眠れるsubは苦労性

あうる

文字の大きさ
6 / 15

5

しおりを挟む
「先輩、本当にすんませんっしたーー!!」

出社するなりスライディング土下座で出迎えたのは、件の後輩猿橋だった。

「いやもうこのタイミングでインフルとかめっちゃラッキー………じゃなかった、最悪だなと思いまして!!」


「お前今本音ダダ漏れしてたろ」
「げっ。結城先輩、なんでそこに!?」
「俺と先輩は一心同体なんだよ!」
「え、ストーカー……?」
「よし、ちょっと一緒にトイレに行こう」
「ぎゃ~~!!先輩助けて~~!」
「うっせ!先輩は俺のなんだよバーカ!」

「………おまえ達」


なんて知能指数の低い会話だろうか。
頭が痛くなってきた。
そこに、背後からぬっとあらわれた気配。
ポンと肩をたたかれ、仕方なく振り返る。

「おはよ、高倉」
「………社長、おはようございます」

丁寧に頭を下げる俺の姿に、あわてて従う後輩二人。
こいつら本当に周りが見えていないにもほどがある。

「例の件、高倉が上手くまとめてくれたんだって?助かったよ~」

ありがとうな、とねぎらいの言葉をかけ、ちらりと背後を流し見る。

「猿橋、お前高倉に感謝しろよ?訂正部分の確認やなんかはお前に任せるから、しっかりやれよ?それから最終確認は必ず誰か別の人間を通すこと、いいな」
「は、はい!!」

最後まで責任をもって任せるのはいいが、二度同じ失敗をするようでは目も当てられない。
社長の指示はもっともだ。
すっ飛んでいった猿橋に「いい気味」と笑う紬だが、当然の社長の追及はそこで終わらない。

「んで結城、お前は何でここにいんの?」
「ですから俺と先輩は」
「一心同体はわかったから、さっさと昨日の出張の成果を纏めて来い。
受付に昨日買った土産も配達されてたから、午後は関係先に挨拶がてら渡しに行くぞ」
「はい、社長」
「いい子の返事だが、高倉は置いて行け」

俺の手をつないだまま歩き出そうとした紬は、その当然の指摘にしぶしぶ手を離す。

「じゃあ先輩、行きたくないけど行ってきます。本当は一秒でも先輩と離れたくないです」
「……バカみたいなことを言ってないでさっさと行け」

ひらひらと手を振り、未練たっぷりの紬を送り出す。
ようやく騒がしいのがいなくなったと、ふぅと一息を突いたところで、「で、だ」と。
再び肩をたたかれ、もはや嫌な予感しかしない。

「高倉。ーーーーいや、綾史あやふみ
昨日何があったか、ちょっと社長室で詳しく聞かせて貰おうか。
………お前、例の発作で倒れたんだろ?」

肩に手を置かれ、小声で囁かれる。

「なぜそのことをご存じで?」
「担当者から直々に謝罪があった。
あっちの会社のコンプライアンスに引っかかる事案が発生して、お前に迷惑をかけた、ってさ」

確かに、強いパワハラ的な発言を受けたことは否定しないが、わざわざ会社を通じて謝罪をしてくるとは。

「…普通はあの程度の事でそこまではしないはずですが」
「現場を上司に見られてたってんじゃ、そうはいかないだろ」
「四宮専務、でしたか」

まずいところに出くわしてくれたものだ。

「そ。なんだ、わかってんなら話は早い」

ぽんぽん、と背中をたたかれ、「今日の昼めし、俺と一緒な」と突然話が飛んだ。

「あっちの四宮と俺は家同士の繋がりがあって多少顔見知りなんだよ。
お前の事やけに気にしてたようだから、謝罪がてら一度食事でもどうかって話になった」
「できればお断りしたいのですが」
「安心しろよ。警戒してんのは俺も一緒だ。
あいつがただの酔狂でこんな所まで出張ってくるとは思えないからな」
「なら社長だけでなんとか収めてくださいよ…」

昨日からの色々で、こちらは疲労困憊だ。
これ以上余計なものを抱え込みたくはない。

「お前の顔を見ないことには納得しないってうるさいんだよ。
お前のその、麗しのご尊顔にぞっこんなのかもな?」
「それこそセクハラに値する案件かと思いますが」
「俺とお前の仲にセクハラなんて言葉が通用すると思うなよ、綾史」
「そういうときだけ先輩後輩の関係を強調してくるのはどうかと思いますが」
「結城みたいにべったべたくっついてる方がましだと?」
「ーーーーーあれは例外です」

しいて言うなら、あれは躾に失敗した犬みたいなものだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

Dom/Subユニバース読み切り【嘉島天馬×雨ケ谷颯太】

朝比奈*文字書き
BL
🖤 Dom/Subユニバース 毎週日曜日21時更新! 嘉島天馬(クーデレ・執着Dom)× 雨ケ谷颯太(ワンコ系・甘えんぼSubよりSwitch) 読み切り単話シリーズ。命令に溺れ、甘やかされ、とろけてゆく。 支配と愛情が交錯する、ふたりだけの濃密な関係を描いています。 あらすじは各小説に記載してあります。

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

待てって言われたから…

ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。 //今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて… がっつり小スカです。 投稿不定期です🙇表紙は自筆です。 華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

不透明な君と。

pAp1Ko
BL
Dom/Subユニバースのお話。 Dom(美人、細い、色素薄め、一人称:僕、168cm) 柚岡璃華(ユズオカ リカ) × Sub(細マッチョ、眼鏡、口悪い、一人称:俺、180cm) 暈來希(ヒカサ ライキ) Subと診断されたがランクが高すぎて誰のcommandも効かず、周りからはNeutralまたは見た目からDomだと思われていた暈來希。 小柄で美人な容姿、色素の薄い外見からSubだと思われやすい高ランクのDom、柚岡璃華。 この二人が出会いパートナーになるまでのお話。 完結済み、5日間に分けて投稿。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

処理中です...