に罹っていたので、家にはたんまりと薬が貯蓄してあった。

医者からは通常よりも多めに薬をもらってたし、飲む必要が無くなっても捨てる事なく保管してある。

だから、こっそりと薬を持ち出しても全然バレなかった。

無くなったとしても、また病院に行けば、薬を貰えるしね。

僕が、その余った薬をちゃーんと有効活用してあげる。

陛下への報告も終わった事だし、残った仕事を軽く片付けて家に帰ろう。

奈緒が喜びそうなご飯も作ってあげなきゃ。
最初のうちは、やっぱりおかゆかなぁー。

総の足取りはいつもよりも軽く、普段では見られないご機嫌な様子の総を見て部下たちはひっそりと寒気を感じていた。




ーーー薬をあげるのは、何の為ーーー
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】はにかみ赤ずきんは意地悪狼にトロトロにとかされる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:837pt お気に入り:162

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,025pt お気に入り:19

痛みと快楽

BL / 連載中 24h.ポイント:1,044pt お気に入り:85

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:19,493pt お気に入り:267

アルファの家系

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:49

怠けへの罰は穴を無慈悲に繋いだ上で流し込まれる

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:1

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話

BL / 完結 24h.ポイント:2,635pt お気に入り:2,147

処理中です...