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4 晃嗣、チョコレートを用意する⑤
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朔は丁寧にリボンを解き、そっと箱の蓋を開けた。3種類の正方形のチョコレートが9個並び、ひとつひとつに色とりどりの小さな食用花が飾られている。ちょっと乙女趣味が過ぎる気もしたのだが、見た目の美しさがダントツで、晃嗣の目を引いたのだった。
「きれいだなぁ、これ花ごと食べられるのかな」
朔は感心したように言う。目が好奇心からか、きらきら輝いていた。気に入ってもらえたようだとわかり、晃嗣の胸の中が顔と同じくらい熱くなった。
「うん、そうみたい……チョコはホワイトとミルクとダークだって」
「じゃあホワイト食べてみたい、これパンジーかな、小さいからビオラか」
朔は言いながら、箱を晃嗣に差し出す。へ? と晃嗣は首を傾げた。
「このビオラの載ったホワイトチョコ、食べさせて」
「えっ……」
晃嗣は朔の言うことが咄嗟に理解できずに、固まる。朔はやや意地の悪い笑いを口許に浮かべていた。こうやっていつも、こいつは俺をおもちゃにする。でも俺も馬鹿だから、結局抗わないんだが。
晃嗣は箱の中に指を入れて、紫とクリーム色のビオラで飾られたホワイトチョコレートを摘み出した。繊細なチョコレートは、あまり力を入れると、ほろりと崩れそうである。
朔は鳥の雛のように晃嗣に向かって口を開いた。他人の口の中を明るい場所で見ることもそうそう無い気がして、晃嗣は何となく落ち着かない。白い歯や濃いピンク色の口腔は、朔が若く健康であることを示していた。
白い小さなチョコレートを受け入れ、朔は幸せそうに目を細めた。もぐもぐと口を動かす様子が可愛らしく、晃嗣は彼が自分より年下だと意識する。
「美味しい、ただ甘いだけじゃなくてちゃんとミルクの味がする……」
「……良かった」
晃嗣は朔に優しい目で見つめられて、どきりとする。
「こうちゃんが俺のために選んでくれたのが、めちゃくちゃ嬉しい」
こんなことで喜んでくれるのかと晃嗣は感激してしまった。緩やかな沈黙が落ち、どちらともなく、互いの手に触れた。朔の手は酒のせいなのか、温かい。
微妙に楽しいけれど、……こんなとこで何やってんだ俺たちは? 晃嗣がそう思ったその時、個室の入口にかかる暖簾が揺れ、若い女の声が響いた。
「鯵のフライとお酒追加お持ちしましたぁ……あっ?」
店員は手を取り合うサラリーマンたちを見て、語尾を疑問形にした。晃嗣は慌てて朔の手を離し、テーブルの上のチョコレートに蓋をして、場所を空ける。
「あっ、あっ、鯵のフライとお酒、ここに」
焦りまくる晃嗣を見て、あ然としていた店員が笑いを堪える顔になった。朔は彼女に何でもないように言う。
「このお酒ホワイトチョコにも合うんじゃないかって試してたんだけど、合うかも」
「ああ、そうですか? 店長と調理場に言っておきますぅ」
彼女は朗らかに言って、軽い足取りで出て行った。ああもう、調理場で噂されるに違いない。5番個室の男の人たち、絶対ゲイ。朔はそんなことは全く気にしていないらしく、メニューを開き、野菜頼もうか、と言った。
「チョコレートは毎日一粒ずつ大事に食べる」
白い箱を大切そうに紙袋の中に入れる朔を見て、晃嗣の胸がきゅっとなった。うん、と曖昧に頷いて、グラスに酒を足すべく白い瓶を手に取る。朔はグラスを差し出した。
チョコレートは確かに、言葉にしにくいことを相手に伝えてくれるようだ。喜んでもらえると嬉しいから、女性から受け取るときは、義理でもちゃんと心を込めてありがとうと言おう……晃嗣は考える。
もっと深くて、熱の高い場所に。朔と一緒に進むことはまだ少し怖いけれど、その数倍楽しみだ。晃嗣のどきどきは、これからも続く。
「きれいだなぁ、これ花ごと食べられるのかな」
