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5.光と闇
誘拐の果てに
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「奈緒様、しっかりと掴まっていてください。」
それは一瞬の出来事だった。
鷹の羽がヒデトの背に具現化された後、
ヒデトは人混みの合間に軽快なステップで助走をつけると、その羽で大きく羽ばたいた。
総への別れの嫌味を言うまでもなく、ふわっとした腰が浮くような無重力をその身で感じる。
腰が竦むのと同時に目をギュッと閉じた。
「っ……」
声にならない叫びが口から漏れる。
この浮遊感は中々慣れない。
バサっ、バサっという音と共に、地上からどんどん離れていってるようだ。
総も、まさか人目が多いこんな場所で、俺が連れ去られるとは思わなかったのだろう。
油断していたみたいだ。
流石に犬では上空までは来られない。
浮遊感に少しでも慣れてきた頃、俺はそっと片目を開けて伺うようにヒデトの背中越しに、下を見つめた。
総は怒ってる様子でもなく、無表情で微動だにせずこちらを見上げている。
呆気にとられているのか、それとも冷静でいて何かを考えているのか……。
全く感情というものが、読み取れなくて怖い。
総との距離が大分開いてきた頃、あれほど執着していたのが嘘のように、総は急にこちらから視線を外し建物の影へと消えた。
(怒ってないのか……?
何も無いという事自体があり得ないんだけど……。)
とりあえず、一難去ったと考えよう。
久しぶりのヒデトだ!
これまでに、痛くて酷い事されたり、親友に監禁されそうになったりと大変な目に遭い、ヒデトの背中にいると随分と安心する。
肩に顔を埋めると、ヒデトの匂いがしてたまらなくなる。
「奈緒様、大丈夫ですか?
一旦、私の拠点に帰りましょう。
それまで、我慢していて下さいね。」
「ミャ」
俺は軽く返事をして、ヒデトに抱えられるままジッとしていた。
すると、これまでの疲れか寝不足か、倦怠感が襲ってきた。
でも、今はもうヒデトがいる。
あたたかな安心感に包まれて俺の意識はそこでぷつりと途絶えた。
「……静かですね、奈緒様。
寝ていらっしゃるんですか?
はぁ、こんな姿になられて。
私のバディがあなたを見つけなければどうなっていた事か……。」
ヒデトは港から離れて内陸に向かって飛んでいた。
そして、高層の建物が並び立つ中にあるマンションのベランダの、一室へと降り立った。
操作能力で鍵を内側から開けて、中へと入り込む。
そして、奈緒を部屋のソファへと横たえた。
ヒュン……
その瞬間、閃光が瞬き、奈緒の黒猫の変化が解けた。
元に戻った奈緒は素っ裸で、薄暗い部屋の中であってもその白い肌はよく映えていた。
ヒデトは突然目に入った奈緒の妖艶な姿に喉を鳴らす。
軽く、猫のように丸くなって眠る姿は、少し細くなった華奢な腰を強調して、そのしなやかさを連想させる。
流石に、このままでは良く無いと思い、頭に被っていた布を外して局部を隠した。
そして、ヒデトはある事に気付く。
奈緒は服だけでなく、大事な物を身につけていなかった。
ミナトからの首輪も、ヒデトからの贈り物も。
「これは……。
お仕置をする必要がありますね。
私がきっちりと躾けてあげなければ。
覚悟して下さいね、奈緒様。」
ーーー忘れ物は、一体どこへ?ーーー
それは一瞬の出来事だった。
鷹の羽がヒデトの背に具現化された後、
ヒデトは人混みの合間に軽快なステップで助走をつけると、その羽で大きく羽ばたいた。
総への別れの嫌味を言うまでもなく、ふわっとした腰が浮くような無重力をその身で感じる。
腰が竦むのと同時に目をギュッと閉じた。
「っ……」
声にならない叫びが口から漏れる。
この浮遊感は中々慣れない。
バサっ、バサっという音と共に、地上からどんどん離れていってるようだ。
総も、まさか人目が多いこんな場所で、俺が連れ去られるとは思わなかったのだろう。
油断していたみたいだ。
流石に犬では上空までは来られない。
浮遊感に少しでも慣れてきた頃、俺はそっと片目を開けて伺うようにヒデトの背中越しに、下を見つめた。
総は怒ってる様子でもなく、無表情で微動だにせずこちらを見上げている。
呆気にとられているのか、それとも冷静でいて何かを考えているのか……。
全く感情というものが、読み取れなくて怖い。
総との距離が大分開いてきた頃、あれほど執着していたのが嘘のように、総は急にこちらから視線を外し建物の影へと消えた。
(怒ってないのか……?
何も無いという事自体があり得ないんだけど……。)
とりあえず、一難去ったと考えよう。
久しぶりのヒデトだ!
これまでに、痛くて酷い事されたり、親友に監禁されそうになったりと大変な目に遭い、ヒデトの背中にいると随分と安心する。
肩に顔を埋めると、ヒデトの匂いがしてたまらなくなる。
「奈緒様、大丈夫ですか?
一旦、私の拠点に帰りましょう。
それまで、我慢していて下さいね。」
「ミャ」
俺は軽く返事をして、ヒデトに抱えられるままジッとしていた。
すると、これまでの疲れか寝不足か、倦怠感が襲ってきた。
でも、今はもうヒデトがいる。
あたたかな安心感に包まれて俺の意識はそこでぷつりと途絶えた。
「……静かですね、奈緒様。
寝ていらっしゃるんですか?
はぁ、こんな姿になられて。
私のバディがあなたを見つけなければどうなっていた事か……。」
ヒデトは港から離れて内陸に向かって飛んでいた。
そして、高層の建物が並び立つ中にあるマンションのベランダの、一室へと降り立った。
操作能力で鍵を内側から開けて、中へと入り込む。
そして、奈緒を部屋のソファへと横たえた。
ヒュン……
その瞬間、閃光が瞬き、奈緒の黒猫の変化が解けた。
元に戻った奈緒は素っ裸で、薄暗い部屋の中であってもその白い肌はよく映えていた。
ヒデトは突然目に入った奈緒の妖艶な姿に喉を鳴らす。
軽く、猫のように丸くなって眠る姿は、少し細くなった華奢な腰を強調して、そのしなやかさを連想させる。
流石に、このままでは良く無いと思い、頭に被っていた布を外して局部を隠した。
そして、ヒデトはある事に気付く。
奈緒は服だけでなく、大事な物を身につけていなかった。
ミナトからの首輪も、ヒデトからの贈り物も。
「これは……。
お仕置をする必要がありますね。
私がきっちりと躾けてあげなければ。
覚悟して下さいね、奈緒様。」
ーーー忘れ物は、一体どこへ?ーーー
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