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PART9
他の男と話さないで
しおりを挟む「お嬢さんっ」
さっさと逃げ帰ってしまおうと駐車場に向かうと、桜庭くんが駆け寄ってきた。
「良ければご一緒に帰りませんか?」
「でも、車は?」
「俺の車で帰ろ?里帆は車をここに置いて、俺の家に泊まって、明日の朝また俺の車で送っていくよ」
いつか課長とそのような行動を取ったことを思い出した。
そういえば課長、今日は私の家に帰ってくるのかな……?
無理だろうな。桜庭くんとあんなにベタベタしてる所を見られたんじゃあ。
自暴自棄になった私は桜庭くんの誘いに乗り、彼の車に同乗して、食事に出掛けることになった。
◆◆◆
私達は夕食を終えると、食事をしたレストランと同じ商業施設内にある屋上のテラスに出た。見晴らしの良い場所で、夜になるとライトアップがされ、夜の街のネオンを一望するにはピッタリのカップル御用達のスポットだった。
平日の夜だけど、何組かの学生同士のカップルや、私達のようにスーツを身に纏った良い雰囲気の男女が数組いる。
桜庭くんは人目も憚ることなく私の腰に手を回して、2人でビルの景色が一望できる柵に体をあずけた。
ここにはカップル以外がいないのを良いことに、桜庭くんは昼間の続きをするかのように私の耳元にキスをして、手を握る。
「里帆、運転しないんだからお酒飲んでも良かったのに」
「え~、私だけ飲むなんて悪いよぉ」
「そんなこと気にしてるの?お酒飲んだ里帆、顔真っ赤にしちゃってクタクタに酔っ払って可愛くなるから好きなのに」
「そういえば、同窓会の時に一緒に飲んだもんね。私、お酒好きだけど弱いんだよ~。もっと強くなりたかったぁ」
「どうして?そのままが可愛いと思うけど。里帆の強がってるように見せて強くなり切れないところがそそるよね」
桜庭くんは私のオデコにキスを落として、髪を指に絡ませるように梳いてきた。私の長い髪が夜風に靡く。
「やだもー、桜庭くんたら。そんなに私を喜ばせても何も出ないよー?」
「……いいよ、何も出なくても。里帆が俺の側にいてくれたらそれでいいよ。だからもう、他の男に見られたくないし、話さないでほしいなんて思っちゃう」
「そ、それは……その、私も他の人とコミュニケーション取らないと社会的に取り残されるじゃない?そこに他意は無いわけだし、あんまり男とか女とか意識しなくてもいいんじゃないかなぁ?」
いや他意ならある。課長とは社会的な関係を逸脱しているのだから。
意を決して上ずった声で言ってみるも、これが桜庭くんの心を逆撫でする事になってしまった。
「里帆は全然分かってない……男は皆、里帆のこと女として見てるんだよ?意識しないと、里帆は隙だらけなんだから絶対ダメ。今度、上原さんとベタベタしたら部署異動してもらうから」
「え、部署移動?って何の事……」
「部署異動くらい簡単にさせれるよ?俺、気に入らない社員の2、3人は出向させた事もあるし。里帆を飛ばす理由を付ける事なんて幾らでも出来る。それとも、このまま会社辞めちゃうのはどう?里帆を辞めさせて、一歩も外に出られないようにして、俺の家に閉じ込めておこうかな……」
桜庭くんは私の手首に指を食い込ませるほど強く握って、柵に体を押し付けてきた。
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