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死んだ先が異世界で
街から逃走城外へ
しおりを挟む誰だよこいつ。
呼び止められて、振り向いたらゴツイおっさんって誰得だよ…
「おっさん俺に何か用か?」
「先ほど聞こえたのだが、お前はツムグ オトギで間違いないか?」
「ああ、そうだが?」
「そうか、領主様からの通達だお前を連行する」
おっさんが俺に剣を向けて来る。
なんなんだよ…街中で襲撃を受け、その両方がおっさんかよ。
「てか、おっさん誰だよ」
ラークが焦りながら伝えて来る。
「ツムグ!この方はウェルド家の騎士団長をしているカイン様だ!」
ほう、こいつが騎士団長か。なんか見ただけでもわかる堅物オーラがめんどくささを感じるな。
「騎士団長様が俺を連行って何故に?」
俺は悪い事もしてないからなぁ。
「領主様からの指令だ、お前は黙って従っていればいい」
相手を見下すような目で俺を見つめるその姿。
俺には有無を言わせないその態度。
こいつ、俺の嫌いなタイプの人種だわ。
「断ったらどうにかなったりするのか?」
「素直に来てくれるなら無事を保証する。断るのであれば強制的に連れて行く」
剣をぎらりと光らせながら脅して来る。
成る程、こいつは俺を脅して来ているんだな。
ということは…
「一つ聞きたい、ここでおっさんが返り討ちにされても文句はないよな」
おお、ラークさんがめっちゃ驚いてるな。
「ふふっ…まさかFランクからそんな事を言われるとはな。私も舐められたものだ」
剣を片手にカインは笑う。
あー、面倒くさい。俺は早く帰りたいだけなのに。
早く帰ってピーの飯を腹一杯食べたいな…
紡はもう、相手をする気すら無くしていた。
「ラークさん、それじゃ俺出て行くからまたな」
俺は手を振りながら門から歩いて行く。
後ろには振り返らずに普通に何事もなく進む。
まさか、無視されるとは思っていなかった。
二人はその場に固まり、理解できない現状に只々呆然としていた。
「よし、んじゃ早く帰ろうぜ」
「宜しかったの?あの人偉い人みたいだったけど」
フォルは優しいな。あんな面倒な奴にまで気を使うなんて。
「いいよ、ただでさえああいうタイプの奴は嫌いなんだ。まともに相手する気なんてさらさらないよ」
さて、あの騎士団長様とやらが復活する前に早く帰るとしますか。
飯も待ってる事だしな。
紡は街道を歩いて行く。
「待て!逃げるな!」
再度呼び止められる。後ろにはやはり騎士団長がいた。
ちっ…復活しやがったか。
「なんだよ、しつこいおっさんだな。ストーカーかよ」
何度も俺を付け狙い、背後から声をかけて来るおっさん。気持ち悪すぎる。
「失礼な!お前が従って着いてくればこんな事などしない!
もういい。お前を強制連行させてもらう。多少傷ついても逃げたお前の自己責任だ」
あー俺と戦うわけね。そうか…
いい加減のしつこさと面倒くささに紡もキレる。
「おっさん、いい加減にしろよ。俺には早く行かなきゃならない理由があるんだよ」
「うっ…ぐっ!」
キレた事で無意識に威圧を周囲にばら撒く。それをもろに浴びているカインは想像を超えた重圧に固まり動けずにいた。
ウザいなこいつ…早く帰って俺はピーのご飯を食べなければならないのに。
行かなきゃならない理由はしょうもなかった。
「はぁ…戻ってこの街の領主とやらに伝えろ、『俺と敵対するんならかまわずこの街を潰すぞ』って」
もう構ってられないな、行くか。
紡はふわりと浮き上がると、動けずにいるカインに目も向けず拠点まで飛んで行った。
――――――――――――――――――
side グラッド
いまだに執務室は大量の書類で埋め尽くされ、死屍累々で皆が処理に励んでいる。
グラッドも同じく、領主として来た書類の処理をしながら過ごしていた。
カインのやつ、無事に連れて来てくれるだろうか。相手はあの狼を屠った強者だからな、下手に揉めてなければいいのだが…
グラッドの想いは届かない。それどころか…
「失礼する」
カインが部屋へと入って来る。見たところ服装等は変わってないが、顔がかなりやつれているように感じる。
「おお、戻ったか!それで首尾の方は?」
「…」
ん?どうしたんだ?捜索の報告だろうに、何で答えない。
「捜索の方はどうなんだ?」
気になっていたためか語尾が強まる。
「申し訳ありません!!」
何故かいきなり謝り出すカイン。
「来て早々どうした。何があったか分かるように報告してくれ」
このカインが黙るような事だ捜索に問題があったのだろう。
「…捜索の結果、ツムグ オトギと思われるものを発見、それに接触することも出来ました」
見つかったのか!!良い報告ではないか!
だが、その後に続く内容に問題があった。
「接触した結果、領主館に来ることを拒否。それに対し私が強制連行を行おうとしました」
「なっ!?」
まさかの事態にグラッドは固まる。
ちょっと待て、オトギのものを連行だと…
「それに対し、ツムグ オトギは私を威圧のみであしらい、中に浮かび南へと飛んでいきました」
そうだろう、まず強制連行自体が無茶なのだ。オトギの者に従わせるなど私たちでは到底できる事ではない。
「最後の去り際、ツムグ オトギから、領主様に対して伝言を預かりました」
…聞きたくない。怖すぎる。こんな事態の伝言なぞ確実にいい話ではない。
だが、領主として聞かないわけにはいかない。
「その内容は?」
「『俺と敵対するんならかまわずこの街を潰すぞ』と」
最悪だ。揉め事どころか敵対寸前ではないか…
最悪の事態にグラッドの頭は真っ白に染まって行く。
「グラッド様、あの者は一体何なのですか。これでも騎士団長として私はかなりの実力を自負しています。
しかし、あれには勝てない。威圧された瞬間に生物としての危機能力が盛大にあの者と戦ってはならないと感じました」
震える手を握りしめ、そう語るカインの顔は恐怖に歪んでいた。
「魔法士ギルドで報告を受けた際には、Fランクとのことで、私も甘く見ていた節はあります。
しかし、あれはランクなぞに収まる者ではない。絶対に敵対してはいけない。そう、あの者は一種の…」
「化け物か?」
「はい…」
「そうか、カインがそう感じたならそれでいい。だが二度と人前であの者を化け物などと言うな。
あの者にそんな事を言って良いものなど私を含め、今この街には存在しない。
あの者はこの街の救世主だ。絶対に蔑ろにしてよい者ではない」
どんなに強くとも、どんなに怖くとも、私達は守ってもらったのだ。あの者を貶す言葉は私が許さない。
「申し訳ありません…」
「いや、分かればよい」
私もカインには詳しい内容を伝えておくべきであった。これは私のミスだ。
「カインも無事に帰ってきてくれてよかった。
私からしてみればあの者と対峙して無事に戻れたお前を誇らしく思う」
「いえ、何か急ぎの用があるようで、見逃してもらったというのが正しいですよ」
苦笑いで答えるカイン。
よかった、少しは元気を取り戻したようだな。
「さて、ここからどうしたことやら…」
今、あの者からしたら私達の印象は最悪であろう。必ず敵対しないように動かなければ…最悪、この街が消える。
静かな部屋の中、悩む二人は焦った表情をしていた。
「そういえば、門番のラークとは仲がいいようでした」
「ほう、そうか…よし、そのラークとやらをここに呼べ事態の収拾を手伝ってもらうぞ」
二人だけの町を守る戦いがここに始まった瞬間であった。
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