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5.光と闇
焦りは禁物
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ーーーやばい、やばい、やばいっ
こんなにもすぐに総が帰ってくるとは思っていなかった。
バディのクロはソファの下で尻尾を丸めて、黒目を更に大きくして隠れている。
見つかるのも時間の問題だ。
総には、リビングに駆け込まれた所も見られてしまったし……。
幸い、黒い毛並みのおかげで、少しは時間稼ぎできそうだ。
縮こまっているクロを余所に俺は意識を自分へと向ける。
自分が何とかしなければっ……!
クロの事が心配になりながらも、奈緒は閉じ込められていた部屋で目を覚ます。
初めてにしては、バディとの同調は成功したと言っていい。
副作用に関しても、耳や尻尾が出ちゃう事くらいだと思っていた。
窮地だったとはいえ、安直な計画に身を乗り出した事に今更後悔するなんて……。
そう、俺は今猛烈に後悔している。
いや、ここはポジティブに考えた方が良いのだろうか。
小ちゃくなって、身軽で、運動神経も良くなって、逃げやすくなったって……?
俺はベッドで目を覚ましてすぐ、その違和感に気付いた。
明らかに目線が低くなっていて、地面との距離が近い。
耳や尻尾は出るとは分かっていたけど、腕から手にかけても黒い毛並みに包まれている。
肉球って、ピンクで思っていたよりもこんなに柔らかいんだー
って、ちがーうっ!!
感心してる場合じゃなくて!!
もうお分かりの方も多いだろう。
俺、藤沢奈緒は、正真正銘……
黒猫になってしまったのだっ!!
あああっ、もう!
どうしようっ!!
予想外だよっ。
人生って何でこう、予想外な事、理不尽な出来事が多いんだろうね。
悲観していても何も進まないし、俺には限られた時間しか残されていない。
最悪、この姿のまま脱出する事になるかもしれない。
とりあえず、起き上がってみよう。
自分が着ていた服の首元からスルリと抜け出す。
服がこんなにも大きく感じる程、今の俺って小さいんだなぁ。
二本足で立とうとしたけれど、上手くバランスが取れない。
すぐにコテンと転げてしまう。
逆に四つん這いの方が動きやすいようだ。
身体の構造上仕方ないのだろう。
当分はこのままかな……。
今度はベッドから降りてさらに歩き回っていた。
ジャンプして降りるのも、地面が前まで迫ってくるように見えて怖かったけれど、身体が勝手に動いてくれた。
歩くのも、意識して動かすとより混乱した。
自然に任せて、身体の思うままに行動するとすんなりと歩けた。
身体が動きを覚えてる様な感じだ。
よし!ハプニングな事に変わりは無いけれど、動けるようになったのは大きい!
早速、クロを助けに行かなきゃっ。
そう思った途端の事だった。
ガシャン、パリーンッ!
大きな物音と、何かが割れる嫌な音が階下で響いた。
今では聴覚も人の時より敏感に感じる。
何かあったに違いない。
部屋の扉の前でジャンプしてドアノブにつかまると、重みで扉は開いた。
待っていて、クロ!
すぐに助けるからっ!!
ーーー一寸先は光か闇かーーー
こんなにもすぐに総が帰ってくるとは思っていなかった。
バディのクロはソファの下で尻尾を丸めて、黒目を更に大きくして隠れている。
見つかるのも時間の問題だ。
総には、リビングに駆け込まれた所も見られてしまったし……。
幸い、黒い毛並みのおかげで、少しは時間稼ぎできそうだ。
縮こまっているクロを余所に俺は意識を自分へと向ける。
自分が何とかしなければっ……!
クロの事が心配になりながらも、奈緒は閉じ込められていた部屋で目を覚ます。
初めてにしては、バディとの同調は成功したと言っていい。
副作用に関しても、耳や尻尾が出ちゃう事くらいだと思っていた。
窮地だったとはいえ、安直な計画に身を乗り出した事に今更後悔するなんて……。
そう、俺は今猛烈に後悔している。
いや、ここはポジティブに考えた方が良いのだろうか。
小ちゃくなって、身軽で、運動神経も良くなって、逃げやすくなったって……?
俺はベッドで目を覚ましてすぐ、その違和感に気付いた。
明らかに目線が低くなっていて、地面との距離が近い。
耳や尻尾は出るとは分かっていたけど、腕から手にかけても黒い毛並みに包まれている。
肉球って、ピンクで思っていたよりもこんなに柔らかいんだー
って、ちがーうっ!!
感心してる場合じゃなくて!!
もうお分かりの方も多いだろう。
俺、藤沢奈緒は、正真正銘……
黒猫になってしまったのだっ!!
あああっ、もう!
どうしようっ!!
予想外だよっ。
人生って何でこう、予想外な事、理不尽な出来事が多いんだろうね。
悲観していても何も進まないし、俺には限られた時間しか残されていない。
最悪、この姿のまま脱出する事になるかもしれない。
とりあえず、起き上がってみよう。
自分が着ていた服の首元からスルリと抜け出す。
服がこんなにも大きく感じる程、今の俺って小さいんだなぁ。
二本足で立とうとしたけれど、上手くバランスが取れない。
すぐにコテンと転げてしまう。
逆に四つん這いの方が動きやすいようだ。
身体の構造上仕方ないのだろう。
当分はこのままかな……。
今度はベッドから降りてさらに歩き回っていた。
ジャンプして降りるのも、地面が前まで迫ってくるように見えて怖かったけれど、身体が勝手に動いてくれた。
歩くのも、意識して動かすとより混乱した。
自然に任せて、身体の思うままに行動するとすんなりと歩けた。
身体が動きを覚えてる様な感じだ。
よし!ハプニングな事に変わりは無いけれど、動けるようになったのは大きい!
早速、クロを助けに行かなきゃっ。
そう思った途端の事だった。
ガシャン、パリーンッ!
大きな物音と、何かが割れる嫌な音が階下で響いた。
今では聴覚も人の時より敏感に感じる。
何かあったに違いない。
部屋の扉の前でジャンプしてドアノブにつかまると、重みで扉は開いた。
待っていて、クロ!
すぐに助けるからっ!!
ーーー一寸先は光か闇かーーー
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