朔は感心したように言う。目が好奇心からか、きらきら輝いていた。気に入ってもらえたようだとわかり、晃嗣の胸の中が顔と同じくらい熱くなった。
「うん、そうみたい……チョコはホワイトとミルクとダークだって」
「じゃあホワイト食べてみたい、これパンジーかな、小さいからビオラか」
朔は言いながら、箱を晃嗣に差し出す。へ? と晃嗣は首を傾げた。
「このビオラの載ったホワイトチョコ、食べさせて」
「えっ……」
晃嗣は朔の言うことが咄嗟に理解できずに、固まる。朔はやや意地の悪い笑いを口許に浮かべていた。こうやっていつも、こいつは俺をおもちゃにする。でも俺も馬鹿だから、結局抗わないんだが。
晃嗣は箱の中に指を入れて、紫とクリーム色のビオラで飾られたホワイトチョコレートを摘み出した。繊細なチョコレートは、あまり力を入れると、ほろりと崩れそうである。
朔は鳥の雛のように晃嗣に向かって口を開いた。他人の口の中を明るい場所で見ることもそうそう無い気がして、晃嗣は何となく落ち着かない。白い歯や濃いピンク色の口腔は、朔が若く健康であることを示していた。
白い小さなチョコレートを受け入れ、朔は幸せそうに目を細めた。もぐもぐと口を動かす様子が可愛らしく、晃嗣は彼が自分より年下だと意識する。
「美味しい、ただ甘いだけじゃなくてちゃんとミルクの味がする……」
「……良かった」
晃嗣は朔に優しい目で見つめられて、どきりとする。
「こうちゃんが俺のために選んでくれたのが、めちゃくちゃ嬉しい」
こんなことで喜んでくれるのかと晃嗣は感激してしまった。緩やかな沈黙が落ち、どちらともなく、互いの手に触れた。朔の手は酒のせいなのか、温かい。
微妙に楽しいけれど、……こんなとこで何やってんだ俺たちは? 晃嗣がそう思ったその時、個室の入口にかかる暖簾が揺れ、若い女の声が響いた。
「鯵のフライとお酒追加お持ちしましたぁ……あっ?」
店員は手を取り合うサラリーマンたちを見て、語尾を疑問形にした。晃嗣は慌てて朔の手を離し、テーブルの上のチョコレートに蓋をして、場所を空ける。
「あっ、あっ、鯵のフライとお酒、ここに」
焦りまくる晃嗣を見て、あ然としていた店員が笑いを堪える顔になった。朔は彼女に何でもないように言う。
「このお酒ホワイトチョコにも合うんじゃないかって試してたんだけど、合うかも」
「ああ、そうですか? 店長と調理場に言っておきますぅ」
彼女は朗らかに言って、軽い足取りで出て行った。ああもう、調理場で噂されるに違いない。5番個室の男の人たち、絶対ゲイ。朔はそんなことは全く気にしていないらしく、メニューを開き、野菜頼もうか、と言った。
「チョコレートは毎日一粒ずつ大事に食べる」
白い箱を大切そうに紙袋の中に入れる朔を見て、晃嗣の胸がきゅっとなった。うん、と曖昧に頷いて、グラスに酒を足すべく白い瓶を手に取る。朔はグラスを差し出した。
チョコレートは確かに、言葉にしにくいことを相手に伝えてくれるようだ。喜んでもらえると嬉しいから、女性から受け取るときは、義理でもちゃんと心を込めてありがとうと言おう……晃嗣は考える。
もっと深くて、熱の高い場所に。朔と一緒に進むことはまだ少し怖いけれど、その数倍楽しみだ。晃嗣のどきどきは、これからも続く。
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sakuraさま、感想の投稿ありがとうございます! 自分的にも割と渾身(?)のエッチと事後ですので、沁みたようでしたら大変嬉しく思います。実は完結がもう見えているのですが、是非最後まで見届けてくださいませ!
何度も書き込んでスミマセン。
毎晩10時を楽しみに読んでます。
どれも良いですが、11-1を読んで、いよいよか?!とワクワク🎵してます。
赤面する「こうちゃん」も凄く可愛い❤️です。年上なのになぁ~☺️
ひろみさま、いつもありがとうございます(いやもう何度書き込んでいただいても嬉しいですから❤️)。晃嗣がぐずぐずしているにもかかわらず、ついてきてくださり感謝です! 山場を迎えています😆