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死んだ先が異世界で
宿屋へ報告 異世界で
しおりを挟む城壁の外から響き渡る歓声が街の中まで届く。
静まり返る街並みにその声はよく響き渡る。
何事かと外を眺める人々がちらほらと家から出てきている。
急に騒々しくなる町の中、俺たちは宿屋まで戻ってきた。
当然ながら宿屋は無事のようだ。
よかった、守ることができたな。
ホッとしながらドアを開く。するとまず目に入ったのは入り口近くでヒヨコを抱えて眠る女の子であった。
隣にはローサさんが寄り添って眠っている。
マリーちゃんの腕の中からもそもそとフォルが這い出して来る。
「おかえりなさい、戦いはどうなったのかしら?」
「 ただいま、戦いは超楽しかった」
満面の笑みで紡は返す。
「いえ、戦況を聞いたのだけれど…」
フォルは困り顔になり…
「もしかして、ご主人がまた暴走したの?」
にゃん吉へと問いかける。
「んにゃ、今回の暴走は特に酷かったにゃ…」
疲れた顔をして語るにゃん吉に疲労感が浮かぶ。
今回は連戦もしてないしそこまで苦労かけてないと思っていたんだが。
「今回、ご主人はレベル128の王種と一人で戦ってきたにゃ…」
「なっ!?なんで止めなかったの!」
「…暴走したご主人を止めるのはにゃーにはむりだにゃ」
「…ごめんなさい」
諦めた顔で2匹はため息を吐いていた。
何故だか問題児みたいな扱い受けてるな。
今回は1匹しか倒してないのに。
俺なんかよりもコアの方が倒した数多いやん…
紡はやさぐれていた。
2匹がそんなやり取りをしていると…
「おう!帰ってきたのか」
奥から大声でゴリラが話しかけながらやって来た。
満面の笑みでこちらに近づいてくるその姿はなかなかの迫力である。
「ああ、ただいま。もう戦いは終わったから外に出ても大丈夫だぞ」
「歓声が聞こえてたからまさかと思ったが、終わったのか」
はぁ…未だに不安な顔してるじゃないか。もう戦いは終わったっていうのに。
しゃあないなぁ…
「もう少ししたら、生き残った奴らが戻って来るはずだ。それに合わせて領主から何かしら通達があるだろう」
街に人が戻り、領主からの報告であればディーンも信じるだろ。
さて、言うことも言ったし早く寝よう。もう限界だ。
それだけ伝え、すぐにでも寝たかった俺は部屋へと上がっていく。
すると…
「ツムグ、この街を守ってくれてありがとう」
真剣な目でディーンがこちらに頭を下げていた。
「やめてくれ、俺はただ戦いたかっただけだ。お礼を言われるようなことはしていない」
狼1匹倒してきただけでそんな感謝されてもな…
それだけを伝えると、苦笑と共に二階へと上がっていった。
後ろでは紡が消えるまでずっとディーンが頭を下げ続けていた。
―――――――――――――――
side ディーン
静まり返る街の中宿屋の一階で俺はツムグが戻って来るのを待っていた。
外からは何の音も聞こえず、ただ静寂だけが続いている。
ここら辺はみんな避難しちまったからな…
宿屋の周りは殆ど人が居なくなっていた。
隣にはローサとマリーがヒヨコを抱きながら眠っている。
一緒に待つって張り切ってたんだが寝てしまったか…
時間も深夜をとっくに過ぎ、限界がきてしまったようだ。
マリーとローサへと毛布を掛け、そっと頭を撫でる。
ツムグの事が心配でずっと泣いていたからな…泣きつかれたんだろう。
席に戻り一人で静かな時の中、只々時間だけが流れて行く。
だが、一人静かな中で過ごしていると不安だけが募って行く。
(紡はまだ若い少年なんだ、戦場に行かせるわけにはいかなかったんじゃないのか…)
そんな考えに苛まれ、無意識にそわそわしてしまう。
「そんなにオロオロしていたのでは身体がもたないわよ」
俺の現状を見かねてか、ヒヨコが話しかけて来る。
「確か、あんたはフォルだったな。悪い、どうしても帰って来るまで心配でな…」
マリーがとても気に入り、お兄ちゃんと呼ばれている少年。
いきなり『此処を守ってやる』と一言だけ言い、マリーへとフォルを預けて出ていった少年がとても心配であった。
「まだ、貴方はご主人の事をよくわかっていないようですわね」
「どういうことだ?」
「マリーちゃんに戻ると約束しましたもの、あのご主人は必ず戻ってきますわ。それに…ご主人が死にかける姿なんて想像できませんわ」
優しげな表情でフォルは語る。
そうか…そこまで信じているのか。ならば俺もオロオロしている訳にはいかないな。
二人は語り合いながら時が刻々と過ぎていく。
ああ、お茶がなくなっちまったか…
俺は厨房へとおかわりを注ぎにいく。
厨房で新しいお茶の為、湯を沸かしていると、外から沢山の声が聞こえてきた。
街中に轟くような沢山の歓声。
何かあったのだろうか…
一人厨房で疑問に思いながら湯を沸かしていく。
新しい茶を入れ戻って来ると、入り口から賑やかな声が聞こえてきた。
それはここまで待ちに待った声。
間違いない。紡の声だ!
戻ってきてくれた、その事が嬉しくて、俺は急ぎ入り口へと向かう。
頭に子猫を乗せた紡がそこに居た。
「おう、帰ってきたのか!」
嬉し過ぎてついつい声が大きくなってしまった。
気にもせず、紡は戦いは終わったと教えてくれた。
そうか、さっきの歓声はそういう事だったのか…
紡はそれだけ伝えると部屋へと上がろうとする。
「紡、この街を守ってくれてありがとう」
どうしても今言いたかった。俺は頭を下げる。
「やめてくれ、俺はただ戦いたかっただけだ。お礼を言われるようなことはしていない」
それだけを返し上がっていく。
マリーとの約束を守ってくれた事、この街を守ってくれた事、そしてこの宿まで戻ってきてくれた事。ありがとう、本当にありがとう。
その後ろ姿に、俺は無言で頭を下げる。
そんな簡単な事ではない。戻ってきた紡は服は裂け、所々に血が付いていた。頭や肩に怪我もしているようだった。
この宿の為、守りたい者の為に激闘を生き抜いてきたのであろう。
そんな戦いを切り抜いてきたにも関わらず礼すらも求めないその後ろ姿が昔に出会ったモリコ様と重なって見えた。
街に響き渡る喜びの声の中、『守護者の休息』だけは静かな時を過ごしていく。
この宿の恩人に少しでも休息してもらうように…
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